フリーランスが活躍している代表的な業界としてよく例に挙げられるIT業界。ITフリーランスとは、ITスキルを使って働く人々を指す言葉です。 ITフリーランスにはさまざまな職種がありますが、そもそも“フリーランスとしての働き方とは”“案件はどうやって獲得するのか”など、フリーランスについて知らないことも多く踏み出せないでいるという方もいるのではないでしょうか。今回はITフリーランスになるために知っておきたい情報を紹介していきます。
ITフリーランスとは
ITフリーランスとは、ITのスキルを活用しフリーランスとして働く人の総称として使われる言葉です。ITフリーランスの職種には“エンジニア”“プログラマー”“Webデザイナー”など、さまざまなものがあります。
そもそもフリーランスとは“働き方”を表す言葉で、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(以下、フリーランス協会)では「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」と広義的に定義しています。
企業に在籍せず、クライアントと直接、業務契約を結んで仕事をする人を幅広くフリーランスと呼んでいます。
「プロフェッショナルな働き方・フリーランス白書2018」(プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会)
(P.5より)
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ITフリーランスのメリット・デメリット
ITフリーランスは、先に述べた通りさまざまな業種があります。ITフリーランスのメリット・デメリットは、職種によって若干の差があるかもしれませんが、共通していえるメリット・デメリットを中心にお伝えしていきますので、参考にしてみてください。
【メリット】
- 働く場所や時間の融通が利く
- 単価や内容で仕事を選ぶことができる
- 年収アップを目指せる
【デメリット】
- 収入は不安定になりやすい
- 最初のうちは信用を得ることが難しい
- クライアントとの交渉や事務作業など一連の業務を自分で行わなければいけない
ITフリーランスのメリット
ITフリーランスのメリット3つについてお伝えします。
まずITフリーランスのメリットとして挙げられるのは“働く場所や時間の融通が利くこと”です。家庭や個人の事情に合わせて、時短勤務や地方移住なども可能です。
そして、ある程度の業務経験や実績が必要にはなりますが、自分の経済状況や興味関心で仕事を選べたりするようにもなるでしょう。キャリアアップに活用したり、単価に関わらず積極的に仕事に挑戦したりすることができます。
さらに、そういった業務を通して年収アップも目指せるでしょう。ただし、高単価な案件は比較的常駐型も多くなっています。自分が目指す将来像や現在のライフスタイルと照らし合わせながら、働き方を工夫したりキャリアプランの見直しをしたりすると良いでしょう。
ITフリーランスのデメリット
続いて、ITフリーランスのデメリット3つについてお伝えします。
ITフリーランスに限ったことではありませんが、収入は不安定になりやすいです。フリーランスは仕事を受注できなければ収入が減ったり無収入になったりします。まずは安定して仕事を続けていける状態を作っていく必要があるでしょう。
また、案件を獲得するには、大前提としてクライアントの信用を得なくてはいけません。安定して案件を請け負っていたり、誰が見ても明らかに優秀な実績があったりすれば変わってくるかもしれません。ところが、クライアントの中には対企業との取り引きと比べると「フリーランスに対する信用度は低い」と感じるクライアントもまだまだ多いのが現状でしょう。また、フリーランスの場合はローンを組めなかったり、融資を受けられなかったりということも考えられます。フリーランスに踏み切る場合には、そういったリスクもあるということを十分に理解しておいてください。
企業に属している時は、クライアントとの交渉や事務作業を他部署に任せていたという方もいるでしょう。しかし、ITフリーランスとして仕事をしていくのであれば、こういった一連の業務をすべて自分で行う必要があります。“コミュニケーションや細かい事務作業などが苦手”という方は、慣れるまで負担に感じることもあるかもしれません。
ITフリーランスの働き方
ITフリーランスのメリット・デメリットについてお伝えしてきました。同じITフリーランスでも、立場や職種が変われば、メリット・デメリットは変わるかもしれません。しかし、フリーランスという働き方に比較的共通するものをご紹介しましたので、この他にも自分にとってのメリット・デメリットは何かを改めて考えてみてください。
続いては、ITフリーランスの働き方として代表的なものを3つご紹介します。
【常駐型】
クライアントの職場に常駐し、委託された業務を担当する働き方です。正社員や派遣社員と働き方は似ていますが、報酬や期間などは契約で決められていたり、別案件の受注や副業も自由に行えたりします。ITフリーランスの働き方の中では、比較的、安定した収入が得られるのも常駐型の特徴です。
【自前サービス型】
