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“質が良いのは当たり前”な現代、ブランディングが成功の鍵を握る理由を村本彩さんが語る

“質が良いのは当たり前”な現代、ブランディングが成功の鍵を握る理由を村本彩さんが語る

社会として成熟期を迎え「質の高い商品やサービス」が提供されることは、もはや当たり前となってしまった、現代の日本社会。

「良いものを作れば売れる」という時代はとうに終わりを迎え、それでも事業を続けていくためには、競合他社と何かしらの形で差別化しなければならない……。

ではどんな方法で差別化をすれば良いのでしょうか?

今回お話を伺った、ブランドプロデューサー・村本彩さんは「ブランディング」こそ、激動の現代社会を生き残っていくために必要な方法論だと語ります。

元サントリー社員として10年間商品開発に携わり、ブランディングに関する知見やノウハウを積んできた村本さん。

今回はそんな村本さんに、「ブランディング」とはそもそもなんなのか、商品・サービスだけでなく人のキャリアや生き方にすらも活かせる、ブランディングの考え方について、じっくりと伺いました。

独立・起業を検討する人に、必見の内容です!

<プロフィール>
村本彩さん
ブランドプロデューサー
irodori Branding株式会社 代表取締役

大学を卒業後、サントリー株式会社(現サントリーHD)に入社。
営業部 を経て、マーケティング部門に異動。
10年に渡り商品開発などを手がけ、ブランディングについての見識を深める。

第二子の育休中に、ベンチャー企業に育休インターンに参加。
以降、社外の人と積極的に関わりを持つようになり、自身が培ってきたブランディングのノウハウが、さまざまな事業で役に立つことを知る。

2018年に独立し、2019年に事業を法人化。irodori Branding株式会社を立ち上げる。
現在は、個人事業主や独立・起業を考える人向けのブランディングカレッジの開講や、中小企業向けのブランディングコンサルを行っている。
今後はビジネス支援スクール、キャリアデザイン支援スクールも開催予定で、山梨県北杜市に宿泊機能も持つワ―ケーション&交流スペースを設立予定。

<本稿における「ブランディング」>
ブランディングとは「価値を作り、その価値を伝え・育む営み」のこと。

「質が良いのが当たり前」の世の中で、どう差別化する? 現代の独立・起業に必須のスキル「ブランディング」とは

——irodori Branding株式会社の代表、そしてブランドプロデューサーとして活躍中の村本さん。まずは、村本さんの運営する事業について、教えていただいてもよろしいでしょうか?

村本さん
主に個人事業主の方やこれから独立・起業を考える人・中小企業の経営層やマーケティング部門向けに、ブランディングを始めとしたマーケティングのコンサルティングを行っています。

一部の企業を除き、自社の商品やサービスのブランディングを、専門に担当する部署はそう多くありません。

ましてや個人事業主やフリーランスの方は、自分の商品やサービスのブランディングを、自分1人で形成していかなければなりません。

そこで当社の講座では、ブランディングに関する知識やノウハウをお伝えして、実際に自分(自社)の商品やサービスに、ブランディングの考え方を落とし込んでいきます。

——「ブランディング」や「ブランド」という言葉はよく耳にしますが……改めてこの言葉の定義を教えてください。

村本さん
ブランディングとは「価値を作り、その価値を伝え・育む営みのこと」を指します。

私は独立する前、サントリー株式会社(以下、サントリー)のマーケティング部門で10年間、商品開発の仕事に携わっていました。

そこでブランディングというものを学んだのですが、当時の上司から、こう教わりました。

ブランディングとは「商品そのものを作ること」ではなく、商品を手にしたお客さまの「心の中のイメージを作ること」である、と。

——心の中のイメージを作る、ですか?

村本さん
日本人の使用率が高い、iPhoneを例に考えてみましょうか。

幾多のスマートフォンがある中でなぜ、多くの方が「iPhoneがいい」と手に取るのでしょうか。

「iPhoneはカッコイイ」「iPhoneはスマートな自分になれそう」「Apple製品を使う人はクリエイティブな人っぽい」……。

などなど、手に取る理由は人によって異なると思いますが、そうした商品やサービスに対して人が抱くイメージを、作り手側が形成し、育むプロセスをブランディングと言います。

そしてこのブランディングは、何も、Apple社のような巨大企業だけに必要なことではありません。

——といいますと?

