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”グズでノロマ“を才能に転換? 市角壮玄さんが語る、コンプレックスの活かし方

2017年10月18日

あなたには、コンプレックスはありますか?

見た目、学力、地位、財産…。多かれ少なかれ、人は様々なコンプレックスを抱えています。

今回お話を伺ったのは、デザイナー、占い師、VJ(ヴィジュアルジョッキー)、大学講師、フードデザイナーの5つの職業をこなす、市角壮玄さん。

これだけ幅広い仕事をこなす超人に、コンプレックスなんてあるのか、と思ってしまいますが、市角さんは実は幼少期”グズでノロマ”と言われ続けてきたそうです。

自身をコンプレックスの塊だった、という市角さん。それでも”グズでノロマ”な側面が実は、自身のキャリアに大きな影響を与える”才能の原石”だったと語ります。

市角さんが5つもの仕事を股にかけるパラレルキャリアを歩むに至るまで、何があったのでしょうか。

プロフィール・市角壮玄(いちずみ・そうげん)さん
hoxaiの旅するアートディレクター/デザイナー。hoxakikitchenフードデザイナー。BBT大学ITソリューション学科専任講師。

内閣府地方創生カレッジ講師。デザイン思考やWEB製作、21世紀の観光デザインの教育を行いつつ、占い師ユニットnot for saleで著名人を占ったりも。著書のフードデザイン本、『VEGESUSHI』はAmazon和食本ランキング1位を記録。

本職のデザイナーとしては海外案件の他、映画館チェーン、航空会社、女性向けアパレルブランドのサイト、国際会議のポスターなど海外進出する日系企業や観光地、政府の事業のデザイン等、海外経験とフィールドワークを活かした外からの視点を取り入れたデザインを行う。

オフィシャルサイト:http://hoxai.com

「”グズでノロマ”は、デザイナーにとって大切な才能だった。」5つもの職をこなす男の意外な過去


上:大学での講義の様子 下:占い師としての活動

―5つもの職業を兼任している市角さんですが、現在に至るまでの流れを教えてください。

市角さん
今でこそ5つの仕事をやっていますが、昔は内気で”コミュニケーション能力”のないこどもだったんですよ。

大人が発言したことに対して、過剰にあれこれと「その真意は?」と考えてあたふたしてる内にレスポンスが遅れてしまう、いわゆる”グズでノロマな子”でしたね。

―今のご活躍を見るとなかなか市角さんから”グズでノロマ”なイメージが湧いてきませんが…。そこからどのような経緯があったのでしょうか?

市角さん
転機を迎えたのは、大学の時でした。大学に入学してから演劇を始めたのですが、その時にポスターやWebサイトの制作を担当しました。昔から、絵を描くことが好きだったので。

すると、周りの人がとても褒めてくれたんですよ。今振り返ると、「自分がやった仕事で人が価値を感じてくれる」初めての経験でしたね。

これまで”グズでノロマ”だった自分にとって、人から褒めてもらえる能力があったんだという気づきは、今後の人生に大きく影響を与えることになりました。

―そこから、デザイナーへの道がひらけたんですね。

市角さん
はい。デザインで人に褒められてからは、もう夢中でした。

ひたすらデザインの勉強をしましたし、デザインの仕事を演劇以外でもやらせてもらう内に、学生ながらいわゆる大企業さんからの仕事を受注するようにもなりました。

そして大学卒業後、フリーのデザイナーとして独立するのですが、これも「自分にはコミュ力がないから、会社員は向いていない」と思ってのことでした。

しかし、デザイナーとして仕事を重ねる内に、苦手だと思っていた”コミュニケーション”の素養が発掘されていきました。

相手の言ったことに対してあれこれ過剰に考えてしまうことは、実は、相手が伝えたいのに言語化できていないこと知ろうする気持ち、すなわち行間を読むというデザイナーに欠かせない能力の裏返しだったことに徐々に気づいていったのです。

―自分の欠点が実は、長所と密接に関わっている。その気づきは大きいですよね。

市角さん
「デザイナー」という仕事で使う枝葉の技術ではなく、デザインに必要なコミュニケーションや発想力といったスキルは、実はほかの仕事にも役に立つんじゃないか?

