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起業家・先輩から学ぶ

生まれ育った町に恩返し。 安心のおいしさと癒しの時間を届けたい。

心地良いデッキ席からは手入れの行き届いた季節の花や草木の姿が。店名はハワイ語で「散歩」という意味だそう。開業のきっかけは生まれ育った町に恩返しをしたかったからとオーナーの長谷川さん。この地に根付いてまもなく10年。住宅街の一角の小さなカフェのはじまりと、これからの夢についてお話を伺いました。

長谷川 恵(はせがわ めぐみ)

高校卒業後、憧れだったアメリカへ。20代前半までNYで過ごす。帰国後は大手企業の受付や雑貨店の立ち上げなどを経験する。前職は花屋で飲食店オーナーの道を歩み出したのは30代後半の頃。大工の棟梁だった伯父や娘が通う幼稚園で出会った仲間の協力を得つつ、普通の一軒家をハワイアンテイストなお店に変身させた。

「おいしい」のひとことがオーナーを目指すきっかけに。

――花屋さんからカフェへの転身。どんなきっかけだったのでしょうか?

長谷川:花屋に勤めていた時、通常の仕事とは別にスタッフのランチの用意も担当していたんです。狭いキッチンでしたけれど、できるだけおいしいものをつくりたいと思って、いろいろなアイデアを凝らしていました。空になったお皿を持ったスタッフの“今日もおいしかったですよ”のひとことがとてもうれしかった。その頃から、飲食店で独立するのもいいなと思っていました。

――素敵なエピソードですね。一軒家のカフェはもともとのコンセプトだったんですか?

長谷川:イメージしたのはごはんもおいしいカフェでした。実はこの地域は駅からも距離があり、私を含む地域のママさん達が育児の合間にほっと一息つける場所がありませんでした。コーヒーが飲める場所がないのだったら、自分の店がその場所になればいいと思ったのです。また、手がかかる年齢だった娘が、放課後を過ごしたりごはんを食べたりできるように「お店」という業態を選んだ部分もあります。

いつの間にか、1人の夢がみんなの夢へと大きくなった。

――独立にあたってハードルになったことはありませんでしたか?

長谷川:もともと綿密な計画ありきの独立ではなかったので、ある意味ハードルだらけの出発。逆に言うと怖いモノはない!という感じでした。カフェをやると決めて動いているうちに、私の思いに共感してくれた友達やママ仲間が次第に集まり、私の夢はみんなの目標のようになってきて、お店のペンキ塗りや装飾を喜んで手伝ってくれました。あの時の善意には本当に感謝しています。恥ずかしくて面と向かって言えませんけどね(笑)。

――独立は「ご縁」や「きっかけ」が大事と言われますが、まさにその通りですね。

長谷川:その通りだと思います。例えばこの場所だって、昔は塾だった一軒家がいつ頃からか空き家になっていました。所有者は誰だろうと興味が沸き、たまたま空き屋の近くにいた女の人に声をかけたらなんと大家さんの奥さま。地域のママが集まるカフェの構想を話すと、快く貸していただくことになりました。あの時声をかけていなかったら、どこで開店していたんでしょうね。本当に「縁」って不思議で、とても大事なことだと思います。

――ハワイアンテイストのお店の内装は全て手作りされたとか?

長谷川: 100均ショップなども利用しつつ資材を買い揃え、少しずつお店の雰囲気を整えていきました。天井一面の格子は、実はガーデニングで使う柵を使っています。お金がないならないなりの工夫がパッと浮かぶから不思議ですよね。協力者のママや友人といろいろ話し合っていた時間も、今振り返ってみると素敵な思い出になりました。

―― 一軒家のリフォームは大変だったのではないでしょうか?

長谷川: 店の裏手に回ってもらうとわかりますが、お勝手口も玄関もある本当にただの一軒屋だったんです。改装にあたっては、大工の叔父にずいぶん助けられました。場所が決まったと連絡したら、その時住んでいた山形から飛んできてドアや間口のサイズを採寸、その数日後には、トラック一杯の材木と大工道具を携えて戻ってきました。こちらが驚く暇もないまま大改造がスタート。壁だった部分は大きな窓になり、雑草だらけの庭はウッドデッキに。あっという間に一軒家が店になっていったのには、みんなが驚きました。

――素敵な叔父さんですね。

長谷川:はい。どうやら、叔父は私の家を建てるのが夢だったらしいのですが、それよりも先にお店が建った感じになってしまって。そんな叔父も数年前に他界しました。私も叔父が大好きだったので、今でもお店のどこかでこちらを見守っているような気がしています。

お店を続ける理由は、もっとお客さまの笑顔が見たいから。

――お店のこだわりを教えていただけますか。

長谷川:安全でおいしいものを心がけています。使うお米は提携農家のもので、加工されたものは一切使わず、全て仕込みの段階から手間ひまをかけています。定番おかずもあれば、ちょっとひねりの利いたお惣菜なんかも。料理雑誌からヒントを得て、その日に思いついたおかずも出しています。お客さまに楽しんいただく前に、まず私が料理を楽しんでいますね。

――人気メニューはなんでしょうか?

長谷川:日替わりのランチプレートとNY時代にハマったベーグルサンドが良く出ますね。グリーンカレー、アジアン焼きそば、フォーなどのアジアン系もママさんたちに人気です。一部のメニューは近隣のレストランに卸したり、ケータリング、お弁当の配達など通常のカフェ営業以外もがんばっています。

――来年で10年目となりますが、これまでを振り返ってみていかがでしょうか?

長谷川:小さな店とはいえ、少ない人数での営業と資金繰りに苦労することもあります。当然、客足が少ない日は不安にだってなりますね。ですが、来てくれる方がいらっしゃることを考えると明日も開けなきゃと気持ちが切り替わります。例えば、出産予定日を明日に控えた妊婦さんが「最後の外出日なのでランチをしにきました」とか、突然の雨をしのぐためにお店に駆け込んできた近所のこどもが雨宿りのお礼にと道端の花を持ってきてくれたこともありました。こういう瞬間がある以上、この店をがんばって続けていく理由しか見つかりませんよね。

取材・文/池ノ内契忠 撮影/難波宏

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