「売る人」と「作る人」。
ビジネスの本質的な役割や機能は、大きくこの2つに分けられるのではないでしょうか。
今回お話を伺ったのは、起業家の南雲伸平さん。
南雲さんは、学生時代から古着の通販サイトを運営し、独立。現在は古着の卸売業を営みながら、2021年10月からシェアハウスを開業。そして絨毯などモノ作りにも力を入れています。
「売る人」と「作る人」に優劣はないとしつつも、「売る人」を10年やってきたからこそ、今、心置きなく「作る人」に挑戦できていると語る南雲さん。
今回はそんな南雲さんのキャリアとともに、今だからこそ挑戦できることについて伺いました。
南雲 伸平さん
起業家/シェアハウス「サニーハウス」オーナー/ラグアーティスト
高校時代からファッションに興味を持ち始め、卒業後は服飾系の専門学校に進学。
在学中は洋服の制作を学んでいたが、学生生活と並行して古着の通販サイトを立ち上げる。
通販サイトが軌道に乗り、専門学校を中退。その後は実店舗などの開業を経て、拠点を地元の埼玉県川口市に移し、小売業から卸売業にシフトチェンジをしていく。
その他、さまざまな事業や活動なども行っており、2021年10月から新たにシェアハウス事業もスタートさせた。
学生時代に立ち上げた古着通販サイトが軌道に乗り、自営業の道へ
――現在、古着の卸売業、そして埼玉県川口市でシェアハウス「サニーハウス」を経営されている南雲さん。まずは独立に至るまでの経緯を教えてください。
僕は会社員を経験して独立をしたわけではなく、学生の頃に立ち上げた古着通販サイトがきっかけで、以来ずっと自営業をしているんですよね。
だからめちゃくちゃ準備をしてようやく「独立した!」という感じではなくて……(笑)。順を追って説明します。
高校の頃にファッションに興味を持ち始め、原宿界隈に足を運ぶようになりました。そして卒業後は服飾系の専門学校に入学して、洋服作りについて勉強していました。
その傍らで、古着の通販サイトを立ち上げたんです。
――なぜ古着の通販サイトを?
とにかく洋服をたくさん持っていて、学生時代からアルバイト感覚で、都内のフリーマーケットに出品して生計を立てていたんです。それが結構売れたんですよ。
ただ、フリマは土日にしかやっていません。でも通販サイトなら24時間365日、世界中どこへでも売ることができるなと。
それが今から大体10年くらい前だったのですが、当時は古着を専門としたサイトなどはほぼなくて。
そこから通販だけでなく、原宿に実店舗も開業していきました。
しかし年々扱う古着の量が増えていったことにより、小売より卸業にシフトした方がいいかなと思うようになって。
それで拠点を原宿から、僕の地元の川口に移しました。
古着の卸売業をしながら、コロナ禍の今にシェアハウスを作った理由
――現在のお仕事について教えてください。
先ほどもお話しした通り、古着の卸売業をメインの事業としていますが、実際は結構いろいろやっているんですよね(笑)。
昨年は、ここ(※)川口にシェアハウス「サニーハウス」を立ち上げましたし。
※取材はシェアハウス「サニーハウス」で行った。
――なぜシェアハウスを?
若い頃の自分が「あったらいいな」と、思える場所を作ってみたかったんですよ。
シェアハウスって、普通の賃貸よりは比較的安く住み始めることもできるし、隣人との敷居もいい意味で低いから、交流が生まれやすいじゃないですか。
僕は10年以上自営業をやっていますけど、自営業だからって別に1人きりで仕事が完結するわけじゃないんですよね。
むしろ逆で、自営業だからこそ、いろんな人に助けられてここまでやってきました。人の繋がりによって、今の僕があると言っても過言ではありません。
コロナ禍で、人との繋がりが生まれにくくなってしまっているからこそ、逆にいろんな人と繋がりが持ちやすい環境を作ってみたいなと。
そういった動機で、シェアハウスを初めてみたんです。
「売る人」を10年やってきたからこそ、今度はモノ作りに挑戦したい
――自営業だからこそ、フットワーク軽く、さまざまな事業をされているんですね。
僕は興味の幅が広いので、面白そうだな〜と思ったものは、とりあえずなんでもやってみちゃうんです。
大きいところだと「本業は古着の卸売業で、最近シェアハウスを開業した」ということになっていきますけど、その他にも個人で運送業をやってみたり、最近では絨毯を作ったりもしていて。
特に絨毯作りについては、特に力を入れています。
――なぜ絨毯作りを?
元々、モノ作りにとても興味があったんですよ。
専門学校に入学したのも、服が作りたかったからですし。
でもたまたま古着の通販サイトが上手くいってしまったから、いつの間にか「服を売る」側になってしまった。
「服を売る人」と「服を作る人」。どちらも必要だし、優劣はありません。
それぞれにやりがいや楽しさがあると思っていますが「服を売る」側は、もう10年以上やってきましたから、今度は「モノ作りをしてみたい」と思うようになっていったんです。
結果論にはなってしまいますが、これで良かったんじゃないかと僕は思うんです。
――というと?
語弊を恐れずに言うと、こと「お金を稼ぐ」という一面だけに着目すると「作る人」よりも「売る人」の方が、お金を稼ぎやすいのかなと思っていて。
僕の場合はたまたま古着サイトが上手くいったこともありますが、それに加えて結婚も早かったんです。だから若いうちから、ちゃんとそこそこ稼いでいかなければならなかった。
もちろん「作る人」でも、人や会社から発注を受けて、高い技術力を持ってたくさん稼いでいる人はいます。
でも純粋に「自分の作りたいものだけ」を作って、それでちゃんと稼いで生活できる人(=アーティストになれる人)なんて、本当にごく一部です。
だから自分の興味を持つものや「作ってみたいと思えるものを作る」ためにも、まずは「売る人」として、ちゃんと基盤を固めてきて良かったなと。
その点で、絨毯もシェアハウスも、実は同じなんですよね。これからも自分が興味を持ったものは、フットワーク軽く作っていきたいですね。
――最後に、読者のみなさんへメッセージをいただけますか?
こういうスタイルで仕事をしているからか、「挑戦したいけど、できない」という悩みを、僕自身よく聞きます。
いきなり行動を起こすのは、いろいろとハードルが高いのであれば、まずは周りの人に話してみることから始めてみるのはいかがでしょうか。
1人で悩んでいても、結局何も始まりません。人に話したり相談するうちに、だんだん勇気が湧いてきたり、いろいろ思いつくことがあります。
そして最初は、小規模に事業を始めてみることをお勧めします。僕自身も商売の原点はフリーマーケットでした。今ではフリマに行かなくても、メルカリなどでも気軽に始められますし。
大きな金額を借入してリスクを取らなくても、事業は始められるはずです。ぜひ自分に合った独立・起業を検討してみてください。
取材・文・撮影=内藤 祐介