いよいよ10月1日から「インボイス制度」がスタートします!
「インボイス制度」は「消費税」に関するルール変更がされるという話でした。
そして「インボイス制度」は全事業者に何らかの影響がある制度となっています!
・事務負担の増加(「請求書」や「領収書」の記載事項の変更、レジや会計ソフトの改良等)!
・納める消費税額が変わる(2割特例など新しい計算方法等)可能性あり!
このような影響が想定されます。
特に、免税事業者だった方は、適格請求書(インボイス)発行事業者として登録するか否かの判断が大変だったという方が多いと思います。
制度開始に伴い、適格請求書発行事業者として登録した方も、登録していない方も、準備しないといけないことがあります!
・売り手から原則「適格請求書」を発行してもらう必要がある
・売り手が「適格請求書発行事業者」であるか確認する必要がある
・新規取引先が免税事業者の場合、消費税相当額の支払いについて事前に確認しておく
・買い手へ「適格請求書」を発行する
・適格請求書を発行できるレジや請求書のソフトを導入する
・適格請求書発行事業者になるか登録を検討する必要がある ※特に免税事業者の方は、登録することで課税事業者になってしまうので注意が必要
準備することの一例を紹介しました。
まだ何も準備をしていなくて不安、という方も多いことでしょう。
インボイス制度は、正直とても複雑です!
そこで今回は、最低限これだけ知っていれば大丈夫!というポイントに絞って、インボイス制度の導入準備について解説していきます!
インボイス制度とは何か?
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022008-052.pdf
インボイス制度が導入される背景
インボイス制度が導入される理由は、下記のとおりとされています。
2.いわゆる「益税問題」の解消
それぞれ、詳しくみていきましょう!
1.複数税率下での消費税の適正な課税の確保のため
現行制度では、軽減税率が導入され、10%と8%の2つの税率が混在しています。
そのため、正しい消費税の納税額を算出するには、どの取引や商品に、どちらの税率が適用されているかを明確にする必要があります。
そこで、商品等に課されている消費税率や消費税額等を請求書に明記する「インボイス制度」が実施されることになりました。
※令和元(2019)年10月の軽減税率制度実施から4年の経過措置期間を経て実施することになりました!
このインボイス制度によって、消費税額等を正確に把握することができます。
なぜならば、
・適格請求書(インボイス)には、消費税率や消費税額を記載するルールになっているから
・適格請求書発行事業者のみ適格請求書(インボイス)を発行できるという登録制にしたから
【参考】
政府広報オンライン:令和5年10月からインボイス制度が開始!事業者間でやり取りされる「消費税」が記載された請求書等の制度です
2.いわゆる「益税問題」の解消
過去記事の復習になります。
「免税事業者」のままだと取引が減る? インボイス制度で何が変わるのか、税理士が解説!
消費税というのは、ある商品やサービスを購入した時にかかる税金のこと。
例えば、皆さんが普段スーパーやコンビニで買い物した時、商品の値段に+10%(一部は8%)に相当する金額(消費税)を含めて、お店に払っているかと思います。
・会社設立1年目、2年目
・2期前の売上が1,000万円以下の事業者
※説明のために簡略化しています。正確な情報は国税庁のホームページや顧問の税理士にご確認下さい。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6501.htm
そうすると、消費税を納めなくてよい事業者(=免税事業者)は、消費者から受け取った消費税分、まるまる得することになります。
これを難しい言葉で「益税(えきぜい)」といいます。
この益税をなくそうというのが「インボイス制度」導入の目的の1つとされています。
今まで年商1,000万円以下のため、免税事業者として益税をそのまま自身の収入にしていた方は、今回の「インボイス制度」により、実質増税となる可能性があるのです!
※そもそも免税事業者は消費者から消費税を預かっているわけではなく、単にサービス等の対価の一部として消費税相当額を受け取っている、つまり「益税」は存在しないという見解もあります。
しかし、元々免税事業者がインボイス事業者登録することで、課税事業者になることにより実質増税となる可能性があることには変わりはありません。
「益税」の問題や消費税の転嫁について詳しくしりたい方はこちらの記事が参考になります。
ZEIMO:インボイス制度 消費税の真実|益税は存在しない
インボイス制度の概要
そもそも「インボイス」って何でしょうか。別名「適格請求書」とも言われます。
「売り手」が「買い手」に対して、正確な適用税率や消費税額等を伝えるものです。
注意点ですが、「適格“請求書”」と名がついていますが、税率や消費税額等の一定の記載事項が記載されているものはインボイスになります(請求書とは限りません)。
例を見るとイメージがわくでしょう!
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022001-174.pdf
このような適格請求書(インボイス)を適格請求書発行事業者である売り手は買い手に交付し、受け取った買い手はこのインボイスがないと原則「仕入税額控除」がとれないよ(=インボイスがないと実質増税になる)、という制度になっています。
そして、そもそもインボイスを発行できるのは、適格請求書発行事業者として登録した事業者だけだよ!という制度になっています。
そして、登録した事業者は、登録前は消費税の免税事業者だったとしても、登録後は消費税の課税事業者に変わってしまうよ!という制度になっています。
インボイス制度に対応するための準備!
インボイス制度の準備は、事業者の2つの立場(売り手・買い手)にわけて、それぞれ準備すると良いでしょう!
買い手=お金を払う側
国税庁の「インボイス制度への事前準備の基本項目チェックシート」を参考に、売り手と買い手の準備方法についてお伝えします!
