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介護も子育ても介入しすぎは不幸になる? セカンドライフプロデューサー・小山千夏さんに理由を聞いた

介護も子育ても介入しすぎは不幸になる? セカンドライフプロデューサー・小山千夏さんに理由を聞いた

幸せの定義とはなんでしょうか。

その答えはきっと人によってさまざまですが、「自分に意思決定権がある状態」が幸せなのではないかと、今回お話を伺ったセカンドライフプロデューサーの小山千夏さんは語ります。

小山さんは介護カウンセラーとして、有料老人ホームの紹介業や女性向けの経済的・精神的自立支援活動コミュニティ「ワンダーウーマン」を主宰しています。

介護と女性のキャリア。どちらもより幸せな「セカンドライフ」を送るために、日々活動を続けている小山さん。

そんな多くの家庭を見てきた小山さんは、たとえ自分の親やこどもであっても、過度に「誰かのために」生きようとすると、かえって自分も相手も不幸になってしまうと語ります。

自分の人生の舵は自分で握る。その大切さを、小山さんのキャリアと共に伺いました。

<プロフィール>
小山千夏さん
セカンドライフプロデューサー/介護カウンセラー/一般社団法人ライフリプランニング協会代表理事
10代の頃から、母親と共に祖母の介護を経験する。
祖母の介護に疲れてしまった母親の姿を目の当たりにする。
その後就職、結婚、出産を経て、2018年から有料老人ホーム紹介業を営む会社に就職。
2020年に退職し、独立。

以降はセカンドライフプロデューサーとして「頑張らない介護」をテーマに、有料老人ホーム紹介業や地域の女性自立支援活動「ワンダーウーマン」を主宰し、女性の経済的・社会的な自立を支援している。

介護と女性、さまざまな「セカンドライフ」を応援する。小山さんがセカンドライフプロデューサーになるまで

――現在、セカンドライフプロデューサーとして活動されている小山さん。あまり聞きなれない肩書きですが、どういった活動をされているのか教えていただけますか?

小山さん
より幸せな「セカンドライフ」を送っていただきたいという信念のもと、大きく2つの活動に力を入れています。1つ目は、介護カウンセラーとしての活動です。

こちらは介護が必要なご高齢の方に有料老人ホームをご紹介するという事業です。

まだまだ元気だと思っていた高齢のご家族がケガや病気で老人ホームを検討することになる、というケースは少なくありません。

私はセカンドライフプロデューサーとして、介護が必要となった方のご家庭に向けて条件に応じた最適な老人ホームをご提案すると共に、そのご家族に寄り添ったメンタルケアをさせていただいております。

――なぜ老人ホームに入るご本人ではなく、そのご家族の方にメンタルケアをする必要があるのでしょうか?

小山さん
もちろん入居者ご本人と会話ができる場合はお話させていただくこともありますが、ケガや病気などの理由から、ご本人が既に意思決定が取れない(取りづらい)ことが多いのです。結局、入居の可否をはじめとした最終的な判断を下すのは、ご本人のご家族となるケースが多いんですよね。

――具体的にはどのようなメンタルケアやカウンセリングを行うのでしょう?

小山さん
「介護離職」という言葉がある通り、介護とは「家族が見てあげるもの」と捉える方が現在もたくさんいらっしゃいます。愛する人(多くは自分や配偶者の親)の介護ということもあり、ご家族が自分のキャリアや生活を犠牲にしても介護に参加したい、あるいは参加しなければならないと考えてしまう方が多いのが現状です。

とはいえ、自分の人生を投げ打ってでも介護をするとなると、生活をする上で精神的にも肉体的にも負荷がかかってしまうケースも発生します。

このような場合、たとえ自分の親の介護であったとしても、プロの力を上手に借りた方がうまくいくことが多いため、私は「頑張らない介護」を提案しているんです。

――セカンドライフプロデューサーとしてのもう1つの活動はどのようなものでしょうか?

小山さん
「ワンダーウーマン」というコミュニティを運営しています。こちらは主に50代以上の女性を対象に、経済的・精神的に自立するための支援(主に起業など新しいことを始めるための支援コミュニティ)を行っています。

私自身、51歳で現在のセカンドライフプロデューサーとしての活動をスタートさせましたが、この年代の女性は、子育てやお仕事といった大きな役割を徐々に終えて、自分の人生に喪失感のようなものを抱く方が少なくありません。

「これまではこどもに多くの時間を割いていたけれど、これからの人生をどう生きていこう?」あるいは「私ってなんのために生きているのだろう?」と、メンタルクライシスや燃え尽き症候群を迎えてしまう人も中にはいらっしゃいます。

かくいう私自身も、子育てを終えたタイミングでそうした悩みを抱いていました。そこで、女性が精神的・経済的に自立するために、何か新しいことをスタートできるようなコミュニティを作ろうと思い「ワンダーウーマン」を立ち上げました。

介護が必要になった方、あるいは子育てを終えた方など、さまざまな意味での「セカンドライフ」を応援したいという思いから、この肩書きで活動をすることにしたんです。

「誰かのために」が度を越すと、自分も家族も不幸になる。幸せになるために、必要なこと

――どちらの活動も「自分らしい人生を送れる人を増やしたい」という思いが、小山さんの根幹にあるように感じました。そう思うようになったきっかけなどがあるのでしょうか?

