令和3年度の国の経済政策も徐々に明らかとなってきました。
コロナ禍が始まった昨年度とは、また違った傾向が読み取れます。
その中で1番注目されている「事業再構築補助金」も、いよいよこの3月から募集開始となりました。
2021年1月28日に成立した「第3次補正予算による経済支援策」を税理士が解説
さまざまなメディアで取り上げられているので「名前は聞いたことがあるけれど、中身をよく知らない」という方も多いでしょう。
なぜこれほどまでに注目されているのか、昨年度多くの方が対象となった「持続化給付金」との違いはなんでしょうか。
そこで今回は「事業再構築補助金」をフリーランスの方向けに、わかりやすく解説していきます!
事業再構築補助金を活用することで、大がかりな設備投資や新店舗の開業、事業のオンライン化など、今まで挑戦しづらかった取り組みができるチャンスでもあります。
フリーランスの方がどのように活用できるか、事業再構築補助金の可能性を探っていきましょう!
持続化給付金とは何が違う? 事業再構築補助金を解説!
そもそも補助金とは?給付金との違いは?
国や自治体の支援策には「補助金」「助成金」「給付金」「協力金」の4種類が存在します。
その中で今回は「補助金」に該当します。
復習となりますが、ここで「補助金」や「助成金」「給付金」の違いを抑えておきましょう。
例)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)
「助成金」…国や地方公共団体が事業者に対して、原則返済不要なお金を支給してくれる制度(主に厚生労働省管轄)。一定の条件を満たせば必ずもらえる。例)雇用調整助成金
「給付金」…助成金とほぼ同じで原則返済不要なお金を支給してくれる制度。例)住居確保給付金
「協力金」…休業要請等に協力する者がもらえる内容の「休業協力金」のことを指す。例)東京都感染拡大防止協力金
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補助金は、審査があります。
審査が通った事業の経費のみ補助対象となります。
共通点は、給付金も一定の審査がある点は一緒です。
では「給付金」との大きな違いはなんでしょう。
①補助金は基本的に事業計画(今回の場合は事業再構築指針と呼ばれる計画)の作成が求められること
②給付を受けた場合の使い道が限られる(申請時の事業計画に基づいた支出でないと原則認められない)
③実質競争がある(審査があり採択されるためにはポイントを抑えることが重要)
つまり従来の持続化給付金との最大の違いは、用途が自由なお金が国から配られるのではなく、事業計画の目的に沿ったお金を必要に応じて補助をする、というところにあります。
なぜこれほど注目されているの?
それでは数ある補助金の中でなぜ「事業再構築補助金」はこれほどまでに注目されているのでしょうか。
最大1億円の補助額&補助率の高さ(特別枠では補助率3/4)
→フリーランス(個人事業主)の方も対象となります。
ポイント②
予算規模1兆円超
→対象事業者の採択数が多くなる見込みですので多くの方にチャンスがあります(5万5千件見込み)
ポイント③
申込要件は多くの事業者の方が満たしやすい
→売上減少の要件等は多くの事業者の方が満たすでしょう。
ただし、専門家と事業計画作りが求められる点で、敷居が高く感じてしまうことでしょう。
事業再構築補助金の概要を、税理士が徹底解説!
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html
それではいよいよ補助金概要について解説していきましょう。
経済産業省が出しているこちらの資料を基に、ポイントを解説していきます。
事業目的
補助金審査通過のコツは、補助金の趣旨を理解して事業計画を作ることです。
今回は、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援することとあります。
そして要件に書いてある「事業再構築指針」に沿った新分野展開、業種転換、事業・業種転換等を行うとありますので、実際に再構築指針に沿った取り組みを行わなければなりません。
補助金をもらうためには、この「事業再構築指針」に沿った計画を書き、審査にかける必要があります。
主要申請要件
①売上の減少が要件であることは「持続化給付金」と同じ
ただし、その要件は基本的に前年同月比より50%減が対象だった持続化給付金よりも緩いものと言えそうです。
②事業再構築に取り組む
この「事業再構築」と何か、具体例を見た方がイメージがわきやすいかと思いますので下図参照ください。
事業再構築補助金のリーフレット
③認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する
中小企業庁:経営革新等支援機関
認定制度概要:
認定制度は、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や支援に係る実務経験が一定レベル以上の個人、法人、中小企業支援機関等を経営革新等支援機関として認定することにより、中小企業に対して専門性の高い支援を行うための体制を整備するものです。
おそらく、この事業再構築補助金の敷居が高く感じてしまうのは、この要件があるからではないでしょうか。
この「認定経営革新等支援期間」とは、多くの税理士や金融機関が該当します。
要するに「一定の事業計画作成の知識や実務経験がある専門家」とざっくり抑えておきましょう。
ひとつ注意なのは「経営革新等支援機関」に該当する税理士等の専門家であっても、事業再構築補助金のサポートは対応外な方もいます。
まずは身近な顧問の税理士や、金融機関の担当者に相談してみましょう。また、必要に応じてインターネットで地域ごとに経験や実績が豊富な方を探してみるとよいでしょう。
予算額、補助額、補助率
フリーランスの方は、通常枠: 補助額 100万円~6,000万円 補助率 3分の2という情報を抑えておけば十分でしょう。
補助額最低100万円ということは、逆算すると最低でも全体で150万円となる経費計画が必要です。
国からの補助額:150万円の3分の2=100万円
自己負担額:150万円の3分の1=50万円
経費計画例)※全体で600万円の場合
国からの補助額:600万円の3分の2=400万円
自己負担額:600万円の3分の1=200万円
複数回の公募が意味することは?
