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起業家・先輩から学ぶ

大手1%ばかり見れば経営は失敗する。リアルとデジタルのマーケティングTOPが語る事業計画のキモ

大手1%ばかり見れば経営は失敗する。リアルとデジタルのマーケティングTOPが語る事業計画のキモ

起業しよう!という方にとってもそうでない方にとっても、何かしら事業に関わろうとするのであれば、どうあがいても避けて通ることのできない『マーケティング』

現在進行系で悩まれている方も、多いのではないでしょうか?

今回はアントレ創刊20周年特別記念企画。リアルとデジタル、各業界のマーケティングリーダーお二人をゲストにお招きさせていただき、『歳の差20歳の社長対談』を開催。

それぞれの領域で大活躍されるお二人の、起業ストーリーとマーケティング論対談、ぜひお楽しみください。

福井 康夫(48)写真右
SVのアウトソーシングや店頭状況の暗黙知データ可視化など、リアルな流通業界に特化したマーケティング支援サービスをいくつも手がける株式会社メディアフラッグの代表取締役社長。近年は子会社であるImpactTVから人の動きを読み取るサイネージを用いたフィールドトラッキングソリューション「PISTA」をリリースするなど、IoT領域への進出でも注目を集めている。


渋谷 修太(28)写真左
アプリ分析プラットフォーム『App Ape』や、Webサイトをアプリに変換するアプリ作成サービス『Joren』などを運営するフラー株式会社の代表取締役CEO。2016年にはForbes「30アンダー30」にも選出された、デジタルのマーケティングにおける最注目人物。

国内アプリマーケティングの第一人者…といっても過言ではないフラーの渋谷さんに、リアル店舗のマーケティングをアウトソース化によって文字通り構造から作り変えてしまったメディアフラッグの福井さん

まぁなんとも豪華なお二人ですが、果たして彼らは何をどう考えて起業し、なぜ現在の事業を起こすことになったのか?さっそく伺っていきましょう。

明確なイメージなし?「起業しなければ」という焦りからの ”割と平凡” なスタート

―まずは『なぜこの事業で起業を?』というところから。いわゆる「わかりやすい事業」ではないマーケティングの世界で、なぜお二人は今のビジネスをはじめられたんでしょう?

―福井
私はいわゆる『脱サラ組』なんですが、新卒で銀行マン ⇒ セブンイレブンの店長 ⇒ 本部 ⇒ 35歳で独立。。。という過程で、実は『起業したいという焦り』はあるものの、「この事業でやる!」といったような明確なイメージはもってなかったんですよ。

ただ漠然と30代後半をサラリーマンのまま迎える恐怖だけがあって、ちょうどそのころ流通業の上場ラッシュがあって…。「じゃあ流通業界で何かやろう」くらいな考えだったんです。

なんと。

いや、起業から数年でマザーズ上場を果たしたメディアフラッグの社長…というと、なんとなく『明確なビジョンを持って脇目も振らずに駆け抜けてる人』なイメージが勝手にあったもので。。。ちょっとビックリですね。

なんというか、妙に親近感が。

―福井
いや本当に。渋谷さんはもしかしたらそういう方なのかもですが(笑)僕は大手企業にいた時間が長かったせいか、割と『サラリーマン思考』な部分があるんですよ。

直接的なきっかけはセブン時代に『大きな会社だと新規事業って難しい!』と感じたことだったりしますが、いわゆる「ザ・起業家」てタイプでは無いんですよね。

と、そう語ってくれた福井さん。

具体的な起業時の思考としては以下のような「自身の経験値からのニーズ分解」だったそうですが、案の定周囲からは思いっきり心配されたんだとか。

福井さんの起業時マインドフロー

  • 流通業界での経験を活かしたい
  • 自分の在籍したセブンは強い。では何が強かったのか?を思考
  • SVとPOS(人とITへの投資)がすごいから強いと仮定
  • 他のフランチャイズに目を向けると(ほぼ)できてなかった
  • ではアウトソーシングできればニーズはあるのではないか?という仮説
  • 覆面調査、ラウンダー(メーカーの営業代行、店頭販促フォロー)サービスはあったが非効率的だった
  • ではそれをより効率化させてサービスにしてみよう

経験から得た「大手の強さ」に対し仮説を立て、そこに対するサービスの不足をチャンスと捉えた…ってとこでしょうか。いや、言うは易し行うは難し。って話なんでしょうけども。。。

ちなみに渋谷さんの場合、どんな感じだったんでしょう?

続けて伺ってみます。

やると決めたらまず行動。ルールの転換期を見逃さない決断のスピード

―渋谷
僕の場合、高専時代に「起業しよう!」てだけ友人と決めてたんですよ。で、大学在学中に1人でシリコンバレーに行ってみて『ITすげー!』てなって、新卒で当時黎明期のソシャゲ系ベンチャー入社 ⇒ 数年で起業。みたいな感じです。

福井さんと同じく…かどうかは分からないですが、あまり明確な事業イメージは持ってなくて、せいぜい『スマホすごい!これでなんかやろう!』くらいだったと思います。

おおお…。こ、これはまた何というか。

お手本のような『イマドキの起業家』って感じですね。それこそシリコンバレーの偉人たちのような。。。

―渋谷
いやいや、そんな大層な話じゃないですけどね(苦笑)

年齢が年齢だったんで焦り…みたいなものはあんまり無かったんですが、とにかく業界全体の勢いがすごかったんで。それに乗っからないとヤバイ。置いてかれる…!みたいなイメージはずっと持っていました。