20代の終わりごろから、そんなことを考えるようになりました。

デザイナーはいろいろな人と協業できるので、これまで自分が足を踏み入れてこなかったコミュニティにも飛び込んでいきやすいんです。その環境を使って、パラレルキャリアをスタートさせました。

デザイナーに占い師、VJに大学講師まで! 華麗なる職業遍歴を支える、2つの「根っこスキル」


―デザイナーとして活躍された後、どのような仕事を始めたのでしょうか?

市角さん
最初は占い師でした。

ある時、何人かの占い師が集まってできた集団のアートディレクターになってほしい、という依頼が来たんです。

その依頼を受けた時に、私もタロットを使った占いを勉強してみたんですよ。

そして実際に占い師として活動してみると、占い師に必要な能力って実はデザイナーに必要な能力に似ているところがあったんです。

それが、共感能力。

人が伝えたがっていることを察して共感する。これは占い師にとってとても重要なスキルなのですが、私はもともとデザイナーとしてこの能力を養っていたので、比較的すぐに対応することができました。

―デザイナーと占い師。一見すると全く関係ないような2つの職業ですが、実は意外な共通点があったんですね。

市角さん
そうなんです。

全く異なる職業でも、実は求められるスキルは同じだったりするんです。私は同じ要領で、どんどん自分のできることを増やしていきました。

日本の文化「Cool Japan」を海外に広める活動として、VJにも挑戦しました。
※VJ(ヴィジュアルジョッキー):DJが複数の音楽を組み合わせて音楽を作るのに対し、VJは音楽に合わせて様々な映像を組み合わせる

これも「海外で喜んでもらえる日本の文化、Cool Japanとは何か?」と、デザイナーが使う”共感能力”を使って、映像を作っていきましたね。

そしてそんな経歴を買われてか、BBT(ビジネス・ブレークスルー大学)で講師もやらせてもらうことになりました。

通信制の大学なので、学生さんとは画面越しに授業を行います。

ほかにはない講義で学生さんにおもしろがってもらって、且つ学びのある授業を展開する、ということを考えた結果、連続ドラマを撮影することになりました。

―大学の授業で連続ドラマですか!?

市角さん
もともと自分が大学時代に演劇をやっていたので、知り合いの俳優さんを呼んで本格的に撮りました。もちろん、自腹です(笑)。

それでもほかにない授業展開が良かったのか、お陰様で多くの学生さんからポジティブな反応をいただきました。(学生の満足度が、5期連続で90%超え)
これも、「画面越しの学生さんは今どんな気持ちで勉強しているのだろう?」と共感することで生まれたアイデアでした。

―デザイナーから始まり、占い師、VJ、そして大学講師。全く異なるように見えて、実は使っている能力は似ているんですね。

市角さん
「文章が上手い」「画像加工が上手い」といったいわば末端のスキルは、仕事によって違うのですが、それよりもう少し抽象的な力、「空気を読める」「企画力がある」といった力が、パラレルキャリアを展開していく上で重要なのではないか、と私は考えています。

私はこの能力を「根っこスキル」と呼んでいます。

私の場合、この「根っこスキル」は大きく2つに大別されます。

1つ目は、「創造する能力」。
そしてもう1つは「共感する能力」。

デザイナーにせよ、占い師にせよVJにせよ大学講師にせよ、結局はこの2つの力のどちらか、ないしは両方を使って仕事をしています。

誰しも、自分はどんな「根っこスキル」を持っているのか、自分のやりたい仕事にはどんな「根っこスキル」が必要なのかを考えることが、パラレルキャリアを始めていく上で重要になると思います。

「根っこスキル」を見つけて、必ず小さく始める。市角壮玄が教える、パラレルキャリアの歩み方

―そして市角さんはここ最近、さらにフードデザイナーとしてのキャリアをお持ちですが、こちらはどういった経緯で始まったのでしょうか?

市角さん
デザインワークもその他のプロジェクトも、これまでの職は比較的誰かに依頼を受けて始めたものでした。

デザイナーの持つ能力を能動的に活かして新しいキャリアを作ることが出来ないかと思い、目をつけたのが食、とりわけ日本食の再デザインだったのです。

―なぜ寿司だったのでしょうか?

