Webデザイナーのような専門職を抱える企業は多くありません。デザイン会社でもない限り、このような専門職は社員として雇わず、必要なときだけ外注した方が、企業は人件費を抑えられます。だからこそ、フリーランスのWebデザイナーが増え、活躍しているのです。今回は未経験から最短でフリーランスのWebデザイナーになる方法や、仕事探しに役立つサービスを紹介します。求められるスキルやキャリアプランの立て方も解説します。
「フリーランスのWebデザイナーになるのは辞めておけ」といわれる理由
インターネットで「Webデザイナー」や「フリーランス」と検索すると、検索候補に「Webデザイナー(フリーランス) やめたほうがいい」と出てくることがあります。これは、「Webデザイナーになるのは辞めておいた方がいいのか」「フリーランスを目指したいけれど、本当にそれでいいのか不安」という人が多いからです。
Webデザイナーやフリーランスになること、目指すことを不安に感じている人が多いのは、なぜでしょうか。フリーランスのWebデザイナーには、ほかの職種や会社員に比べ、次のような弱点があるからです。
【フリーランスのWebデザイナーの弱み】
・雇用と比べて保障が弱い
・何でも自分でしなければならない
・公私の境目が曖昧になりやすい
・誰でもデザインができるようになりつつある
Webデザイナーに限らず、フリーランスは会社員と比べ、社会的な保障が手厚くありません。健康保険は「国民健康保険」ですし、ボーナスはもちろん有給休暇もありません。
会社で働くWebデザイナーならデザインのみに集中できますが、フリーランスは仕事探しや営業活動、事務作業はもちろん、確定申告までしなければなりません。
基本は在宅ワークであり、監視の目や上司のプレッシャーもないことから、サボりがちになる人もいるでしょう。会社員のように毎月固定の給料が入らない分、自分で仕事を獲得しないと生活ができません。自制心がないとフリーランスで活躍するのは難しいです。
何より、最近は優れたデザインツールが増えていて、「デザインを制作するハードル」が下がり続けています。ライターやエンジニアの中にも、簡単なデザインなら自分でやってしまう人も多く、ディレクターやマーケターともなると、基本的なデザインスキルは備えています。デザイナーの仕事や立場そのものが、危うくなりつつあるともいえるでしょう。
しかし、それでも「優秀なWebデザイナー」には途切れることなく仕事が舞い込んでいます。フリーランスには「何でも自分でしなければならない」「公私の境目が曖昧になる」などのデメリットもありますが、裏を返せば身に付くスキルが多く、働き方の自由度も高いということです。
いずれにしても、今は「成果主義」の時代です。ほかの職種だろうが、会社員だろうが、スキルアップし続けない限りは安泰とはいえません。好きこそものの上手なれというように、「自分が何をやりたいか」「どう働きたいか」をベースに考えた方がスキルアップしやすく、結局は安定したキャリアを築けるでしょう。
フリーランスのWebデザイナーの年収は?
社員のWebデザイナーの平均年収は「約450万円」(2022年10月時点)といわれています。一方、フリーランスのWebデザイナーの年収は「約501万円」が平均といわれています。
ただ、フリーランスのWebデザイナーの中には副業でデザイナーをしている人もいます。専業の人でも単価や仕事量(稼働時間)の個人差が大きく、会社員のように平均値を示しづらいです。
どんな職種でも、フリーランスの年収はピンキリです。ただ、仕事量や作業スピードの向上が収入アップにも直結するため、「年収アップ」という意味では会社員よりも有利でしょう。
Webデザイナーの仕事の年収・時給・給料:求人ボックス 給料ナビ
フリーランスのWebデザイナーに求められるスキルは?
