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経営者が副業で始めた経営者専門のスーツ仕立屋

大手の会社に勤めたあと、家業を継ぐという方も多いでしょう。

今回お話しを伺った経営者専門のスーツ仕立屋を経営する末廣徳司さんも大手アパレルブランドでの仕事を経て、家業の婦人服店を継いだキャリアをお持ちです。

ですが、その後、家業の社長業を引退し、独立の道を選びます。経営者が副業として見つけた新しい道です。その過程を伺いました。

<プロフィール>
株式会社イルサルト 末廣徳司さん・日本で唯一の経営者専門のスーツ仕立屋
(株)ユナイテッドアローズ、(株)ワールドで基幹ブランドの商品開発責任者や中国(北京、上海)での新規事業の立ち上げを経験し、2009年2月にイルサルトを創業。日本で唯一の経営者専門のスーツ仕立屋として、創業9年で10,000名を超えるお客さまのお手伝いをし、満足したお客さまからの紹介で、完全予約制のお店として、イルサルトを運営している。株式会社イルサルト
http://ilsarto.net/

順調だった大手アパレル会社員を退職し、家業を継ぐが、失敗の連続

―大手のアパレルブランドから、いきなり経営者専門のスーツの仕立屋に転身した理由を教えてください。

末廣さん
いきなりイルサルトを創業したわけではありません。実は、家業が婦人服のブティックを数店舗経営しており、ワールドを辞めて、その後継者として最初は親父のあとを継ぎました。ですが、恥ずかしながら、ぜんぜん、うまく行かなかったんです。

ー会社員時代は、店舗に関してもマネジメントされていたんですよね?

末廣さん
はい。会社員時代は自分で言うのもなんですが、それなりにできる社員で実績も残していたので自信満々で家業に戻ってきたのです。
ワールド時代は、売れ筋をデータで見極めたりするお客さまをマスとして捉えることを得意としていたので、父の店でも効率化を推し進めてしまったのです。
お客さまが離れ、どんどんと売り上げが下がって、私自身かなり辛い経験をしましたが、当時は何がマズいのかも分からなかったのです。
ワールドではそのやり方で成功していましたから。

―転機のきっかけになったのは何だったのでしょうか?

末廣さん
とあるセミナーで、末廣さんの楽しいこと、得意なことをやってみたらと言われたのをきっかけに婦人服の店なのに、私のオススメのネクタイやシャツを置くようにしました。

ーそれが飛ぶように売れた?

末廣さん
いや、残念ながら、そんなに甘くはありませんでした(笑)。
全く売れなかったのですが、うちの息子にはどんなネクタイがいいかな? とかどんなスーツを合わせたらいいの? とかお客さまに色々聞かれる様になり、仕事が楽しくなり始めました。

それまでは生活の手段、お金儲けの手段としか考えていなかったのですが、
仕事は自分の知っている事や出来る事を通して人に喜んでもらえることなんだと、少しづつ私の中の仕事への思いが変化していきました。

そして大好きな紳士服をやりたいという気持ちが大きくなり、婦人服のお店を経営しながら、オーダーメイドの紳士服をお客さまの要望に添って作っていくという仕事を副業で始めました。

婦人服のお店の経営者が、副業で始めたオーダーメイドの紳士服

ー経営者が副業ですか?(笑)。面白いですね。

末廣さん
はい。
経営者だからこそ、在庫リスクなどを抑えるためのオーダーメイドだったのですが、これが好調になり、私1人の副業が本業の1店舗の売り上げを抜いてしまったのです。
しかし紳士服オーダーメイドの仕事をしながらも、父の仕事のことがいつも頭の片隅にありました。
自分が苦しい時だけお世話になって、好きな事を始めてその好きな事が軌道に乗ったら父の会社の仕事をどんどんしなくなる。

最悪の跡継ぎ息子だなと・・・。

家業を継いだ方が良いと思う気持ちと自分の好きな事を思い切りしたいという気持ちの間で苦しみ、色々な方に相談をしました。
すると全員の答えが一緒だったのです。

”親はこどもの幸せを願っている。無理に家業を継ぐよりも、好きな事を好きなだけ楽しそうにしているこどもの姿を見るのが親の幸せだよ”と。
そんな言葉に後押しされ、家業を継がない事を決め、株式会社イルサルトを創業したのです。

どんな時も私の好きなようにさせてくれた両親には感謝の気持ちしかなく、今仕事を頑張れている原動力もここにあるのです。

ー元のお店はどうなったんですか?

