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平成仮面ライダーシリーズ監督・上堀内佳寿也が、30歳でメガホンを持てた理由【前編】

平成仮面ライダーシリーズ監督・上堀内佳寿也が、30歳でメガホンを持てた理由【前編】

映画やドラマの映像制作を管理する、映像監督。

よく「◯◯監督作品」などといった言葉を耳にしますが、映像監督になるためにはどのようなキャリアを歩めばいいのか、知っている方は意外と少ないのではないでしょうか。

今回お話を伺ったのは、映像監督・演出家の上堀内佳寿也さん。

「平成仮面ライダーシリーズ」においてわずか30歳で監督となり、近年の同シリーズにおける人気を支える立て役者の1人です。

2019年3月17日からスタートする『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(テレビ朝日系 毎週日曜午前9:30~10:00放送)では、パイロット監督(※)を務められています。

今回は、上堀内監督が映像監督の道を進もうと思った理由、特撮の世界との出合い、知られざる映像監督の仕事内容やお金事情について伺いました。

そしてなぜ上堀内監督は、30歳で監督に就任できたのでしょうか。

映像監督・演出家を目指す方はもちろん、自分の目標を追いかけていこうとする方は、必見です。

※主に特撮番組において、1〜2話を担当する監督のこと。その番組の方向性やカラーを位置づける、監督陣の中でも極めて重要な役割をするメイン監督を指す。

<プロフィール>
上堀内佳寿也さん
映像監督・演出家

1986年生まれ、鹿児島県出身。

地元・鹿児島県のテレビ局のアシスタントとして活動後、上京。仮面ライダーシリーズへは、『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』(2008年)より助監督として参加。

東映Vシネマ『ゴーストRE:BIRTH 仮面ライダースペクター』(2017年)で長編作品の監督デビューを果たす。

テレビシリーズでは『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)で監督デビュー。『仮面ライダービルド』(2017年)ではローテーション監督として活躍する。

『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』(2017年)、『劇場版 仮面ライダービルド Be The One』(2018年)と劇場版の監督を務めた後、2019年3月17日より放送のスーパー戦隊シリーズ『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のパイロット監督を担当する。

最初から特撮に興味があったわけではない。偶然めぐり合った、特撮の世界の奥深さ

―近年の『平成仮面ライダー』を代表する上堀内監督が、3月17日(日)からスタートする『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のパイロット監督を務められるということで、特撮ファンの中でも大きな話題を呼んでいます。そんな上堀内監督ですが、そもそもなぜ映像監督になろうと思われたのでしょう?

上堀内さん
最初にやってみたいなと思ったのは、中学生の時に見ていたバラエティ番組ですね。

その番組がおもしろかったので、自分がバラエティ番組を作る側に回ってみたいと思ったのがきっかけでした。

高校を卒業してから、地元のテレビ局でアシスタントを始めました。当時はスポーツ、報道、情報番組など、様々な領域に携わって仕事をしていました。

―映像制作への入り口がバラエティ番組だったのは、意外でした。特撮番組へはどういった経緯で参加することになったのでしょうか?

上堀内さん
鹿児島時代に勤めていたテレビ局の近くに、映画館があったんです。よくそこで映画を見ていたこともあり、勤めて3年ほどで「映画やドラマの演出をやりたい」と思うようになって、一念発起して上京しました。

上京後は東京に来ていた友達の家に居候しながら、バラエティ番組のADを始めました。

その友達の家が「東映東京撮影所」の近所だったこと、そしてある知り合いから『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』(以下、『さらば電王』)の助監督を募集していることを紹介されたのがきっかけでこの世界に入りました。

―お話を伺っている感じですと、とても運命的な出合いだなと…。

上堀内さん
そうですね(笑)。

僕は特撮番組を見て育ってきていないので、正直このお話をいただくまでは、特撮のことを全く知りませんでしたし、ましてや特撮の制作会社に履歴書を送ったこともありませんでした。

でも参加してみたら、とても面白かったんです。

―具体的に、特撮の世界のどんなところに面白さを感じたのでしょうか?

