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IT企業でカフェをオープン!異業種での社内起業を成し遂げた、ある女性の話

IT企業でカフェをオープン!異業種での社内起業を成し遂げた、ある女性の話

店に入ってすぐに香る食欲をそそる匂い。見渡すと美味しそうなランチを食べながらスマホを眺めている人、料理の写真を撮る人、同僚と談笑しながら食事を楽しむ人。

東京メトロ永田町駅を降りてすぐの、ここ「tiny peace kitchen」では今日も性別や年齢、国籍も問わず様々な人が訪れます。

実はこのお店を運営しているのは、株式会社ガイアックス。IT企業として有名な同社で、なぜカフェを開くことになったのでしょうか?

今回はそんな「tiny peace kitchen」で代表を務める、荒井智子さんにお話を伺いました。

荒井さんは、会社にいながら自分がやりたいことを叶え、また会社でやるからこそ、今までにないお店がつくれると言います。

荒井さんの並々ならぬ想い、そして行動に、会社にいながら自分のやりたいことをするためのヒントがありました。

プロフィール:荒井智子
株式会社ガイアックス 管理本部 「tiny peace kitchen」リーダー

東京大学大学院新領域創成科学研究科を卒業後、株式会社ガイアックスに入社し、カスタマサポート事業部にて法人営業を担当。

2015年8月にケータリング型社員食堂「まいにち食堂」を開始し、2017年2月 tiny peace kitchenをオープン。

自分のやりたいことと会社の需要のマッチング。荒井さんがIT起業でカフェを開いたワケ

―まず、荒井さんがこのお店を開くまでの経緯を簡単に教えていただけますでしょうか?

荒井さん

大学院を卒業後、新卒でガイアックスに入社しました。入社後はカスタマーサポートの法人営業を2年間続けていたのですが、身近な人に健康でいてもらうためにはどうしたらいいか?を考えて、「食」というテーマに行き着きました。

その後、外部のセミナーなどに参加して一気にそのビジョンが明確になっていき、これは飲食業の道に進むしかないなと思ったんです。

そして、ガイアックスを退職して飲食店にバイトからでも修行しようと思い、上司に相談しました。

―上司の方はどのようなリアクションでしたか?

荒井さん
とても緊張しながら、一番最初に当時直属の上司に話したのですが、「その年齢で人生をかけてやりたいことが見つるなんて素晴らしい」と喜んでくれて、拍子抜けしました…(笑)。

一方で、当時の事業部長で現アディッシュ株式会社CEOの江戸浩樹さんは「社内でやればいいじゃん」と言ってくれました。「働く人を健康にする」という私の目標は、この会社にいてもできるというのが江戸さんの考えでした。

―ITの領域を扱うガイアックスで飲食業を立ち上げる。一見すると全く異なる仕事をしているように思えますが、飲食の仕事の裏にある思いを叶えることは、ガイアックスでもできるということですね。

荒井さん
そうなんです。ちょうど社員のストレスチェックも義務化された頃でしたので、会社としても社員の精神疲労をケアしていかなければならないという課題に直面していました。

そこから社内で議論を重ねて、まずは会社の福利厚生としてケータリングを始めることになりました。そのケータリングがとても好評だったんです。

そしてオフィスをこの永田町に引っ越してくる時に、ビルの1階を「tiny peace kichen」としてオープンしました。

―荒井さんが、いわゆる企業内起業という形で会社内でお店を開くことができたのは、会社の理解はもちろんのこと、タイミングの良さもあったのですね。

荒井さん
はい。自分のやりたいことと会社の需要がマッチングすること。これは会社の中で自分のやりたい事業をしていくにあたって非常に大切なポイントだと思っています。

信頼を得て、熱意を示す。企業内で事業を立ち上げるために必要なこと

―本業がITの会社であるにも関わらず、全くの別業種のカフェを開くことは決して簡単ではなかったと思います。荒井さんはどのように社内を説得したのでしょうか?

荒井さん
説得というよりは、身に余るようなチャンスをいただいた、としか言いようが無いですね。

あえて言うとしたら、会社内での信頼をきちんと積み上げていないと、どんなチャンスも巡ってこないと思います。

当たり前のことですが、入社時からとにかく目の前の仕事には誠心誠意取り組んできたつもりです。

自分のやりたいことをやる前に、まずは自分の今の責務を全うすること。そうした行いが社内の信頼につながるんじゃないかなと思います。

―社内の信頼を築いた上で、他にはどのようなことをしていきましたか?