市角さん
私は仕事でよく海外、特にヨーロッパへ行くのですが、現地で「西洋全体の東洋化」、そして「日本食というブランドの高さ」を前々から感じていました。

今、ヨーロッパではヨガや日本食といった、アジアの文化が流行しています。

さらに目をつけたのは、ヨーロッパの裕福層にはベジタリアンが多い、ということでした。

この2つをどうにか融合して新しいものが作れないか。そう考えて生み出したのが「VEGESUSHI」(ベジずし)だったんです。

外国人に不動の人気を誇る寿司という食文化を、野菜を使って色とりどりに表現する。ヨーロッパのホームパーティーの文化に合わせて、握り寿司ではなく押し寿司でみんなでシェアできるようにしました。

ヨーロッパの今現在の流行と、もともとある文化のいいところをミックスさせ、ひとつの作品(寿司)を作り上げる。

フードデザイナーとしての仕事は、私が持ち合わせる2つの「根っこスキル」を主に使っているんです。

―自分の「根っこスキル」を見極め、使いこなす。フードデザイナーの仕事は、まさにそれを体現したような仕事なんですね。自分の「根っこスキル」を見つけて伸ばす以外に、何かパラレルキャリア初心者にアドバイスはありますか?

市角さん
必ず小さく始めること、そしてたくさんのトライアンドエラーを繰り返して、たくさん”転ぶ“ことが大切だと思います。

私自身、演劇のチラシづくりという小さな環境からキャリアをスタートしていますが、今に至るまでにたくさんの失敗を経験してきました。

しかし、パラレルキャリアという生き方の性質上、失敗したとしても誰も責任を取ってくれません。

そもそもパラレルキャリアが合うかどうかは人それぞれですし、いきなり初心者の人がトライアンドエラーもなしに大きく勝負すると、派手に失敗することにつながりかねません。

自分に合っているかどうか、そしてどんな仕事ならパラレルキャリアを実現できるかをよく考え、まずは小さく始めてたくさん失敗を積み重ねていく。

するとどうすれば勝てるのか、が自分の中である程度明確になってくると思います。

自分が始めたいビジネス、ないしは仕事を身近な人に見てもらってフィードバックをもらうなど、徐々に活動の幅を広げていけばいいと思います。

そして最後に1つだけ。

現在、パラレルキャリアという生き方がある種の「流行」になっているように感じています。

流行は必ず終わりを迎えます。流行が終わると、
軽い気持ちで挑戦したパラレルキャリアで失敗した人たちも出てくるでしょう。

そこでおそらく多くの人はこういう結論に至るはずです。

「パラレルキャリアは一過性のブームだった。こういった上辺だけの情報に振り回されず、ヘタな挑戦をしないのが1番だ」と。

これは非常に残念なことです。

大切なことは他人の意見に振り回されるのではなく、自分が本当はどんな生き方をしたいのか、という視点です。

自分らしく生きるために必要な「根っこスキル」は何なのか。それを磨いて活かしていくにはどうすればいいのか。

それをよく考えて、まずは小さく始めてたくさん失敗しましょう。

その中で自分にしかない「人生の根っこ」を見つけていく。そうすればどんな時代になっても自分にとって納得が行く道がひらけるのではないかと、私は思います。

―――じぶんの根っこスキルを見つけて生きる、それこそがパラレルキャリア形成に不可欠だと市角さんはいいます。

その根っこスキルは必ずその人の”人となり"と密接に関わっているのだそうです。市角さんの場合のように、もしかしたらヒントはあなたのコンプレックスの中にあるかもしれません。

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「老後資金はいくら必要なのか? 」「住宅ローンの上手な組み方は? 」「自分に合った資産運用は? 」など、各種メディアでお金の話題が掲載されない日はありません。

また、金融機関のCMも少なくありません。

長い人生を送る上でお金は必要なものですが、お金に対する何らかの不安や悩みを抱えている方が多いのも事実です。

そこで、最近ではファイナンシャルプランナー(以下、FP)という職種が注目されています。

FPになり、さらには独立開業するにはどうすれば良いのか簡単に解説していきます。

FPは「お金の専門家」

FPとはどんな仕事をするのでしょうか?  FPは、顧客が望むライフプランを実現させるため、顧客から提供された各種情報(家族構成・年収・資産・負債状況など)を基にまずは現状分析を行い、その上でアドバイスや将来の資産設計を行います。

