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自由すぎる女医・上田悠理さんに聞く、失敗を失敗のままにしない人生の送り方

生ボイス

「もし事業が上手くいかなかったらどうしよう……?」。

独立・起業、いや、働く全ての人にとって「失敗」とは、あまり考えたくない問題の1つと言えるでしょう。

今回お話を伺ったのは、医師でありヘルステックプロモーターの上田悠理さん。非常に聞き慣れない肩書きを持つ上田さんの人生は、文字通り波乱万丈。

元々法学部に通う大学生だった上田さんは、突如医師を目指そうと決意し、医学部のある大学へ編入。

医師としてキャリアを積む中でこれまた突然、ビジネスの世界へと活動の場を広げていき、現在は「ヘルステックプロモーター」という職業としても活躍中です。

経歴だけを見ると、全てが上手くいっているように見えるかもしれません。しかしそんな上田さんも、実は数多くの失敗を経験し、その度に軌道修正をし続けてきたと語ります。

そこで今回はまず、そんな上田さんの超特殊なキャリアの変遷を。そして後半は、なぜ上田さんは領域を超えて挑戦し続けるのか、その考え方の源を伺いました。

失敗を失敗のままにしない人生の送り方。その“答え”の1つは、上田さんのキャリアと経験にあるのかもしれません。

<プロフィール>
上田悠理さん
医師/ヘルステックプロモーター
株式会社Confie代表取締役社長

山口県出身。
早稲田大学法学部に在学中、3年時の就職活動の際に一念発起する。
医師を目指すため、岡山大学医学部医学科への転入試験を受け、見事合格。現在は在宅クリニックの院長として、主に高齢者ケアに携わる。

医師として臨床を継続すると同時に、2017年からヘルステック領域のグローバルカンファレンスのプロデューサーとしても活動。
ヘルスケア領域へ進出する大手企業やベンチャー企業へ、医師としての知見からアドバイスを行う「ヘルステックプロモーター」としても活躍中。

在宅クリニック院長からイベント設営・スポンサー営業まで? 自由すぎる女医の、自由すぎる遍歴

――上田さんは現在、医師/ヘルステックプロモーター、経営者として活躍されているそうですが、元々文系の大学に通っていたと伺いました。なぜ突然医学部に編入を?

上田さん
はい。最初の大学では法学部に通っていたので、思いっきり文系でしたね(笑)。

医師になろうと思い立ったのは、大学3年生の時。ちょうど就職活動をスタートすることになったタイミングでした。

個人的な話ですが、昔から思い立ったことは、とりあえず行動してしまう性格なんです。

例えば大学在学中、芝居の面白さにはまってしまい、役者を志していました。そこから派生してアイドル活動をやってみたり、医学部卒業後も、ここしかない!と思いバックパッカーをしたこともありました。

こんな自由すぎる私が「毎日同じ時間に決められた場所に行って働く自分像」というのが全然想像できなくて。「私、普通に会社員になるのって、無理なんじゃないか……?」と思うようになってしまったんです。それで他の可能性をいろいろ模索した結果、医者になろうと決めたんです。

――また大胆な方向転換をされましたね……!

上田さん
適当に決めたわけではなくて、一応自分なりに軸というか、指針のようなものは固めていたんですよ(笑)。

1つ目は「自分の裁量で仕事を決められること(自分が自分のボスでいられること)」。2つ目は「人と関わる仕事であること」。そして3つ目は「変化の多い仕事であること」。

「裁量があって、人と関われて、変化の大きい仕事……医者じゃない?」と思ったわけです。

猛勉強の末、編入試験をどうにかパス。その後も勉強や研修を経て、ようやく医師として仕事をするようになりました。

現在は埼玉県の上尾市で、在宅クリニックを開業しています。

――上田さんは医師として以外にも、別のお仕事をされているそうですね。

上田さん
はい。ひょんなことから、ヘルステック領域(※)のグローバルカンファレンスのお手伝い、というか全体のプロデュースをするようになって。

このイベントの仕事は、かれこれ5年くらい続けています。

※Health(健康)+Technology(テクノロジー)を掛けた造語。AIやIoTなどのテクノロジーを使って、医療や介護といった領域で「より良く生きる」課題解決を目指す。

――医師である上田さんが、なぜイベントの運営を? 詳しく教えてください。

上田さん
順を追って話すと、研修医を終え、さまざまな病院で非常勤の医師として働いていた時に、あるIT企業の社長と知り合ったんです。

その社長に「今度ヘルステック領域のイベントやるんだけど、一緒にやらない?」と誘っていただいて。

その時は面白そうだなと思って、結構軽いノリで「いいですよー」と返事をしてしまったんです。

ところがフタを開けてみると、イベント会場は渋谷ヒカリエで丸2日間のイベント。そこに1000人のオーディエンスを集めて、さらにスポンサー企業も集めてお声かけしなければならないという状況。「あれ、なんだか様子がおかしいぞ」と……。

――おそらく一般人がイメージする「お医者さん」の仕事では、ありませんね……。

上田さん
もちろんやったことないですし、最初は泣きそうになりながら仕事していましたね(笑)。

ただ一度「やりますー」と言ってしまった以上、責任感もありました。

色々な方の協力を得て、どうにかがんばった甲斐があり、イベントは初年度から黒字、満足度も上々で運営をすることができて。以来、同イベントの開催を統括させていただくようになり、かれこれ5年になります。

