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『おにカノ』をどうしても描き上げたかった。なつきゆかさんがマンガ家になった理由

2020年10月20日

『おにカノ』をどうしても描き上げたかった。なつきゆかさんがマンガ家になった理由

手段と目的。

何か達成したいことがあるから独立・起業をするのか。はたまた、独立・起業そのものが目的なのか——。
独立・起業における目的の設定は、開業後の人生を大きく左右することでしょう。

今回お話を伺ったのは、マンガ家/イラストレーターのなつきゆかさん。

現在『おにいのカノジョに恋をした僕』という作品をLINEマンガにて連載中のなつきさんですが、実はもともとはイラストレーターでした。そしてイラストレーターからマンガ家へ転身したのには、ある“目的”があったからだそうです。

今回はなつきさんのキャリアを振り返るとともに、マンガ家になった理由と目的、そして代表作『おにカノ』へ懸ける想いを伺いました。

<プロフィール>
なつきゆかさん
マンガ家/イラストレーター

幼い頃からイラストを描き始めるが、高校時代にある理由からイラストを描かなくなってしまう。高校卒業後、プログラマーとして就職。就職してから3年半後、イラストレーターになることを決意し再び絵を描き始める。2011年にイラストレーターとして独立。

その後しばらくはイラストの仕事をしつつ、Twitterにてストーリー性の強いイラストを描き始める。そのイラストから人気を博し、始まったのが『おにいのカノジョに恋をした僕』。現在は同作品をLINEマンガにて連載中。

イラストを描き溜めたノートを破り捨てられた——。なつきさんがプログラマーになり、再び絵の世界に戻ってくるまで

——現在マンガ家として活躍されているなつきさん。絵を描き始めたきっかけはなんでしょう?

なつきさん
きっかけは特にありません。物心ついた時からもう、絵を描くことが大好きでした。家でも学校でも、ずっと絵を描いていたのを覚えています。

だからもともとマンガ家やイラストレーターなど、絵に関する職業に就きたいと思っていました。でも家族に「絵では食べていけない」と言われ続けて、諦めてしまって。

そして高校生の時に、絵を描くこともやめてしまったんです。

——なぜでしょう?

なつきさん
ある日家に帰ると、今までノートに描いてきたイラストやマンガを家族に全て破り捨てられていました。「まだこのノート、使えるやろ」って、何も描かれていないページだけを残して渡されて。

勝手に中を見られたことも、描いてきたものを失ったことも、怒りすら通り越して「無」になり。それがきっかけで絵を描くことをやめてしまいました。

——なんと言ったらいいのでしょうか……。その後は?

なつきさん
高校を卒業してすぐプログラマーとして就職しました。もともとPCを触ることも嫌いではなかったですしこの先もPCの知識は役に立つだろうと思って。

高校もIT系に強い学校に進学して、その流れでプログラマーになりました。大学や専門学校に行かなかった理由は、早く家を出て自由になりたいという気持ちが強かったからです。

その会社には3年半ほど勤務して退職しました。仕事は嫌いではありませんでしたが、人間関係に疲れてしまって。

——そして再び絵の世界に戻ってきた、と。

なつきさん
はい。会社をやめて何をしようかを考えた時に「また絵を描きたい」って思ったんです。もう家は出ていたし、今度こそやりたいことをやって生きていきたくて。人間関係にも疲れてしまったので、家で誰とも会わずにできる仕事がしたかったんですよね。

とはいえ高校時代から数年間、絵を描いていなかったので正直最初の頃の絵はひどかったです(笑)。

それでも「やりたいことができなければ、生きている意味がない」と思っていたので、貯金が尽きて食べていけなくなったら死ぬくらいのつもりで、がむしゃらに。安いイラストの案件をこなしながらいろんなコンペに応募していました。

