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教育を通して社会問題を解決する人をつくる。大濵裕貴が目指す「21世紀の松下村塾」

教育を通して社会問題を解決する人をつくる。大濵裕貴が目指す「21世紀の松下村塾」

社会問題が多様化しています。
国連では貧困や飢餓、健康や教育など17の社会問題に対し
2015年にSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)を採択。
世界中でその解決に取り組んでいます。

今回お話を伺ったのは、大濵裕貴さん。

現在、大濵さんは株式会社クルイトの代表として
ITをベースに学習塾というリアルの場とWEBメディアを活用し
一貫したサービス提供を手掛けています。

その根底には、大濵さんがカンボジアで見つけた
「教育を通して、社会問題を解決する『人づくり』に貢献する」という
自身の「ビジョン」がありました。

<プロフィール>

大濵 裕貴さん
株式会社クルイト 代表取締役

1991年1月、山口県生まれ。
明治大学在学中に中国で日本人向けクリニックの立ち上げに参加したのち、
自分自身で起業するため大学を中退し、
カンボジアで日本人旅行者を対象にした高級スパを開業、運営。
その後カンボジアで貧困や教育格差などの社会問題に直面し、
「教育を通して、社会問題を解決する人をつくる」ことを決意し、日本に帰国。
2013年2月に株式会社イトグチを設立。
2014年6月に株式会社Cluexを設立。
2018年11月に株式会社クルイトを設立。
2020年2月に3社を統合し、株式会社クルイトの1社に体制変更。

カンボジアで見えた、自分自身の「ビジョン」

-現在に至るまでの経緯を教えてください。

大濵さん

私が起業して経営者になりたいと思うようになったのは高校時代で、同級生のお父様の影響でした。山口県で飲食店などの FC経営を広く展開されていた方で、「山口県の若者にも、東京に引けをとらない食の体験をさせたい」「雇用を生み出し、地域を活性化したい」とビジョンを語る姿を見て、「自分も大きなビジョンを掲げて社会を変えていける経営者になりたい」と思うようになりました。

-高校生の頃から、すでに起業を考えていたのですね。大学に進学されてからはどうでしたか?

大濵さん

はじめのうちは、より実践的にビジネスを学ぼうと他大学の起業サークルに参加したりしていました。その中で、私は「社会を変えていける経営者」になるためには、次の2つが必要だと考えるようになりました。

ひとつは、何を成し遂げるかという「ビジョン」。もうひとつは、そのビジョンを成し遂げるための「0から1を作り出す力」です。ただ当時の私には、強烈に「これがやりたい」という明確なビジョンがまだありませんでしたので、まず「0から1を作り出す力」を身につけて自分のビジネス能力を高め、その過程で何かやりたいことが見つかったときに、その分野で事業を立ち上げようと決めました。

ちょうどその頃、ある経営者の方から「中国で日本人向けのクリニックの立ち上げに参加しないか」と誘われ、大学を休学して中国に渡りました。立ち上げがうまくいき、「次は自分で資金を準備し、他の国で起業・立ち上げの経験をしよう」と考えた私は、今度は大学を中退してカンボジアに渡り、日本人観光客向けの高級スパを始めました。途中で雨季に入ってお客さんが激減し、赤字続きで苦労もしましたが、なんとか雨季でも黒字化できる体制に立て直すことに成功。自分のビジネス能力を高める経験を積んでいきました。

-大学を中退してカンボジアで起業されたのですね。その後はどうされたのですか?

大濵さん

カンボジアで、NPOの人たちと現地の学校建設に関わりました。そこで現地の貧困や、都市部と地方の教育格差を目の当たりにします。私は、はじめて社会問題に興味を持つようになりました。

いろいろ調べていくうちに、社会問題には貧困や教育格差以外にもいろいろあり、多様化していることを知りました。自分ひとりだけでは解決できないと感じた私は、いろいろ考えた末、社会問題を解決できる「人」を増やすことで多様化する社会問題を解決できるのではないか、と思い至ります。

このとき、「教育を通して、社会問題を解決する『人づくり』に貢献する」という自分自身のビジョンが明確に見えました。実は両親が教員だった関係で、子どもの頃から「教育に関わる仕事もいいかな」とぼんやりと思っていたので、このタイミングで幼いころからの思いともつながりました。

「まずは、日本で教育の会社を立ち上げよう」と思い、私は帰国しました。

学習塾とWEBメディアをつなげて、教育現場を変えていく

-日本に帰国されてから、どのように教育の会社を立ち上げたのですか?

大濵さん

自分自身のビジョンは明確になったのですが、具体的にどうやって教育の会社を立ち上げたらよいか、帰国してしばらくはわかりませんでした。

そんな時、たまたま知り合いの経営者の方から、千葉県の市川市にある学習塾が経営不振で困っていると聞きました。その塾は私が大学時代にアルバイトをしていたところで、すごくいい教室だと覚えていました。

私は、その教室を立て直そうと考え、親戚にお金を借りてその教室を買い取りました。そして株式会社イトグチを設立し、まず学習塾の経営に取り組み始めました。2013年2月のことです。

-まず学習塾を始めたのですね。その後はどうされたのですか?

大濵さん

カンボジアでの経験から「教育格差」に興味を持っていた私は、解決のためには、ITを活用するのがよいのではないかと考え、2014年6月に株式会社Cluexを設立し、ITを活用した子育てメディアを立ち上げました。その後、塾の教育方針や雰囲気を伝える「じゅくみ~る」というWEBメディアを立ち上げて塾選びの情報格差の解決を目指し、また「自分の人生を生きる」ことを学べる教室として「キミノスクール」という学習塾を立ち上げました。

そして、2018年11月に株式会社クルイトを設立しました。はじめは「イトグチ」と「Cluex」のホールディングス会社として設立したのですが、2020年2月に「イトグチ」と「Cluex」を統合して株式会社クルイトの1社にしています。

-なぜ1社にしてしまったのですか?

