これから独立開業する方に向けて、税金面で気を付けることについてプライムファイナンシャルパートナーズ会計事務所の菅 彰裕さんにお話を伺いました。菅さんは世界4大国際会計事務所のメンバーファームの1つであるPwC税理士法人を経て独立開業された税理士さんです。非上場企業から上場企業まで、幅広いクライアントの業務を担っている菅さんだからこそ知りうる税金の話をたっぷりお伝えします!
今回は、株の取り引きやFX、仮想通貨で得た所得の確定申告についてご紹介します。
所得税の課税方法
FXや株の取り引き、仮想通貨で得た所得については、給与所得のように源泉徴収されることがありません。そのため、事業所得もしくは雑所得に分類し、確定申告が必要になるケースがあります。
※事業所得と雑所得の違い
<事業所得>
・事業と言える内容・規模で行っている仕事の収入で、継続的に利益が出る見込みがある
・65万円または10万円の青色申告特別控除が受けられる
・純損失の繰り越しと繰り戻しができる
・給与所得など、他の所得との損益通算ができる
・日々の帳簿付けや決算書の作成、提出などの手間がかかる
<雑所得>
・単発的に行って得られた収入で、継続性はない
・決算書の作成、提出などがないため、手間がかからない
・赤字が出ても他の所得の黒字と相殺できない
また、事前知識として所得税の課税方法についてご紹介します。課税方法には「総合課税」と「分離課税」の2種類があります。
・総合課税…所得の種類に関係なく合算して税金を課税する方法
・分離課税…他の所得とは切り離して課税する方法
株は口座の種類をチェック
株式投資を行う際は投資用口座の開設をします。その口座の種類によって確定申告の要不要が分かれます。
口座には「一般口座」と「特定口座」の2種類があります。そして特定口座はさらに「源泉徴収口座」と「簡易申告口座」に分かれます。
<確定申告書の提出が必要>
一般口座・簡易申告口座…源泉徴収が行われない口座。1年間の投資活動をまとめた報告書に従って確定申告書を提出する。
<確定申告書の提出が不要>
源泉徴収口座…源泉徴収がされる口座。証券会社等が運用益に対して源泉徴収をしてくれるので、確定申告書の提出は基本的に不要。
FXは損失が出ても確定申告すべし
確定申告の際、FXは雑所得に分類されます。そして、課税方法は分離課税になります。
ちなみに、FXなので当然損失が出ることもあります。もし損失が出た場合「確定申告しなくていいか…」と思う人もいるかもしれませんが、繰り越し控除を受けることができるので、確定申告書を提出することをおすすめします。
何故ならば、繰り越し控除(損失の繰り越し)をすることにより、その年に出た損失と翌年以降3年の間に出た利益を相殺することができるからです。つまり、翌年以降の節税につながります。
仮想通貨は「通貨を変えた時」に注意
仮想通貨の取り引きの所得は、雑所得に分類されます。仮想通貨で20万円以上の利益を得た会社員の方や、個人事業主の方は、期限内に確定申告書を作成・提出し、納税を行う必要があります。
仮想通貨で気をつけるべきは、通貨を変更する度に税金がかかるということです。
多くの人は「Aという仮想通貨を売って円にした際に税金がかかる」という認識は持っていますが、「Aという仮想通貨をBという違う通貨に変えた時も税金がかかる」ということは案外知らない人がいるのが実情です。
そのため、通貨を変更して税金が発生したものの、円に変えておらずキャッシュがなく税金が払えないというケースも実際ありました。
「通貨を変えた際も税金がかかる」ということをきちんと念頭に置いておきましょう。
株取引、FX、そして仮想通貨で得た所得の確定申告についてご紹介しました。確定申告は知らなかったでは済まされないことが多いので、きちんと知識を身につけておきましょうね。

プライムファイナンシャルパートナーズ株式会社
税理士 菅 彰裕
業務内容は、オーナー企業の事業承継対策の検討、組織再編によるグループ会社の整理、事業承継のための株価対策、国内および国外のIPO支援、国内買収案件における税務デューデリジェンス、非居住者の国内投資にかかる税務コンサルティング、その他執筆サポートなど。