起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。
経営者に必要な「着眼点」の鍛え方 第116回・メニュー設定に隠されたある工夫
いきなりですが、クイズです!
クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある
昨年12月、アメリカで巨大竜巻が発生し、Amazonの物流倉庫に直撃したニュースを覚えている人もいるかもしれません。
竜巻の直撃で倉庫の屋根が吹き飛び、建物の大部分が倒壊した様子はかなりショッキングなものでした。と同時に、あれで多くの品物がダメになったかと思うと、何ともいたたまれない気持ちになったものです。
さて、その少し前、日本では日立物流の物流センターで火災があり、「あるもの」が大量に燃えてしまいました。
知識だけを問うクイズとなってしまって大変申し訳ないのですが、燃えてしまったものが何かを当てるのが、今回のクイズです。
それでは解説します!
せっかくなので、ヒントを出しましょう。
大量に燃えてしまったのは「高齢者の必需品」で、この10年くらい政府がすごく力を入れて普及に努めてきたものです。
いかがでしょうか。
もう1つヒントを出しますと、これがなくなってしまうと、みんな高いものを買わないといけなくなります。
お分かりでしょうか?答えは「ジェネリック医薬品」です。
その倉庫は、西日本全体の物流の要のような場所だったそうで、多くのジェネリック医薬品が保管されていたようです。鎮火するのに時間がかかったのは、薬は化学品なので燃えた際に人体にどういう影響を及ぼすかが分からなかったことから、消防隊が倉庫の中に入れなかったからだとか。
結果、西日本を中心にジェネリック医薬品が品薄となってしまいました。最近、あらゆる業界で「品薄」の話を聞きますが、どこで何が起こるか分からないものですね。
あちこちで起こっている「品薄」の問題
品薄の話でいうと、最近話題になっているのは、マクドナルドをはじめとする外食や小売業界で深刻化している「ポテト不足」でしょう。
原因といわれるのが、新型コロナウイルスの影響による世界的なサプライチェーン危機です。船舶に遅れが生じ、日本への輸入が遅れているのだそうです。
過去にも自然災害や労働争議の影響で海外から物が届かなかったことはありましたが、今回はこれまで以上の予断を許さない状況のようです。
あと、品薄で思い浮かぶのが「半導体」ですよね。こちらもかなり深刻で、世界的に大きな影響が出ているのはご存知の通りです。私も先日、車を買い替えたのですが、納品は半年以上先とのこと。聞いたところでは、この半導体不足は当面解消されないどころか、これまで以上に深刻化するようです。
もう1つ、最近の話題だと、毎年11月の第4金曜日に行われる「ブラックフライデー」にまつわるニュースがありました。ブラックフライデーとは小売店などで一年に一度の大安売りを実施する日のことですが、物不足の影響から、アメリカではブラックフライデーを実施しない店舗が多く、あちこちで不満の声があがったのだとか。
売る物がなくなるのは小売店にとっては一番のロスで、機会損失と言わざるを得ません。お店側にしたら、ブラックフライデーを実施するかわりに12月以降に商品がなくなってしまうリスクは絶対に避けたかったのでしょう。だから不満の声があるのを理解したうえで、値段を下げずに頑張ったのだと思います。
これまでの当たり前が大きく崩れ始めている!?
災害と新型コロナウイルスでは原因は大きく違いますが、いずれにしても、これまでの当たり前が大きく崩れてきていることは、真剣に考えなくてはいけない問題です。
つまり、サプライチェーンによって、注文すれば当たり前のように物が入ってくるという前提でこれまでのビジネスは回っていましたが、今後は何かが入ってこないかもしれないし、それでビジネスができなくなるかもしれないわけです。そういうところまで考えないといけない、結構面倒な時代がやってきた・・・そんなふうに備えておく必要がありそうです。
最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「ジェネリック医薬品」でした。ちなみに、ブラックフライデーのブラックとは、この日にたくさんの物が売れることから、「それまで赤字でも黒字に転ずる」という意味でブラックなんだそうです。以上、小ネタでした。
構成:志村 江