もっと端的に言うと、FPは”ライフプランの総合アドバイザー”であり、またお金に関する悩みを解決することから「お金の専門家」とも呼ばれています。

また、顧客に対する相談だけではなく、お金に関するセミナー講師や執筆に携わっているFPも多いです。

FPになるにはまず資格を取得する

FPとして仕事をするには、その業務の性格上、お金に関する幅広い知識が必要となります。

そして、FPとしての実力を担保するために、勉強して資格を取得するのが一般的です。

FP資格には2つの種類があります。1つは国家資格である"FP技能士"。

もう1つは日本FP協会が認定する民間資格である"AFP(アフェリエイテッド・ファイナンシャルプランナー)"と"CFP(サーティファイド・ファイナンシャルプランナー)"です。

FP技能士は難しい順に1級から3級まであります。

AFPは2級FP技能士と、CFPは1級FP技能士とほぼ同等のレベル。

FPとして仕事をするのであれば、最低でもFP技能士2級合格を目指したいところです。

FP技能士2級には受検するための資格があります。

FP業務未経験者の場合、FP技能士3級試験に合格するか、日本FP協会が認定するAFP認定講座を修了することなどが必要です。

試験は学科試験と実技試験があり、学科試験は4択式のマークシート方式、実技試験は記述式(択一、語群選択、空欄記入の各形式を含む)です。

いずれも正答率6割で合格です。

試験範囲はファイナンシャル・プランニングに関する幅広い分野から出題されます。

詳しい内容は公式サイトを参照してください。

合格率は35%から50%で推移しており、国家試験では合格率が高い部類となります。

初心者でもきちっと勉強すれば合格を手にすることが可能です。

独立・開業するにはキャリアを積むのが一般的

FPとして独立するには、まず企業に勤め、実務経験を積んでからその業務で得た知識をメインにして開業することが一般的です。

例えば、保険会社勤務の場合、生命保険や損害保険の見直し、証券会社勤務だと資産運用、不動産や住宅関連会社勤務は住宅購入に関する資金相談といったところです。

また、FP事務所に勤務したのち、独立するパターンもあります。

では主婦としてのキャリアでは独立・開業は無理なのでしょうか?

そんなことはありません。

日々の節約術、教育費の捻出、貯蓄や資産運用、住宅ローンや保険の見直しなど、家計を管理していくことすべてがFPとしてのキャリアに繋がっていきます。

"生活者目線"でアドバイスできることこそ主婦FPの大きな強みです。

実際、主婦の経験を生かして活躍しているFPは大勢います。

その経験を生かすには、単に家庭内で実践するだけではなく、その知識をさらに深堀りしていくことが重要となります。

例えば、住宅購入するためにローンを組む場合には、各金融機関のローンの特徴を徹底的に調べ、比較検討し、他人にアドバイスできる精度まで高めておくという具合です。

また、お金に関する法律の改正も多いので、常に最新の知識が求められます。

AFP資格を取得すると日本FP協会に入会しますが、機関誌の購読やSG(スタディグループ)への加入など知識をブラッシュアップする機会がたくさんありますのでおすすめです。

まとめ

FPの年収ですが、千差万別でメインとする業務や収入源によって変わってきます。中には数千万円以上稼ぐFPもいます。

また、独立当初は自宅を事務所にしてスタートすることも可能です。

FPは開業する際、大掛かりな設備投資や商品の在庫を抱える必要がないため初期費用が少なくて済むことは大きなメリットでしょう。

仕事の面では、インターネットの普及により、FPの専門知識を生かした電話やスカイプなどでのコンサルティングや、ウェブライターなどの需要が高くなっています。

まずは試験に挑戦してみてはいかがでしょうか。

PROFILE

FP・社会保険労務士 木村政美

2004年に、行政書士・社会保険労務士・FP事務所の「きむらオフィス」を開業。2017年より、ダイヤモンドオンラインにてコラム連載を持つ。年金や個人のマネープランの相談・講習、企業向けのメンタルヘルス研修など幅広い分野で活動している。

2019年2月22日

食品や日用品が揃う、スーパーマーケット。

アナタの家の近くにもある“スーパー”に、観光客が集まっていると聞いたら、不思議に思いませんか?