上堀内さん
やっぱりアクションでしょうか。

特撮番組って必ずアクションシーンってあるじゃないですか。それまでバラエティのアシスタントをしていたので、アクションの現場をあまり経験してこなかったんですよ。

さらに仮面ライダーシリーズでは、アクションシーンに繋がるためのドラマシーンのストーリー的な裏付けや演技にもとても力を入れています。

だから実際にカメラの前で演じる役者さんやアクションをするスーツアクターの方たちはもちろん、スタッフたちの動きも、他ジャンルの番組制作とは全く異なるものでした。

そういった今までに経験したことのない現場の連続に、当時はただただ圧倒されていましたし、同時に大きな面白さを感じたんです。

監督に昇進すると、高級車に乗り始める? 知られざる監督・助監督の仕事内容とお金事情

―『さらば電王』(2008年)から『仮面ライダーエグゼイド』(2016年)で初のテレビシリーズの監督を務められるまで、助監督として活躍されていたそうですが、そもそも監督ないしは助監督ってどのような仕事をされるのでしょう?

上堀内さん
監督は現場での撮影はもちろん、現場の前に作品のテーマに沿った骨組みを決めつつ、後の編集作業まで、“映像制作全般”の仕事を統括する、映像制作の責任者のことです。

一方、助監督とは演出に関わる様々な業務や、監督・役者・スタッフといった関係各所への調整を行う職種です。

つまり、監督は現場の前後も仕事をするのに対して、助監督は現場を中心に活動する、といったイメージですね。

助監督は大きく「チーフ」「セカンド」「サード」「フォース」の4つの役割に分けられます。簡単に説明していきましょう。

「チーフ」は助監督の中でも1番上の階級で、作品全体のスケジュールや関係各所とやり取りすることが多いです。だから現場にいないことも多いですね。

「セカンド」は主に現場を回す、現場責任者のような役割です。現場で役者に指示を出したり、衣装やメイク担当者とのやり取りも「セカンド」の仕事です。

「サード」は装飾や、小道具といった美術担当者とのやり取りがメインになります。「フォース」はいわば見習い的なポジションで「サード」や「セカンド」のサポートをしつつ、現場で必要な仕事を覚えていく、という感じでしょうか。

その他にも仮面ライダーの現場では「スケジュール」というポジションも存在します。
近年の仮面ライダーシリーズではテレビシリーズだけでなく、劇場版、東映Vシネマ、スピンオフ、ネットムービーなど、あらゆる媒体で同時にスケジュールが進行しています。

役者はもちろん、スタッフも無限にいるわけではありませんから、合間を縫って上手にスケジューリングを組み立てていかなければならないので、スケジュール専任者も配置しています。

ちなみに僕が『さらば電王』に参加した際は「フォース」まで助監督が埋まっていたので、そのさらに下のポジションでした。言うなれば「フィフス」ですね(笑)。

―「フィフス」から始まり、2008年から2016年の8年間で「チーフ」、そして監督にまで上り詰めたわけですが、この8年を振り返っていかがですか?

上堀内さん
それぞれのポジションでそれぞれの難しさがあるので、大変なことも多かったですね。

とはいえ、ドラマや映画の演出をやってみたくて挑戦したので、この仕事を選んだことへの後悔はしたことありませんし、実力さえあればポジションを勝ち取っていける世界でもあるので、モチベーションは保ちやすかったです。

助監督の多くは基本的にフリーランスですので、会社員のような福利厚生はないのですが、自分のポジションが上がっていけば、それだけ収入も上がっていきました。

そして僕の近くには数多くの監督・助監督の先輩方がいらっしゃったので、嫌でも先輩方を見ていればポジションで生活が変わるんだなって分かるんですよね。

「フォース」から「サード」になると現場まで自転車で来るようになり、「セカンド」になるとバイクで、「チーフ」になると車で、そして監督になると高級車に乗り始める、みたいな(笑)。

これはちょっと生々しいかもしれませんが、自分の実力がしっかり示せればきちんと評価してもらえるし、それが収入にも直結する。

もちろん収入だけがモチベーションではありませんが、がんばればちゃんと認めてもらえるのは嬉しかったですね。

自分に与えられたチャンスを逃さない。実力主義の世界を勝ち上がっていくために

―「仕事や責任が増えても、収入は上がらない」みたいな状況も往々にしてある中、きちんと評価されるのは大切ですよね。ところで「チーフ」から監督へ、のようないわゆる“昇進”は、どういったタイミングで行われるのでしょう?