末廣さん
元々店長さんが工夫して店ごとのお客さまに合わせていた商品展開を、下手に私が効率化のつもりで画一化した店の状態を元に戻したことで、順調に回復していきました(苦笑)。

婦人服のお店を経営したことによって、お客さまの顔を見ながら商売する基本をもう一度学ぶことが出来たのは大きい。
ですが、株式会社イルサルトでは効率化もやっています。

ーイルサルトの効率化とはどういうことでしょうか?

末廣さん
完全予約制の店舗にしたことです。
洋服店は開いているのが当たり前ですが、これが非効率だったのです。イルサルトでは、ご予約のあるお客さまが来るとき以外は、お店の扉は開けていません。

つまりはお客さまを待つという非効率的な商売ではなくなったということが、イルサルトにおける効率化です。ですから、私や従業員の時間はすべてお客さまのためだけに使うことが出来るのです。

ーなるほど。たしかに、事務仕事や発注などの仕事は接客の店舗ではしづらいですよね。

末廣さん
お客さまの要望にあった商品をキチンと仕立てるためには色々な仕事があります。通常ですと、店舗を閉めてからでないと出来ないのですが、イルサルトではそうではありません。

ーでは、実際のお客さまが来られたときにはどのように接客されるのでしょうか?

末廣さん
最初に来られたお客さまには、1時間程度、ヒアリングをさせて頂きます。で、2週間後くらいにまた、予約を入れて来店して頂きます。

ー最初はヒヤリングのみで、採寸はされないのですか?

末廣さん
はい。最初に来られたときには、イルサルトでは採寸はいたしません。ヒアリングのみです。

イルサルトは、経営者専門のお店です。

ですから、何を目指しているとか、経営者の姿勢や仕事についての考え方をお伺いして、私がプレゼンシートを作成します。
お客さまの価値観やブランドを可視化するためにキーワードを抽出して、それを表現できるようなスーツの提案を私のほうで準備します。

ーお客さまは、生地を選んだり柄を選ぶのではないと?

末廣さん
はい。私の作ったプレゼンシートと
初回に話した内容が合致しているかということを確認頂いて、
それがOKであれば、採寸してスーツ作りに入るのです。

ー変わっていますね? オーダーメイドのイメージが変わりました。

末廣さん
イルサルトに来るお客さまは、ほとんどがご紹介です。もちろん最初に多少の説明はしますが、皆さん紹介をされているときに、こういうプロセスでスーツが出来上がると聞いて来店されますから、変わっているとは言われないですが・・・(笑)。

経営者のスーツは経営者の考え方を表現したものであるべきというのが、私の考え方なんです。

ー女性の経営者も来られるのですか?

末廣さん
いえ、いまのところ男性の経営者専門です。私が全て採寸もヒヤリングも行いますので、女性はやっていないんです。
婦人服のお店をやっていたのに矛盾してますね(苦笑)。

ー美人のスタッフさんもいるのに、どうしてでしょう。弟子入りしたいという人はいなんですか?

末廣さん
植木のことですね。彼女は、元フライトアテンダントです。私のブログを全部読んで価値観があうということで、転職してきてくれました。おもてなしや裏方の仕事を担当してもらっています。もちろん、接客はプロフェッショナルですからね。植木のおかげで、店の雰囲気が良くなるので大変助かっています。ですが、採寸やヒヤリングは私しかしません。好きなんですよね。いろんなことを任せて、会社を大きくしていくという方向もあるのですが、私自身、お客さまと向き合いながらの仕事がしたいのです。

ただ、私自身ができる範囲も限られるので、ノウハウを共有していく仲間は今後は作りたいとは思っています。

ーだんだん、スーツが欲しくなってきました(笑)。もし、この記事を読んだ方がイルサルトのスーツに興味を持った場合、大阪や東京に行かなければ、イルサルトのスーツは作れないのですか?

