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“儲けたい”だけではダメ?起業におけるモチベーションの重要性を石山喜章さんに聞く

“儲けたい”だけではダメ?起業におけるモチベーションの重要性を石山喜章さんに聞く

独立・起業におけるモチベーションは、千差万別です。

人によって濃淡はあれど「今よりも収入を増やしたい」という思いは、誰しも持ち合わせているのではないでしょうか。

しかし、あまりにもお金稼ぎだけがモチベーションになってしまうと、危険信号かもしれません。そう語るのは、「潜在意識アカデミー」を主宰する石山喜章さん。

株式会社ライブドアを始め、いくつもの会社で事業を立ち上げてきた経験を経て、現在は「潜在意識アカデミー」を設立。多くの起業家やビジネスパーソンと接し、ご自身も経営者として活躍されています。

今回はそんな石山さんのキャリアとともに、独立・起業におけるモチベーションの重要性について、お話を伺いました。

<プロフィール>
石山喜章さん
ワンネス株式会社 代表取締役

株式会社ライブドア在籍時、600名のメディア事業本部のプロデューサーとして、様々な新規事業の立ち上げに携わる。多くの社員により良いマネジメントをするため、脳科学者や心理学者など、多数の研究者のもとを周り、潜在意識について学び始める。ライブドア事件後、2006年8月に同社を退職。

その後、知り合いの会社立ち上げの手伝いを経て、2012年にワンネス株式会社を創業。企業向けのコーチングや研修事業を展開した後、2018年に現在の「潜在意識アカデミー」として一般受講者向けの事業へとシフト。起業家や会社員、主婦など、老若男女様々な人が受講している。

人間は、自分の意識の99%を言語化できていない。「潜在意識」とは

――ワンネス株式会社を運営されている石山さん。まずは同社の事業内容について、簡単に教えてください。

石山さん
「潜在意識アカデミー」という、教育事業を展開しています。
<潜在意識アカデミーとは>
ワンネス株式会社が展開するビジネス・スクール。本稿における「潜在意識」とは、10歳くらいまでに形成される認知パターン(アイデンティティや無意識のコミュニケーションパターン)を指す。

「潜在意識アカデミー」では、そういった無意識のうちに刷り込まれている認知のパターンを言語化、可視化して改めて変革するための講座やグループワークなどを行っている。

石山さん
とても端的に言い換えるなら、就職活動などで行う「自己分析」をさらに深く、濃くしたイメージです。

会社員の方から経営者、主婦など、ビジネスパーソンだけでなく老若男女様々な人が受講されています。業界もIT、美容系、飲食業など多種多様ですね。


https://oneness.inc/oc/program/

――なぜ、この潜在意識に着目しようと思ったのでしょう?

石山さん
きっかけは、かつて株式会社ライブドアに在籍していた時のことでした。

当時の私は、600名以上の従業員を抱えるメディア事業本部のプロデューサーをしていました。その中でより良いマネジメントをするためにはどうしたらいいか、と考えて注目したのが潜在意識だったんです。

自分の顕在化されていない意識、すなわちどのようなアイデンティティや価値観を持っているのか。そこを明確にして再認識できれば、あらゆる物事を客観視しやすくなりますし、自分の周りで起こったトラブルにも動じず、常に落ち着いた心で向き合いやすくなるんじゃないかと。

そう思ってから、脳科学者や心理学者、思想家、宗教家、哲学者など様々な専門家の元を渡り歩き、研究するようになったんです。

――そうして学んだ潜在意識についてのノウハウを使って、起業されたんですね。

石山さん
はい。今の会社を立ち上げたのが、2012年のことでした。

当時はそれまで培ってきた、組織マネジメント経験や会社で事業を立ち上げた経験、そして潜在意識について学んだことを活かして、法人向けに研修やコーチングを行う事業を展開していました。

2015年に書籍を出版した頃から、潜在意識についてより深く学びたいという個人のお客様の声をいただくようになり、2018年ごろから今のように一般の受講者へ向けた教育事業の形になったんです。

“儲けたい”だけが起業の目的だと上手くいかない?

