「開業してみたい!」と意気込んでも、次の瞬間にはデメリットばかりが頭に浮かび、尻込みしてしまう人は多いかもしれません。
たしかに、開業にはたくさんのデメリットがあります。
本記事では、開業のメリット・デメリット、個人事業主と法人設立の違いを解説します。
開業に関する正しい知識をつけ、自分に合った働き方を考えてみましょう。
開業するデメリット
開業するというのは、夢のある話です。しかし、開業すると聞くだけでデメリットばかりが思い浮かぶ人は多いでしょう。開業には、たしかにさまざまなデメリットがあります。しかし、デメリットを恐れすぎる必要はありません。
まずは、開業するデメリットを具体的に3つ紹介します。デメリットを正しく把握することは、不安を克服することにつながるでしょう。
・全責任を負わなければならない
・負債や借金のリスクがある
・会社員よりも納税額が大きい
全責任を負わなければならない
開業するデメリットの1つ目は「全責任を負わなければならない」ことです。
会社員だった頃は、自分がミスをしても、上司や役職者が責任を負ってくれていました。上司や役職者が責任を負えるのも、最終的には全責任を経営者(社長)が負っていたからです。
しかし開業するということは、経営者になるということです。
開業すれば、自分自身が全責任を負う立場になります。
負債や借金のリスクがある
開業するデメリットの2つ目は「負債や借金のリスクがある」ということです。
会社員のうちは、ミスをして多少の損害を出しても、実損害が自分にのしかかることは中々ありません。備品を誤って壊しても、会社が経費で直してくれることがほとんどです。取引先を失って損害が出ても、自身に任された店舗やプロジェクトがダメになっても、会社の損害として処理されます。よほどのことがなければ、会社から従業員に『物理的な金銭の請求』がされることはありません。
しかし、開業して経営者になれば、すべての損害が自分に降りかかります。赤字が続けば負債や借金のリスクも大きくなり、取引先から損害賠償を請求される可能性もゼロではありません。
会社員よりも納税額が大きい
開業するデメリットの3つ目は「会社員よりも納税額が大きい」ことです。
会社員だった頃は、税金や年金の一部を会社が負担してくれていました。しかし開業し事業主になると、税金や年金はすべて自己負担になります。特に個人事業主は(一定の売り上げを超えるまでは)法人よりも税率が高く、会社員時代とは比べ物にならない税金を納めることになります。
開業するメリット
デメリットを知るだけでは、開業することに対する不安すべてを克服することはできません。開業にはデメリットを伴う反面、やりたい事業やビジネスがある方にとっては、メリットもたくさんあります。両者を天秤にかけ、正しい判断ができるようになります。
ここからは、開業することの具体的なメリットを3つ見ていきましょう。
・自分の意思でビジネスを進められる
・会社員ではできない経験を積める
・成功したときのリターンが大きい
自分の意思でビジネスを進められる
開業するメリットの1つ目は「自分の意思でビジネスを進められる」ことです。
会社員だった頃は、よほどの立場でもない限り、何をするにも上司や役職者の承認が必要でした。承認を出す上司や役職者も、さらに上の立場にいる人間の意向に沿って、承認・非承認を決めています。『さらに上の立場にいる人間』とは、つまり経営者のことです。
会社のビジネスは経営者のビジネスであり、自分のビジネスではありません。しかし、自分で開業したビジネスは自分のものです。どんな決定も、自分の意思で行うことができます。
会社員ではできない経験を積める
開業するメリットの2つ目は「会社員ではできない経験を積める」ことです。
会社員と事業主では、立場が違う故に視座も高くなります。責任も大きくなり、一社員としての考え方ではなく『資金やリソース、組織づくり』などこれまで考えてこなかったことを考慮するようになります。
最終決定を常に自分で下したり、営業からバックオフィスまで全体を見たりするなど、会社員ではできない経験を積むことにより、経営スキルが身に付いていくでしょう。
成功したときのリターンが大きい
開業するメリットの3つ目は「成功したときのリターンが大きい」ことです。
会社員の場合、大きな成果を出して評価されても給与に即反映されることは少ないでしょう。継続的に成果を出し、評価を蓄積していくことで給与は少しずつ上がっていきます。
しかし開業すれば、成果がそのままお金として返ってきます。同じ経費でより高い売り上げを作り出すことができれば、そのまま利益が上がり、取引先からの評価は全て自分に対するものとして享受することができます。
開業のデメリットを軽減する方法
開業のデメリットを軽減し、リスクを減らす方法があります。デメリットを軽減する具体的な方法を、2つお伝えします。
助成金や補助金を利用する
開業のデメリットを軽減する方法に、助成金や補助金を利用する方法があります。
助成金や補助金は『国や地域などが事業主を支援するための制度』です。融資やローンと異なり、助成金や補助金は返済する必要がありません。ビジネスに必要なお金を借りるのではなく『もらえる』のが、助成金や補助金です。返済義務がないため、ビジネスが上手くいかずに閉業したとしても、負債を抱えることはありません。
