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”グズでノロマ“を才能に転換? 市角壮玄さんが語る、コンプレックスの活かし方

”グズでノロマ“を才能に転換? 市角壮玄さんが語る、コンプレックスの活かし方

あなたには、コンプレックスはありますか?

見た目、学力、地位、財産…。多かれ少なかれ、人は様々なコンプレックスを抱えています。

今回お話を伺ったのは、デザイナー、占い師、VJ(ヴィジュアルジョッキー)、大学講師、フードデザイナーの5つの職業をこなす、市角壮玄さん。

これだけ幅広い仕事をこなす超人に、コンプレックスなんてあるのか、と思ってしまいますが、市角さんは実は幼少期”グズでノロマ”と言われ続けてきたそうです。

自身をコンプレックスの塊だった、という市角さん。それでも”グズでノロマ”な側面が実は、自身のキャリアに大きな影響を与える”才能の原石”だったと語ります。

市角さんが5つもの仕事を股にかけるパラレルキャリアを歩むに至るまで、何があったのでしょうか。

プロフィール・市角壮玄(いちずみ・そうげん)さん
hoxaiの旅するアートディレクター/デザイナー。hoxakikitchenフードデザイナー。BBT大学ITソリューション学科専任講師。

内閣府地方創生カレッジ講師。デザイン思考やWEB製作、21世紀の観光デザインの教育を行いつつ、占い師ユニットnot for saleで著名人を占ったりも。著書のフードデザイン本、『VEGESUSHI』はAmazon和食本ランキング1位を記録。

本職のデザイナーとしては海外案件の他、映画館チェーン、航空会社、女性向けアパレルブランドのサイト、国際会議のポスターなど海外進出する日系企業や観光地、政府の事業のデザイン等、海外経験とフィールドワークを活かした外からの視点を取り入れたデザインを行う。

オフィシャルサイト:http://hoxai.com

「”グズでノロマ”は、デザイナーにとって大切な才能だった。」5つもの職をこなす男の意外な過去


上:大学での講義の様子 下:占い師としての活動

―5つもの職業を兼任している市角さんですが、現在に至るまでの流れを教えてください。

市角さん
今でこそ5つの仕事をやっていますが、昔は内気で”コミュニケーション能力”のないこどもだったんですよ。

大人が発言したことに対して、過剰にあれこれと「その真意は?」と考えてあたふたしてる内にレスポンスが遅れてしまう、いわゆる”グズでノロマな子”でしたね。

―今のご活躍を見るとなかなか市角さんから”グズでノロマ”なイメージが湧いてきませんが…。そこからどのような経緯があったのでしょうか?

市角さん
転機を迎えたのは、大学の時でした。大学に入学してから演劇を始めたのですが、その時にポスターやWebサイトの制作を担当しました。昔から、絵を描くことが好きだったので。

すると、周りの人がとても褒めてくれたんですよ。今振り返ると、「自分がやった仕事で人が価値を感じてくれる」初めての経験でしたね。

これまで”グズでノロマ”だった自分にとって、人から褒めてもらえる能力があったんだという気づきは、今後の人生に大きく影響を与えることになりました。

―そこから、デザイナーへの道がひらけたんですね。

市角さん
はい。デザインで人に褒められてからは、もう夢中でした。

ひたすらデザインの勉強をしましたし、デザインの仕事を演劇以外でもやらせてもらう内に、学生ながらいわゆる大企業さんからの仕事を受注するようにもなりました。

そして大学卒業後、フリーのデザイナーとして独立するのですが、これも「自分にはコミュ力がないから、会社員は向いていない」と思ってのことでした。

しかし、デザイナーとして仕事を重ねる内に、苦手だと思っていた”コミュニケーション”の素養が発掘されていきました。

相手の言ったことに対してあれこれ過剰に考えてしまうことは、実は、相手が伝えたいのに言語化できていないこと知ろうする気持ち、すなわち行間を読むというデザイナーに欠かせない能力の裏返しだったことに徐々に気づいていったのです。

―自分の欠点が実は、長所と密接に関わっている。その気づきは大きいですよね。

市角さん
「デザイナー」という仕事で使う枝葉の技術ではなく、デザインに必要なコミュニケーションや発想力といったスキルは、実はほかの仕事にも役に立つんじゃないか?