そして貯金残高数千円、いよいよ来月の家賃が払えない……というところで乙女ゲームのキャラクターデザインが決まりどうにかなりました。

会社をやめて約1年後のことでした。

『おにカノ』は、たった1枚のイラストから生まれた。

——その時からイラストレーターとしてのキャリアがスタートしたんですね。

なつきさん
はい。最初の乙女ゲームの仕事が決まった時に開業届を出しました。それが2011年9月だったので、丸9年になります。

イラストの仕事の中でも、私は特に着彩作業(※)が好きだったので、ソーシャルゲームの着彩作業をメインに安定した生活費を稼ぎつつ、ゲームや教科書、児童書、ドラマやアニメの挿入画などいろんなジャンルのイラストを描かせていただきました。

※色を塗ること


↑なつきさんが担当した作品の例。CM用イラスト。

なつきさん
現在はマンガ連載だけで手一杯なので、イラストレーターのお仕事はお休みさせていただいております。

——独立後はイラストの仕事を中心にされていたと。マンガ家として活動し始めた経緯をお聞かせください。

なつきさん
ある程度、イラストの仕事が軌道に乗ってから、この先も絵で食べていくにはマンガも描ける方が有利だろうと考えていたんです。

ただ、何度かアンソロジー(※)系のマンガのお仕事をさせていただいた時に、あまり上手に描けなくって。

「やっぱり自分にはマンガは向いていないのかな……」と、どこか苦手意識を感じてしまって、手が出せずにいました。

そんな時にTwitterでラフに描いた短ページのマンガをよく見かけるようになって「これくらいなら描けるかも?」と思ったことが描き始めたきっかけです。

とはいえマンガを公開する勇気はなかなかなくて……。まずはストーリー性の強いイラストから描き始めて公開していきました。その中でも特にこのイラストが好評だったので、マンガにしてみようと思ったんです。

その作品が『おにいのカノジョに恋をした僕』(以下『おにカノ』)でした。

※複数の作家による短編や、読み切りの作品を収録した出版物のこと。


↑話題となったイラスト。なつきさん自身、このイラストへの思い入れも強かったという。

マンガ家になることは、目的ではなく手段。なつきさんが『おにカノ』へ懸ける想い

——『おにカノ』は、この1枚のイラストから生まれたんですね。

なつきさん
はい。とはいえマンガを続けていく自信もなかったので「いかに手を抜いて、自分が楽しく、長く描き続けられるか」という低い目標からスタートしました。

それこそ最初は「イラストレーターからマンガ家になる」というつもりなんて全くなくて。完結したら記念に印刷して、本にしようくらいの軽い気持ちだったんです。

でもだんだんとイラストのお仕事の合間だけじゃなくて、もっと『おにカノ』を描いていたいと本気で思うようになっていきました。

途中、ありがたいことに数社から『おにカノ』とは別のマンガ連載のお話をいただくこともあったのですが、どうしても『おにカノ』以外を描く気になれなくて。

とはいえ自分の好きなもの(『おにカノ』)を商業で連載することは難しいかな……と思っていた矢先にLINEマンガさんから声をかけていただきました。夢みたいな話すぎて、正直最初は詐欺だと思ったくらいで(笑)。

——1枚のイラストから始まった『おにカノ』。語弊を恐れず言えば、なつきさんはマンガ家になりたくて作品を描いたのではなく、『おにカノ』を描きたいと思った結果、マンガ家になっていたと。

なつきさん
はい。だからもしLINEマンガさんのお話も「別作品での連載」という条件だったら、私はマンガ家になっていなかったと思います。

ちなみに『おにカノ』の連載が決まった後も、イラストのお仕事は続けるつもりでした。ただ『おにカノ』を描く時間がもっと欲しくて休業することにしたんです。

同じ頃、アニメのキャラクターデザインのお仕事も決まっていたのですが、どっちも中途半端になって迷惑をかけるのが嫌で……。

アニメのお仕事というのはキャリア的にも大きなステップアップになるのですが、結局私は『おにカノ』を描くことを選びました。もちろん、後悔はしていません!

