2024年も早く2月を迎えました。
フリーランスの人にとって、毎年この時期になると向き合わなければならないのが、確定申告。
会社員の人は関係ない……と思いきや、実はいくつかの控除を受けるためには、会社員の人でも確定申告が必要なことをご存知でしょうか?
今回やさしいお金の専門家・横川楓先生に伺ったのは、そんな確定申告をしないと受けられない控除について。
控除を受けて少しでも支払う税金を抑えたい人は必見です!
横川楓さん
やさしいお金の専門家・金融教育活動家
一般社団法人日本金融教育推進協会 代表理事
明治大学法学部卒、その後同大学院へ進学。
24歳で経営学修士(MBA)を取得。
実家は会計事務所を経営。
同年代の友人たちのお金に対する意識と、将来の資産形成、所得格差、年金問題、増税など、これからの日本を担う世代に振りかかるさまざまなお金の問題との乖離に疑問を持ち、お金の知識の啓蒙活動を開始。
ファイナンシャルプランナー(AFP)や、SDGs検定、マネーマネジメント検定等の資格を取得し、2022年1月に一般社団法人日本金融教育推進協会を設立。
同法人の代表理事を務める。
横川さんのインタビュー記事はこちらから!
「収入=給与」に縛られない。経済評論家・横川楓さんに聞く、独立・起業に必要な2つの条件
庵(いおり)
イラストレーター
都内に住む27歳のフリーランスイラストレーター。
学生時代から絵を描くことが好きで、数年前から副業としてイラストレーターの仕事を受けるようになった。
近年は副業での収入が本業の稼ぎより多くなったことから、独立を決意する。
会社員でも確定申告必須? 一部の控除は、年末調整では適用されない!
2月といえば……もうすぐ確定申告の時期ですね。
そうだね!
確定申告といえば、1年間の収入から経費を差し引いて所得を決定し、所得税を算出する作業。
算出された所得税に対して、金額が足りなければ追加で納付し、逆に多く払いすぎていた場合は還付されるよ。
個人事業主や一部の会社員(副業している会社員など)が行うものなんだけど、一方で多くの会社員の人は年末調整という制度があり、主に会社が行って所得税を決定してくれるんだ。
そしてここで重要になってくるのは、控除という考え方。
控除……。よく聞く言葉ですけど、正直あまり意味が分かっていないんですよね。
控除とは「税金の負担を軽減するもの」と考えると分かりやすいよ。
ただし税金の負担を軽減するためには(控除を受けるには)申請が必要になってくる。
気をつけなければならないのは、多くの控除は確定申告でも年末調整でも、控除が適用されるんだけど、一部の控除は確定申告でしか適用されないものもあるということ。
つまり、会社員の人が会社に任せきりだと、せっかくの控除が受けられないということですか?
そうなんだ。
フリーランスも会社員も、可能なら支払う税金を少しでも減らしたいと思う人も多いはず。ここからは、確定申告でしか受けられない控除を中心に解説していくよ!
確定申告でしか受けられない控除を解説!
・医療費控除/セルフメディケーション税制
まずは医療費控除。
これは以前にもお話したけれど、医療費が10万円以上かかった場合、10万円を超えた分の金額が控除になる制度だよ。
ちなみに医療費控除には、病院でかかった費用だけじゃなくて、病院等へ向かった際の交通費や薬局で購入した薬代なども含めることができるんだ。
セルフメディケーション税制も、確定申告じゃないと控除を受けられないんでしょうか?
そうなんだ。
セルフメディケーション税制というのは、ある特定の条件(健康診断をしている、インフルエンザの予防注射を打っているなど)を満たした人が、国税庁が指定している薬を購入した場合、その支払い額が12000円を超えた分の金額を控除にできる(※)という制度のこと。
普段何気なく使っている頭痛薬や湿布薬、花粉症の薬など幅広く対象になっているから、薬をよく買う場合はぜひ検討してみてね。
(医療費控除との併用はできないのでその点は注意)
ちなみに医療費控除の10万円も、セルフメディケーション税制の12000円も、同一生計の家族がいる場合は、その家族の分も含めることができるよ。
医療費控除についてより詳しく知りたい人は、以前解説した記事を見返してくださいね。
3割負担だけじゃない! やさしいお金の専門家・横川楓さんに聞く、国民健康保険の仕組み
・寄付金控除
寄付金控除というと、ふるさと納税などで対象となる控除ですよね?