デザインスキルが高いだけでは、フリーランスのWebデザイナーとして活躍することはできません。基本的なデザインスキルを備えていることは当然として、ほかにも次のようなスキルが求められます。
【フリーランスのWebデザイナーに求められるスキル】
・営業力
・コミュニケーションスキル
・マーケティングスキル
・コーディングスキル
フリーランスは仕事探しや営業活動も自分でしなければなりません。まずは自分にできそうな仕事を探し、提案を受け入れてもらう力、単価や業務の範囲などの条件交渉をする力も必要です。クライアントとのやりとりもすべて自分が窓口なので、コミュニケーション力も求められます。
また、Webデザインの目的は商品やサービスを売ったり、ブランディングしたりすることです。そのためWebデザイナーにもマーケティングやブランディングの知識とスキルが求められますし、デザインをWeb上に実装するためのコーディングスキルも欠かせません。
これらを身に付ければ、「売れるデザイン」が作れるようになり、仕事も途切れなくなるでしょう。Webディレクターやマーケターなどへのキャリアアップの道も拓けます。
未経験からフリーランスのWebデザイナーになるには?
未経験から突然Webデザイナーとして就職するのは、簡単ではありません。Webデザイナーの求人に応募するためには、ある程度のスキルが必須ですし、中途採用ではそれなりの実務経験も求められるからです。
未経験からWebデザイナーになりたいなら、地方での就職、もしくはフリーランスを目指しましょう。地方の場合は、優秀なデザイナーの採用に苦戦している企業も少なくないので、中途採用でもスキルさえあれば、未経験からの採用が狙えます。就職して企業で経験を積んだ後、フリーランスとして独立するのもいいでしょう。
全く経験がないのであれば、まずは独学やスクールでスキルを身に付け、簡単な仕事から請けてみるのがおすすめです。Webデザインではデザインスキルだけでなく、マーケティングやコーディング、ある程度のコピーライティング力なども求められるため、スクールで体系的に学ぶのが早いでしょう。
簡単な仕事を探すにはクラウドソーシングが適していますが、未経験・実績なしの状態では、提案文にかなり力を入れなくてはなりません。仕事探しで挫折してしまう人も多いため、提案や条件交渉などの営業活動をサポートしてくれる「フリーランスエージェント」の活用がおすすめです。
Webデザイナーやディレクターを目指す人におすすめのスクール4選
「デザイン」と聞くと、生まれ持ったセンスが問われるような気がします。「どんなに学習や実務経験を積んでも、センスがないと優れたWebデザイナーにはなれない」と思っている人も多いでしょう。
しかし、Webデザインは「アート」ではありません。知識やスキルで、ある程度のレベルには達することができますし、真剣に学び、制作を続けることで、自然とセンスも磨かれていきます。
また、ほかの業種と比べ、抽象的なモノを扱うのがデザイナーです。Webデザイナーになりたくとも、全くの未経験で何から手を付けていいかわからない人も多いでしょう。
そんな人におすすめのWebデザイナー向けスクールを4つ紹介します。デザインスキルだけでなく、ライティングやコーディング、動画制作スキルなども身に付くスクールを厳選しているので、「WebデザイナーからWebディレクターへのキャリアアップ」を考えている人にもおすすめです。
ぬるま湯デザイン塾
ぬるま湯デザイン塾は、「これからのWeb業界で求められる、多角的なスキルを持ったWebデザイナー」を育てるスクールです。講師は現役のデザイナーやコピーライター、マーケターなどで、単なるデザインではなく、「マーケティングに必要なデザイン」を学べます。
Webデザインの概要や基本スキルはもちろん、HTML/CSS、コピーライティング、各種分析スキルなども教えています。SEOについても学べるため、内部と外部、両方の施策ができる「実務レベルの高いWebデザイナー」を目指せるでしょう。
このような多角的なスキルを持った人材は、もはやWebデザイナーではなく「Webディレクター」と呼べるでしょう。「Webデザイナーになりたいけど、ゆくゆくはWebディレクターへのキャリアアップも考えたい」という人におすすめです。
ぬるま湯デザイン塾:https://l-works.design/
デジタルハリウッド STUDIO by LIG
デジタルハリウッド STUDIO by LIGは、Webデザイナーや動画クリエイターを目指す人におすすめのスクールです。
