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個人事業主の事業継承手続きの流れや注意点とは?

個人事業主の事業継承手続きの流れや注意点とは?

経済産業省の「2022年版 中小企業白書・小規模企業白書 概要」P23(リンクの遷移先はPDFです。ダウンロードに大量の通信費がかかる可能性があります)によると、「年代別に見た中小企業の経営者年齢」は、2000年には50〜54歳が最も多い年齢層であったのに対し、2020年には70~74歳以上が最も多い年齢層となっています。

このことからお分かりのように、個人事業主や自営業の方の高齢化が進んでおり、日本の中小企業は後継者への事業継承が緊急の課題となっています。

また、個人事業主の場合、法人と異なり、取引先や顧客との信頼関係で経営が成り立っていたり、土地や建物などの資産が事業主の個人所有になっていたりするなど、事業承継を困難とさせるような問題点が複雑にからみ合っているケースが多々あります。

今回は、事業継承を進める際の注意ポイントをまとめました。

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個人事業主の事業承継方法

個人事業主の事業承継は、主に家族・親族に引き継ぐ「生前贈与」・「相続」、または他人に譲渡(売買)する「M&A」に分けられます。

1.生前贈与
個人事業主が家族や親族などに生前に事業譲渡を行うことです。贈与による事業継承には、子どもや兄弟などの家族・親族への「親族内事業承継」と従業員などへの「親族外事業承継」があります。

2.相続(死亡時の場合)
個人事業主が亡くなり、相続で預貯金や不動産、機械設備、売掛金、商品といった相続財産を後継者が引き継ぐことです。相続による事業承継について遺言がない場合、相続人の中から遺産分割協議等によって事業継承者を決めます。

3.M&A
個人事業主が事業譲渡する対価として金銭を受け取る方法(つまり売却)で、親族以外の他人に事業承継します。後継者・譲渡先を事業承継センターや取引銀行への相談、M&Aのマッチングサイトなどで見つけることもあります。

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個人事業主の基本的な事業承継の流れ

事業承継の流れを説明します。事業の性格や引き継ぎ方の違いによって手順が異なりますので、基本的な流れとして理解してください。

1.後継者選び
事業承継をする際に、後継者を選ぶことは大変ですが、最も重要なことです。一般的に、個人事業主の場合は、事業承継は家族・親族への譲渡が多いのですが、従業員など他人への事業譲渡ももちろん可能です。

2.後継者への引き継ぎ
個人事業主は経営者自身の信頼や人間関係で事業が成り立っている場合が多いので、後継者と一緒に取引先への挨拶なども行い、事業を順調に引き継げるようにサポートをすることが大事です。また、顧客情報や店舗などの土地・建物なども後継者に引き継ぐ場合は、各種届出などの書類・手続きに漏れがないように注意しましょう。

3.個人事業主の廃業と後継者の開業
税務署に現事業主としての「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(廃業届)を提出します。これで個人事業主ではなくなります。

後継者は、新たな個人事業主の「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(開業届)を、同じく税務署に提出します。現在の屋号を引き継ぐ場合は、引き継ぎたい屋号を開業届に記載することで、引き続き使用することができます。

4.各種届出の整理
上記以外にも事業承継には数種類の届け出が必要です。例えば、青色申告をしているのであれば「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を、後継者の妻が事業を手伝うのであれば、後継者は「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出します。

個人事業主の事業承継における注意点

個人事業主の事業承継手続きは、法人より比較的簡単に行うことができますが、注意すべき点があります。

1.後継者の決定
個人事業主の事業継承は、高齢による引退が主な理由となっています。しかし、取引先・顧客に後継者認知してもらい、事業をスムーズに譲るためには時間がかかるので、自身の体調と相談しながら後継者の決定に向けて早めに準備をするほうが良いでしょう。

2.事業承継に対する税金
A:生前贈与

生前贈与による事業承継には贈与税が発生します。贈与税は、その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与してもらった財産の価額をします。資産から債務を引いた贈与財産から、さらに基礎控除額110万円を引いた額にかかります。

贈与税額=(贈与財産〔資産-債務〕ー 基礎控除110万円)✕ 課税率-控除額
資産:不動産などの固定資産、預貯金、商品、機械類など
債務:借入金、未払い金、買掛金など

B:相続
個人事業主の死亡による相続によって、事業承継をする場合、相続が発生した時点を基準に評価額を査定し、後継者に課税されます。評価額には、固定資産や棚卸資産など不確定な要素も含まれますので、課税額が膨らむこともあり、注意が必要です。

C:M&A
売買・M&Aによる事業承継は「譲渡所得」に当たり、所得税がかかります。

個人事業主の事業承継に必要な書類は?