村本さん
社会が成熟し、飽和してしまっているこの日本社会において、「質のいい商品・サービス」が提供されるのは、もはや当たり前になったといっても過言ではありません。

実際サントリーに勤めていた時、自社と競合他社のビールを比較しても、正直味はどちらも美味しいと感じていましたから(笑)。

そんな中で、どうしたら競合他社ではなく、自分の商品やサービスを選んでもらえるか。

その答えはお客様の心の中にイメージを作っていくブランディングにあると、私は考えています。なぜなら人間は、論理ではなく「感情」で意思決定をするからです。

——つまり、商品やサービスの質で差をつけるのではなく、お客さまの「感情」に訴えかけて、選んでいただく、と?

村本さん
その通りです。

例えば「髪を切るならこの人にお願いしたい」「家の近くのお店より、時間を使ってでも遠くのあの店のこの商品を購入したい」「高くてもこれがいい」「〇ヶ月待ちでもほしい」と感じる瞬間って、皆さんの日常生活の中にもありませんか?

皆さんをこうした気持ちにさせているのは、その商品やサービスのブランディングが成功しているからと言えます。

「感情」を動かすには、時間をかけて、自分の事業のメッセージやストーリーを届け続ける

——なんとなく「ブランディング」について、理解できてきたような気がします……! ではどうしたらお客さまの「感情」を動かすことができるのでしょう?

村本さん
お客さまの「感情」を動かしたいのなら、まずは相手のことを深く知ることからですね。

例えば、革製品の製造販売を手がける会社を例に挙げてみましょう。

「新進気鋭の若手ビジネスパーソン」に買っていただきたい商品と「伝統的な格式を好む会社役員」に買っていただきたい商品とで、全く違ったブランディング手法を取ることになるのは、想像しやすいのではないでしょうか。

——たしかに、作りたいイメージによって、全く取るべき手法が異なりますね。前者ならSNSやWeb、動画を積極的に発信したり、実店舗を出すなら渋谷の再開発された駅ビルに出店する。後者ならWebよりも雑誌や新聞といった紙媒体の方が好まれるかもしれませんし、実店舗なら丸の内や銀座などにあるイメージが浮かびました。

村本さん
これはあくまで例ですが、いずれにせよ大切なことは、伝える手段の前に、届けたいお客様をまっすぐ見据えた上で、その方達の心に響く自分たちのストーリーやメッセージを言葉やイメージにして届けていくこと。

先ほどもお話した通り、人は「感情」で意思決定をします。そのメッセージやストーリー、そして個人ならその人の「人となり」を知っていただき、共感してもらうことがブランディングをする上では欠かせません。

そしてこれは企業はもちろん、個人事業や会社員の複業でも、応用が可能です。

村本さんの講座では、ブランディングの基礎から学ぶことができる

——つまり先ほどおっしゃっていた「このお店、この商品が好き」という気持ちを、お客様の心の中に育んでいく活動がブランディングということですね。

村本さん
ええ。

そしてもう1つ、相手のことを深く理解することと同じくらい、ブランディングで重要なことがあると考えています。

それは自分の商品やサービスだけでなく時には「自分自身」をも客観的に分析し、深く理解して、それらがちゃんと「輝ける場所に再配置すること」です。

ブランディングの考え方は、商品やサービスだけでなく「人」のキャリアや生き方にも応用できる

——自分を含めた商品やサービスを客観的に分析して「輝ける場所に配置する」とは、どういうことでしょうか。

村本さん
当たり前な話ですが、どれだけ魅力的な商品やサービスを持っていても、提供者自身がその魅力を正しく認識し、「輝ける場所」に配置されていなければ、本来持っている価値を発揮することはできなくなってしまいます。

そしてこれは商品やサービスのブランディングだけでなく、「人」のキャリアのブランディングにも、同じことが言えます。

具体的にお話した方が分かりやすいかと思いますので「私が会社を辞めて今の事業に行き着いた経緯」を例に、お話させてください。

——ぜひお願いします。

村本さん
私は2018年まで前職のサントリーに勤め、その後現在の事業を、個人事業主として立ち上げたのですが、実は会社員時代、独立・起業をしようとは全く考えていなかったんです。

そんな私がなぜ独立・起業を考えたのか。大きなターニングポイントが2つありました。

1つは、社内のプロジェクトで大きな失敗をしてしまったことです。

マーケティング部に在籍していた私は、当時の自分の持てる力を注ぎ込んで、あるアルコール飲料の商品開発を手掛けていました。

しかしその商品が全く売れずに、大失敗をしてしまったんです。

「やってみなはれ」精神の会社なので、会社から失敗を咎められることはなかったのですが、自分がこれまで好きで一生懸命やってきた仕事での失敗だっただけに、そのショックは大きく、自分に自信を失ってブランドマネージャー以外のキャリアを模索するようになりました。「私はブランディングの能力が低いから失敗した」と思ったんです。

