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ツナが焼津の未来を変える?「おつな」店主・関根仁さんに聞く、国民食・ツナの可能性

ツナが焼津の未来を変える?「おつな」店主・関根仁さんに聞く、国民食・ツナの可能性

ツナ。

スーパーやコンビニでもよく見かけ、誰もが知っているなじみのある食材です。

もはや日本の国民食といってもいいほど、流通しています。

今回ご紹介するのは、そんなツナの専門店「おつな」を営む関根仁さん。

もともとは小料理屋を営んでいたという関根さんですが、ある時ツナに隠された大きな可能性を発見し、小料理屋を閉めてツナの研究を開始。

その後、ツナ専門店「おつな」を新たに開業しました。

自らの店を閉めて研究に没頭するほど、関根さんを魅了したツナの魅力とは、いったいなんなのでしょうか?

<プロフィール>
関根仁(せきね・じん)40歳

ツナ専門店「おつな」店主

高校卒業後、都内の魚屋で働きながら自分の料理屋を持つことを夢みる。

30歳の時に世田谷区池尻に小料理屋「仁」をオープン。

ある時、余ったマグロでツナを作ったところ、そのおいしさに気づき「本当に美味しいツナ」を求めて店を閉め、ツナ作りに没頭する。

そして40歳でツナ専門店「おつな」をオープン。
ビン詰めという新しいスタイルと、味の種類の豊富さで人気を博す。

ツナで人々が「ツナ」がってほしい、という願いを込め、日々新たなツナの可能性を模索する。

誰もが知っている食べ物なのに、専門店は見たことがない。料理人が感じた、国民食・ツナの可能性

ー関根さんは現在、ツナを販売するお店を経営されています。ツナに特化したお店は決して多くない中、なぜツナに注目するようになったのでしょうか?

関根さん
私は30歳で小料理屋を開業し、店でマグロを扱っていました。

ある時、そのマグロの余りを廃棄するのがもったいなく感じて、ツナを作ってみたところ、そのツナがとてもおいしかったんです。

おいしさに感動すると同時に「ツナと言えば、リーズナブルなツナ缶は世の中にたくさん流通しているのに、なぜクオリティも価格も高いツナがないのだろう?」と、ふと疑問に思いました。

そんな流れで、ツナに隠された魅力と可能性を感じ、小料理屋を閉め、ツナの研究に没頭し始めました。

ー確かにツナは多くの人に食べられている、いわば「国民食」と言っても過言ではないですよね。ツナを研究し、具体的にどういう路線で売り出していこうとお考えになったのですか?

関根さん
おっしゃる通りツナといえば、低価格でどこにでも売っている缶詰、というイメージが強いと思います。

逆に言えば市場には、そうしたリーズナブルなツナ缶しかないんですよね(もちろん、一部例外はありますが)。

今は、チョコや水も高級路線を謳う商品が溢れている時代です。身近な物への高級志向が広がっていますよね。

それなら、ツナの高級品があっても良いのではないかと考え、商品を模索しました。

ー関根さんが考える高級なツナとは、どのようなものでしょうか。

関根さん
純粋に、使用するマグロや水、オイルのクオリティを上げることですね。

それから私の店のツナを見て、皆さんが驚かれるのは、缶ではなく、ビンで保存しているということです。


ービン詰めのツナは初めて聞きました。ビンにすると、どういった利点があるのでしょうか。

関根さん
小料理屋時代の常連のお客さまに、ツナ缶についてヒヤリングをしたところ「ツナ缶は、缶の臭いが気になる、オイルを切って使う上に、1度開封したら使い切らなきゃいけない」と、ご意見を頂きました。

そこで、ツナをビンに詰めたらどうだろう? という案が生まれたんです。

ビンなら1回開封しても再度密封でき、保存もしやすい。質を維持できる期間と環境さえ確保できれば、ツナ缶とも差別化ができると思いました。

さらに私は、商品としての「見た目」も重視しました。中身が見えない缶よりも、中身が分かるビンの方がオシャレに見えませんか?

また「乙なもの」「つながり」など、「ツナ」という言葉から連想されるワードはどれも縁起の良いものが多いので、贈り物にも使えますし、いずれは結婚式の引き出物などにも使ってもらえればいいなと思っています。

ーもう聞けば聞くほど、「ツナのビン詰め」には勝算しか感じなくなりました(笑)。

関根さん
そうですよね(笑)?

これだけ無限の可能性が眠っているのに、誰も手を付けていない。

これはもうやるしかない! と思い、小料理屋を閉めてツナを徹底的に研究し、新たにツナ専門店として生まれ変わることにしたんです。

個人営業だからこそできる質の高さ。オンリーワンのツナ屋であるために

ー「おつな」は現在、関根さんお1人で経営されていると伺いました。関根さんのツナへのこだわりをお聞きしてもよろしいでしょうか?

