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古本の買い取り金額をNPOなど各種団体に寄付する「社会事業」を展開 社会起業家からのメッセージ

古本の買い取り金額をNPOなど各種団体に寄付する「社会事業」を展開 社会起業家からのメッセージ

株式会社バリューブックス/東京都渋谷区・長野県上田市
代表取締役

中村大樹さん(30歳)

 1983年、長野県生まれ。高校時代はサッカー漬けの日々を送る。大学進学を機に上京。1年生の春休みを利用して訪れたニューヨークで、独立して働く日本人の若者たちに出会い、起業の夢が膨らむ。大学を卒業した2005年、古本のネット販売ビジネスを単身でスタート。その後、友人たちをメンバーに加えて事業を拡大、2007年に「バリューブックス」を設立した。2010年に本を商材とする社会事業に着手、そのプロジェクトは30を超え、着実な広がりを見せている。http://www.valuebooks.jp/

 きっかけは、偶然的だった。大学卒業後、自分で独立して働きたいという思いを胸に秘めながらも、「何をすればいいのかわからなかった」中村大樹は、ある日、起業に向けて買いためていた本を、ネットオークションに出品。すると、意外な高値で売れたのだ。思いついたのが、書籍の買い取りサイトを設け、集まった本をネットオークションで転売するというビジネスモデル。手持ち資金は20万円、まずは一人でスタートした。追って、高校時代の友人たちも巻き込み、試行錯誤を楽しみながら続けてきた活動は、やがて立派な事業のかたちになった。2007年、中村は、4人の仲間と株式会社バリューブックスを設立する。
同業も少なくないなか、同社を特徴づけるのが「社会事業」だ。基本モデルは本業と同じだが、買い取り金額はすべて社会問題に取り組むNPOなどに寄付する。現在、バリューブックスに送られてくる書籍の約半数は、寄付に当てられるまでになった。2010年に始めてから、およそ60のNPOや自治体、大学などといった団体に寄付した総額は約6700万円。「ようやく軌道に乗ってきた」というこの社会事業は、新たな寄付文化の開花をも予感させる。

「眠っている本で社会貢献」――NPOと共同し、仕組みを広げていく。それが寄付文化に対する新しい働きかけになる

━ 学生時代にニューヨークに滞在したことが、転機になったとか。

 留学していた幼なじみのところに1カ月半ほど遊びに行ったのですが、彼が、そこの日本人コミュニティを紹介してくれたんですね。フォトグラファーとか洋服屋さんとか、誰もが独立してバリバリ働いている。そこであらためて感じたのは、彼らは「まぶしい」存在ではあるのだけれど、みんな普通に頑張っているんだ、別世界の人ではないんだ、ということ。起業の道を選んだのは、あの体験が大きかったですね。

━ もともと本に興味はあった?

 いえ(笑)。そのコミュニティで知り合った人たちの部屋に行くと、例外なく、本棚に難しそうな本が並んでいるわけですよ。大いに触発されて、帰国してから本を読みあさるようになりました。もちろん起業のための書物も。でも、肝心の「何をやるか」は、卒業してもはっきりしなかった。そのうち本があふれてきて、捨てるのは抵抗があったから、とりあえず売ってみようと。Amazonに出品してみたら、100円で買った中古本が1000円で売れた(笑)。こういう世界があるのだと気づき、ヒントを得たわけです。

━ 自社の販売サイトは設けていませんね。

 ビジネスモデルを簡単に説明すると、まず広告も打ちながら、買い取りサイトで本を集めます。今は1日に8000~9000冊入ってきて、在庫は35万冊ほど。他方、販売はもっぱらAmazonマーケットプレイスなどに出品するかたちをとっています。もっと扱う点数が増えれば自社販売サイトもアリですが、現状ではほかのプラットフォームを活用するのが効率的なのです。つまり今の当社にとっては、「どう売るか」よりも「いかに買い取る本の質を上げるか、チャネルを増やすか」が“主戦場”。そのためにサイトのリニューアルにも趣向を凝らし、随時取り組んでいます。会社設立前から、サイトの立ち上げから何からすべて自分たちの手づくり。模索の連続でしたが、そうして蓄積されたノウハウは、僕らの財産です。

━ 社会事業に進出したのは? 収益面においては難しそうですが。

 送られてくる本が増えると、残念ながら商品としては市場に出せず、廃棄処分にせざるを得ないものも出てくる。たまたま僕の故郷の長野で、フリースクールを運営するNPOの代表にそんな話をしたら「ならば、うちに置かせてほしい」と。役立てるのなら、うれしいじゃないですか。それで学童保育や病院、老人ホームなどに寄付するようになったのが最初です。
そんな活動をするなかで、社会貢献に寄与するNPOの多くが資金難に苦しんでいるという話を聞きました。そこで始めたのが、寄付支援サイト「チャリボン」です。個人や企業に本を送ってもらい、それを買い取って、相当額をチャリボンに参加しているNPOやNGOに寄付します。同じ仕組みで特定の組織、団体を支援するプロジェクトもあって、今はそれが30ほどに増えました。NPO活動に携わる方々の働きかけによって、輪が大きく広がってきたのです。
本業と同様、当社は買い取った本をAmazonマーケットプレイスなどで売って利益を得ます。寄付の場合、広告は不要な半面、古い本が多く送られてくるとか、ネットで売るには難しさがあるのは事実。正直、しばらくは赤字続きでした。でも内部の作業の仕方を工夫し、倉庫を長野県に構えて賃料などの経費を抑えるとか、努力を積み重ねることで、やっと単体の事業として回るところまできました。企業体力をもっと付ければ、ほかに真似のできない社会事業になるはず。ぜがひでも続けていきたいですね。

取材・文/南山武志 撮影/刑部友康 構成/内田丘子


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