渋谷さんの場合、ちょうどスマホが世界に現れ始めた時期にソーシャルゲーム系メガベンチャーに在籍。

マーケットそのものが突然巨大化する渦中にいたため、以下のようなマインドフローで起業までのスタートを切ったそう。

渋谷さんの起業時マインドフロー

  • ソシャゲ系ベンチャーでスマホ対応を担当
  • 業務をやりながら『いや、ここはアプリだろ!』と強く感じる
  • Webでは当たり前の数値系のマーケティング分析が当時アプリに無かったことに着目
  • ではそこにツールを投下できればニーズはあるのではないか?
  • とりあえずやっちゃおう!で起業

なんというか、間違いなくニーズが爆発することを確信していた…て感じのアクセルの踏み切り方ですよね。

iPhoneが誕生し、今まさにマーケットのルールが変わる!というタイミングにおいて、何よりもスピードを重視したこと。

あらゆる事業に言えることでしょうが、「期を見る」ってやはり重要なんですね。改めて感じさせていただきました。

増え続ける『取得可能なデータ』と、これからの経営者に求められる能力

―お二人とも形は違えど「マーケティング」がメイン事業。ということで、これから独立・あるいは副業などで事業を開始して、マーケティングと向き合うことになる方へ伝えたいことなどありますか?

こちらの質問もまずは福井さんから。

それこそ数え切れないほどの店舗経営者さん達と一緒に事業を作ってきた福井さんからのアドバイス、気になります。

―福井
うーん。そうですね…。

例えば、リアルな店舗運営で「経営に役立ちそうなデータを集めよう」なんて考えると、それこそ本当に膨大なデータが取得できてしまうんです。今の時代は。

リアル行動における施策と結果の相関…だけではなく、例えばサイネージとカメラを使った人認証からの顧客特徴の取得。それに合わせたリアルタイムでのアプローチ…などなど。

―福井
ただ、どれだけそういったマーケティング上必要そうに見える情報を集めたところで、「見て知るだけ」では何の意味も持たないんですね。

なので、やはり重要なのは『何を重要とみるか?』という人間の判断だと思っています。それを完璧に我々がサポートできれば理想なんですが、やはり完全とは行かないですしね。

うーむ確かに。

現状暗黙知扱いされている「感覚的になんか正しい」って部分をデータによって可視化することができるようになった。それは素晴らしいこと…とはいえ、あらゆるデータを眺めて片っ端からなんとかする…なんてことは人間には無理ですからねぇ。

どの情報を重要と見るか?あるいは判断に足りない情報は何か?

これを見るためのスキルは結局経営する側の人間にとって重要。ということですねぇ。

―渋谷
デジタルの世界はその傾向はさらに顕著かも知れないですね。とにかく取ろうと思えばあらゆるデータが取得できてしまいますから。

リアルよりも「なんとかするための施策が打ちやすい」ってのも理由の1つになるとは思いますが、とにかく『あれが悪いんじゃないか』『こうすればいいんじゃないか』って仮説を立てまくってカウンター撃ちまくればなんとかなる…てほど単純にはいかないんですよね。

と、そう続けてくれたのは渋谷さん。

確かに、それこそフラーで提供している『Joren』(50万買い切りでWebサイトをネイティブApp化できる)みたいな廉価なツールのおかげで打てる手が多くなっている分、デジタルこそこの課題は浮き彫りになりやすいかも…?ですね。

―渋谷
やれ『マーケティングだ!』と息巻いてデータをかき集めても、ただ闇雲にやったんでは、もはや人間が処理できる情報量じゃないんですよ。

なので、『自分たちの事業にとって見るべき相手(データ)はどこにあるのか』これを検討し、決めていくフローにこそ大事なポイントはあるはず。なんて思ってますよ。

ですよねーー。いや、ホント耳が痛い。

何というか、とても『当たり前の話』なんですが、それこそ、ソコを上手く突いて起業~事業拡大を成功させてきたお二人から聞くと、身が引き締まる思いです。

大量のデータ並べて「こうやったら○○なるんじゃないか?」なんて仮説思いつくとすごい仕事やった感ありますもんね。そうじゃない…というか、それだけじゃ駄目だよ。と。

1%の大手より、99%のマーケットに届く思考を

―では最後に『事業を上手いこと拡大していく』ために、お二人がどう考え、どうマーケットと向き合っているのか?お伺いしてもよろしいでしょうか?

―渋谷
大きな目で社会全体を見ることが重要なのかな?とは思っています。

巨大資本を持った大手相手に商売すれば、たしかに単発ではうまくいくことも多いんです。が、事業を拡大しようと思ったら「強い1%の企業をより強くする」という考え方より『99%の周回遅れの企業をどう引っ張り上げるか?』のほうが上手くいくんじゃないかな?と。

―福井
同感ですね。ウチの事業はまさにそのスタイルですし。

この国にはもっともっと「勘と度胸」のみの判断から、根拠をもったデータ・ドリブンな経営をするべき小さな企業がたくさんあるんです。そしてそれがひいては大きな意味での業界・事業・顧客の成長や成熟につながっていくと信じています。

遅れてしまった99%の企業にこそ、提供すべき価値のあるビジネス。これをしっかり創り上げていきたいですね。

な る ほ ど。

言われてみればその通り。一見派手に見える、実際金額も大きくなる大手との仕事ばかりに目が行きがちなのが、なんとなーく普通の感覚と思っていましたが、そうではなくそれだけでは足りない。と。

事業を起こすのであれば、より大きな視点で「どの業界、どのジャンルの、どんな99%の遅れに対し価値を提供していくべきか」これを持たなければ大きくはしていけない。ということですね。

コンシューマ相手の商売にせよ、企業相手の事業にせよ、どちらにも共通する大事な言葉、いただきました。

お二人とも、本当に多忙な中お時間いただきましてありがとうございました!

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