フリーランスになるとクライアントに対する請求書の発行が必要になります。請求書は仕事を請け負えば必ず発行することになります。本記事では、フリーランスとして業務を行う中で請求書発行時に記入すべき項目と、注意点をお伝えします。
そもそも請求書とは
請求書とは、フリーランスに限らずクライアントに対して仕事の報酬を請求するための書類です。発注を受けた仕事が完了した際に提出します。
エージェント経由で仕事を受注している場合には、請求書のテンプレートや送付方法などがすでに決められていたり、エージェントから書類作成のサポートを受けられたりすることもあります。
ただし、個人で仕事をもらっている場合は、自分で請求書を作成します。国税庁のホームページでは請求書に記載すべき事項が載っていますし、インターネットで検索すれば簡単にテンプレートが手に入るので、自分で一から作成するのが不安な方はチェックしてみてください。
「No.6625 請求書等の記載事項や発行のしかた」(国税庁)より
(注1)小売業、飲食店業、タクシー等を営む事業者が交付する書類については、⑤の記載を省略することができます。
(注2)仕入れ先から交付された請求書等に、「軽減税率の対象品目である旨」や「税率ごとに区分して合計した税込対価の額」の記載がないときは、これらの項目に限って、交付を受けた事業者自らが、その取引の事実に基づき追記することができます。
(注3)その書類に記載されている事項について、取引の相手方の確認を受けたものに限ります。
フリーランスの請求書に記載すべき項目とは
請求書の書き方はどんなテンプレートを使用するのかによって異なります。しかし、記載しなくてはいけない項目は決まっています。自分で請求書を作成する際、漏れがないようにどんな項目を含めなくてはいけないのか詳細を確認しておきましょう。
1. 宛先
取引先の企業名、事業部名、担当者名などの宛先は必ず記入が必要です。依頼主に、請求先を社内の別の部署とするよう指定されるなど、依頼主と請求先が異なる場合もあるため、どこに請求書を提出すべきなのか事前に確認しておきましょう。
2. 請求内容
商品名やサービス名のほかに、数量と金額も記載します。クライアントによっては「〇〇と書いてください」と請求内容の書き方を指定されることもあります。クライアントに、請求内容の記載についても希望がないか確認しておくと親切です。
3. 消費税
請求書には、請求額に対する消費税の金額を明確にします。軽減税率の対象とならない品目(10%)と軽減税率の対象となる品目(8%)がある場合には、それぞれの小計を分けて、各項目にいくらの消費税額がかかっているのかを明記しましょう。
4. 発行日
請求書の発行日は作成した日付ではなく、請求先の締め日を発行日とするのが一般的です。
5. 支払期日
支払日の記載をします。毎回記載すると支払い漏れがなく、支払い漏れや請求漏れのリスクも抑えられるので、必ず記入するようにしましょう。
6. 発行者
フリーランスの場合は仕事の請負先である自分の名前を入れます。法人化している場合には会社名を記載します。
7. 振込先
振込先は正確に銀行名、支店名、口座種類、口座名、口座番号を記載します。振込手数料を負担してもらう場合には、その旨も請求書に書いておきましょう。
8. 特記事項
支払い期日の変更、分割払いなど、特別な条件がある場合には特記事項も含みましょう。
9. 請求書番号
請求書の管理や確認作業用に、右上に通し番号など、請求書ごとに番号を記載しておくと、後から請求書を探すときなど便利になるでしょう。
フリーランスはクライアントの希望するフォーマットに合わせて請求書の作成をするのが望ましいです。どのような書き方が良いのか、締め日はいつなのか、クライアントに事前に確認しておきましょう。
フリーランスはなぜ請求書を発行しないといけない?