今回お話を伺ったのは、岐阜県多治見市にあるマルナカストアー有限会社の代表取締役社長、中島世志人さん。

中島さんが代表を務める「マルナカストアー」には、地元の人だけでなく、全国から多くの観光客が集まるといいます。

なぜマルナカストアーには、全国から観光客が集まるのでしょうか?

今回は中島さんの経歴とともに、「マルナカストアー」の驚きの取り組みについてお伝えします。

<プロフィール>
中島世志人さん
マルナカストアー有限会社・代表取締役社長
岐阜県多治見市笠原町にある、スーパーマーケット「マルナカストアー」の3代目社長。先代から店を継いで10年、様々な理由から一時は廃業を考えるも、一念発起して店の一角をイベントスペースに改装。イベントスペースの企画第1弾として、キングコング・西野亮廣さんの絵本『えんとつ町のプペル』の世界を、笠原町の名産品であるタイルを使って表現し、人気を博している。

倒産寸前だったスーパーに、『えんとつ町のプペル』が出現した理由

―「マルナカストアー」と中島さんの経歴から教えてください。

中島さん
私の祖父がこの笠原でスーパーマーケットを開業しました。こどもの頃からこの店があったので、なんとなく「自分も将来は継ぐのかな…」と思っていました。身近過ぎる故に、こどもの頃はあんまり乗り気じゃなかったのですが(笑)。ある程度大人になってから、父からも説得されて店を継ぐことを決めました。大学を卒業後は3年、名古屋市内のスーパーマーケットに就職して経験を積んでから、「マルナカストアー」に戻ってきました。

―そこからはずっとこの「マルナカストアー」にお勤めされているのでしょうか?

中島さん
はい。25歳の時に店に戻ってきたので、かれこれ20年近く勤めていますね。そして35歳の時、先代の社長だった父が急死してしまったんです。父の後を継いで社長となったのですが、いかんせん予期せぬタイミングでの社長就任だったのと、私自身に経営の経験がなかったため、とても苦労をしました。幸い借金などは抱えていなかったのですが、経営はそれほど芳しく無く、先代たちが築いてきた遺産を食い潰しながらなんとかやってきたんです。

景気も悪く私自身の力不足もあり、いよいよ店を閉めようかと思っていた矢先に出合ったのが、キングコング西野さんの著書『革命のファンファーレ』と『えんとつ町のプペル』でした。

―「マルナカストアー」に来て、まず飛び込んできたのがタイルで描かれた『プペル』の世界観でした。なぜ『プペル』だったのでしょう?

中島さん
理由は2つあります。1つ目の理由は、2016年に「多治見市モザイクタイルミュージアム」がこの店の目の前にできたことです。
http://www.mosaictile-museum.jp/この笠原は古くからタイルで有名な場所です。様々なモザイクタイルを使ったアート作品が「インスタ映え」すると、開館当初から大きな話題になり、人が集まるようになりました。

2つ目の理由は『プペル』が著作権フリーであること。西野さんは『プペル』に関して、基本的に著作権はフリーであるとしています。
https://ameblo.jp/nishino-akihiro/entry-12371970580.html

「このタイルと『プペル』を組み合わせて展示したら、多くの人が集まってくれるんじゃないか」と思い、作ったのがこのイベントスペースなんです。

中島さん
もちろん『革命のファンファーレ』にも大きな影響を受けましたし、お世話になっている会計士の方に「どうせ辞めるなら好きなことをやってから辞めなよ」と助言されたことも理由の1つですね。また、笠原町がタイルで栄えていた頃は、工場や窯のえんとつがたくさんありました。そういう意味でも、笠原町は本当に「えんとつ町だった」ので、プペルを題材にしたかったんです。

スーパーでタイルをPRする。3代目社長として、自分の代で地元に何を残せるか?

―スーパーマーケット×イベントスペースという組み合わせは非常に斬新ですね。

中島さん
最初はフリーマーケットを出す、みたいなことを考えたりもしたんですが、すでに誰かがやってそうだなと。店に入ってすぐタイルの『プペル』がいるスーパーマーケットは、多分ウチくらいでしょう(笑)。

―でもなぜ「タイルでプペルを」という発想に至ったのでしょう? 普通にプペルの絵を展示する、でも良かったのではないですか?