開業の「負債や借金のリスクがある」というデメリットを、大きく軽減できるのです。
フランチャイズを活用する
フランチャイズを活用することも、開業のデメリットを軽減する方法といえます。
フランチャイズは、チェーン店のブランド力やノウハウを借りて事業を立ち上げられるビジネススタイルです。加盟する本部にもよりますが、開業資金の一部を負担してもらえたり、研修やマニュアル、スーパーバイザーと呼ばれるフランチャイズ本部社員からのアドバイスなどによる経営サポートが受けられたりするのが主なメリットです。
「全責任を負わなければならない」というデメリットは変わらないものの、フランチャイズ本部からのサポートを受けて適切に対応することで、責任そのものを軽くできることもあります。
個人事業主としての開業と、法人設立の違い
開業する選択肢として『個人事業主としての開業』と『法人設立』の2つが挙げられます。
両者の違いとメリット・デメリットを比較するので、自分に合っているのはどちらか考えてみてください。
個人事業主のメリット・デメリット
個人事業主のメリットは、小回りが利くことや(開業当初の)納税額が少ないことです。
個人事業主になるのは簡単です。税務署にいき、開業届を出すだけで、すぐに個人事業主になれます。手続きには1時間もかかりません。納税額が少ないのも個人事業主のメリットで、個人事業主の税率は所得の5~40%程度になります。所得が低いほど税率も低く、開業当初はありがたいでしょう。
個人事業主のデメリットは、事業が拡大し、所得が大きくなるほど膨らんでいきます。所得が大きくなることでデメリットが大きくなる理由は「税率」と「信用力」です。
個人事業主の税率は、所得が上がるほど大きくなり、最終的には法人の税率を超えます。一般的に「所得1,000万円を超えたら法人設立すべき」といわれるのは、税率が理由です。
また、個人事業主には手軽になれるため、法人よりも信用力が劣ります。同じビジネスをしていても「法人とは契約するが、個人事業主とは契約しない」というケースも、珍しくありません。
法人設立のメリット・デメリット
法人設立のメリットは『信用力があること』と『所得が多い場合、納税率が個人事業主に比べて低くなること』です。
法人は『個人とは切り離された、事業をするための主体』であるとされるため、事業のための組織であるという認識は、そのまま信用につながるでしょう。個人では任せてもらえない大きな規模の仕事ができたり、大手企業の案件を請け負える可能性が高くなったりします。また、法人税の税率は、所得の15~25%です。一方、前述のとおり個人事業主の税率は5~40%です。所得が大きくなるようであれば、法人化した方が税率は低くなるため、法人設立をおすすめします。
法人設立のデメリットは、手間と初期費用がかかることです。
法人は所定の手続きに沿って設立しなければならず、設立までに手間と時間がかかります。慣れていなければ、2週間~1ヵ月程度かかるといわれています。1時間以内で開業できる個人事業主と比べると、ずいぶん時間がかかります。また株式会社の場合はすべて手続きを自分で行っても、242,000円(※)の法定費用が必要です。税理士などの専門家に手続きを依頼すれば、費用はさらに膨らみます。
※法定費用…法人設立にかかわる実費のこと
(定款の認証手数料:50,000円/定款の謄本手数料:2,000円/設立にかかる登録免許税:150,000円/収入印紙代:40,000円 ※電子定款の場合、収入印紙代は不要)
開業する前に、デメリットとメリットを比較しよう
「開業して、自分の意思でビジネスを進めてみたい」と思う人は多いでしょう。『個の時代』が叫ばれる現代社会では、開業を目指す人は増えつつあります。
しかし開業と聞くと、どうしてもデメリットに目が向きがちです。開業することのデメリットは、「失敗したらどうしよう」「負債や責任を負えるだろうか」など、さまざまな不安をもたらします。
ところがデメリットばかりに目を向け、リスクを恐れて行動できないことにも、計り知れないデメリットがあります。本当は会社員よりも経営者・事業主として働く事が向いている人、素晴らしいビジネスプランを持っている人がデメリットを恐れて開業できないのは、個人にとっても社会にとっても損失です。
開業するデメリットを最小限に抑える方法に、フランチャイズを活用する方法があります。資金の負担を減らし、集客や経営のサポートを受けながら開業できるフランチャイズであれば、開業のデメリットを最小限に抑えられます。
フランチャイズでの開業を考えるのなら、独立開業を支援するデータベース『アントレ』をお役立てください。全国規模のフランチャイズデータベースからさまざまな業種や業界、地域ごとにフランチャイズ案件を調べることができます。
「どんなビジネスを、どのようなサポートを受けながら始められるのか」などを具体的に見ていくことで、必要以上にデメリットを恐れなくてもいいのだとわかります。
【アントレ】独立、開業、フランチャイズ募集の情報サイト
<文/赤塚元基>