大濵さん

メディアで活用していたITの力を、学習塾の運営でも一貫して活用したい、という戦略的な理由からです。

学習塾の教室運営には、大きく「教務(生徒と向き合う仕事)」「集客」「校舎運営」の3つの仕事があります。私としては「教務」にかける時間を増やし、もっと生徒と向き合えるようにしていきたいのですが、実際は「集客」や「校舎運営」での雑務にかなりの時間がとられていました。

そこで私は、「Cluex」で活用しているITの力を「イトグチ」の塾運営にも活用すれば、雑務にかかる時間をゼロにできるのではないか、と考えました。そうすればもっと生徒と向き合える時間を増やすことができ、生徒たちにとっても塾運営にとってもいいし、利益率も上がるのではないか。そう考え、「イトグチ」と「Cluex」の2社を「クルイト」と一緒にしたのです。

-ここまで会社を大きくしてきましたが、最も苦労したことは何ですか?

大濵さん

会社立ち上げ時の資金面や人の採用など、苦労したことはいろいろありますが、最も苦労したことといえば、「集客」ですね。特に「イトグチ」を設立した当初は、私が塾という業界をまったく知らなかったですし、しかも経営がうまくいっていない教室を買い取って始めたこともあり、誰も教えてくれませんでした。

駅でビラ配りをしたり近所にポスティングをしたり、できることは何でもしましたが、結果的にはネットのオウンドメディア(ブログ、ホームページ)がいちばん効果的でした。

学習塾のビジネスは、顧客である生徒さんはみんな同じ額しか払ってくれないため大口顧客が作れないですし、法人の顧客開拓のように電話をかけてアポイントを取るわけにもいきません。いかに生徒さんやそのご両親に見つけてもらうか、が勝負になります。教室に対するいい評判が口コミで出回れば生徒さんは集まってくれますが、その状態になるまでは、今でも苦労しています。

社会問題を解決する人を、社内外から輩出したい

-「世界の社会問題を解決する」という会社のミッションを掲げていますが、現在の取り組みはいかがですか?

大濵さん

私たちが解決に取り組んでいる社会問題のひとつに「教育格差」がありますが、私は教育格差には2つあると考えています。ひとつは「教育機会の格差」。地方では都市部のように近くに学習塾がなく通えない、というのは教育機会の格差の一例です。

もうひとつは「教育の質の格差」です。同じ塾に通っていても、先生によって生徒の成績の伸び方が違う、という話はよく聞きます。この「先生の違い」をITの力を使って改善できないか、と考えています。具体的には、生徒の学習データを取って客観的に判断して指導することで、先生による格差を生まない状態にできないか、と考えています。

また、社会課題の解決のための「人づくり」にも、2つの方法があると考えています。

ひとつは塾やメディアを通じて生徒を集め、教育によって自ら自分の道を見つけてまい進できる人を増やしていく、という方法。もうひとつは「社内から、自ら自分の道を見つけてまい進できる人を輩出していく」という方法です。

その意味では、多彩な偉人を世に送り出した松下村塾のように、クルイトの中から自分で事業を作って社会課題を解決していける人をどんどん輩出していきたい、と考えています。

実は、私はもともと吉田松陰がすごく好きで、彼が残した『諸君、狂いたまえ』という格言には強く影響を受けています。狂人こそが世の中を変えていくのだ、という意味なのですが、彼の言う狂人とは、「自らのビジョンを掲げ、実現まで一心不乱に突き進める人」なんですよね。

実はクルイトという社名には、Cluexとイトグチ、そして“狂い人(くるいと)”という意味も包含しているんです。

-今後はどのような活動をしていく予定ですか?

大濵さん

まず、2月に会社を統合しましたので、新しい体制を軌道に乗せていきたいと考えています。

また今後は「キミノスクール」を広げていくことで、「自分で決め、自分の人生を生きられる子を増やしたい」と考えています。

そのためには、①「なぜ学ぶのか」という自分のビジョン・目的意識を持ち、②やればできる!と思えるマインドセットを持ち、③ビジョンに向かって突き進む実行力が必要です。それぞれの力を身に付けることができるよう、コンテンツを自律学習という形で提供しており、徐々に生徒数も増えて来ています。現在中学生を中心に千葉の市川と津田沼で展開していますが、今年からFC展開もしていく予定です。

将来的には、教育業界のさまざまな業務をITの力で効率化、省力化していきたいと考えています。たとえば問い合わせ管理をITで可視化し、また経理の請求業務や簡単な雑務をIT化して巻き取りたいと考えています。集客、業務効率化、採用など、教室で必要なサービスを自社開発し、外販していきたいですね。

-最後に、読者へのメッセージをいただけますか?

大濵さん

私は自分自身の起業経験から、一番大事なのは自分なりの「ビジョン」を明確に持つことだと思っています。私もカンボジアで「教育を通して、社会問題を解決する『人づくり』に貢献する」という自分自身のビジョンを明確にしたことで、その後のビジネス展開が明確になりました。

また、ビジョンを明確にしたら、早く起業することが大事です。よく「起業準備中」と言いながらなかなか起業されない方がいますが、私は準備完了と思えるタイミングは、なかなか来ないのではないかと思います。「新規事業は、7割やれると思ったら、まずやってみる」と言われる著名な経営者の方もいらっしゃいます。もちろん、7割やれると思えるまでの調査などはすべきだと思いますが、やれると思ったら、まずは始めてみましょう。たとえ失敗しても、きっとそこでの経験が次に生かせると思います。

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