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フリーランス必見! 意外と知られていない会社設立のメリット・デメリットを税理士が解説

フリーランス必見! 意外と知られていない会社設立のメリット・デメリットを税理士が解説

前回まで複数回にわたって、コロナショックを乗り越えるための国からの支援策や助成金、補助金についてお届けしました。

https://entrenet.jp/magazine/24188/

給付金や助成金の中で対象が「個人事業主」か「法人」かの事業形態によって、支給対象金額が異なるものが多くありました。

例えば、「持続化給付金」では、給付金額の上限額が法人:200万円、個人事業主:100万円でした。

「家賃支援給付金」でも、給付金額の上限額が法人:600万円、個人事業主:300万円でした。

何となく「法人」の方が何かとお得だなと思った方もいたことでしょう。

そこで今回は、あまり一般的に知られていない法人化をするメリットをお伝えします。

そもそも法人とは何か

法人と聞いて皆さんは何を思い浮かべますか。
※法人にはいくつかの種類があるのですが、説明の便宜上、「法人=株式会社」の意味で使っていきます。

立派なオフィス、偉そうな社長、株主の存在、大きな会社のイメージ等々あるかと思います。

少し大袈裟かもしれませんが、法人というのは人類が生み出した最高傑作の発明のひとつかもしれません。

なぜなら、法人は身体がなく物理的に見ることができない存在(まるで透明人間のよう)であるのにも関わらず、法人は法人名義で銀行口座を開設することができます。

さらには法人名義で、車を買ったり、オフィスを借りたり、人を雇ったり、不動産を所有することもできます。

そして法人には結婚と似たような制度もあります。
結婚のように法人と他の法人が「合併」することや、離婚のように会社を「分割」することもできるのです。
最近は日本でもさかんになってきたM&Aですが、まさに法人と法人のお見合いの如く、婚活中の法人も数多くあります。

例えば、「山田太朗株式会社」の社長である山田太朗さんが社長を退任して、新しく山田二郎になったらその会社は消滅してしまうのでしょうか。

はたまた、従業員を全員解雇したり、本社を移転したら「山田太朗株式会社」は消滅してしまうのでしょうか。社長の山田太朗さんが亡くなってしまった場合もその会社は消滅してしまうのでしょうか。

実はそれでも「山田太朗株式会社」は消滅しません。なぜなら山田太朗株式会社は、山田太朗さんとは別人格だからです。

そのため、生身の人間の平均寿命を越えた200年以上続く会社も数多くあります。

会社にも死に近いものがあり、裁判所の命令等によって会社を解散することにより、実質的に消滅することはあります。

会社とは何とも不思議な存在なのです。

1万円札の紙幣に価値があるのを皆疑わず信じて取引しているのと同じように、皆その目に見えない「法人」の存在を信じて取引しているのです。

それは「法律」がその存在をあたかも「人」と同じように扱うことを認めている(難しい言葉を使うと「法的擬制」といいます)からです。

法人の誕生により、永続的な事業経営が可能になり、また社員が互いに協力関係を築くことが可能になりました。

社長に一度も会ったことがない社員がいても、他の部署で知らない社員同士でも会社の利益のために協力することができるのです。

法人を選ぶメリット(基本編)

起業をするには、下記の2択の形態を選ぶことができると以前の記事でお届け致しました。

①法人(株式会社など)を設立する
②個人事業主として活動する

https://entrenet.jp/magazine/16326/

起業したての方は何となく「個人事業主」を選択する方も多いことでしょう。

それは税務署に「開業届出」を提出すれば基本的にすぐに個人事業主として名乗ることができる手軽さが理由でしょう。

一方で法人設立は心理的にハードルが少し高いように思えますが、そんなことはありません。

初期に登記等の費用がかかりますが、複雑な書類作成さえ専門家に頼んでしまえばそう難しいことはありません。

社長1人だけでも、資本金1円でも株式会社は設立できます。期間も2週間ほどあれば設立可能なのです。

実際、会社設立の手続きをされた方は、意外と簡単だったと口を揃えます。

今回の記事でつかんで頂きたいのは、「あなたが法人化をする目的」が何かということです。

法人化をする目的がはっきりすれば、どのような形態の会社を作るか、いつ法人化するか等々迷うことが少なくなると思います。

そこで、そもそも法人化のメリットがわからないと、法人化を検討することすらないと思います。

そこで法人化のメリットについて①お金編、②信用編、③手間編の3つの視点に分けてポイントを絞って説明します。

①お金編

・節税対策ができる!税率の差により納税額が減額など!

私のクライアントで多い相談のひとつが、利益がけっこうでてきたので法人化を検討しているという相談です。

この背景にはある一定の利益がでると、法人化した方が「税金が安くなる」と何となく思っている方が多いからだと思います。

それは、個人事業の方は所得が高くなるほど高い所得税率(5%~45%)が適用される超過累進課税であるため、ある一定の所得(≒利益)を越えると、法人で適用される税率の方が低くなるから法人化した方がお得という理屈だと思います。

※超過累進課税については以前の記事でもお届けしました。詳細を知りたい方はこちら
仕組みを知っていると所得税がお得になる? 知らないと損する税金の秘密を税理士が解説!

