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英語も独立も「漠然と頑張る」では失敗する?学習コンサル・小野美希さんに理由を聞いた

英語も独立も「漠然と頑張る」では失敗する?学習コンサル・小野美希さんに理由を聞いた

「英語を日本語のように、ペラペラと話せたらいいのに……」。

例えば、英会話の学習でそんな期待をして教室を受講しても、気づいたら会費を払っているだけで全然身に付いていない……という状況に陥っている人は、少なくないのではないでしょうか。

何かに挑戦するなら、ただ「漠然と頑張る」だけでは遠回りしてしまいます。可能な限り目的を言語化し、明確化することが必要です。

そう語るのは、学習コンサルタントの小野美希さん。英会話に特化した学習における、様々な悩みや問題点を抱えた人の「サポート」を生業としています。

今回はそんな小野さんに「漠然と頑張る」だけでは英会話習得の効率が悪くなってしまう理由と、独立・起業との意外な共通点について語っていただきました。

<プロフィール>
小野美希さん
English Platform代表/学習コンサルタント

学生時代から英語が身近にある環境で過ごす。自身の海外滞在経験から、本腰を入れて大手英会話スクールに通い始め、そのまま就職。

スクールに通う受講生の個別学習サポートなどを行う。以後、アドバイジングにおけるよりアカデミックな知識とスキルを構築するため、学習アドバイザー資格を取得する。

2022年、フリーランスの学習コンサルタントとして独立。English Platformを設立する。

英語は、日本語と同じようには習得できない。だからこそ英語学習には「選択と集中」が必要

――まずは小野さんの現在の事業について、教えてください。

小野さん
「English Platform」という英語の学習プラットフォームを展開し、学習コンサルタントとして活動しています。

主に英会話に特化した学習で、伸び悩みなどの課題を抱えた方のサポートをしています。

――英語の教育事業、と聞くと「英語を教える人」の印象が強いかと思います。小野さんはそうではなく、英語の学習を「サポート」する事業を行っているということですか?

小野さん
はい。おっしゃる通り、私自身が生徒さんに英語を教えるのではありません。私が行っていることは、学習者の目的に合わせて効率的な学習方法を提案することです。

「学んでから使う」のではなく「使いながら学ぶ」体験学習(experiential learning)という言語習得のアプローチを基に、言葉を学ぶ段階で「どのような言葉が必要とされているのか」に着目しました。

言語の上達を会話の目的や状況と密接に結びつけ、会話による相互交流を軸に取り組める効果的な学習ステップを、カウンセリングを通してサポートするというものです。

例えば、日常英会話の習得が目標なら「どのような場面でどんな内容の話をしたいのか」を具体化し、個々のレベルに合わせて学習方法や取り組み方をカスタマイズします。

もちろん、必要であればネイティブの先生に授業をお願いするなど、目的に合わせて効率的な学習方法を提案しています。

――なぜ学習コンサルタントとして、独立を考えたのでしょうか?

小野さん
前職は大手英会話スクールで、生徒さんの学習をカウンセリングする仕事を18年間行っていました。

私自身、学生時代にファームステイや留学を経験していたこと、また親戚がスイスに住んでいることもあり、英語は比較的身近な存在でした。

もっと上手に英語を話せるようになりたい、と思いつつも上手くいかず、前職の英会話スクールに生徒として通い始め、学習カウンセラーという仕事を知って、後に就職することになったんです。

日々、レッスンを行うネイティブ講師と一緒に仕事をする中で「私は外国の方に日本語を教えられないな」と気付かされました。語学習得の別の面を体験した瞬間だったと思います。

独立を考えるようになったのは、コロナ禍で有名大学の講義がオンラインで一般公開され、言語学をはじめとする講義を聴講したことがきっかけでした。

課題に取り組む中で、「会話」という言語習得の仕方をもっと取り入れて、英会話学習を楽しめるサポートができればと思ったんです。

――「外国の方に日本語を教えられない」というと?

小野さん
そもそもの話なんですが、母語(第一言語)と第二言語では、理解の仕方が根本的に異なります。

詳しい話は割愛しますが、第二言語を習得する場合、人は既に習得している第一言語と照らし合わせて学ぼうとしてしまうんです。

※第一言語を習得する前の赤ん坊は音や人の表情、シチュエーションと習慣を結びつけて徐々に言語を理解していく。第二言語の場合は、意図的にこうした流れを作らなければならない。

小野さん
だからこそ、「日本語を母語として生活してきてしまった私」が日本の習慣や文化の中で生活していない方に、日本語を教えるのは相当難しいんだろうなと気づいたんです。

――逆に言えば、私たち日本語を母語とする人が、英語をネイティブに話す先生から学ぼうとすることも、難しいのではないでしょうか?

