スラリとした長身の俳優・佐藤絵里佳さんは、学生時代に男役として舞台に立っていたというのも納得のハスキーボイスだが、周囲の空気がふわっと軽やかになるような空気をまとう。大きな瞳で真っ直ぐに、自分は「フリーで俳優の仕事をしてきたものの、これまで俳優が仕事だと言い切れずにいた自分と向き合い続けてきた」そう。
「仕事は自分が築いてきた人間関係だ」と断言する力強さの裏には、一緒に仕事をする人のために、全力で動いてきている努力があり、人を想う優しさが詰まっていました。これから起業・開業をしようとされている方は「怖さを感じるなら無理をしないで、本当に小さな一歩でも歩み続ける自分を褒めて諦めずにいれば“その時が、きっときます」と、自身の体験を重ねた心情をお話ししてくださり、暖かな気持ちになりました。
憧れの俳優業は、厳しい世界だと目をそらしていた幼少期
―いつ頃から俳優になりたいと思っていたのですか?
何か大きなきっかけがあったわけではないのですが、母が昔、芸能活動をしていたので、物心がついた時からテレビドラマに出てくる俳優さんに憧れがありました。
でも、現実主義なので「なかなか難しそうな業界だから無理だろうな」と、何となく諦めていたので、芸能の道ではなく、周りのみんなと同じように勉強をして進学をしていました。大学生になり、進路を考えるタイミングで、自分と向き合ったときに、「やっぱりこれが自分の一番やりたいことだ」と、ようやく自分で認めて、腹をくくったという感じです。
―俳優という職業が身近だったのですね。実際にお芝居を始められたのはいつからですか?
大学に入ってから演劇を始めましたが、お芝居に目覚めたきっかけは高校の時でした。
高校では合唱部に入っていたんですが、入部を決めたきっかけが、“毎年3月に行われる部活の新入生歓迎公演で合唱部がミュージカルをする”ということだったんです。部活選びの時、演劇もやりたかったし、歌も好きだったので合唱部と演劇部で悩んでいたんですけど、「合唱部だったら歌も歌えるし、お芝居をする機会もある!」という理由で合唱部に決めたので、1年生の頃から「新入生歓迎公演で主演をやりたい」って思っていました。合唱部は全国大会に出場するような強豪校だったので、周りのみんなとは目的が違っていたので、変わっていたと思います(笑)。
高校は女子校だったので、新入生歓迎公演で宝塚の作品を真似ていましたが、そこで主演の男役をやったときに「舞台って楽しい!」って、初めてお芝居の面白さを知りました。
男役が面白かったので、大学に進学した後も女子大生だけの演劇サークルを探しました。お茶の水女子大学のインカレサークルに入って、週に4回は活動するような感じで、サークル活動に明け暮れていましたね。当時は、ずっと男役を演じていました。“演劇人生は男役から”っていう、割と珍しいスタートかもしれないです(笑)。
本当にやりたい仕事は俳優だと思えたのは就職活動を経て
―大学時代に、俳優の道に進もうと思っていたのですか?