これはその通りなのですが、それ以外にも法人化により個人事業の時には使えなかった制度が使えることによるメリットや、色々と組み立てができるのがすごいです。

例えば、消費税の免税期間を最大2年間伸ばしたり、役員報酬として会社から報酬をとることにより会社の税金負担を減らすことができます。

会社の税金負担を減らすことに加えて、個人では給与所得控除の活用により所得税の負担を減らすこともできます。

・有限責任にできる

個人事業では、商品の仕入れ代金の未払いや金融機関などからの借り入れ、税金などを滞納している分は個人の負債となってしまいます。

一方、法人化して株式会社にした場合には、個人保証による借り入れを除くと出資金の範囲内での責任になります。

これはどういうことかというと、商品の未払い代金等が会社では払えない状況となっても、社長個人が基本的に支払う必要がないということです。

少しリアルなお話をすると、意外と多いと感じるのが税金の滞納による差し押さえです。
例えば飲食店を会社でやっている方がいて、赤字でも消費税の納税をしないといけない場合が多くあります。

そうすると、消費税の納税資金が不足して滞納し続けた結果、会社の通帳の預金残高が差し押さえられることがあります。

しかし、個人と法人の債務が分断している結果、再起することが可能な場合もあります。

・出資を受けることができる

会社を急成長させたい方、上場を目指している方、複数人で共同で事業を始める方はいきなり株式会社で事業をスタートする方も多いと思います。

出資をうけるメリットは、融資のように返済不要で利息の支払いがないことがあげられます。

株式会社では、法律により出資を受けられやすいようなルールが定められています。

よく出資は返還不要で良いが、会社の支配権を持っていかれそうというお話を聞きます。

確かに、株主の有する議決権の割合によっては、会社にとって大事な事をオーナー社長抜きでも決議できる場合があります。

しかし、無議決権の株式を発行するなど、そうならないような設計をすることも可能です。

さらに、出資者にとってメリットなのは、一定のルールのもと会社は配当を出すこともできます。

個人で出資を受けたい場合は「匿名組合契約」というものを活用することも考えられますが基本的には難易度が高いです。
また、贈与税の対象となってしまう可能性もあります。

②信用編

・対外的な信用を得やすい


あなたは取引の相手先が、個人事業主の場合と株式会社の場合、どちらを信用するでしょうか?

もちろん一概には言えないと思いますが、多くの方は株式会社の方を信用するというでしょう。

株式会社の方が設立に手間がかかっており、また商号や役員の氏名・住所、本店所在地まで登記され基本的に法務局に行くことにより誰でも閲覧可能です。

実際に、株式会社等の法人でないと取引しないという大企業や、法人名義の口座でないと入金できないと言われ、慌てて株式会社を作ったというクライアントもいます。

株式会社でないとうちの子は就職させないぞ、という大学生の娘さんをもつ父の話もききます。

言い換えると、株式会社を設立することにより先人のつくりあげてきた「株式会社」という一定の信用を借りることができます。

・社長のモチベーションアップ

株式会社を設立することにより、「代表取締役」と名乗ることができ、名刺にも記載することができます。

初めて起業する方は、その肩書きによって会社の代表として自覚が出来たという方もいます。

これも目に見えない力ですが、法人のもつ不思議な魔力の一つでしょう。

また、設立の登記費用等で30万円位はかかりますので、相応の覚悟がないと簡単に法人設立を踏み出せない方も多いと思います。

モチベーションがあがるというのはそういった覚悟の現れなのかもしれません。

そして法人化をすると、会社の大事なことは基本的に株主総会決議で決めることになります。

例えば、オーナー社長一人の会社であっても、自分の給料(役員報酬・賞与)は手続き上、基本的に株主総会の決議を通じて決めます。

株主総会の開催場所に制限はありませんので、ひとりでお風呂の中でも開催することも可能となります。

また、将来、株式会社は誰かの手に渡ることもあり得ますから、大切なわが子のように扱う気持ちが芽生えることもあるでしょう。

③手間編

・ランニングコスト

法人を設立すると、維持費がかかるというお話を聞いた事がある方もいるでしょう。

これは法人を設立するうえでデメリットとされるうちの一つでしょう。

法人住民税均等割という地方に払う税金があり、これの最低税額が年間7万円とされているからです。

一月当たりにならすと5,833円ですので、そこまで大きな負担ではないと思いますが、それを越える法人化のメリットがあるか考える人も多くいます。

そこは法人化することにより活用できるさまざまな税制を利用することで、このデメリットはカバーする程の税務上の恩恵を受けることも可能な場合があります。

例えば前述のような、消費税の免税期間を伸ばせたり、社宅家賃制度、役員退職金、欠損金の繰り越し等の活用です。

・経理や社会保険事務の負担

法人設立となると申告書の作成が複雑になりまた税務署へ提出する書類も増えます。その結果、法人の税理士への関与度合いもおよそ9割程になります。

また社会保険の加入など、個人事業にはなかったイベントが発生します。
そのため社会保険労務士に書類の作成代行をお願いすることもあることでしょう。

そうすると税理士や社会保険労務士に払う報酬というコストが発生します。

これらは、法人化のデメリットの一つでしょう。

後述の応用編では、これらのデメリットと思われることがメリットになる場合にあるというお話をします。

文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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