——なつきさんがお仕事をされる上で、大切にしていることはなんでしょう?

なつきさん
「やりたいことをやって生きたい」と思っているので、イラストもマンガも、とにかく自分が描きたいものを楽しく描くことを大切にしています。

とはいえマンガの連載を続ける上で「描きたいものだけを描いていては続けられないんじゃないか……」と何度も悩んできました。

——お客さんに読んでいただく「商業マンガ」のジレンマですね。

なつきさん
そうなんです。でも「自分が楽しくないものは、読者さんも楽しくないだろう」と信じて、描きたいものを描き続けていきたいです。意外にも私の特殊な性癖も、読者さんは受け入れて読んでくださっているので感謝しかありません(笑)。

またイラストもマンガも好きなので、両方取り入れたコンテンツを作りたいなと思っています。マンガの途中でカラーイラストを入れたり、マンガのラストにイラストを載せているのもその想いからです。


↑ここぞ、という時に登場するカラーイラスト

——作品についてはいかがでしょう?

なつきさん
作品を通じて、読者さんに「何かを感じて欲しい」ですね。

実は『おにカノ』は、中学時代の時にノートに描いたマンガを元にしています。


↑中学生の時に描いた『おにカノ』の元になった作品の一部

なつきさん
残念ながらそのノートは家族に捨てられてしまったので、記憶を頼りに描いてきました。そのせいで思い入れが強くなった結果、ここまで描き続けることができたんだと思います。

そしてそれが最近、第1部として描き終わりました。第1部では登場人物のほとんどが言いたいことや本音を言わずこじれていく話なのですが「言いたいことは、ちゃんと言葉にして言わないと伝わらない」ことをテーマに描いてきました。

私自身、言いたいことをいえずに後悔してきた過去があるので自戒の念を込めて。第2部では大人になった自分が描きたいもの、伝えたいことを描いていこうと思っています。

と、こんな感じで自分の中でテーマを決めて描いていますが「好き」でも「嫌い」でも、作品を通じて読んでくださった方の何かしらの感情を動かせたら嬉しいですね。

もちろん、好きになっていただけたら1番嬉しいです!

イラストレーターからマンガ家へ。走りながら見つかる夢も、きっとあるはず

——なつきさんの今後の展望を教えてください。

なつきさん
イラストレーターとしての夢はだいたい実現してきたので、今後はマンガ家としての夢を実現していきたいです。

連載当初は『おにカノ』以外の作品を描きたいとは思えなかったんですが、LINEマンガの担当さんと出会ったことで、今はいろんな作品を描いてみたいと思えるようになって。

『おにカノ』が連載終了になったとしても、きっと違うマンガを描くと思います。

そして本になった自分のマンガを手に取って読むことがこどもの頃から夢だったので、いつか実現させたいですね。

——最後に、読者の方へメッセージをいただけますか?

なつきさん
もし今の仕事が辛くてどうしても辞めたいなら、心が壊れてしまう前に辞めて欲しいです。そしてもし、目指したい夢を周りに反対されても、簡単に諦めないで欲しいです。

無責任に思われるかもしれませんが、生きていさえすればどうにかなりますから。

そして仮に、やりたくない仕事や行きたくない進路に進んだとしても、その経験は無駄にならないはずです。私も会社員時代の経験が、フリーランスになってからものすごく役立ちました。独立・起業前にどこかで経験を積むのはとても良い選択肢だと思います。

会社にいるにせよ独立をしているにせよ、「やりたい方向へ徐々にシフトしていく」というやり方が安全で良いんじゃないかと。

私でいうところのイラストレーターからのマンガ家への転身のように、走りながら見つかる夢ややりたいことも、きっとあるはずです。自分に合った無理のない方法で、やりたいことができるのが、1番なのではないでしょうか。

取材・文=内藤 祐介

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