20代の終わりごろから、そんなことを考えるようになりました。

デザイナーはいろいろな人と協業できるので、これまで自分が足を踏み入れてこなかったコミュニティにも飛び込んでいきやすいんです。その環境を使って、パラレルキャリアをスタートさせました。

デザイナーに占い師、VJに大学講師まで! 華麗なる職業遍歴を支える、2つの「根っこスキル」

―デザイナーとして活躍された後、どのような仕事を始めたのでしょうか?

市角さん
最初は占い師でした。

ある時、何人かの占い師が集まってできた集団のアートディレクターになってほしい、という依頼が来たんです。

その依頼を受けた時に、私もタロットを使った占いを勉強してみたんですよ。

そして実際に占い師として活動してみると、占い師に必要な能力って実はデザイナーに必要な能力に似ているところがあったんです。

それが、共感能力。

人が伝えたがっていることを察して共感する。これは占い師にとってとても重要なスキルなのですが、私はもともとデザイナーとしてこの能力を養っていたので、比較的すぐに対応することができました。

―デザイナーと占い師。一見すると全く関係ないような2つの職業ですが、実は意外な共通点があったんですね。

市角さん
そうなんです。

全く異なる職業でも、実は求められるスキルは同じだったりするんです。私は同じ要領で、どんどん自分のできることを増やしていきました。

日本の文化「Cool Japan」を海外に広める活動として、VJにも挑戦しました。
※VJ(ヴィジュアルジョッキー):DJが複数の音楽を組み合わせて音楽を作るのに対し、VJは音楽に合わせて様々な映像を組み合わせる

これも「海外で喜んでもらえる日本の文化、Cool Japanとは何か?」と、デザイナーが使う”共感能力”を使って、映像を作っていきましたね。

そしてそんな経歴を買われてか、BBT(ビジネス・ブレークスルー大学)で講師もやらせてもらうことになりました。

通信制の大学なので、学生さんとは画面越しに授業を行います。

ほかにはない講義で学生さんにおもしろがってもらって、且つ学びのある授業を展開する、ということを考えた結果、連続ドラマを撮影することになりました。

―大学の授業で連続ドラマですか!?

市角さん
もともと自分が大学時代に演劇をやっていたので、知り合いの俳優さんを呼んで本格的に撮りました。もちろん、自腹です(笑)。

それでもほかにない授業展開が良かったのか、お陰様で多くの学生さんからポジティブな反応をいただきました。(学生の満足度が、5期連続で90%超え)
これも、「画面越しの学生さんは今どんな気持ちで勉強しているのだろう?」と共感することで生まれたアイデアでした。

―デザイナーから始まり、占い師、VJ、そして大学講師。全く異なるように見えて、実は使っている能力は似ているんですね。

市角さん
「文章が上手い」「画像加工が上手い」といったいわば末端のスキルは、仕事によって違うのですが、それよりもう少し抽象的な力、「空気を読める」「企画力がある」といった力が、パラレルキャリアを展開していく上で重要なのではないか、と私は考えています。

私はこの能力を「根っこスキル」と呼んでいます。

私の場合、この「根っこスキル」は大きく2つに大別されます。

1つ目は、「創造する能力」。
そしてもう1つは「共感する能力」。

デザイナーにせよ、占い師にせよVJにせよ大学講師にせよ、結局はこの2つの力のどちらか、ないしは両方を使って仕事をしています。

誰しも、自分はどんな「根っこスキル」を持っているのか、自分のやりたい仕事にはどんな「根っこスキル」が必要なのかを考えることが、パラレルキャリアを始めていく上で重要になると思います。

「根っこスキル」を見つけて、必ず小さく始める。市角壮玄が教える、パラレルキャリアの歩み方

―そして市角さんはここ最近、さらにフードデザイナーとしてのキャリアをお持ちですが、こちらはどういった経緯で始まったのでしょうか?