そもそも、フリーランスはなぜ請求書の発行を求められるのでしょうか。請求書があれば、業務に対する報酬についてお互いに再確認できます。
他にも、税制上の証拠書類として保存しておかなくてはいけないため、請求書の発行が求められます。税金には法人税、所得税、消費税などさまざまなものがありますが、消費税の仕入税額控除を受けるためには、課税仕入れなどに関する帳簿か請求書等を保存しなければいけません。
つまり、請求書を提出してもらって保存していなければ、支払いをしているのにもかかわらず消費税の仕入税額控除を受けられないことになってしまいます。自分がフリーランスであっても取引相手の企業から請求書を求められるのは、これが理由です。
請求書の保存期間とは
取引先に請求書を提出して報酬を受け取れば、もう請求書は必要ないからすぐに捨てても良いと思っているフリーランスの方もいるかもしれません。しかし、発行した請求書には、保存義務というものがあります。
フリーランスの場合、発行した請求書の保存期間は5年間です。年間の課税売上が1,000万円以上など一定の条件を満たすフリーランスの場合、発行した請求書の保存期間が7年となります。このとき注意しなくてはいけないのが、保存期間の起点となる日付が請求書の作成日ではなく、確定申告の提出期限日の翌日だという点です。さらに、帳簿をつける場合、7年間の保存義務があります。帳簿と一緒に請求書も7年間保存しておくのが安心でしょう。
「売上高が1,000万円を超える場合(消費税について)」(国税庁)
フリーランスが請求書を扱う際の注意点
フリーランスが請求書を扱う際には、いくつか注意点があります。請求書はお金の取引をするのに重要な書類です。フリーランスとして毎月仕事を請け負っていると、毎月発行することになる請求書ですが、ミスのないよう発行するためにも注意点は必ずおさえておきましょう。
1.請求書番号は必須ではないが管理には必要
請求書の管理をするために、「請求書番号」というものがあります。請求書番号は必ずつけなくてはいけない決まりはありませんが、請求書の発行先がある程度決まっているフリーランスの方は、必要に応じて請求書番号をつけておくと、お互いに管理がスムーズになるでしょう。
2.振込手数料の負担先を明確に
銀行口座へ振り込みで支払いをしてもらう場合、振り込み手数料が発生します。振り込み手数料をフリーランス自身が負担するのか、クライアントが負担するのかは事前に取り決めをしておきましょう。
また、振り込み手数料を負担してもらう際には、請求書にその旨を明記しておくことをおすすめします。
3.源泉徴収される場合の金額を明記する
フリーランスが請求書を作成する際に注意しなくてはいけないのが、源泉徴収の制度です。源泉徴収とは、報酬を支払う側(クライアント)が報酬から所得税を差し引いた金額を請求先(フリーランス)に支払い、報酬から差し引いた分の税金は報酬の受取人(フリーランス)に変わって報酬を支払う側(クライアント)が納税する制度です。
源泉徴収額は請求金額の10.21%です。源泉徴収をされる場合には、請求書にあらかじめ源泉徴収後の金額を記載しなくてはいけません。
【源泉徴収額の計算例】
報酬金額:100,000円(税抜き)
所得税 :100,000円×10.21%=10,210円
消費税 :100,000円×10%=10,000円
【源泉徴収された場合の請求額】
報酬金額:100,000円
所得税 :-10,210円
消費税 :+10,000円
合計 :100,210円
フリーランスとしてライター、カメラマン、デザイナーの仕事をしている場合、報酬は源泉徴収分をひかれた金額が報酬として支払われます。
「No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」(国税庁)
4.請求書への押印は必ずしも必要ではない
法律上、請求書への押印が義務付けられてはいません。そのため、請求書に押印がされていなくても取引先への支払い義務は発生します。
しかし、中には押印されていない請求書では経理処理ができない企業もあります。請求書を作成する際には、押印が必要かどうか事前に取引先に確認しておくのが安全でしょう。
インボイス制度によりフリーランスの請求書にも影響が出る?!
2023年10月1日から、課税事業者が対象の「インボイス制度」が導入されます。
インボイス制度とは「適格請求書等保存方式」のことで、帳簿の他に適格請求書(インボイス)の保存を条件に消費税の仕入れ税額控除を適用できる制度です。今まで作成してきた区分記載請求書の代わりになる新しい請求書が適格請求書になります。この適格請求書を発行できるのは「適格請求書発行事業者」に限られており、「適格請求書発行事業者」になれるのは、登録申請書を提出して登録を受けた事業者のみになります。
クライアントから求められた際にインボイスを発行する必要がありますし、その写しの保管もしなくてはいけないという制度になります。2023年3月時点で登録申請書を提出してから登録までe-Tax提出の場合で約3週間、書面提出の場合は約2か月かかるようなので、早めに確認しておくとよいでしょう。
確定申告で必要な請求書の発行をお忘れなく!
請求書は法律上作成の義務はないものの、仕事を請け負うと、報酬を受け取る際にほとんどの企業で請求書の発行を求められるので、フリーランスとして活動するにあたり避けては通れない書類になります。
フリーランス自身も確定申告の際に提出するものになるので、自分のためにもきちんと発行し、厳重に保管しておくようにしましょう。
<文/ちはる>