補助金の公募は、1回ではなく令和3年度にも複数回実施する予定、とあります。
つまり自社の状況や事業計画の遂行のタイミングによって、申請できる時期が調整できるということです。
補助金の例年の傾向ですが、年度数回にわたり募集されるものは最初ほど採択率(審査の通過率)が高く、回を重ねる度に減少していく傾向があります。
また1回目の公募で審査が通らなかったとしても、同年度でまた申請ができるチャンスがあると言えますが、審査の通過率は低くなっていくので注意が必要です。
予算額、補助額、補助率
フリーランスの方にも抑えておいていただきたいのは、この「特別枠」です。
こちらの要件に該当する場合は補助率、審査の通過率で有利になりますので、令和3年1月~3月の売上を集計し、前年または前々年の売上と比較しましょう。
補助経費
対象となる経費を確認しましょう。
自社の人件費やパソコン等の汎用品、原材料の仕入等は対象にならないということを抑えておきましょう。
そして、事業再構築のための主要経費である「建物費」や「設備費」「システム購入費」が補助対象のメインとなります。
ちなみに他の補助金では「建物費」が補助対象経費として含まれることは、かなり稀です。ここもこの事業再構築補助金の特徴と言えるでしょう。
関連経費は上限が設けられるということも頭に入れておきましょう。
事業計画の策定
前述のとおり、認定経営革新等支援機関(専門家)と相談して事業計画の作成することが求められます。
ここは専門家のアドバイスを受けながら、じっくり時間をかけて検討していきましょう。
「自分ではよく分からないから、とりあえず税理士さんに丸投げしよう」といった具合で、少々専門家を頼りにし過ぎる方がいらっしゃいます。
もちろん我々専門家を全力でサポートはしますが、実際に事業再構築指針を書き補助を受けるのは、あくまで自分(もしくは自分の会社)です。
無事に審査を通過するためにも、自分の言葉できちんと人に説明できるくらい説得力があるものを作成することがポイントです。
補助金を受け取るまでのプロセスは?
申込をしてから補助金の支払いを受け取るまでに、およそ1年ほどの期間がかかります。
また「補助金」の性質上、一度自分で必要なお金を支払った後で、補助率に応じたお金が入金されます。つまり一度は自己負担が発生する期間があるということです。
ここは補助金を受ける上での、大きなハードルとなるでしょう。
そのため補助金の支払いを受けるまで、金融機関から融資を受ける、いわゆる「つなぎ融資」の体制を作ることも、場合によって検討しましょう。
また補助金を受けた後、毎年報告が必要となりますので注意してください。
事前着手承認制度
補助金の多くは、申請して「採択」される前に契約や納品したものは補助対象外です。
しかし今回の事業再構築補助金においては、令和3年2月15日以降の設備の購入契約等は、補助対象となる例外的な内容となります。
もちろん不採択となった場合は、全額自己負担になるため、そこも注意が必要です。
準備可能な事項
「GビズIDプライム」という聞きなれない名前が出てきました。GビスIDプライムとは、行政サービスにログインできるサービスのこと。
今後他の補助金申請でも必要となるケースが増えてくるかと思います。手順は難しくありませんがID発行に時間がかかりますからすぐに取得してしまいましょう。
注意事項
こちらもよく読んでおきましょう。
知らず知らずのうちにでも不正、不当に該当するような行為があると、せっかくのお金と労力が無駄になってしまいかねません。
専門家に頼るばかりではなく、自ら主体的に情報を仕入れていきましょう。わからないことはコールセンターでも相談できますので、そちらも活用してみましょう。
まずは専門家(経営革新等認定支援機関)探しから、始めてみましょう!
令和3年度は年5回程度の公募(=募集)が実施される予定ですが、公募期間は1か月程度と短い期間となり準備が大変です。
今から行動すべきことをまとめると、
まずは自社の強味、弱み、業界での立ち位置の分析から入っていきましょう。
補助金は申請者である自社(自身)が主体的に事業計画(事業再構築指針)作りに取り組む必要があります。
特にこれまで公庫や銀行や融資の経験がないフリーランスの方などは、そういった書類作りに慣れておらず、おそらく苦労されるのではないでしょうか。
そうしたフリーランスの方をサポートするのが、今回の必須要件となっている認定経営革新等支援機関、すなわち私たち税理士などの専門家です。
これまで専門家と関わりがなかった方は、まずは専門家を探すところから始めてみてください。
補助金を上手く活用し、コロナ禍を乗り越えていきましょう。
文=齋藤 雄史
編集=内藤 祐介
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