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新卒フリーランスが、27歳で初めて会社員になったワケ

新卒フリーランスが、27歳で初めて会社員になったワケ

「そろそろ、フリーランスとして独立しようかな。」

そんな風に、脱サラしてフリーランスになる、という選択肢はそうめずらしいものではなくなってきました。しかし、新卒でフリーランス、その後サラリーマンになるという例ってあまり聞いたことがありませんよね。

今回インタビューしたのは、トレンダーズ株式会社の霜田明寛さん。

霜田さんは、トレンダーズの自社メディア『永遠のオトナ童貞のための文化系WEBマガジン・チェリー』(http://social-trend.jp/category/cherry/)の編集長でありながら、映画ライター、就活アドバイザー、ミスキャンパス評論家に司会者……と、幅広く活躍されています。

しかし霜田さんは、もともとは新卒でフリーランスとして活動されてから、27歳で初めて就職の道を選んだという珍しい経歴の持ち主。そして現在も会社員としての業務に尽力しながらパラレルワークとして社外の仕事にも積極的に取り組んでいます。

そもそもなぜ、フリーランスから会社員になったのか。そしてなぜ、会社員になった今でもパラレルワークをするのか。ご自身のキャリアと、働き方の目的についてお話を伺いました。

フリーランスから会社員へ。就活アドバイザーとして感じたキャリアの必要性

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―まずは霜田さんの簡単なご経歴から教えてください。

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霜田明寛さん(以下、霜田さん)
僕はもともと“ジャニヲタ男子”と自称するほどジャニーズ好きだったんです。好きすぎて自らジャニーズのオーディションを受けるほどでした(笑)。

就活生の時「ジャニーズになれない今、就職活動という選択肢の中で選べる最も近い職業だ」という理由でアナウンサーを目指して、テレビ局を50社ほど受けていました。

―だいぶ下心があるような気がしますが…(笑)。

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霜田さん
そうですね(笑)。しかし結果はというと、大学2008年卒の“就職氷河期時代”前という就職活動で有利な世代にも関わらず、どの会社からも内定をもらうことはできませんでした。

ただテレビ局で試験を受け続けたこともあり、マスコミ系新卒採用の事情にはとても詳しくなってしまったんです。その経験をもとに、大学5年生の夏に「出版甲子園」にエントリーして就職活動に関する本を書くことになりました。

そして大学卒業直後に『テレビ局就活の極意 パンチラ見せれば通るわよっ!』(www.amazon.co.jp/dp/4904500032)を出版しました。

―では、大学卒業後はライター1本でやられていたのですか?

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霜田さん
いえ、最初は「本も出したしライター業でいけるかな」と思っていたんですが、そう現実は甘くありませんでしたね。

出版した本を片手に雑誌社へ売り込みに行き、ライター業を始めてはみたんですが、担当の雑誌編集者の方に「うちの原稿料だけではお前を十分食べさせてやれないよ。他に食いぶちがあるなら、それはやめないほうがいい」と言われてしまったんです。まあ、優しさなんですけどね。

そこからは雑誌のライターもやりながら、並行してほかの仕事も行うようになったんです。

―具体的にどんなお仕事を?

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霜田さん
大学在籍時から中学受験の塾講師をやっていたので、そのまま続けていました。それに加えて、本の出版から派生した就活に関する講演活動なんかもしていましたね(笑)。

最初はライターだけでは生活を賄えなかったので、食べていくために意図せずにですが、フリーランスという形で、パラレルキャリアの道を歩んでいったというわけです。

―なるほど。現在働いていらっしゃるトレンダーズ株式会社にはどういった経緯で入社されたのでしょうか?

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霜田さん
入社の経緯の前に、就職を目指すきっかけについてお話します。新卒からずっとフリーランスでやってきたのですが、会社に入っていた方がキャリア的に人に信頼されるなと思ったからなんです。

というのも、就活に関する講演活動で就職のアドバイスをすることが増えていくにつれて「就職本を書いているのに何で就職していないのですか?」と、突っ込まれることが多くなりまして。