小野さん
おっしゃる通りです。もちろん「ネイティブの先生に学ぶのは効率が悪い」といった話をしているのではありません。

「英会話習得に関わる文法や語彙が分かっていればいい」という範囲を超えた、構造上の問題をある程度理解した上で、私たち学ぶ側も勉強していかなければなりません。

こどもが成長していつの間にか「日本語を話せるようになっていた」のと同じ流れで、「大人が英語を話せるようになる」には、読み書きが中心の学習方法では困難を極めるのです。

では、どうしたら第二言語を習得できるようになるのか。それが先ほど少し触れた、体験学習です。

いきなり英語を日本語と同等に使えることを目標にするのではなく、自分の目先の用途に合わせて英語を勉強する、という考え方が必要不可欠なんです。

――つまり、英語学習には「選択と集中」が必要だと。そのための学習プランを考えることが、小野さんのお仕事なんですね。

小野さん
はい。実際、大学の講義での学びを経て、担当していた生徒さんにこの体験学習の方法を基に個別カリキュラムを組み立て共有し、目的をより明確にしました。その結果、モチベーションが維持され、飛躍的に成績が向上しました。

学習コンサルタントとして独立したのは、こうしたカスタマイズされた学習ステップで取り組む楽しさをもっと広めて、たくさんの人に英語学習をより効率的に行ってもらいたいからなんです。

英語も独立も「漠然と頑張る」では失敗する?目的を言語化することの大切さ

――英語学習における目的とは、具体的にどのように設定するのでしょうか?

小野さん
生徒さんの中にある「こうなりたい」「こんなふうに英語を使いたい」という願いを、可能な限り明確に言語化するように努めています。

「英語」と一口に言っても、様々な活用シーンが考えられます。

例えば「洋楽を歌詞カードがなくても理解できるようになりたい」「映画を字幕なしで見られるようになりたい」といった方であれば、英語を聞く力は必要そうですが、もしかすると英会話(話す力)は必要ないかもしれません。

「洋書をスラスラと読めるようになりたい」のであれば、そのための語彙力や文法の理解は不可欠ですが、逆に話す力と聞く力の優先度は高くありません。

あるいは、「半年先に留学する予定がある」「海外の学会で発表がある」といった具体的なシチュエーションがある場合は、英語で授業を聞いて内容が理解できたり、自分の研究をプレゼンしたりするための英語力が必要です。

学校生活や学会でよく使われるフレーズ、あるいはその業界の専門用語を既に知っていたとしても、話す場面で使用頻度の高い語彙量が不足していると、流暢な会話はできないかもしれません。

もちろん読む、書く、話す、聞くを全ての状況で対応できるレベル(母語と同じレベル)で習得できるに越したことはないのですが……そうなるためには、どうしても時間と労力がとてもかかってしまいます。

特に大人で英語を学ばれる方だと、時間も限られています。なので、「まず何ができるようになりたいのか」を明確にして、段階的にレベルを引き上げた方が結果的に効果・効率があがり、上達することに繋がると、担当した多くの学習者の方々から学びました。

――「英語も日本語レベルで使えたらいいのに……」とつい考えてしまいがちですが、ただ「漠然と頑張る」では、かえって遠回りになってしまうんですね。

小野さん
その通りです。こうした言語に限らず、自分にとって未知の領域というのは、どうしても知識がない分「漠然と頑張る」状態になってしまいます。

例えば、ダイエットもそうかもしれません。私はダイエットは専門外ですが、体重を落とすことが目的なのか、それとも筋肉質で綺麗な身体を作ることが目的なのかで、取るべき手段は変わってくると思います。

これはきっと、独立・起業にも同じことが言えるんじゃないでしょうか。

漠然と「独立したい」と思っていても、なんの事業で独立するのか、自分にとって何がモチベーションなのか、そのために何が必要なのか、といったところまで考え、頭を働かせて行動しないと上手くいかないと思います。

――小野さんが生徒さんに行っているように、独立もまた、目的を言語化した方がいいと。

小野さん
はい。英語学習でもよくあるのですが、「英会話教室に通っているけど、なかなか字幕なしで映画を見られるようにならない」といったケースをよく目にします。

でも、それは頑張り方が少し違うだけ。何が原因で上手くいっていないのかを、明確にして正しい方向に軌道修正し、そこから頑張ればいいんです。

私は、生徒さんの英語学習においてそういう役割を担えるよう、今後も学習コンサルタントとして事業を続けていけたらと思っています。

漠然と頑張らず、目的を言語化させる。独立を成功させるために必要なこと

――小野さんの今後の展望を聞かせてください。

小野さん
最初にお話しした通り、学習コンサルタントという仕事はあまり知られていないのが現状です。

英語学習における、生徒さんの目的に応じた「頑張り方」を提案するため、今後は学習コンサルタントの仕事の有用性や認知度を上げていければと思います。

「頑張り方」の方向性さえ定まっていれば、修練度も高くなります。1人でも多く、英語を楽しんで学んでいただけるように、これからも精進していこうと思います。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

小野さん
独立・起業をしたいけど「どこを向いてどのように頑張ればいいか分からない」人に向けたサービスは、実はいろいろあるようです。

アントレさんも積極的に説明会やセミナーを行っているようですし、東京都をはじめとする各自治体でも、起業をサポートする仕組みがあり、取り組みが行われています。

私も独立する前に、創業に必要な事務的な手続きの解説を受けたり、税理士さんや会計士さんにお話を聞きにいったりしたこともありました。それに、私と同じく教育業界ですでに起業された方のお話を伺ったこともあります。

ここまでお話しした通り、大切なのは何事も「漠然と頑張る」のではなく、正しい方向性を定めて言語化して、その後に行動すること。そのために、自分の考えを誰かに話したり、時に意見をもらったりすることも大切なのではないでしょうか。

身近に独立・起業を経験した人がいる場合は、その人に相談してもいいですし、もしいないのであれば、アントレさんや自治体の各種サービスに頼ってもいい。たくさんある選択肢を上手に使いながら、ぜひ自分らしい独立・起業をしてみてください。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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