部下との付き合い方。
経営者はもちろん、多くの中間管理職の方が頭を抱えているのがマネジメントです。頭ごなしに指示を出しても部下はついてきません。
今回、心理学者の内藤誼人先生に伺ったのは「部下から信頼を勝ち取るリーダーシップ」。
内藤先生はリーダーシップには2種類存在し、時と状況に合わせて使い分けるべきだと言います。一体どういうことでしょうか?
2種類のリーダーシップを、時と状況に合わせて使い分ける
今回のテーマは部下との付き合い方。
「人を動かす」「部下の管理」というと「リーダーシップ」というテーマで語られます。
さてこのリーダーシップ。心理学の世界では、2種類のパターンがあると言われています。
1つ目は人に指示を出し、相手を動かすタイプ。
例えば取引先などから仕事の依頼を受けた時に管理職であるマネジャーが部下へ、仕事を細かく指示するケースです。一般にリーダーシップと聞いて皆さんが想起するのは、こちらではないでしょうか。
しかしリーダーシップには、もう1つのタイプが存在します。それは仕事を細かく指示するのではなく、相手に任せるというもの。
仕事の大枠だけを伝えて、あとは相手の自主性に任せて見守る。先程の「リーダーシップ」と比べると、近年はこちらのリーダーシップを求められることが増えてきました。
このように全く異なる2つのリーダーシップですが、心理学的にはどちらが優れていてどちらが劣っている、ということはありません。
ポイントはこのリーダーシップの使い分けにあるのです。
「面白い仕事」をさせる時は見守り、「退屈な仕事」をさせる時は指示を出す
ここでリーダーシップにまつわる興味深い実験をご紹介しましょう。
フロリダ大学のマービン・ショー先生は、実験参加者の学生に5人1組のグループを2つ作らせました。
そしてあるグループには成功する人はどのようなパーソナリティを持っているか、というテーマを5人で話し合うという「面白い仕事」を、そして別のグループにはある単語の意味を考えて5人で話し合ってカテゴリー分けをする「退屈な仕事」をやらせました。
なお、各グループにはサクラが1人ずつおり、そのサクラがリーダーとなりました。
リーダーはある時はチームのメンバーに指示を出し、またある時はチームのメンバーの話し合いに任せて自分では特に指示を出さない、といった行動を取ったのです。
それぞれの話し合いが終了した後、話し合いの際に出てきた「アイデアの数」や行われた「作業の量」を調べた結果、「面白い仕事」をしていたグループには指示を出さない方が良いということが分かりました。
逆に、「退屈な仕事」をしていたグループには指示を出した方が良いということが分かったのです。
仕事のやりがいは人それぞれ。だからこそ部下との対話を心がける
リーダーシップのスタイルを切り替えていく上で、何をもって「面白い仕事」とし、何をもって「退屈な仕事」と定義するのでしょうか。
一般的に、何か新しいものを生み出すクリエイティビティの求められる仕事を「面白い仕事」、単純なルーティン作業が「退屈な仕事」と言われていますが、人によってその感じ方はそれぞれです。
そこで必要となるのは、部下との対話です。
部下と仕事の話をした時に、嬉々として話している場合は前述にならい、あまり指示を出さずに静かに見守る方向に徹した方が良いでしょう。
逆に話してみて仕事についての不平不満が出てきたり、客観的に見て著しくパフォーマンスが落ちていたり欠勤が続くような場合は、あなたから1つずつ細かく指示を出してあげた方が良いかもしれません。
全員が全員「面白い仕事」に就くのは難しいかもしれませんが、たとえ「退屈な仕事」で部下のパフォーマンスが下がっていたとしても、あなたの接し方1つで変えることができる。
リーダーシップと対話を上手に使って、円滑なビジネスライフを送りましょう。
心理学者。慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。
大学院在学中より専門の心理学を活かした執筆活動を開始し、卒業後に有限会社アンギルドを設立。
ビジネス心理学を実践的に応用するアドバイスには定評がある。
新刊に「心理学者しか知らない すごい!営業」(廣済堂)
「最高に幸せになる「口ぐせ」」(秀和システム)など。
講演会・セミナーの依頼は、株式会社ブレーンまで。
株式会社ブレーン(講演・セミナー情報問い合わせ先)
http://www.kkbrain.co.jp/