やさしいお金の専門家・横川楓さんに伺う、ゼロからの投資のイロハ。
これまでは少額投資の代名詞的存在である「つみたてNISA」の仕組みについて、そして株式投資について伺いました。
そして今回のテーマはiDeCo。「もう1つの年金」とも呼ばれるiDeCoについて、新人フリーランスイラストレーターの庵ちゃんに聞いてもらいました。
年金の受給額が少ないフリーランスにとって「もらえる年金の金額が増える」という意味ではありがたい制度である一方、意外な落とし穴もあるとか?
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横川楓さん
やさしいお金の専門家・経済評論家
明治大学法学部卒、その後同大学院へ進学、24歳で経営学修士(MBA)を取得。
実家は会計事務所を経営。同年代の友人たちのお金に対する意識と、将来の資産形成、所得格差、年金問題、増税など、これからの日本を担う世代に振りかかる様々なお金の問題との乖離に疑問を持ち、お金の知識の啓蒙活動を開始。
ファイナンシャルプランナー(AFP)や、マイナンバー管理アドバイザー、マネーマネジメント検定等の資格を取得する。
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庵(いおり)イラストレーター
学生時代から絵を描くことが好きで、数年前から副業としてイラストレーターの仕事を受けるようになった。
近年は副業での収入が本業の稼ぎより多くなったことから、満を辞して独立を決意。
年金受給額が増える、“もう1つの年金”。iDeCoってなんだ?

横川先生、今日もよろしくお願いします! 最近、先生から教わったつみたてNISA(※)の話を、フリーランス仲間としていました。その場でiDeCoの話が出たんですが、そういえば私、iDeCoについてあんまり知らないなと……。なので教えていただけないでしょうか?

たしかに、iDeCoとつみたてNISAはよく一緒に話題に出ることが多いんだよね。
iDeCo。正式名称は「個人型確定拠出年金」といって、通称“もう1つの年金”とも呼ばれているよ。
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“もう1つの年金”ですか?

うん。庵ちゃんは毎月、年金を払っているでしょう?
その年金の名前は国民年金。これは原則日本国民なら誰もが払うべきなんだけど、一方で会社員や公務員の人は、国民年金の他に厚生年金というものを払っていて。
よく日本の公的年金は「2階立て構造」になっているって、聞いたことない?

独立する時に聞きました! 2階部分の厚生年金は、会社が払っているから、将来もらえる年金の額が、会社員と個人事業主と違うんですよね。

そういうこと!
話を戻すと、iDeCoは「年金をより多くもらいたい」という人のために作られた制度。
iDeCoに加入していれば「年金をより多くもらえる」ということなんだ。
それでいて国民年金と同じように、iDeCoの掛け金は全額、確定申告で控除の対象となるんだよ。

年金を多くもらえて控除にもなるなんて、私みたいな個人事業主のための制度なんですね!

まぁ、実はiDeCoは個人事業主だけじゃなくて、会社員の人も入れるから、厳密には「個人事業主ためだけの制度」という訳ではないんだけどね(笑)。
でも個人事業主の人の方が、会社員の人よりも多く、掛け金を払うことはできるよ。他にもiDeCoの特徴を見ていこう!
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よろしくお願いします!

iDeCoの大きな特徴。それは、個人事業主なら最大月6万8000円までの掛け金を自由に決められるということ。

“もう1つの年金”なのに、掛け金って自分で決められるんですか? あ、でも国民年金って毎月額が決まっていたような……?

鋭いね、庵ちゃん。そう、ここが“もう1つの年金”と呼ばれるiDeCoと国民年金との大きな違いなんだ。
庵ちゃんの言う通り、国民年金は毎月決まっているけれど(令和2年4月〜令和3年3月までは月額16,540円)、iDeCoは最低月5000円から、掛け金を自由に選ぶことができる。
そして、受け取る時の金額も「(掛け金+運用益)×積立期間」によって決まるんだよ。

運用益……? ということは、iDeCoは“年金”と言いつつ、投資的な側面もあるということでしょうか?

そういうこと!
だから「毎月5000円をiDeCoの掛け金に回す」ということは、その5000円で国内外の株式の投資信託(※)や債券といった金融商品を買うことになるの。
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つみたてNISAの時の話と似ていますね!

うん、だからiDeCoをするならきちんと分散投資を心がけた方がいいかも。

「5000円の商品を1つ」買うんじゃなくて「1000円の商品を5つ」買って、リスクを減らすんですよね?

さすが庵ちゃん、投資信託やつみたてNISAで勉強したことが、ちゃんと活きてるね!
つみたてNISAと同じように、ちゃんと勉強して、上手に運用できれば将来もらえる額が変わってくる。
“もう1つの年金”という言葉の意味を勘違いせず、掛け金を払う前にまずはどんな商品かをきちんと確認しようね。
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横川先生、ありがとうございました! 月5000円からなら支払えそうなので、早速今からiDeCoを登録してみようと思います!

あ、ちょっと待って!
ここまで主にiDeCoのメリットに焦点を当てて話してきたけど、実はいくつか注意しなきゃいけないことがあるんだ。

え、そうなんですか?

うん。まず1つ目は、一度iDeCoに加入すると60歳の契約満了を迎えるまで、基本的にはずっと掛け金を払い続けなきゃいけない(※)んだ。
いずれは年金を受給するタイミングで返ってくるとはいえ、見方を変えれば「最低毎月5000円(もしくはそれ以上)の固定費」がかかるということ。
特に庵ちゃんみたいに、独立したての若いフリーランスの人にとって、固定費が増えてしまうのは考えものだよね。
※厳密には掛け金の支払いを止めることもできるが、iDeCo用の証券口座の維持費がかかってしまい、結果的にその分はマイナスになってしまう。

その通りです……!

あとiDeCoに加入するには「証券口座」が必要になるの。
だから「Webサイトに登録するだけで簡単に入れる」というわけではないからここも注意が必要。
ただこれはもう、つみたてNISAに登録している庵ちゃんにはあまり関係ないかもしれないけど。

そうなんですね……。結局iDeCoって、どんな人が入るべき制度なんでしょうか?

会社員の人はともかく、庵ちゃんのようなフリーランス、個人事業主であるなら……
・つみたてNISAを運用している人
・毎月の収入にある程度余裕がある人

かな。iDeCoはとてもいい制度ではあるけれど、固定費としてかかってしまうのが、特に若手のフリーランス、個人事業主には注意が必要だね。
やっぱり独立して収入が不安定になりがちだから。
逆に言えば、若くてもたくさん稼いでいる人にとっては将来のお金の積立になる上に、節税もなるから、とてもおすすめな制度と言えるよね。
そう考えると、まずは貯金をしっかりしてから先につみたてNISAをスタートして、ある程度お金に余裕ができてからiDeCoを始めることを、私はおすすめするかな。

つみたてNISAなら、100円からスタートできるんでしたよね!

そうそう。
すぐに反映されるわけではないからそこは注意が必要だけど、収入がたくさんあった月は多めに掛け金を積み立てて、逆に収入の少なかった月はそれ相応に掛け金を減らせばいい。
その自由度の高さは、やっぱりつみたてNISAの方が上かな。
つみたてNISAも満額掛け金を支払っている、中〜上級者の人がiDeCoに挑戦してみるといいのかもしれないね。

横川先生、今日もありがとうございました!
構成・文・撮影=内藤 祐介
イラスト=ram