関根さん
当たり前な話ですが、私のような個人経営の店が、大手メーカーと同じレベルでツナを生産することはできません。

大手メーカーは1日に数十トンといった、膨大な量のツナを作りますけど、私1人では1日に10~20kgのツナを作るのが限界です。

だからこそ、一般的なツナより少し値段を高くしてでも、味や種類の豊富さ、質の高さにこだわってツナを作っています。

ー味や種類の豊富さ、質の高さを出すために、苦労したことはありますか?

関根さん
そうですね、最初はとても苦労しました。

ツナは、マグロをオイルに漬けて作ります。しかし最初は、オリーブオイルが冷蔵庫で固まってしまったり、マグロの良さが全く活きませんでした。

さらに味を改善させても、1日で腐ってしまったりと、保存期間に難があり、それはもう前途多難でしたね(苦笑)。

オイルの選別から始まり、塩・味付けを考え、ようやくできたレシピも、保存ができないとまた初めからやり直し…。そんな日々を続けていました。

ーそうした状況を、どのように打開したのですか?

関根さん
海外ではビン詰めのツナが主流なので、工場を見学させてもらったり、現地で味を調べたりと研究を重ねました。

詳しい作り方は企業秘密なのであまり詳しくは言えませんが、そうした試行錯誤を繰り返した結果、味を保ちつつ保存期間が長い商品を作るに至りました。

またプレーンはもちろん「ふきのとう味噌味」や「バジル味」など、様々な味のツナを作ることにも成功しました。

ー不断の努力の末に、今に至るのですね。ツナの質の高さ、豊富な味の種類に惹かれて来店するお客さまも多いのはないでしょうか。

関根さん
そうですね。

味の豊富さやビン詰めという点を気に入って購入していただけるお客さまは、多くいらっしゃいます。

ー通常のツナとの差別化を図った、オンリーワンのツナ専門店ならではの取り組みが実を結んだんですね。

関根さん
はい。

そしてこの戦略が、新たな事業へ繋がりました。

ーそれは、どんなことでしょう。

関根さん
以前、静岡県焼津市の副市長の奥さまが来店されたことがありました。嬉しいことにツナがとても好評だったようで、副市長ご自身も来店してくださったんです。

その時に副市長から、ぜひ焼津市のマグロを使って、ツナを作ってみませんか? と、お誘いを受けました。

ー焼津副市長直々にオファーがあったんですね。

関根さん
はい。

しかも焼津市は、駿河湾深層水という高品質な水で有名で、マグロ漁も行われています。

素晴らしい品質の水とマグロが担保できる環境でツナを作れるなら、極めるところまで極めてみたい。

というわけで現在、焼津への工場設立も視野に入れています。

自分のスキルと経験で、誰かに何かを残したい

ー焼津への店舗拡大に加えて、今後何か手がけようと思っていることはありますか?

関根さん
2020年の東京オリンピックに向けて、訪日外国人向けの商品展開を考えています。

その点も焼津への店舗拡大と深く関わってくるのですが、今後外国人が来日するにあたり、羽田空港や成田空港だけでは、担いきれなくなる可能性が高いと言われています。

そこで静岡空港が第3の玄関口としての役割を果たすのでは、と予想されているのです。

そうなれば、焼津市は静岡空港にほど近く、焼津で1泊してから都内へ向かう、という人が今後も増えていくでしょう。

そこで、焼津のマグロと水を使ったツナを、お土産として購入していただけるように、新たな商品を検討、流通ルートの確保に奔走しています。

ーツナならすぐに腐ることもないですし、焼津のお土産にピッタリですね。しかし、なぜそこまで焼津市の発展にこだわるのでしょうか?

関根さん
純粋に、素晴らしいマグロと水によって、ツナのクオリティを上げられる点、そして何より、私のツナを必要としてくれた、副市長の熱意を感じたからですね。

小料理屋を閉じてツナ作りを始めた時は、お金もなく、ひたすらおいしいツナを求めて研究に明け暮れる日々でした。

正直、上手くいかない時の方が長かったですし、何度もくじけそうにもなりました。

しかし、その努力の集大成として走り出したツナが、焼津市をより魅力的な場所に変える力を秘めていて、そして求められている。

ツナの力で焼津市を変えて、後世にその歴史を残すことができたら、この上なく嬉しいです。

ー関根さんの姿勢は、同年代の方々の刺激になると思います。最後に、独立や起業を考えている方々へアドバイスをいただけますか?

関根さん
いくつになってもチャレンジ精神を忘れないでください。

私は30歳で小料理屋を立ち上げ、40歳でツナ屋をスタートさせました。

ツナ作りにせよ、そしてツナを使った焼津市の発展にせよ、誰もやっていないことに挑戦しています。

たしかに前例がないことは大変ではありますが、それ以上に日々発見があってとても楽しいです。

私たちの年代、40代以上の人たちはスキルも経験もあるし、まだまだ身体も元気な人が多いでしょう。

そして誰かに何かを残したい、と思っている人は少なくないはずです。

自分のスキルや経験を活かして、誰かに何かを残せるよう、私自身もこれからどんどんチャレンジしていきます。一緒に、がんばりましょう。

取材・文・撮影=内藤 祐介

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