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【イベントレポート】好きな仕事をするための必要なズルさを身に付けろ テレビプロデューサー 佐久間宣行氏

【イベントレポート】好きな仕事をするための必要なズルさを身に付けろ テレビプロデューサー 佐久間宣行氏

8月19日に開催された「アントレフェア」では、テレビプロデューサーの佐久間宣行氏が講演を行いました。「好きな仕事をするための必要なズルさを身に付けろ」をテーマに、佐久間氏がテレビ東京時代にどんなことを考えながら仕事をしていたのかや、独立してから役に立っている「ものの捉え方・考え方」などをお話しいただいています。ナビゲーションは働き方の研究機関・アントレ独立ワークスラボ所長の菊池保人が担当。ここでは、その内容の一部をダイジェストでお届けします。

<プロフィール>
テレビプロデューサー 佐久間 宣行 氏
1975年生まれ。福島県いわき市出身。テレビプロデューサー
2021年にテレビ東京を退社し、現在はフリー。
「ゴッドタン」「あちこちオードリー」YouTube「NobrockTV」ラジオ「佐久間宣行のANN0」Netflix「トークサバイバー」DMMTV「インシデンツ」など多方面で活躍。
著作「佐久間宣行のずるい仕事術」は読者が選ぶ「ビジネス書グランプリ2023」総合グランプリ受賞。
<プロフィール>
菊池 保人
1987年4月、株式会社リクルート入社。2019年4月リクルートグループから事業ごと独立し、株式会社アントレの代表取締役に就任。
現在は退任し、働き方の研究機関「アントレ独立ワークスラボ」の所長。
「独立した働き方」を研究し、1人ひとりの「働く価値観の変化」に注目し企業のコンサルティングや講演活動を行う。

人のいいところを見付けられると、人の生かし方が分かる

菊池
組織から飛び出し、雇われない生き方を実践している先輩でもある佐久間さんの体験談や、考え方などをいろいろとお伺いしていければと思っています。まず、会社員時代はどんなことを考えながら過ごしていたのですか?
佐久間さん
組織にもよるとは思うのですが、僕が一番良くないと思っているのは、「その場所のルールに合わせにいって、自分の人格が壊れてしまうこと」なんです。だから僕はまず自分でルールをつくろうと思ったんです。それが「決定権を持っていない人に愚痴をこぼすことはやめよう」でした。結局、相手に影響力や決定権がなければ愚痴っても自分の状況は変わらないし、挙句「あいつが悪口を言っていましたよ」と告げ口されるだけ。そうやって評判を落としていく人をたくさん見たんです。
菊池
確かによくありそうな話ですね。
佐久間さん
溜まった不満については、ちゃんと決定権を持つ人に刺しにいこう、と。だから、悪口で人と連帯することをやめました。あと、これは本音と作戦でやっている部分があるからちょっとズルい言い方になってしまうのですが、「裏では人のことを褒めよう」ということは意識していましたね。
菊池
まさしく「技」ですね!
佐久間さん
かもしれませんね。だから20代の頃から「不満を言うよりは、人のことを褒めよう」という意識でいました。そうすると何が変わるかというと、「人のいいところを見付ける癖」がつくんです。その人のいいところが見つかると、その人の生かし方が分かるようになる。実はこれは今でもすごく役に立っていて、「人の良さや武器を生かせるチームづくり」ができるようになるんです。
菊池
人のいいところを見付ける癖を付ける、と。早速、良いキーワードをいただきましたね!
佐久間さん
裏で褒める人の方が絶対に評判が良くなるし、5年後や10年後についてきてくれる人の数が違うはずなんですよね。
菊池
今日ここに集まっている方々でいうと、そういう態度で人と接していると「自分で事業を始めた時に応援してくれる人」が出てくるかもしれないということですね。
佐久間さん
そうかもしれませんね。ただ、自分について考えてみると、悲しい話ですが30歳をすぎてからは自分のダメなところが劇的に良くなることはないんですよね。だったら、とてつもなく自分の足を引っ張るような欠点じゃない限りは、長所を伸ばすことに専念した方がいいのかなと思っています。だってそっちの方がお金になるから。そのうえで、自分に足りない部分を補ってくれる人を見付けられればいいと考えていますね。僕の場合は芸能人や事務所の方とうまく付き合うコミュニケーションが苦手なので、そういうことが得意な人を必ずチームに入れるようにしているんです。