正直、講演の対象としている学生の場合、しっかりとした就活テクニックを教えてあげられれば、僕のキャリアはそこまで重要視されません。

ただ、会社員として働いている大人の方から「就職をしたことがない若者が何をいっているんだ」という、些末な意見を言われるようになったんです。

会社員になることで、僕の話の中身が急に変わるわけではないのですが、外からの見え方を変えることで、信憑性が変わるなら、一旦変えてみようと。

今後も就活アドバイザーとしての活動は行っていきたいと思っていましたし、話の信憑性を高めるためにも一度就職しようと決めたんです。

ターゲットである就活生には信頼してもらえるようになったので、今度はガワからうるさいことを言ってくる大人たちに黙ってもらおう、と。

もちろん、それだけが会社員になった理由ではなく、多くある理由のうちのひとつですけどね。

その時にちょうど雑誌の企画で、東京ビッグサイトで行われている就活イベントで、女子大生をインタビューする仕事をしていたんです。

取材が早く終わったついでに、イベントも見て回っていました。そこでたまたまトレンダーズのブースが目に留まって、企業の説明を受けたんです。

―取材中に偶然見つけたんですね。なぜトレンダーズが目に留まり、入社に至ったのでしょう?

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霜田さん
たくさん理由はありますが、ひとつ挙げるとすれば、なんとなく会社員=縛りが多いといったイメージがあった中で、トレンダーズを見ていると、そうしたイメージがなかったということですね。

当時はまだはあちゅうさんなんかも在籍していて、活躍されていたので。

僕にとって、就職をすることで怖かったことのひとつが、SNSの自由を奪われることだったんです。フリーランスだったので、それまで縛りなく、SNSは活用してきていました。

僕の場合、個人の就活セミナーの集客もそこからおこなっていますし、本の宣伝や、もちろん人とのコミュニケーションにおいても重要なツールですよね。

だから、そこの腰が重くなったり、「これは所属企業ではなく個人の見解です」とかいちいち言わなきゃいけない不便さは避けたかったんです。

トレンダーズにはそういった制約はなかった、というのが理由のひとつではありましたね。

安心してパラレルワークができるのは、しっかりとした土台があってこそ

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―仕事内容より、パラレルワークやそれに付随する活動を認めてくれる会社を探していたということですね。では、現在トレンダーズで『チェリー』というメディアの編集長をされているということですが、入社直後からメディア事業に携わっていたのですか?

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霜田さん
いえ。最初は『チェリー』も立ち上げていませんでしたし、まずメディアを任されるとは思ってもいませんでした。入社してから半年くらいは、ライター実績を見込まれてプレスリリースを書く仕事をしていましたから。

それからまた半年経った頃、チェリーの前身となった『Social Trend News(ソーシャルトレンドニュース)』というメディアの立ち上げに携わらせて頂いたんです。

そこの編集長として2年ほど運営していたのですが、少し言い方は悪いですが、売り上げが上がれば上がるほど、コンセプトが薄くなりつつあったんですよね。

そこで「トレンダーズがメディア運営の会社という面を色濃くしていく上で、そうじゃないタイプのメディアがあってもいいんじゃない?」という意見が出て、コンセプトがしっかりした色のあるメディアを作ろうという話になりました。

そこから誕生したメディアのうちの1つが『チェリー』というわけです。

―なるほど。『チェリー』とは具体的にどういったメディアなのか解説して頂けますか?

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霜田さん
はい。『チェリー』は“永遠のオトナ童貞のための文化系マガジン”と標榜しておりまして、青春時代を引きずっているオトナたちに向けて、文化系情報をお届けするメディアです。

最近は俳優や映画監督さんへのインタビュー記事も多いです。基本的に自分が、苦しい青春をおくっていた時期に映画などのカルチャーに助けられてきたので、同じような経験を経た人たちを想定して、それらを紹介するようにしています。

人気記事としては、過去の仮面ライダーシリーズ俳優へのインタビュー記事はよく読まれていますね。個人的に平成仮面ライダーを見て高校時代を過ごしていたので、自然と深堀りした記事になるのだと思います(笑)。

「幼少期に仮面ライダーを見ていたけど、大学生になった今、俳優さんのインタビュー記事を見つけて、裏側の思いを知った」なんて言われると嬉しいです。

―『チェリー』編集長兼映画ライターとして活動されているわけですね。

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霜田さん
そういうことですね。映画ライターの活動の延長で、その映画のトークイベントの司会を務めさせて頂くこともあります。

また同様に就活講演の延長でも、大学生の実態を知る専門家として多くの学生向けイベントに登壇しています。

―霜田さん個人の仕事によるつながりが会社の仕事にも結びついていると。

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霜田さん
はい。いい意味で仕事と個人の活動とのバランスが取れていると思います。社外のイベントで僕を知って、トレンダーズに入社することを決めた学生もいました。