月額制なので、これからの時代で求められる「デザイン力」と「動画の企画・制作・編集力」を、気軽に学び始められます。デザインと動画制作はシナジー効果も高いので、「自分はWebデザイナー志望だから…」といわず、両方を学ぶのがおすすめです。
受講スタイルは通学とオンラインの好きな方を選べます。通学とオンラインを組み合わせてカリキュラムを組むこともできるため、居住地や学習スタイルに合った方法を選びましょう。
スキルを身に付けられるだけでなく、就職や転職活動で重要視されるポートフォリオの添削や転職相談も提供しているため、目指すキャリアに向けた具体的な行動を後押ししてもらえます。
無料説明会の内容も充実していて、90~120分の個別相談に乗ってもらえます。入校するかどうかは別として、まずは今後のキャリアやWebデザイナーについて、気軽に相談してみましょう。
デジタルハリウッド STUDIO by LIG:https://liginc.co.jp/studioueno/
日本デザインスクール
日本デザインスクールはWebデザイナーを中心に、Web系フリーランスに向けたさまざまなセミナー・スクールを提供しています。フリーランスのWebデザイナーや副業デザイナーを目指す人はもちろん、Web業界へ転職したい人にもおすすめです。
目的や今のレベルに合わせてセミナーやスクールを選べるのも特徴で、バナーやHP制作、その他Webデザイナーとしての基礎スキルを45日で身に付けられるコースや、卒業後の継続的な学習、Webデザイナーのコミュニティに参加ができるコースなど、さまざまなものがあります。
日本デザインスクール:https://design-school.online/
Fammママ専用スクール
Fammママ専用スクールは、1ヵ月でWebデザイナーを目指せるママ向けのスクールです。Webデザインのことはもちろん、仕事受注のサポートや、女性ならではのキャリアデザイン・ライフプランを相談することもできます。
例えば副業や複業などの「新しい働き方」を視野に入れたキャリアプラン、身に付けたいスキルなど、さまざまな相談ができます。受講後の仕事受注サポートもあるため、未経験でも安心してフリーランスデビューできるでしょう。
講座は自宅から参加できるLIVE配信形式なので、わからないことや不安なことはすぐに質問できます。参加人数は最大8人なので質問しやすく、受講生同士のコミュニティもあるためモチベーションも上がるでしょう。
無料で自宅にベビーシッターを派遣してもらったりしながら学習を進められます。学習期間は同じく1ヵ月なので、最短で「Webデザイナーとして働くママ」を目指せます。
Fammママ専用スクール:https://famm.us/ja/school
Webデザイナーにおすすめのフリーランスエージェント4選
フリーランスのWebデザイナーは、SNSを使ったり企業ホームページの採用ページから応募したり、自ら営業活動をするのが基本です。しかし、営業力に自信がない人や、フリーランスになったばかりでどうしていいかわからない人も多いでしょう。
そんなWebデザイナーには、「フリーランスエージェント」の活用がおすすめです。フリーランスエージェントは、フリーランス向けのお仕事紹介サービスのようなもので、スキルやキャリアプランに合った案件の紹介、プロダクト参画中のフォローなどをしてくれます。
「仕事がなかなか決まらない」「フリーランスやWebデザイナーとしてのキャリアの先が見えない」と不安な方におすすめのサービスを、4つ紹介します。
DYMテック
DYMテックは、フリーランスのWebデザイナーやエンジニアに特化したエージェントです。フリーランスとしての仕事はもちろん、転職したくなった場合の支援も提供しているため、Webデザイナーとしての可能性も広がるでしょう。
経営者層とのネットワークを持ち、単価や条件を担当者ではなく、社長と直接交渉できる案件もたくさんあります。交渉もスムーズで、より良い結果が得られるでしょう。
参画した案件の進行中にも面談やレポートによるサポートを提供しています。クライアントには言いづらいことも、DYMテックの担当者には気軽に相談できるでしょう。取引中のクライアントとの継続はもちろん、新規案件の紹介にも力を入れているため、継続して案件を提案いただけます。
【DYMテックのサポート一例】
・案件の参画初日は担当者が現場まで同行
・スキルや希望のヒアリングと、それに合った案件の提案
・クライアントとの面談、面接への同席
・同社の他サービスによる、顧問契約や就職などのサポート など
DYMテック:https://dym-tech.jp/
レバテッククリエイター
