将来的に法人設立を考えている方や、今まさに法人化の準備をしている方、必見! 初年度から知っておくべき税金について、プライムファイナンシャルパートナーズ会計事務所の菅 彰裕さんにお話を伺う連載の3回目。菅さんは世界4大国際会計事務所のメンバーファームの1つであるPwC税理士法人を経て独立開業された税理士さんです。非上場企業から上場企業まで、幅広いクライアントの業務を担っている菅さんだからこそ知りうる税金の話をたっぷりお伝えします!
前回は、税金を追加徴収される可能性もある、役員給与・外注費に関する注意点についてお伝えしました。今回は、経費になる領収書・ならない領収書についてご紹介します。
経費になる領収書
2人以上でカフェ等飲食店に入らなければ経費にならないのではないか、と考えがちですが、仕事の目的で利用したのであれば人数は関係ありません。ただし、何をしていたかを領収書に書いておくようにしましょう。
役員や従業員が食事の金額の半分以上を負担し、かつ (食事の価額)-(役員や従業員が負担している金額)=1か月当たり3,500円(税抜き)以下であれば、給与として課税されません。
例えば、食事券7,000円を利用した場合、会社負担が月額3500円以下であれば福利厚生として認められます。
金額の大小ではなく、話し合った内容で経費になるかどうかが決まります。議事録等があった場合は会議費として経費になり、議事録等がなければ交際費として経費となります。
パーティーを行った場所ではなく、誰を招待したかがポイントとなります。この場合、参加者リストを作っておくようにしましょう。
接待であれば、交際費として経費になります。なお、誰と行ったかを明確にしておく必要があるので念頭に置いてくださいね。
領収書が貰えない場合は、出金伝票にきちんと記載しておきましょう。
支払明細書を残しておくようにしましょう。詳細が分かるようにしておかないと、決算間際は特に疑われるので注意が必要です。
基本的に家賃の50%以上を従業員または役員が負担すれば経費として認められます。(厳密には従業員については50%という基準はないため、個別の判断によりもっと少ない割合となることもあります。)
経費にならない領収書
食事はとるものであるため、経費ではなくその方の給与となります。
法人である場合は、そのスーツ代は給与として課税されます。
<<領収書を自分で手書きするのもNG>>
時々、店頭で「宛名は記入しますか?」と聞かれるケースもあります。宛名を伝えるのが面倒だったり、急いでいたりしてついつい「空欄で良いです」と言ってしまいがちの人は気を付けましょう。もし領収書の宛名欄を空欄にしてしまったら、後から自分自身で記入するのではなく、そのまま空欄にしておくほうがベターです。日付が空欄となっている場合も同様で、そのまま書き込まないようにしましょう。
何故なら、自分で記入してしまうと人から領収書を貰って経費にしたんじゃないか? と疑われる可能性もあるからです。空欄はそのままにして、領収書の裏に「○○様お食事」「○○さん打ち合わせ」「○○さん手土産代として」といった詳細を記入したほうが信頼性を担保できます。
領収書は”絶対要件”ではない
領収書がなければ経費として認められないのではないか? と思いがちですが、大切なのは「何にいくら使ったかを正確に説明できること」です。領収書が無くとも、出金伝票をきちんと書いておけば問題ありません。
“領収書は何にいくら使ったのかという説明に、客観性を持たせるためのもの”として捉えるのが正解です。
逆に、領収書があってもきちんと説明ができなければ経費と認められないケースもあります。
例:Suicaに毎月3万円をチャージし、その領収書を交通費として計上
毎日往復720円の交通費が確実に発生するのであれば、720円×30日=21,600円は経費として認められますが、残りの8,400円はどうでしょうか?
仮にその8,400円を交通費に充てていたとしても、それが説明できなければ「コンビニで私的なものの購入費に充てていたのではないか?」と疑われてしまいます。
チャージ自体が良い・悪いという問題ではなく、そのお金の使いみちをきちんと説明できるようにしておくことが重要です。
領収書の保存期間は個人事業主と法人で異なるので要注意!
領収書の保存期間は、法人は7~10年(その事業年度の開始時期等により変動)、個人事業主は7年と定められています。特に、個人事業主から法人化した方は7年経過後に破棄をしてしまいがちなので気を付けましょう。
<<領収書保存の方法は?>>
7年〜10年保管しておかなければならない領収書。一体どの方法で保管するのが良いのでしょうか? 年度・月毎に封筒に入れておくだけで良いのか、ノートに貼ったほうがいいのか、スキャンしてパソコン上に保存しておいた方が良いのか…。
実は、保管方法は特に定められていません。領収書の提出を求められたときに、さっと出せるようにしておけば問題はないのです。
後々見返しやすい保管方法は日付順に並べてノートに貼る方法ですが、かなりの手間がかかります。そこに時間を割くのではなく、もっと売り上げを伸ばすことに充てるのが望ましいでしょう。
例えば、領収書を簡単にスキャン保存できる機能があるクラウド会計ソフトを活用すれば、そういった工数のかかる業務を減らして生産性を上げることも可能です。
これらのことを踏まえて、自分に合った領収書の保存方法を選択しましょう。
次回も法人設立初年度から知っておくべき税金について、引き続き菅さんにお話を伺います!

プライムファイナンシャルパートナーズ株式会社
税理士 菅 彰裕
業務内容は、オーナー企業の事業承継対策の検討、組織再編によるグループ会社の整理、事業承継のための株価対策、国内および国外のIPO支援、国内買収案件における税務デューデリジェンス、非居住者の国内投資にかかる税務コンサルティング、その他執筆サポートなど。
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