だからこそ会社にも僕が自由に動くことをメリットだと感じてもらっている、という部分は大きいですね。

大学卒業直後、不安定だったからこそ、多くに手を出して始めたパラレルキャリアの質が上がっているというか、それぞれの枝が太くなっていって、今は会社という土台もあるというのはありがたいことだなと思います。

独立するなら会社員のうちから準備を!収入がある時にビジネスを育てることが大切

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―さて、パラレルワークを実践し続けてきた霜田さんですが、ご自身で経験されて実感したパラレルキャリアのメリットとデメリットを教えてください。

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霜田さん
まずデメリットから言うと、パラレルワークをしながら会社に勤めていると、どこでもアウェーに感じます。

やはり、「この会社で骨を埋めます」というスタンスの方からすれば、こちらがどの仕事にも本気で取り組んでいたとしても、中途半端に見える部分はあると思います。

もちろん、高いクオリティの仕事をすることで、その誤解は解けていくと思いますが、どんな場所でも踏み込んだ最初の第1歩はアウェーだと覚悟しておいたほうがいいですね。

メリットで言うと、デメリットと逆説的ではありますが、ひとつの人間関係だけに縛られなくていいということでしょうか。

どうしてもソリの合わない人や組織があった場合、そことは仕事をしないという選択肢も生まれるわけで、そういう危機のときに逃げ場がなくて困る、ということがなくなります。

あとは、フリーランスと会社員どちらも経験してきているので、両方の方の気持ちが分かる、ということが挙げられます。

つまり、会社員一筋の方と比べ、フリーの方とのコミュニケーションは取りやすいというのはありますね。

―具体的にフリーランスと会社員との接し方にどういった違いがあるのですか?

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霜田さん
例えば、経験則ですが、大手の会社員の方は、とりあえず打ち合わせをしたがる傾向にあります。

ですが、あまり実がない打ち合わせの数を増やされるというのは、フリー側にとっては収入を減らされているようなものなんです。

細かい話ですが、交通費も重んでいきますし、何より、何も生み出さない会議は時間がもったいない。その時間、他の仕事をしていれば、それが収入につながっていきますからね。

そういったフリーの方が本当は止めてほしいことを僕のようなフリー出身者は感覚としてもっているので、外部発注の際は相手に負担にならないようなコミュニケーションを取れるように配慮はしています。

―両方の観点から見られるというのは武器ですね。では、そういったことを踏まえて、どういった人がパラレルキャリアに向いてる、もしくは向かないと思いますか?

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霜田さん
今いる1つの会社の中でだけ偉くなりたい人は向かないと思います。

その会社で出世したいとか、1つの世界の中で命をかけて生きていきたい、と既に人生プランが決まっている方はその仕事、その中での人間関係などに全ての時間を注いだ方がいいのではないでしょうか。

逆にまだ自分に何が向いているかわからない上に、今いる身のまわりの人から褒められなくてもいい、という人は向いていると思います。

結果的に10人に褒められるのであれば、同じ会社の10人ではなく、10コの会社のひとりひとりに褒められたいという人。様々な価値観の人たちと接したいという人。

様々な仕事場、人と接することで物事を複眼的に捉えられると、ひとつの価値観に染まらずにすみますよね。

だから僕は、外に出ていろんな場所に顔を出すようにしています。

―独立・起業を考えていて、その前段階としてパラレルキャリアを踏もうとしている初心者は、まず何から手を付けた方がいいですか?

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霜田さん
まず、最初からお金がもらえると思って仕事を始めない方がいいのでは、という提案はできますね。

僕の場合、就職本を出してイベント講演は行っていたものの、そこで知り合った就活生に単独でお願いされる就活相談は全てタダで受けていた時期がありました。

その中からキー局のアナウンサーが出たり、実績が出はじめてから、講座を提案してくれる企業などが出てきて、お金をもらえるようになりました。そこまでに約2年かかりましたけどね。

なので、固定の収入がある会社員であるうちに、タダでもいいから何か活動をやり始めることをお勧めします。

そうした活動を何年か経て、いよいよ独立しようと思った時に、あなたの仕事が社会から必要とされるものになっていて、金銭化することができるそういうステップアップが理想的なんじゃないかと思います。

(取材・文=佐藤主祥 https://twitter.com/kazu_vks

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