よく覚えているね。
でもふるさと納税には、ワンストップ特例制度というのもあって、一定の条件を満たした会社員の人(あるいは契約社員、アルバイト、パートも含む)なら、確定申告をしなくても控除を受けることができるよ。
ただし確定申告は必要なくても、ワンストップ特例制度を適用するには、翌年1月10日までに申請をしなければならないから、その点は注意しておこう。
年末調整では、ワンストップ特例制度の控除をしてくれないんですね……。
そうなんだ。ふるさと納税に関しては、会社員の人も基本的には全て自分で行わなければいけないと覚えておこう。
もし1月10日を過ぎてしまった場合でも、3月15日の確定申告に寄付金控除として申請すれば控除されるから安心してね。
ふるさと納税がおそらく最も有名な寄付金控除だけど、例えば災害の支援や日本赤十字など、寄付金控除が認められる団体への寄付でも控除を受けられるよ。
ただし、全ての団体に寄付金控除が認められるわけじゃないから、その点は注意してね。
寄付金控除についても過去に解説しているから、気になった人は見てみてくださいね。
今更聞けない「ふるさと納税」の基礎を、やさしいお金の専門家・横川楓さんが解説!
・雑損控除
雑損控除というのは初めて聞きました!
これはあまり頻繁に使うものでもないからね。
雑損控除とは主に災害や盗難などといった被害が出た場合に計上するもの。
最近では能登で大きな地震があったけど、そういった地震や津波といった自然災害に遭って損害を受けてしまった人が申請できる控除なんだ。
そしてこれは、フリーランスの人に限らず、会社員の人も申請できる。
ただしこの雑損控除も通常の年末調整では対応していないよ。
会社員の人も確定申告をして控除を受ける必要があるから、その点は注意が必要だね。
・住宅借入金等特別控除(初回)
住宅借入金というのは、つまりローンということでしょうか?
その通り。
住宅ローンで支払ったお金も控除の対象になるんだけど、実は年末調整でも控除を認めてくれるんだよね。
でもローンを組んだ最初の年は確定申告が必要になる。
翌年以降は基本的には年末調整で大丈夫なんだけど、最初の年だけイレギュラーなことを覚えておいてね。
(ちなみに2年目以降は専用の用紙が届くから、それを会社に提出すればOK。無くさないように注意!)
・青色申告特別控除
これは聞き馴染みがあります!
庵ちゃんのように、毎年確定申告をしている人からしたら、馴染みがある言葉だよね。
主に会社員の中でも、個人事業を立ち上げている、いわゆる副業会社員の人が対象となるのがこの青色申告特別控除。
青色申告特別控除では55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)の控除を受けられるよ。
……でも、こういう人たちは会社からの給与所得以外に、それなりに事業所得があると思うからそもそも確定申告は必須な人たちなんだけどね。
以上が、確定申告をしないと受けられない主な控除でした!
副業会社員は特に注意! 会社員でも確定申告した方がいい人とは
ありがとうございます! 他に何か知っておくことはありますか?
最初に話した通り、基本的に会社員の人は年末調整という形で会社がやってくれるんだけど、もし自分で確定申告する場合は、必要な各種控除証明書を会社に提出しなくても大丈夫だよ。
逆に年末調整の際に、控除証明書を出し忘れてしまった人は、後から自分で確定申告をすれば控除が認められるよ。
また控除を受けるだけの還付申告なら、5年分なら遡って申告できるから安心してね。
でも申告の義務があったり、払うべき税金があるのに、確定申告をしていない場合は要注意。
特にさっき挙げた通り、副業していて事業収入がある人や、複数の会社から給与収入を得ている人はその対象になりやすいよ。
もちろん、会社に勤めながら独立の準備をしている人(で、ある程度既に収入を得ている人)も確定申告は必須だから注意してね。
横川先生、今回もありがとうございました!