石山喜章さん

――自分の潜在意識を知る(自己分析をする)ということは、独立・起業をする上でも大切なことなのではないでしょうか。

石山さん
おっしゃる通りです。潜在意識について学びを深めると、自分という人間が何に喜びを感じ、何が好きで何が嫌いか、といったことはもちろん、判断の基準や無意識に行っているコミュニケーションに思考の癖まで、明確化できるようになります。

講座の受講を経て独立・起業をされた方や、受講の段階からすでに起業家の方も多くいらっしゃいますし、これまで約1万人の事業主の方とお話しさせていただき、私自身が事業主であることからも常に思っているのですが……。

上手くいってる事業者の方のほとんどが、ご自身のモチベーションについて理解されているなと感じます。要するに、「何のためにその事業を行うのか」を熱量を持って語れる人。個人的には、これが独立・起業には欠かせない要素だと思います。

逆に、動機が「儲かりそうだから」だけだと上手くいかない。もちろんお金はモチベーションの1つとしてならいいのですが、事業の目的が「お金だけ」になってしまうと、もしかすると危険信号かもしれません。

――なぜ「お金だけ」だと上手くいかないのでしょうか?

石山さん
精神論的な話になってしまいますが、事業って思っている以上に事業者の熱量が大切なんです。

分かりやすい具体例を挙げてみましょう。私がライブドアに勤めていた頃の話なのですが、当時はmp3プレーヤー(※)が台頭していました。

その時代を知っている方ならお分かりいただけると思いますが、CDを一枚ずつmp3にリッピング(抽出・変換)する作業ってとてもめんどくさいじゃないですか。

だから会社で、CDからmp3にデータをリッピングするサービスを立ち上げたんです。「これは絶対に儲かるだろう」と。

ですが、その事業は上手くいかなかったんです。

※音楽を聞くための小型オーディオ機器。CDなどの音楽データから音源を抽出し、機器に転送する。

――なぜでしょうか?

石山さん
サービス開始直後から多数のお問い合わせがきて、お客様からの反応は上々だったのですが、わずか1カ月半ほどでJASRACからクレームが入ったんです。

一応念入りに著作権法周りを調べて、違法性がないことを確認してからサービスを立ち上げたのですが……いかんせんこのようなサービスには前例がなかったものですから、いろいろと聞かれたんですよね。その他にもいろいろと事情が重なり、結局事業をクローズしてしまいました。

ライブドアからの業務委託でこのサービスの立ち上げを担当していた責任者としても、そこまでこの事業に対して強い思い入れはなかったようなんです。だからJASRACに突っ込まれた時も、食ってかかるような行動を取れなかったし、取らなかった。

今のは分かりやすい例として紹介しましたが、事業にはこういう、困難な場面が多かれ少なかれ、存在します。そんな危機的状況を迎えた時、責任者がどう動くのか。ただ「儲かるから」だけの動機では、やっぱりどうしても弱いんですよね。

起業をする前、あるいはした後も自分の中の動機やマインド、何を大切に行動する人間なのかを定期的に立ち返って考えてみる。そして自分のモチベーションに沿った事業が展開できる事業者は、結果的に上手くいくんじゃないかと思うんです。

売れるテクニックよりも、まずは自分のモチベーションを明確化する

――石山さんのこれからの目標を教えてください。

石山さん
「潜在意識アカデミー」で技術を学んだ方が、コーチとして今後活躍される場を増やしていきたいですね。

当社では「心の社会課題を解決する」をミッションに掲げています。先ほど潜在意識は、およそ10歳までの経験によって形成されるとお話ししました。

「生きづらさ」を感じて、現代社会の人間関係に悩んでいる方の中には、この時期までの家庭環境や経験が、今の苦しみにも多かれ少なかれ関与しているケースが多々存在します。

傷ついた過去そのものを変えることはできなくとも、今の自分の「生きづらさ」の原因を見つけて、どう向き合っていくかという選択はこれからでもできます。

そのために、もっとたくさんの人に潜在意識について学んでいただけるような環境づくりをしていきたいですね。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

石山さん
自分の気持ちと改めて向き合ってみる機会を、ぜひ作ってみてください。

せっかく独立・起業にチャレンジしようと思っているのに、それで結果が出なかったとしたら、そんなに残念なことってないじゃないですか。

もちろん、大きな失敗をしないようまずは小さく挑戦することから始めたり、売れる商品・サービス作りや顧客開拓といった、テクニックも大切ではあるのですが……。先ほどお話しした、自分なりの動機、モチベーションを持つことはそれ以上に大切だと私は思っています。

ぜひ改めて一度、自分のモチベーションについて考えてみてください。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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