村本さん
この失敗の後、新たなキャリアを模索する中で社外の人とも出会いが広がり、「自分が培ってきたブランディングやマーケティングの見識やノウハウ」が社外の人にとってはお金を出してでも知りたい、とても役に立つことなのだと知ったんです。これが2つ目のターニングポイントになります。

もう少し詳しく説明しますね。

私は先の失敗の後、第二子の出産のために産休育休を取得したのですが、その育休中に何とか次のキャリアの突破口を見つけたいとあるベンチャー企業で「育休インターン」として働かせていただいたり、キャリアのヒントになるようなセミナーに色々と参加するようになりました。

そういった社外の人との新たな出会いを通して「ブランディングについて教えてほしい」とお願いされることが増えていったんです。

自分としては失敗して意気消沈していた時期でしたから、「こんな自分からブランディングを学びたい人がいるのか」と目から鱗でした(笑)

——つまり、前職のプロジェクトの失敗で自分に自信を失っていたものの、他の会社や個人事業主の方といったように環境が変わると、村本さんの持つブランディングの見識やノウハウは、他者から必要とされた。それがまた再起する自信に繋がったと。

村本さん
はい。当時の自分はそれを見失っていて、後から気づいたのですが、これこそが「ブランディングの真髄」なんですよね。

ブランディングは「価値を作り、その価値を伝える営み」のこと。

私は(自信を失っていたけれど)10年間の仕事を経て、少しずつブランディングの知見やノウハウという「価値を作って」きた。

そして社外の場で周りの人に、自分がこれまでに行ってきたこと(作ってきた価値)を「伝えた」ら、それが私のブランドとなり、必要としていただけた。

自分の持っているものは変わっていないけど、置かれる場所や立場によって、(時に自分自身を含めた)人からの見え方や捉え方は変わっていく……。そう、自身の経験から、実感できたんです。

——ブランディングの考え方とは、商品やサービスだけでなく「人」のキャリアや生き方にも応用できるんですね。

村本さん
はい。

そしてこの考え方を通して、これからは商品やサービスだけではなく「人」のキャリア、生き方もブランディングできるような仕事をしていきたいと、今の事業の方向性が見つかったような気がしました。

会社の仕事は楽しかったですし、何も不満はなかったのですが、自分の中に芽生えたこの価値観を大切にしたいなと。そして、独立・起業を選択したんです。

——他でもない村本さん自身の独立・起業が、ブランディングの考え方から生まれたものだったんですね。

独立・起業の第一歩は「ピボット型キャリア戦略」にあり!

——村本さんのこれからの展望を教えてください。

村本さん
現在は個人事業主(独立を考えている方も含めて)や、中小企業向けのサービスを展開しているのですが、この春新たに、会社員の方向けに、キャリアデザイン支援スクールを立ち上げました。

自分が心の底から喜びを感じられる仕事が何なのかを見つめ直し、心の喜びを軸に、時代や環境変化に翻弄されず、キャリアと人生のリーダーシップをとり、今の仕事でも・新たなフィールドでも「食っていける力」の体得を目指すプログラムです。

独立・起業に限らず、キャリアに関する悩みを抱えている方は、非常に多いもの。その悩みを解決するには、まず自分のことを客観視する必要があるのですが、これがなかなか難しいものなんですよね。

その手助けができるようなプログラムになっています。

——最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

村本さん
ここまでお話してきたように、キャリアを作る上で大切なのは、自分の心の喜びといった感情を大事にすると同時に、自分のことを客観視するという2つの視点です。

自分を見つめ直して、これまでの仕事や得意なこと、苦手なことを洗い出したら、今のお仕事を続けながら(安定した状態を保ちながら)、1つ新しいことに挑戦してみてはいかがでしょうか?

これを、私は「ピボット型キャリア戦略」と呼んでいます。


https://irodori-branding.com/theone_opt_lp/index.php

——「ピボット型キャリア戦略」ですか?

村本さん
「ピボット」とは、バスケットボールの用語で、軸足を動かさずに、片足だけを動かすということ。

今のキャリアに軸を置きながら、新たな環境に飛び込んでみたり、今まで会ったことのないような人と会ってみる。

これが非常に大切だと思います。

ちなみに私は昨年、山梨県の北杜市に家族で移住をしました。今年の8月にはこの土地に宿泊機能付きのワ―ケーション&交流スペースを開業予定です。

ワ―ケーションや宿泊施設での交流は、新たな出会いを創出しやすい環境になりますので、完成した施設に訪れる方々にも、その場所から自分の人生が動き出す感覚を体感して頂けたら嬉しく思います。

まずはそういった新鮮な環境に身を置く機会を作ることから始めてみて、動いてみたからこそ想像もしていなかった可能性に出会い、キャリアも人生も広がっていくのではないでしょうか。

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