中島さん
「多治見市モザイクタイルミュージアム」が目の前にあるから、という理由もありますが、昔から「自分の代で何を残せるのか」ということをずっと考えてきたからです。というのも先代たちは、何かしら私たち(後世)に残してきてくれました。祖父はこの場所そのものを作ってくれましたし、父は全日食チェーン(全日本食品株式会社が運営する日本最大級のボランタリー・チェーン)の取締役をやっていたこともあり、多くの人脈を築いてくれました。

中島さん
彼らが残してくれた、お金だけではない遺産があったからこそ、なんとかここまでやってこられました。では自分が3代目社長として何が残せるのか、それをずっと考えてきたんです。そして「自分たちが店を構えるこの笠原という地の魅力を発信して、より盛り上げることなんじゃないか」という答えに、ようやく辿り着くことができました。

タイルと『プペル』の組み合わせは、その第1弾です。

―ご自身の想いとタイル、『プペル』が点と線でつながった結果が、このイベントスペースなんですね。周囲の反応はどうなのでしょう?

中島さん
最初は年配の方を中心に「何してるの?」と疑問の声が上がったりもしていたのですが、新聞記事などに取り上げられてからは「新聞見たよ!」と言っていただくことも増えてきました。「スーパーでタイルをPRする」という珍しさから、評判は悪くありません。道沿いに大きな看板があるので「多治見市モザイクタイルミュージアム」に行ったついでに立ち寄ってくれるお客さまも増えました。

中島さん
また西野さんのオンラインサロン「西野亮廣エンタメ研究所」の会員さんや『プペル』のファンの方も全国から来てくださるようになりました。従来どおり、良くも悪くも「地元密着型スーパーマーケット」を運営していた時代から考えると、かなり斬新な集客の形ですね。

地元の人も観光客も集まる場所へ。“全国区”の地方スーパーへの道

―スーパーマーケットと言えば「地元の人が食品や日用品を買いに来る場所」というイメージですが、「マルナカストアー」はその概念を覆していますね。

中島さん
全国からお客さまが来てくださることは嬉しいんですが、とはいえ地元の人から敬遠されてしまっては意味がないんですよね。そもそもこの一連の活動は「地元を盛り上げる」という大前提があってのものですから。タイルや『プペル』といった、全国から集客できるシステムは継続しつつ、地元の人が来てくださる仕組み作りを考えています。

―具体的にはどのようなことですか?

中島さん
店の2階を使って、地元の人が集まって談笑したり、仕事ができたりするコワーキングスペースを作りたいですね。またちょっとした軽食が食べられたりお酒が飲めるような、イートインスペースを作ろうとも思っています。あるいは音楽イベントなども定期的に開催できるようにしたいので、音を出せる環境にもしないといけませんね。

地元の人も観光客も楽しめるスーパーを目指しています。

―まさに「全国区の地方スーパー」ですね。最後に、読者の方へアドバイスをいただけますか?

中島さん
おそらく家業を継いだけど、あんまり状況は芳しくない、という方も多いと思います。私自身、つい2年前までは店を畳もうと思っていました。でも自分のやりたいことに気づいて行動した時、ようやく進むべき道が見えました。悩んでいる人は自分が何をしたいのか、どうなりたいのかを一旦整理して棚卸しすると良いかもしれません。その上で今の仕事と絡められそうなら続けるも良し、全く絡められないならやめるのも良いでしょう。

大切なことは、まずは打席に立つこと、そしてバットを振ることだと思います。見逃し三振では何も始まりません。まずは「どの打席に立つべきか」から考えてみてはいかがでしょうか。

2019年2月22日

PLOFILE

山田康夫さん(69歳)

尾鷲山田堂/大阪市生野区

大学卒業後、大手小売企業に入社。
59歳で退職すると、三重県尾鷲市の海洋深層水塩に出合い、「卵アレルギーの孫にドーナツを食べさせたい」と思い立つ。
2010年に起業。妻の時代さんと二人三脚の経営。移動販売やネット通販も行う。
(さらに…)

2019年2月21日

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