他己評価を積み上げることで「自分らしさ」ができあがっていく

【イベントレポート】好きな仕事をするための必要なズルさを身に付けろ テレビプロデューサー 佐久間宣行氏

菊池
佐久間さんの著書『ずるい仕事術』を読ませていただいて印象的だったのが、「組織に期待しすぎず、他己評価を積み重ねることで、やりたい仕事ができるようになる」という一言でした。「他己評価を積み重ねる」というのは、どういうことでしょうか?
佐久間さん
そもそも、自分の「得意」とか「長所」を分かっている人って、実は少ないと思っているんです。付け加えると、「自分の思っている自分らしさ」は、社会では通用しないことが多いのではないかと。だから、自分らしさとかやりたいこととは別に、「苦労だと思わずにできること」と「周囲から言われること」のミックスが自分らしさになると考えています。そう考えたら、「自分で自分はどういう人間だと思っているか」はあまり仕事と関係ないと思うんです。
菊池
周りの人の方が分かるはずだ、ということですね。
佐久間さん
そうです。結局はその人が積み重ねた行動が、その人の人格として評価されていくわけじゃないですか。だから自分のイメージを変えたければ、行動で示すしかない。で、その行動を習慣化していくと、それが人格になって「あいつはこういう人だ」と思われるようになるんです。
菊池
なるほど。
佐久間さん
「私は本当はこういう人なのに」「自分らしさで戦いたいのに」と思っている限りは、やりたい仕事には一生届かないと思うんですよね。だからまず行動を変えて、「そういう人だ」と思われる中で他己評価を積み上げていく。それが最終的には「自分らしさ」になっていくんじゃないかと思っています。これについては、売れている芸能人の方々はみんな同じことを言うんですよ。「他人からもらったキャラクター」だって。例えばアンガールズの田中くんは、「キモい」って言われるまで自分がキモいって知らなかったんです。おぎやはぎの2人の脱力感や仲がいいところも、本人たちは人に言われるまではカッコ悪いところだと思っていたっていうんです。
菊池
「誰に言われるか」によっても違うと思うのですが、そこはどうでしょう?
佐久間さん
一般論とか自分に当て込んで来る人のアドバイスは聞かなくていいでしょうね。逆に「あなたはこういう人だから、こうした方がいいんじゃないか」と親身になってくれる人の話は耳を傾けていいと思います。自分に適応できるかは置いておいても、「私ってそう見えているんだ」が分かるからです。仮に見当違いなことであっても「そういう見え方をしているのはヤバいな」という気づきになるじゃないですか。いずれにしろ役に立つんです。

自分のキャリアは会社に委ねずに、自分自身で考えるべき

【イベントレポート】好きな仕事をするための必要なズルさを身に付けろ テレビプロデューサー 佐久間宣行氏

菊池
話を伺っていると、佐久間さんは「褒める癖を付ける」とか「他己評価を積み上げる」など、20代の頃から自分でいろいろと「決めてきた」ように感じるのですが、そこについてはどうですか?
佐久間さん
そうかもしれないですね。会社に入ったばかりの頃は、テレビ業界や芸能界の仕事はとにかく向いてないなと思っていました。だから、第2新卒といわれる3年間の間で何かしらの結果を出すか、状況の改善がなければテレビ局は辞めようという作戦を立てたんです。その決断は僕の人生を変えたと思いますね。その時に分かったのは、時間を区切って状況を改善するために自分で何をするかを決めて、それが達成できると、人生って変わっていくんですよ。
菊池
決めて行動していこう、ということですね。
佐久間さん
そうですね。あとは分析です。大抵の日本の会社はクビにはならないけど、「でもテレビ業界は僕を一生食わしてはくれないかもしれない」と思ったんです。それは配信文化が始まったから。そういう変革はだいたいデータの軽い業界から起きるので、最初は出版業界が電子書籍になり、次に音楽業界でサブスクモデルが始まった。その後に映像業界に来ないわけがないので、「だったら、そのゲームチェンジに対応できる人になろう。そっちの方が絶対に得だぞ」と考えたわけです。
菊池
そこでも戦略を立てたわけですね。
佐久間さん
というかリスクヘッジですよね。コンテンツ配信が得意になれば、会社をクビになっても生きていけるだろうと。外でも生きていける人間になろうと思って社内でいろんなことをすると、当然、会社からは嫌われる時もあります。でも終身雇用だからクビにはならないわけです。これってリスクヘッジですよね。だから僕はリスクのある方をとったわけではなくて、リスクの少ない方をとった結果が今につながったと思っています。
菊池
自分のキャリアを会社に委ねるのではなく、上司や先輩に相談するのでもなく、自分で考えていく。その時に、外にリスクヘッジをしておくという生き方を選ぶ人は増えてきましたが、佐久間さんはその「走り」だったのかもしれませんね。
佐久間さん
もしかしたらそうかもしれないですね。
菊池
佐久間さんは「失敗」についてはどう考えているんですか?
佐久間さん
会社を辞めても大丈夫な人間になろうと思った時に、社内初のことにどんどん挑戦していった方がいいなと考えました。自分の知見が溜まるし、新しいジャンルを開拓できるし、テレビ局のためにもなるからです。それで動画共有サービス やサブスクを始めたり、DVDを売って放送外収入を増やしたり、連動したお笑いのライブをやったりと、いろんなことにチャレンジしました。社内初のことってハイリスクのように見えて実はローリスクで、結局は「会社とどういうKPIを握るか」だけの問題なんです。「社内初のことだから失敗しても検証できるじゃないですか」と言い張ればいいんですよ。
菊池
なるほど。
佐久間さん
要は「絶対に成功する」みたいに会社と握っちゃうからハイリスクになるだけで、別に失敗しても仮説の検証ができたり、知見が溜まったり、データがとれると考えたら、それでいいと思いません?失敗して当然なんだから、そのリスクは自分が負いますって言えばいいだけなんで。だから僕は誰もやらないような面倒くさいことも積極的に手を挙げていましたね。
菊池
握ろうとしていたKPIがそもそも間違っていると。振り返ると、自分にも思い当たることがあるなあ…(笑)
佐久間さん
例えば、リーマンショックの時に、予算が一気になくなって番組がバタバタと終了した時期がありました。そんなタイミングだからこそ、あえて「通常の予算の半分で、夕方に子ども向けバラエティ番組をやらせてください」と手を挙げたんです。ちょうど視聴者層が入れ替わっていると感じるタイミングだったので、新しくファミリー層を狙おうと思ったわけなんですが、リーマンショックのそんな時期なので別に番組がコケても僕の評価は下がらない。でも当たったら全部自分の手柄になる。こんないいことはないなって思いました(笑)。だから、KPIをどう設定するかで失敗が失敗ではなくなるんですよね。この時は結局、ビデオリサーチの調査だけでは出てこない夕方の視聴者層の動向がとれて、10代や20代は20時まではテレビを見ていないことが発覚した結果、戦略を変えることができました。