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0022009-057.pdf
その前のステップとして、そもそも自社がインボイス発行事業者として登録するか検討がまだの方は、まずは登録するかを検討しましょう!
インボイス発行事業者の登録申請準備
そもそもですが、「インボイス発行事業者」として登録するか否かは事業者の任意です!
登録するか否かの判断は、事業者の状況によって異なりますので、ここでは省略させて頂きます。
※税理士としても、実際この判断は非常に悩ましいケースが多いなと感じます。
事業者の方が適格請求書(インボイス)を交付するためには、納税地を所轄する税務署長に対して「登録申請書」を提出し、「適格請求書(インボイス)発行事業者」になる必要があります。
提出方法は、3つあります!
②e-Taxで電子申請する方法
③税理士に委任する方法
具体的な手順はこちらの過去の解説記事をご参照下さい!
インボイスの登録はこれだけチェックすればOK!具体的な手順を税理士が解説!
国税庁の申請手続きに関する公式ページはこちらです。
売り手(インボイスを発行する側)としての準備
インボイス制度への事前準備の『基本項目チェックシート』に沿っていきましょう!
ここでは自社が「適格請求書発行事業者」として登録している場合を想定しています。
※適格請求書発行事業者の登録をしていない場合は売り手としての対応は特段不要です!
・自社が「適格請求書発行事業者」の場合、買い手である事業者に対して基本的にインボイスの交付が求められます。
・「インボイス」として認められる請求書や領収書等の記載内容や方法を検討しましょう。
・ インボイス制度に係る社員研修の実施も検討が必要でしょう。
・インボイスに対応した「請求書」等を発行するため、システム改修が必要な場合もあります。
買い手(インボイスをもらう側)としての準備
インボイス制度への事前準備の『基本項目チェックシート』に沿っていきましょう!
・消費税の計算は、「一般課税」「2割特例」「簡易課税制度」の方法があります。
「2割特例」「簡易課税制度」を適用する場合、ここに記載の準備は不要となるメリットがあります!
国税庁:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要
インボイス制度に関する注意点!
インボイス制度後の免税事業者との取引について
「免税事業者」である売り手に対して、あなたが買い手として取引する際は注意が必要です!
インボイス制度導入後は原則、「免税事業者」との取引は仕入税額控除の対象外となります。
つまり、「免税事業者」と取引をした場合、消費税が増税となる可能性があります。
買い手が「免税事業者」である場合、「適格請求書発行事業者」ではないためインボイスの交付が受けられないからです。
※経過措置があり、適格請求書発行事業者以外の事業者と取引しても、一定の条件を満たすことで仕入税額控除が80%まで受けられます!
考えられる対応方法を3つ紹介します。
1 取引相手方に「適正請求書発行事業者」になってもらう
話し合いにより、適格請求書発行事業者の登録をお願いしてみましょう。難しい場合は、3の減額を求める方法も要検討かと思います。
2 自社が「簡易課税制度」を適用する
自社が「簡易課税制度」を適用している場合、消費税の計算方法は従来と変更ありません。つまり、取引相手方が免税事業者であろうが影響がありません。※ただし、簡易課税の適用要件(課税売上高)に注意が必要なことや、簡易課税制度を適用した結果、当社が増税になる可能性もあるため注意が必要です。
3 取引相手方に減額を求める
免税事業者である仕入先との取引条件を見直すことが適当でない場合に、仕入税額控除を行うことができる額が減少する分について、原材料費や諸経費等の他のコストとあわせ、販売価格等に転嫁することが可能か、自らの売上先等と相談することも考えられます。
下請法等の違反に注意
先程の取引相手に減額交渉する場合等、注意しないといけない点があります!
経過措置により一定の割合で仕入税額控除が認められているのに、発注事業者が取引先の免税事業者に対し、課税事業者に転換しない場合、消費税相当額を取引価格から引き下げるとなどと一方的に通告をした事例では、独占禁止法違反につながるおそれがあるとして注意を呼び掛けています。
今回のまとめ
今回は、
・インボイス制度の概要
・事業者としての準備(売り手と買い手、それぞれの立場より)
・下請法等の違反に注意(免税事業者と消費税相当額を取引価格から減額交渉する際は注意が必要)
以上、最低限知っておくべきことをお伝えしました。
最低限といっても、制度が複雑なこともあり、ボリュームに感じた事業者の方も多いかと思います。
そこで最後に、実際に運用していく中で、わからないことが生じた時の解決方法を3つお伝えします。分からないことは調べるか、あるいは税理士など身の回りの人に聞いてみましょう。
1 国税庁の公式ページで検索!
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/invoice.htm
よくあるQ&Aはこちらで検索してみましょう!
2 インボイスコールセンターにて相談!
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/04-1.htm
インボイス制度及び消費税の軽減税率制度に関する一般的な質問や相談について、インボイスコールセンター(インボイス制度電話相談センター)で受け付けています。
3.税理士に相談!
中小企業庁の令和4年度補正予算「事業環境変化対応型支援事業費補助金(相談窓口設置運営事業)」で採択を受けたトランス・コスモス株式会社が運営をしているサイトにて、インボイス制度の導入に関する不安や困りごとを解決するため、免税事業者の皆様からの相談内容に合わせて、各種相談先や税理士のオンライン相談を案内しています。
文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。
高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。
合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。
ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。
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