小山さん
自分自身の過去の経験が大きかったです。先ほどお話した通り「ワンダーウーマン」の活動については、自分自身が子育てを経て人生に迷ったことが発端でした。

介護カウンセラーの活動は、祖母を献身的に介護し続けた母の苦労が根幹にあります。

母が祖母を介護していた時代はまだ介護保険制度が確立される前だったこともあり、自宅で親族が介護することが現在よりも一般的でした。

母は相当無理をしていたこともあり、祖母の介護が終わったタイミングで今度は母が倒れてしまって。

「あの時、母だけが祖母のために頑張るのではなく、介護のプロの力を頼るなど、たくさんの人の力を借りて祖母の世話ができたとしたら……」。

母はもっと残りの人生を自分らしく過ごすことができたんじゃないかと、今でも思ってしまうんです。

私の掲げる「頑張らない介護」には、そうした原体験が強く影響していますね。

――たとえそれが自分の親や子であったとしても、介護や子育てなどの役割を自分自身で抱え込んでしまうのは精神衛生上、良くないということなんでしょうか……。

小山さん
そうですね。大切な家族ですから、自分が元気なうちは親の世話もこどもの面倒も見たい、という方はたくさんいらっしゃいます。

でも、本来人生というのは「誰かのため」だけにあるんじゃなくて「自分のためにも」あるものだと私は考えています。

今は介護も子育ても、その道のエキスパートの方がたくさんいらっしゃいます。

そうした専門家の方のお力を上手に借りながら、自分らしい生き方、たとえばそれが仕事でもいいですし、趣味でもいいので、「自分」を優先する生き方が少しでもあると、人生そのものの幸福度が違うんじゃないかなと、私は思います。

――たしかに「誰かのために」という考え方が行きすぎてしまうと、自分の親やこどもであっても、つい過干渉になってしまったり、距離が近すぎるが故にケンカも絶えなくなってしまうものですよね。

小山さん
本当にその通りです。幸せや幸福の定義は、人によってさまざまだと思うのですが「自分に意思決定権がある状態」こそが幸せなんじゃないかと私は考えています。

人間は1人だけの力で生きていくことはできません。ですから大なり小なり、他者によって振り回されてしまうことがあります。

ですがその割合をどうにか小さくすることもまた、考えようによってはできると思うんですよね。

人の力を借りるのもよし、技術の力に頼るのもよし、お金で解決できるならお金で解決した方がスムーズな場合もあるでしょう。

上手に人やツール、お金の力を使いながら、ちゃんと「自分のためにも生きる」ことができていれば、過度なストレスを抱えにくく、幸せに生きていくことができると思うんです。

家族も、そして自分自身も笑顔でいるために、ちゃんと自分は自分の人生を楽しく生きてほしい。セカンドライフプロデューサーの活動を通して、1人でも多くの「幸せ」を作るお手伝いをしていきたいですね。

気軽に「起業」できる現代だからこそ、何のために事業を立ち上げるのか明確にする

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

小山さん
まず大切なのは、自分が何のために独立・起業(あるいは転職、就職など)をするのか、その動機やモチベーションを明確にすることだと思います。これほどまでにインターネットやSNSが発達し、さまざまな事業が誰でも気軽に始められる世の中になりました。

「何となく起業」することは誰でもできる中で、その事業を続けていくためには、やはり動機をちゃんと持つことが何よりも大切だと思います。

特に、50代以上の人は経験をお金に変えることができます。

それは職歴というだけでなく、例えば子育てや介護でもいいですし、ずっと続けてきた趣味でも好きなことでもいい。何でもお金に変えられる(ビジネスができる)からこそ、自分の中で「誰にどんな価値を提供したいか」を明確にする。

そこを整理できていないにもかかわらず、例えばセミナーや起業塾で「答え」を探そうとしても暗中模索状態のまま、右往左往することになってしまいかねません。

自分の事業にとっての核を固める。その先にきっと、あなたらしい独立・起業があるのではないでしょうか。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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