荒井さん
自分のやりたいことを応援してくれる人を見つけていきました。

そのためには、自分がやりたいことを人に話さなければいけません。そして自分のやりたいことを話せる人を徐々に増やしていく。

私の場合も人に話すことで、親身になって応援やアドバイスをしてくれる人が増えました。

―実際に事業を始めるとなると、経営会議などで、企画を通して会社から投資してもらう必要があると思いますが、彼らを説得するにあたって心がけたポイントがあれば教えてください。

荒井さん
当たり前の話ですが、事業プランを詰められるだけ細かく詰めて提案しました。

いつまでに売上はどれくらいになるのか。それにかかるコストはどれくらいなのか。どれくらいの人を雇って、どういうハコが必要なのか。

お店の経営に関わる、ありとあらゆる情報や詳細を細かく想定していきました。

無論、経営は未経験でしたし、今思えば事業プランとしてはかなり未熟だったと思うのですが(笑)…。

それでも、今の自分が考えられるだけの事業プランを作って、経営陣や上司にアドバイスを求めに行きました。すると、「もっとこうしたい方がいい」といろいろアドバイスがもらえたんです。

それを繰り返していく内に、徐々に今のプランに近づいていきましたし、そうやって議論を重ねていく中で、私の思いの強さや、真剣さを伝えることができたのかもしれません。

利益”だけ“を考えなくてもいいのが、企業内で事業をするメリット

―応援してくれるという意味では、出資してくれる会社だけでなく、一緒にお店を回してくれるスタッフや来店してくれるお客さまも、「応援してくれる人」だと思います。どのように応援を獲得できたのでしょうか?

荒井さん
スタッフで言うと「tiny peace kitchen」の店長を勤めてくれている亜子さんが、パートナーとしてジョインしてくれたことがとても大きかったです。

彼女は実は、私が学生時代勤めていたアルバイト先の店長でした。

「tiny peace kitchen」を立ち上げる時、なんとなく久しぶりに彼女に会いたいなと思って連絡したら、ちょうど彼女が前のお店を退職するタイミングだったんです。

偶然そんなタイミングで再会して、私のビジョンを話したらこのお店の構想が彼女のやりたいことと重なっていて。

それでじゃあぜひ一緒にやりましょう、となった矢先に私の妊娠が発覚したので「逆にもういてもらわなきゃ困ります、店長をやってください!」という話になったんですよ(笑)。

―これも学生時代から培ってきた信頼と、事業のプラン、ビジョンへ共感してもらえることで応援してもらったんですね。

荒井さん
自己発信は大切だなと感じています。

私はFacebookを通じて、自分がやっていることや、考えていることを頻繁に発信するようにしていました。彼女はその投稿を見てなんとなく私のやりたいことを分かってくれていました。

直接彼女と会ったときはある程度事業プランが固まっていたこともありますが、実際はもう会う前から彼女は私の考えていることをある程度知っていたんですよね。

それも先程の自分のやりたいことを人に発信することにつながってくると思います。

―お店に来られるお客さまに関してはどうでしょうか?

荒井さん
嬉しいことに、リピーターのお客さまはとても多いです。そういう意味ではお客さまからもたくさんの応援をいただいていると思います。

「tiny peace kichen」は”都会で忙しく働く人に家庭料理を提供する”、”都会の保健室”といったコンセプトで立ち上げました。

そのコンセプトに合うように、自分自身が1ユーザーとして、1人のお客さまとして「こういうお店があったらいいな」と思って運営しています。

例えば、忙しくてお昼過ぎに昼食を取る方のために、ランチタイムを限定せずに、11時30分から閉店(ラストオーダーは21時)までずっと定食を食べられるようにしたり、副菜は野菜を必ず3種類出したり、ご飯の量を自分で調節できたり。

荒井さん
とにかく家で食べるご飯を外でも食べられるように、お店の仕組みからメニューにまでこだわっています。

そうしたところも相まってじわじわとリピーターのお客さまが増えていってるのかなと思います。

さらに企業内で立ち上げている飲食店なので、飲食店の経営者ではなかなか難しい判断を下すことができます。手堅く採算を取りにいくことだけを考えなくてもよいので、さまざまなアイデアを形にできますし、チャレンジもできます。

そうしたチャレンジがリピーターのお客さまの増加という形で効果として表れているのではないのかなと思います。

―最後に、今後の目標を教えてください。

荒井さん
今後はガイアックス出身の会社として、今までにないより良いお店を目指して行きたいと思います。

お世話になっているガイアックスにも、もちろん恩返しをしたいですし、たくさんの方の心と身体の健康をサポートできるようなお店を目指して行きたいと思います。

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