物事をネガティブに考えるからこそ「とれる行動」もある

菊池
著書の中でもう1つ印象的だったのが、「変化は起きるものではなく起こすもの」という言葉でした。今日のお話を聞いていると、行動によって変えていくというか、「癖をつくる」ことが大事だという印象を受けました。
佐久間さん
「癖をつくる」ということは、要は「仕組み化」なんですよね。僕は基本的に自分のことを全く信用していないので、だから「どうせ忘れちゃうから、会議の後半に来週の議題や宿題をグループLINEやSlackに貼り付けておく」みたいなことも含めて全部仕組み化して、自分で勝手にフラグを立てていくんです。それで「あそこの距離までだったら自分でも努力できるかな」を積み重ねていく。自分をネガティブに捉えているからこそ、行動せざるを得ない状況に自分を追い込んで、「このままだと絶望的な未来しかない」と毎回思いながら、変えるために行動するという考え方です。だから、夢や希望を持って「俺はこの業界で天下をとるんだ!」みたいに行動を積み重ねる感じでは全くないんですよ。
菊池
その素直な感じが、なんだかカッコよく見えます(笑)
佐久間さん
今はYouTubeで100万回再生とかを出せるのも、40代になってもお笑いを見るのをサボらなかったからだと思っています。同世代はみんな管理職になって第一線でものを作っていない人も多いけど、その中で僕はいろんなものを見まくって、「脳の筋トレ」を続けながらひたすら作り続けている。今だってできるだけ時間をつくってお芝居を見にいったりするのは、その成功体験があるからです。積み重ねていけば、すぐには役に立たなくても5年後、10年後に必ずきいてくるはずなんです。
菊池
なるほど。後々きいてくるという話は、先ほどの人脈の話にもつながってきますね。では最後になりますが、「雇われない生き方」を目指す今日の来場者の方々に向けてメッセージをお願いします。
佐久間さん
これまでお話ししてきた通り、僕は基本的に自分を信用していないネガティブなタイプなんですが、だからこそできたこともたくさんあったと思っています。リスクヘッジの行動がとれたのもそうだし、フリーになった時に失敗する可能性はたくさんあると思ったので、目先のものには飛びつきませんでしたし。他にもたくさんありますが、ネガティブなところから物事を考えていたから、そういう行動ができたと思うんです。不安というものはどんな仕事をするにしてもなくならないじゃないですか。で、これまでお会いしてきた一流の方々もみんなそうで、一流の人ほど不安を持ち、不安をちゃんと飼い慣らして、不安を持っているのが正常な状態だと思って仕事をされている。それが僕のこれまでの結論なんです。だから、不安をなくしたいと思うかもしれませんが、そうではなくて、不安を常に持ち続けながら、そのアラートと共に自分の人生を切り開いていくことが大事ではないかなと思いますね。細かいことに気を病んだりせず、不安と共に自分の人生を良くするためのチョイスをしていただきたいなと思います。
菊池
今日は貴重なお話をありがとうございました。

取材・文 志村 江

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