レバテッククリエイターはWeb・ゲーム業界に特化した、クリエイター専門のフリーランスエージェントです。Webデザイナーはもちろん、「将来はゲーム関連のデザインをしてみたい」という人にもおすすめです。
案件数の多さや充実したサポートが魅力のサービスで、取引社数は5,000社以上(2021年1月実績)、条件交渉や契約手続きなどの営業活動・バックオフィス業務をサポートしてもらえます。
プロダクトの進行中も専任担当者からのフォローが受けられ、契約更新や他案件の提案をしてもらえます。カウンセラーにキャリアプランの相談もできるため、Webデザイナーとしてどの領域に進みたいのか、どう収入を増やしていくのかを確認しながら日々の業務にあたれるでしょう。
【レバテッククリエイターのサポート一例】
・税理士による確定申告代行を特別価格で提供
・人間ドックやフィットネスクラブなどを優待価格で利用可能
・フリーランス同士の交流会や学習サービスを無料で提供
・案件参画中も利用できる営業代行
・参画中に専属フォロワーとの定期的なランチミーティングを実施しメンタル面のフォロー など
レバテッククリエイター:https://creator.levtech.jp/
Workship
Workshipはデジタル業界に特化したお仕事紹介プラットフォームで、Webデザイナーやエンジニア、ライターなど、さまざまな職種のフリーランスが登録しています。週1~3日で働けるリモート案件も多く、専業での複数クライアントの掛け持ちはもちろん、副業探しにもおすすめです。
他サービスにない魅力として、案件が成約すると1万円がもらえる「お祝い金」制度が挙げられます。フリーランスは本来、仕事探しや営業活動にどんなに時間をかけても、お金が発生しません。成約して1万円をもらえれば、それまでの仕事探しや営業活動に時給が発生したのと同じです。
ほかにも次のような福利厚生・サポートがあります。
【Workshipのサポート一例】
・フリーランス、クライアント、Workshipの3者間での契約締結
・クライアントとのトラブルを相談できる窓口
・情報漏えいやサイバー攻撃などに対する賠償責任保険の無料付帯
・国内外20万以上の施設や飲食店を優待価格で提供 など
Workship:https://goworkship.com/
ITプロパートナーズ
ITプロパートナーズは、週2日からの案件に特化したお仕事紹介サービスです。「まずは副業でWebデザイナーをはじめて、軌道に乗ってから独立したい」という人にピッタリでしょう。
ITプロパートナーズはクライアントと直接契約しているため高単価な案件が多いです。仲介業者を挟まないため報酬が高く、仕事やクライアントとのやりとりもしやすいでしょう。
利用企業の規模や業界も幅広く、スタートアップから大企業まで、BtoCやBtoB、マーケティングやメディア運営など、さまざまな仕事がそろっています。得意分野や積みたい経験を考え、自分に合った仕事を探せます。
【ITプロパートナーズのサポート一例】
・個人事業主に特化した税理士による確定申告無料相談会の実施
・小規模企業共済(フリーランスにとっての退職金制度のようなもの)の申し込みサポート
・弁護士保険の付帯
・税理士への確定申告無料相談 など
ITプロパートナーズ:https://itpropartners.com/
フリーランスのWebデザイナーになるのは、時代に合った選択肢
インフルエンサーマーケティングやDtoC(企業が顧客に直接商品やサービスを売ること)、クラウドファンディングなどの普及を見てわかる通り、マーケティングの主戦場はWebへと移りつつあります。
商品やサービスを売ったり、ブランドイメージを育てたりするうえで欠かせないのが「デザイン」であり、これからはWebに特化したデザイナー「Webデザイナー」へのニーズも高まっていくでしょう。
企業にとって、デザイナーやライターのような専門職は自社で雇用するよりも、必要なときだけ外注したい職種と考えられています。「会社員」に求められているのは何でもそつなくこなせる万能さがあるゼネラリストであり、専門職を常に雇用しておくのは費用対効果が悪いと思われているからです。ただ、会社員経験もあり、未経験からスクールでデザインの知識を学んだ場合は、転職市場や独立でも有利に働くことが多いというのもまたひとつの事実です。
フリーランスという働き方は、企業のニーズを考えても、スキルアップを考えても、なかなかに「アリ」な選択肢といえます。Webデザインの基礎を学び、最低限の実績やポートフォリオが作れたら、早速仕事を探してみましょう。実務をこなす中でこそ、学んだことが血肉になるというものです。
<文/赤塚元基>