末廣さん
実は、共感してくださる経営者の方が場所を貸してくださって、小松、加古川、岡崎、小樽などでも不定期ですが、私が出向いていく出張的なことは行っています。私のブログやメールマガジンなどで情報は随時出していくので、ご興味ある方はチェックしてもらえると嬉しいです。

ー実際にスーツは、どこで作るのでしょうか?

末廣さん
服そのものは、ワールドやユナイテッドアローズ時代に培った人脈で信頼できる腕の良い国内の縫製工場で100%製造させて頂いております。品質は私が確認していますので、自信をもってオススメできます。

ー最後に、末廣さんからこれから経営者になろうという読者に、アドバイスをいただけますか?

末廣さん
経営者として自分がどう生きたいのか? 自分の信念や覚悟をまず決めることが大事です。
その上で、相手に対してどんなメッセージを与えたいのか? を考えねばなりません。

私自身の仕事で表現しますと、経営者にとって服とは経営理念が形に変わったようなもので、服ではなく経営理念そのものを身に纏っているという事になります。

経営者の皆さんは、自分の仕事の商品やサービスではちゃんと意識するんですけれど自分のこと、自分の服のことになるとその意識が向かないことも多いのです。ですが、実際には会社の顔は経営者自身ですからね。もちろん、プライベートのときは好きな洋服を着て頂いて構いませんよ(笑)

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事業を始める上で必ず必要になる、お金。

特に融資を受けた「借金」ともなると、上手に付き合っていけるかどうか、不安ですよね。

今回お話を伺ったのは、税理士・公認会計士である、齋藤雄史さん。

齋藤さんは20代〜30代をはじめとする、多くの若手起業家をお金の管理・使い方という側面からサポートされています。

今回は、齋藤さんが税理士事務所を開業するに至るまでの経歴から、お金、中でも「借金」との付き合い方についてお聞きしました。

<プロフィール>
齋藤雄史さん
税理士/公認会計士

宮城県仙台市出身。

高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。

合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。

ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

お金が足枷になって、挑戦できない人を減らしたい。税理士事務所を開業したワケ

―これまでの経緯を教えてください。

齋藤さん
高校時代はコンビニでアルバイトをしていました。
当時はコンビニの店長になりたいと思っていたので、簿記の勉強を始めたのがきっかけです。

ところが高校を卒業する時、家庭の事情で大学への進学が厳しくなってしまいました。

そこで一旦就職をしてお金を貯めてから大学へ行こうと思いました。

―どんなお仕事をされていたのですか?

齋藤さん
地元の仙台から上京して、新聞配達の仕事を始めました。

1年で100万円ほど貯金してそのお金を元手に、地元仙台の税理士・公認会計士の専門学校に入学しました。

―なぜ税理士・公認会計士の専門学校だったのですか?

齋藤さん
私はこれまで、お金によってキャリアの選択肢が狭められてきたからです。

お金をもっと自由に扱うことができたら、と思い勉強を始めました。

そして専門学校に入学して数年が経ち、公認会計士の試験に合格した年に東日本大震災が起こりました。

―仙台で震災に遭われたんですか、それはとても大変でしたね…。

齋藤さん
はい。地元仙台をはじめ、東北地方全体でとても大変な状況でした。その経験から「復興関係の仕事がしたい」と思うようになり、監査法人に就職し、3年ほど働きました。

―具体的にはどのようなお仕事をされていたんですか?

齋藤さん
主に国や地方公共団体、上場企業の監査を担当していました。

しかし、国や上場企業など、大きな組織を相手にするのではなく、お金に困っている人、特に若い起業家や、中小企業やベンチャー企業のサポートがしたいと思うようになりました。

―なぜでしょうか?