このイベントに携わるようになって生まれたご縁のおかげで、私のもう1つの肩書きである「ヘルステックプロモーター」としてのお仕事も始まりました。

もちろん大変なこともありますが、挑戦してよかったですね。

医療とビジネス。2つの世界を繋ぐ「ヘルステックプロモーター」の仕事とは

――「ヘルステックプロモーター」、あまり聞き慣れないご職業です。頭につく「ヘルステック」という言葉は、近年非常によく耳にする機会が多いですよね。

上田さん
ヘルステックというのは、例えばスマートウォッチを使ったバイタルチェックや、コロナ禍で急速に普及した非接触検温ができる体温計、錠剤の代わりに処方される治療用アプリなど、人間が「より良く生きる」を実現するためのテクノロジー全般を指す言葉です。

おそらく皆さん、どこかしらで触れたことがあるのではないでしょうか。

先ほどのイベントでは、そうしたヘルステック領域の新しい技術や、各社の取り組みなどを紹介する場となっています。

年々注目度が上がっている一方で、だからこそ気をつけなければならないこともあって。

――例えばどのような?

上田さん
ヘルステックの領域は「人の健康、いのちに関わる」というその性質上、いい加減なプロダクトを作ることはできません。

例えば実際は平熱であるにも関わらず、常に38度の数値を指す非接触の検温機があったとしたら、困ってしまいますよね?

もしこれがバイタルを検知する端末でエラーが起こってしまったとしたら、ユーザーの命に関わる問題になりかねません。

極端な言い方をすれば、ヘルステック市場が注目されている(ビジネス的に儲かるかもしれない)からといって「品質二の次」のプロダクトが出回ってしまうことは、なんとしても避けなければならないのです。

――つまり、ヘルステック領域で新しいプロダクトを生み出すには、それ以外の領域の製品以上に、細心の注意を払わなければならないと。

上田さん
もちろんモノを作る以上、どんなプロダクトでも品質は大切だと思います。ただ特にヘルステック領域では、人の命に直結するケースが多いですからね。

そこでプロダクトの品質を測るための、1つの指標が「専門性」。つまり医師免許を始めとする専門知識を持つ、専門家による助言と監修です。

「ヘルステックプロモーター」というのは、新しいビジネスを作りたい企業さんと、研究を元に新しい技術を持った専門家に、医師という専門性を元にアドバイスや言語の架け橋をし、共に新しいプロダクトを作っていくという仕事のことなんです。

ビジネスサイドには医療の専門家として助言やアドバイスを。そして医療従事者や研究者には、ビジネスサイドの考え方や作ろうとしている新技術についてなどを。

2つの世界の間に入って、お互いの世界の言葉に「翻訳する」。それが、ヘルステックプロモーターとしての私の仕事なんです。

上手くいってもいかなくても、人生は続いていくから。失敗を失敗のまま終わらせないために

――法学部から医学部へ。そして医師からビジネスの世界へ。型にはまらず、あらゆる方面でお仕事をされ、唯一無二の活躍をされる上田さん。なぜ上田さんはチャレンジ精神の溢れる挑戦を続けられるのでしょうか?

上田さん
うーん……。いつも頭にあるのは、根拠のない「大丈夫」なんですよね。たいていのことはやっても多分死なないし「なんとかなるだろう」と思っていて(笑)。

あとはそもそも、死ぬくらいのダメージじゃないと「ダメージ」と認識してないから、フットワーク軽く挑戦ができるのかもしれませんが……それだとあまり答えになってませんよね。

別の見方をすると、挑戦の裏では、実はいろいろ失敗はしているんです(失敗の定義にもよりますが)。

でも失敗を失敗のまま終わらせてないから、「大丈夫」だし「なんとかなっている」んじゃないかと。

――というと?

上田さん
例えば先ほど、学生時代に芝居が好きになって役者を目指した、とお話ししたじゃないですか。

でも芝居を続けるうちに役者の道で食べていくのは無理だろうなと思って、今の方向性に転向しているんです。(もちろん、今の仕事に対して後悔なんて全然ありませんよ!)

上田さん
今回はインタビューですから、上手くいったもの、続いているものしか話に挙がっていません。

ですが、当たり前ですけど、その裏では数え切れないほど失敗もしてきています。その度にもがいて軌道修正して、今に至るという感じです。

――挑戦して失敗しても、軌道修正をしてなんとかなったから、また挑戦できると。

上田さん
はい。

だからもし仮にあの時、編入試験に合格できてなかったとしても、別の道を模索していたと思うんです。

もう1年がんばって勉強して合格して医者になったのか、それとも医者の道ではなく別の道を模索していたのか……。

「たられば」の話なので今となっては分かりませんが、どんな道に進んだとしても、どうにか自分の得意なところやいいところを活かして、おそらく最善の道に落ち着いていると思うんですよね。

上手くいってもいかなくても、必ずその結果に応じた選択肢が登場して、人生はまたずっと続いていきます。

失敗を失敗のまま終わらせないためには、それ単体の“点”で捉えるのではなく、全体の中の1つのターニングポイントくらいに考えられるくらい、選択の回数を増やしていく。

するともっと気軽に、気楽に挑戦できるのかもしれませんね。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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アントレスタイルマガジン編集部

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