ITサービスを開発して収益化を目指します。スマホのアプリやゲーム、Webサービス、アフィリエイト系のブログなどの開発といった業務を行います。報酬は、サービス内に掲載する広告やユーザーの課金によって発生します。
【在宅・リモート型】
業務内容にもよりますが、自宅やカフェなど自分の好きな場所で働けるのが特徴です。請負契約の場合はクライアントから委託された成果物を納品まで請け負う受注開発を行ったり、準委任契約の場合は労働力の提供で報酬を得たりします。
ITフリーランスとして独立する前に
ITフリーランスとしての働き方についてお伝えしてきました。
続いては、ITフリーランスとして独立する前にやっておいた方が良いことを紹介します。特に、企業に属している人がITフリ―ランスになる場合に参考になることですが、全くの未経験の方や他業種からITフリーランスを目指すという方にも参考になるでしょう。何の準備もなく会社を辞めてフリーランスになると、契約がうまくいかなかったり、思わぬ資金難に陥ったりと意外な落とし穴にはまってしまうかもしれません。ITフリーランスとしてスムーズに働けるように、しっかりと準備をしておきましょう。
【ITフリーランスとして独立する前に】
- スキルと実績をつけておく
- 人脈を作っておく
- 貯金をしておく
- クレジットカードを作っておく
- 円満退社する
スキルと実績をつけておく
ITフリーランスの業務には、未経験で始められるものや特別なスキルを必要としないものもありますが、多くの場合は実務経験が必要です。“未経験可”という案件もありますが、極端に単価が低いなどといったトラブルにつながる場合もあります。
会社に属している場合は、個人の能力に関わらず仕事を続けられるというケースもありますが、ITフリーランスは個人の能力次第です。高いスキルや豊富な実績があれば、クライアントからの信頼を得やすく案件も獲得しやすくなるでしょう。企業に属していることで経験できる案件もたくさんあるので、ITフリーランスとして独立を考えだしたタイミングで、スキルアップやより多くの実績を積み重ねておくことが重要です。
人脈を作っておく
スキルや実績と同じくらいに大切なのが“人脈作り”です。ITフリーランスとして仕事を受注するには営業活動が必要です。企業に属しているからこそつながりを持つことができるクライアントもいるでしょう。ITフリーランスとして独立するのであれば、企業の一員としての付き合いで終わらせず、対個人で仕事の話ができるような人脈作りや信頼を獲得しておくことが大切です。
貯金をしておく
ITフリーランスに限った話ではありませんが、フリーランスにはボーナスや有給休暇といった手当や福利厚生はありません。仕事が途切れてしまったり体調不良で仕事ができなかったりすれば、収入はなくなります。安定的に案件が獲得できるようになるまでは、赤字になる月も出てくるかもしれません。最低でも6ヵ月程度は収入がない状態でも生活できるだけの貯金をしておくと良いでしょう。
クレジットカードを作っておく
ITフリーランスとして独立した直後は収入が安定しないことが多いため、会社員や公務員と比較すると、銀行からの借り入れやローンを組むための社会的信用度が低くなります。クレジットカードの申請も同じ理由で審査が通りにくくなるため、個人名で発行できるクレジットカードを申し込み、個人用と事業用で使い分けると良いでしょう。
フリーランスを目指す人に“なぜクレジットカードが必要なのか”“個人用と事業用で使い分けた方が良い理由”は、“資金繰りの際に役立つ場合があるから”です。
クレジットカードの大きな特徴の1つに“手元に資金がなくても支払いができる”点が挙げられます。クレジットカードを利用した支払い分の引き落としは、多くの場合1、2ヵ月後です。実際の支払いまで期間があることで、たとえ今手持ちの資金がなくても、カードの支払日までに資金を得られる予定があるならば、クレジットカードを利用することで資金のやりくりができます。毎月決まった日に決まった金額が支払われないフリーランスにとって、ある程度、支払いをコントロールできるクレジットカード決済は活用しやすいでしょう。
円満退社する
こちらもIT業界に限った話ではありませんが、所属していた会社と同業種で独立する以上は、可能な限り円満に退社できるように努めましょう。どの業界もそうですが、IT業界も広いようで狭い業界です。これまでお世話になった所属企業に対して不義理を働けば、将来のクライアント候補に悪い評判が広まる恐れは十分にあるでしょう。
良好な関係のまま退社することで、所属していた会社からクライアントを紹介してもらえたり仕事を依頼されたりと、さまざまなメリットにつながる場合もあります。“立つ鳥跡を濁さず”自分のキャリアに傷をつけないためにも円満退社を目指せると良いでしょう。
ITフリーランスの案件・求人の探し方
ITフリーランスとして独立する前にやっておいた方が良いことを紹介しました。本記事でご紹介した内容は、フリーランスとして独立する・しないに関わらず、取り組んでおいて損はありません。将来の選択肢を増やすといった意味でもぜひ取り組んでみてください。
続いては、ITフリーランスの案件・求人の探し方について、次の3つを紹介します。
- クラウドソーシングサービスの利用
- エージェントの利用
- 知人に営業をかける
次からそれぞれの特徴などを見ていきましょう。
クラウドソーシングサービスの利用