齋藤さん
自分自身が、お金に困った経験がありましたし、自分の親も小さな飲食店を経営し、お金に苦しんでいた様子を近くで見ていたからです。

だから、お金が原因で選択肢が狭められている人の助けになる仕事をしたかったのです。

よりお客さまに近い距離で仕事をするために監査法人を退職し、税理士・公認会計士の事務所を開くことにしました。

自分に自信をつける。税理士が語る、「借金」との上手な付き合い方

―税理士事務所を開業された齋藤さん。現在のお仕事について教えてください。

齋藤さん
仕事の内容は、税理士事務所と変わりません。

ですが私の事務所では、主に中小企業やベンチャー企業、個人事業主を中心にお取り引きさせて頂いております。

特に20代から30代の若い経営者の方と、一緒にお仕事をさせていただくことが多いですね。

最近は年に一度の確定申告や、話題の副業に関する税金のご相談も増えてきました。

―20代30代の方を中心に、お仕事をされている税理士の方は珍しいのではないですか?

齋藤さん
そうですね。業界的にも非常に珍しい立ち位置だと思います。

一般的に税金、税理士と聞くと「なんか相談しづらい」「ちょっと怖い」というイメージがあると思っています。

まだ僕自身が若いからこそ、若い人や起業に挑戦したい人が、気軽に相談できる環境を作ることができる。

そう信じて、お金が不安で1歩を踏み出せない人をサポートしています。

―そんな齋藤さんに伺いたいのですが、初めて起業をされる方は特に、お金との付き合い方について困ることが多いと思います。上手にお金と付き合っていくためにはどうすれば良いのでしょうか?

齋藤さん
お金、特に「借金は怖い」という認識は、多くの起業を志す方にとって共通する認識だと思います。

僕がこれまで見てきた、自分で会社を立ち上げて会社を大きくしていった人たちに共通するのは「借金を上手に使っている」ということです。

「どれくらい借金をして、どのタイミングでどう返済するか」をきちんと計画立てて、実行できている人は、事業を成功させているケースがとても多いです。

―事業を大きくするためには、借金や借金をすることのプレッシャーを、上手く飼いならす必要があるということですね。

齋藤さん
はい。

そしてそのスキルを身につけるためには、小さな成功体験を積み重ねることが極めて重要です。

例えば僕の場合、現在税理士と公認会計士の資格を持っていますが、それも簿記検定3級の受験から始まっています。

いきなり税理士や公認会計士の試験を受けたわけではありません。

簿記検定3級から始まり、2級、1級と段階を踏んで勉強してきました。

つまり全ては、小さなことの積み重ねなのです。

―それは事業やそれに伴う借金に関しても同じことが言える、ということでしょうか?

齋藤さん
全くその通りです。

いきなり何の経験もなく事業を立ち上げて、成功する人はごく一部でしょう。

例えば今会社員であるのならば、副業など経験を積み、事業がどのように動いていくのかを勉強しても良いのではないでしょうか。

できる限り小さいことから始めて、ある程度うまく回せるようになれば、自然と自分に自信がついていきます。

お金との付き合い方もまさに同じことで、これまでの事業の経験を活かして「何をするためにどれくらいお金が必要なのか」、そして「借りたお金をどうやって返済するのか」まできちんと見えていれば、自ずと自信が湧いてくると思います。

今の延長線上に、将来がある。お金で可能性を狭めない世界を創るために

―齋藤さんの今後の展望を教えてください。

齋藤さん
挑戦したい人が挑戦しやすい世の中、お金が挑戦の足枷にならない世界を創っていきたいです。

そのために、いま目の前にある仕事に一生懸命になることはもちろん、税理士・公認会計士の枠にとらわれず様々なことに挑戦していきたいと思っています。

具体的には現在ロースクールに通っており、弁護士免許を取得するための勉強をしています。

お金や法律といった様々な切り口から、はじめの1歩を踏み出す人のお手伝いができたらと思っています。

―最後に独立・起業を考えている方に対して何かメッセージをいただけますか?

齋藤さん
小さなことでもいいので、自分に自信をつけていくことが大切だと思っています。

先程お金との付き合い方でもお話しましたが、良い経営者は自分に自信があるケースが多いです。そしてその自信を裏付ける、数多くの経験をしています。

いきなり別世界に行くことは難しいかもしれませんが、小さなことからコツコツと経験を積み重ねることで、いつか必ず大きくジャンプすることができます。

結局、今の延長線上にしか将来はないのです。

自らの独立・起業に必要な経験を増やしていくことから、始めて見ると良いのではないでしょうか。

2018年8月14日

起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。 (さらに…)

2018年8月13日

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