上堀内さん
いろんなケースがありますが、個人的には「タイミングと実力が一致した時」じゃないかと思っています。

例えば「サード」の仕事がある程度きちんとこなせていて「セカンド」の人員が足りないから、今度の新企画から「セカンド」に上げようか、みたいなやり取りがなされることが多いですね。

プロデューサー、ないしは監督が中心になってスタッフを考査します。

―「チーフ」から監督への道も同じような感じですか?

上堀内さん
仮面ライダーやスーパー戦隊で監督に上がる時は、スピンオフやネットムービーで一度監督に抜擢され、その手腕を見られることが多いですね。

僕も『仮面ライダーゴースト』の東映Vシネマ『ゴーストRE:BIRTH 仮面ライダースペクター』や、ネットムービー『仮面戦隊ゴライダー』の監督を経て、『仮面ライダーエグゼイド』のテレビシリーズで監督をやらせていただきました。

これは監督だけでなく、プロデューサー補佐がプロデューサーに上がる場合や、脚本家の抜擢も似たような部分があるかと。

最近ですと、脚本家の高橋悠也さんも『仮面ライダードライブ』のスピンオフを経てから、『仮面ライダーエグゼイド』の脚本を担当されたりしていますよね。

『仮面ライダーエグゼイド』の脚本家・高橋悠也さんの記事はコチラから!
エグゼイドの1番のファンは、僕。好きこそ物の上手なれが生む好循環【高橋悠也・前編】

―監督に就任するまでの経緯を聞いてきましたが、上堀内監督は自分のやりたいことをきちんと実現されていますよね。チャンスをものにしている、というか。

上堀内さん
運やめぐり合わせもたくさんありますけどね(笑)。

それでもやってこれたのは、自分の「やってみたい」に正直でいることができたから、でしょうか。

自分の「やってみたい」に正直にいれたからこそ、特撮の世界を紹介していただけたし、入ってからもその魅力に気づいて夢中になって走ってこれた。

その結果、上京したての時に抱いていた「映画やドラマの演出をやってみたい」という想いは実現できていますし、3月17日から始まる『騎士竜戦隊リュウソウジャー』ではパイロット監督を務めることができました。


(C)2019 テレビ朝日・東映AG・東映

―演出や映像監督を目指す方にとってはもちろん、これから自分の目標を追いかけていこうと思っている方にとっても、とても励みになる話だと思います。

上堀内さん
もし自分の「やってみたい」があるのであれば、とにかく1歩目が大事だと思うんです。

特に演出や映像監督を目指している方に限定して言えば、今はどこの制作会社も演出部は人が足りていません。

特に現場で活躍する「セカンド」や「サード」は引く手あまたです。

もちろん仕事を続けていく上で「情熱とやる気」があるだけでは厳しいですが、「情熱とやる気」は苦しい時に自分を支えてくれる大切な動力源になります。

映像監督を本気で目指したいと思うなら、自分に特別なコネクションがなくてもまずは制作会社に電話して会ってもらうところから始めればいいのではないでしょうか。

最初の1歩さえ踏み出してしまえば、後は自分のがんばり次第でどうにかなりますし、そしてその1歩自体は、勢いでどうにかなるものだったりします。

これは映像監督だけでなく、いろんな世界でも同じことが言えると思います。自分の「やってみたい」があるなら、まず1歩たとえ無謀でも踏み出してみることが大切だと思います。

―ありがとうございました。いよいよ後編では『仮面ライダーエグゼイド』『仮面ライダービルド』における作品作りについて、そして3月17日からスタートする『騎士竜戦隊リュウソウジャー』についてお伺いします!

取材・文・撮影=内藤 祐介

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