ITフリーランスの案件・求人の探し方1つ目は“クラウドソーシングサービスの利用”です。
クラウドソーシングサービスのサイトには、豊富なジャンルの案件が掲載されています。“IT業界に特化したクラウドソーシングサービスへの登録”はフリーランスの第一歩かもしれません。経験の浅い人でも受注できる案件やリモート・在宅ワーク可能な案件もあり、副業として取り組める仕事も多いので、積極的に利用しましょう。
クラウドソーシングサービスの選び方は、知名度や案件数の多さだけでなく“案件の単価交渉ができる”“高単価案件に特化している”“サポート体制がしっかりしている”など、それぞれに特徴があるので、そういった点にも注目すると良いでしょう。目的に合わせて、いくつかのサイトを並行して利用することをおすすめします。
エージェントの利用
ITフリーランスの案件・求人の探し方2つ目は“エージェントの利用”です。
ITフリーランス向けのエージェントサービスに登録することで、希望条件やスキルに合わせて案件を紹介してもらえます。営業活動を代行してもらえるのは、フリーランスにとって大きなメリットです。営業活動を任せている分、時間が手に入りますし、スキルアップのための勉強に集中することもできます。ただし、エージェントを利用する場合は、ある程度のスキルが求められることが多いので、IT業界・職種が未経験という方は、残念ながらエージェントを活用するメリットはあまりないので、他の方法で進めましょう。
知人に営業をかける
ITフリーランスの案件・求人の探し方3つ目は“知人に営業をかけること”です。
知人に直接、営業をかけたり、クライアントを紹介してもらったりする方法です。SNSなどを活用して、より多くの知人に自分を売り込みましょう。すぐに案件につながるとは限りませんが、知人であれば“意思疎通がスムーズできるために案件に取り組みやすい”というメリットもあるでしょう。自分のスキルを知っている人の紹介であれば、相性の良いクライアントを紹介してもらえるかもしれません。
ただし“自身の仕事のクオリティ”が“相手との関係性”に直接影響することになるので、人間関係を悪化させないためにもコミュニケーションをしっかりとって齟齬がないよう気を遣う必要がある点に注意しましょう。
ITフリーランスとして活動し続けるコツ
ITフリーランスの案件・求人の探し方についてお伝えしてきましたが、この他にも案件・求人の探し方はあります。既にフリーランスとして活動している知人がいれば、話を聞いてみるのも良いでしょう。「フリーランスは何でも1人でやらなければいけない」という気持ちになるかもしれませんが「人に相談してはいけない」というわけではありません。異業種のフリーランスでも、立場が同じため参考になることもあるものです。1人で悩まずに人を頼ることも大切です。
最後に、ITフリーランスを続けるコツを3つ紹介します。
- 需要の高い技術獲得や上流工程を担当できるようにする
- 交渉やコミュニケーションスキルを身に付ける
- 副業も視野に入れる
需要の高い技術獲得や上流工程を担当できるようにする
技術は日々進歩しています。時代に合わせて需要の高い技術の獲得や実績を積むことは、ITフリーランスとして長く活躍するためにも必要なことです。
また、上流工程(プロジェクトマネジャー、プロジェクトリーダー、設計書の作成や要件定義など)を担当できる人材はまだまだ不足しています。単価や需要が高い案件の獲得につながる可能性があるので、実務レベルで上流工程の仕事ができるようになると、収入アップも目指せるでしょう。
交渉力やコミュニケーションスキルを身に付ける
ITフリーランスに交渉力やコミュニケーションスキルは欠かせません。単価や受注条件といった交渉、クライアントの要望を引き出すコミュニケーションスキルなどは、ITフリーランスを続けていく上で避けては通れない要素です。
交渉次第で収入が決まる他、仕事を受注できるかどうかといったところまで差が出ることがあります。クライアントに振り回されることのないように交渉やコミュニケーションスキルを身に付けて、自分のレベルに見合った仕事を獲得していきましょう。
副業も視野に入れる
ITのスキルを活かせる副業はたくさんあります。例えば“プログラマーとしての本業を中心に、プログラミングスクールで講師を務める”といったスポットでこなせる案件を副業として始めることも視野に入れてみてください。
安定して長くITフリーランスとして活躍できるように、また、収入アップを目指したり新規案件の獲得につなげたりするためにも仕事の幅を広げておくことは大切です。
ITフリーランスの働き方は1つじゃない
今回は“目指せ!ITフリーランスへの道”と題して、その働き方や案件獲得方法などをご紹介してきました。今回ご紹介したのは代表的なもので、これだけが正解というわけではありません。フリーランスとしての働き方は十人十色です。
ITフリーランスになりたい理由や目指す将来は違っても、今回お伝えした“事前準備”や“身に付けておくべきスキルや実績がある”という点は、立場や職種に関係なく共通している部分もたくさんあるので、参考にしてみてください。
この記事をきっかけにITフリーランスという働き方に興味を持たれた方は、自分が目指す職種に合わせてさらに掘り下げて調べてみると良いでしょう。
<文/西川ちづる>