個人事業主が事業承継をする場合、現事業主である個人事業主・後継者はそれぞれどのような書類を準備するべきなのでしょうか。それぞれが用意するべき書類をくわしく紹介していきます。自分の立場とすり合わせながら適切なものを用意できるように対応しましょう。

現事業主である個人事業主が準備する書類

まずは、事業を継承してもらう個人業主側はどのような書類が必要になるのかを見ていきましょう。個人事業主が準備をしなくてはいけない書類は主に以下の4つです。

1.「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(廃業届)
「廃業届」は事業廃止より1ヵ月以内に税務署へ提出する必要があります。税金の申告や納付手続きは廃業届を提出する前に完了させておきましょう。

「[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(国税庁)

2.所得税の青色申告の取りやめ届出書
青色申告をしている場合は、税務署に「所得税の青色申告の取りやめ届出書」を廃業届と共に提出します。

「[手続名]所得税の青色申告の取りやめ手続」(国税庁)

3.事業廃止届出書
消費税課税事業者の場合は、税務署に「事業廃止届出書」の提出が必要です。

「[手続名]事業廃止届出手続」(国税庁)

4.所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書
廃業をすると、所得税が予定納税額以下になってしまうことが予想されます。予定納税額が減額となる場合、税務署へ「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」の提出が必要です。

「所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書」を提出できるのは、以下のような場合です。

・その年の6月30日の現況による申告納税見積額が、予定納税額の計算の基礎となった予定納税基準額に満たないと見込まれる場合
・その年の10月31日の現況による申告納税見積額が、既に受けている減額の承認に係る申告納税見積額に満たないと見込まれる場合

また、従業員を雇っていたのであれば、 「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」も必要です。

「[手続名]所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請手続」(国税庁)

「[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」(国税庁)

後継者が準備する書類

次に、事業を継承する後継者が準備するべき書類についても解説していきます。継承者が用意しておくべき書類は主に5つあります。

1.「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(開業届)
個人事業主の事業承継をする場合、税務署に事業開始から1ヵ月以内に「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」(開業届)を提出しなければなりません。

また、現事業主から屋号を引き継ぐのであれば、開業届にその旨を記載する必要があります。さらに、商号が登記されている場合には、法務局で「名義変更」の手続きも必要になります。

2.所得税の青色申告承認申請書
青色申告を希望する場合、「所得税の青色申告承認申請書」の提出も必要になります。提出期限は事業開始から2ヵ月ではあるものの、開業届と併せて早めに税務署に提出するのが良いでしょう。

「[手続名]所得税の青色申告承認申請書」(国税庁)

3.青色事業専従者給与に関する届出書
後継者が事業を自分の配偶者などに手伝ってもらう場合、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出すれば、青色事業専従者の条件を満たすことで、配偶者への給与を経費として扱えるようになります。

「[手続名]青色事業専従者給与に関する届出手続」(国税庁)

4.雇用に関する書類
配偶者などの親族ではなく、アルバイトやパートを含む他人を従業員として雇用するのであれば、「雇用契約書」などの雇用に関する書類も準備しなくてはいけません。また、業種や従業員数によっては社会保険への加入が義務付けられているため、社会保険に関する書類も必要です。

常時5人以上の従業員を雇う場合、社会保険の強制適用事業所とされる業種をいくつかご紹介します。

a 製造業
b 土木建築業
c 鉱業
d 電気ガス事業
e 運送業
f 清掃業
g 物品販売業
h 金融保険業
i 保管賃貸業
j 媒介周旋業
k 集金案内広告業
l 教育研究調査業
m 医療保健業
n 通信報道業
o 士業 など

また、従業員を雇って給与を支払うのであれば「給与支払事務所等の開設届出書」の提出も必要になります。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」も必要に応じて提出してください。

5.消費税簡易課税制度選択届出書
基準期間(個人事業主は前々年)の課税売上高が5,000万円以下であり消費税課税事業者であれば、「消費税簡易課税制度」が利用できます。利用したい場合に限り、「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要です。

個人事業主・後継者と、それぞれの提出書類がほぼ対になっていることをイメージして、漏れがないよう作成しましょう。

「適用事業所とは?」(全国健康保険協会)

「[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」(国税庁)

「[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」(国税庁)

「消費税簡易課税制度選択届出手続」(国税庁)

まとめ

個人経営の事業では事業主が債務を個人保証している場合が多いので、この債務保証が事業継承の大きな妨げになっています。

銀行などとの交渉を行い、負の部分は引き継ぐ前に整理するのが理想ですが、資産・負債を明確にし、後継者に説明して理解を得ることが事業承継の第一歩といえるでしょう。

事業承継の手続きは個人でも可能ですが、事業の状況によって提出書類が異なること、また税制などの専門知識が必要です。

しっかりと手続きするためにも、税理士や弁護士といった専門家、あるいは税務署の窓口で相談し、計画的に事業承継の準備をしましょう。

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PROFILE

ちはる

大手IT商社でプロダクトプロモーション担当を経て、 WEBコンテンツ制作会社に転職し、ライターとして所属。その後、独立し、現在はビジネス・不動産関連の記事を主に執筆。

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