市角さん
デザインワークもその他のプロジェクトも、これまでの職は比較的誰かに依頼を受けて始めたものでした。

デザイナーの持つ能力を能動的に活かして新しいキャリアを作ることが出来ないかと思い、目をつけたのが食、とりわけ日本食の再デザインだったのです。

―なぜ寿司だったのでしょうか?

市角さん
私は仕事でよく海外、特にヨーロッパへ行くのですが、現地で「西洋全体の東洋化」、そして「日本食というブランドの高さ」を前々から感じていました。

今、ヨーロッパではヨガや日本食といった、アジアの文化が流行しています。

さらに目をつけたのは、ヨーロッパの裕福層にはベジタリアンが多い、ということでした。

この2つをどうにか融合して新しいものが作れないか。そう考えて生み出したのが「VEGESUSHI」(ベジずし)だったんです。

外国人に不動の人気を誇る寿司という食文化を、野菜を使って色とりどりに表現する。ヨーロッパのホームパーティーの文化に合わせて、握り寿司ではなく押し寿司でみんなでシェアできるようにしました。

ヨーロッパの今現在の流行と、もともとある文化のいいところをミックスさせ、ひとつの作品(寿司)を作り上げる。

フードデザイナーとしての仕事は、私が持ち合わせる2つの「根っこスキル」を主に使っているんです。

―自分の「根っこスキル」を見極め、使いこなす。フードデザイナーの仕事は、まさにそれを体現したような仕事なんですね。自分の「根っこスキル」を見つけて伸ばす以外に、何かパラレルキャリア初心者にアドバイスはありますか?

市角さん
必ず小さく始めること、そしてたくさんのトライアンドエラーを繰り返して、たくさん”転ぶ“ことが大切だと思います。

私自身、演劇のチラシづくりという小さな環境からキャリアをスタートしていますが、今に至るまでにたくさんの失敗を経験してきました。

しかし、パラレルキャリアという生き方の性質上、失敗したとしても誰も責任を取ってくれません。

そもそもパラレルキャリアが合うかどうかは人それぞれですし、いきなり初心者の人がトライアンドエラーもなしに大きく勝負すると、派手に失敗することにつながりかねません。

自分に合っているかどうか、そしてどんな仕事ならパラレルキャリアを実現できるかをよく考え、まずは小さく始めてたくさん失敗を積み重ねていく。

するとどうすれば勝てるのか、が自分の中である程度明確になってくると思います。

自分が始めたいビジネス、ないしは仕事を身近な人に見てもらってフィードバックをもらうなど、徐々に活動の幅を広げていけばいいと思います。

そして最後に1つだけ。

現在、パラレルキャリアという生き方がある種の「流行」になっているように感じています。

流行は必ず終わりを迎えます。流行が終わると、
軽い気持ちで挑戦したパラレルキャリアで失敗した人たちも出てくるでしょう。

そこでおそらく多くの人はこういう結論に至るはずです。

「パラレルキャリアは一過性のブームだった。こういった上辺だけの情報に振り回されず、ヘタな挑戦をしないのが1番だ」と。

これは非常に残念なことです。

大切なことは他人の意見に振り回されるのではなく、自分が本当はどんな生き方をしたいのか、という視点です。

自分らしく生きるために必要な「根っこスキル」は何なのか。それを磨いて活かしていくにはどうすればいいのか。

それをよく考えて、まずは小さく始めてたくさん失敗しましょう。

その中で自分にしかない「人生の根っこ」を見つけていく。そうすればどんな時代になっても自分にとって納得が行く道がひらけるのではないかと、私は思います。

―――じぶんの根っこスキルを見つけて生きる、それこそがパラレルキャリア形成に不可欠だと市角さんはいいます。

その根っこスキルは必ずその人の”人となり"と密接に関わっているのだそうです。市角さんの場合のように、もしかしたらヒントはあなたのコンプレックスの中にあるかもしれません。

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