不動産は難しい用語が多く高額商品であるため、未経験で開業するのは難しいと思われがちです。しかし、フランチャイズ本部は未経験でも結果を出せるように、事前研修や業務支援システムを用意しています。
不動産業を始める際、フランチャイズに加盟するメリットやデメリットおよびチェックすべき契約内容を解説し、実際に未経験からはじめた3人の先輩方の声もご紹介していきます。
※2023年9月時点の情報です。最新情報は各サービスのホームページでご確認ください。
不動産業もフランチャイズで独立できる?不動産フランチャイズとは
フランチャイズで開業することとは、フランチャイズ加盟時に加盟金や保証金を本部に納め、フランチャイズのネームバリューや不動産取引のノウハウ、ITシステムを利用する対価として、毎月ロイヤリティ(売上や利益の数%もしくは月額固定)を支払って事業を行うビジネスモデルです。不動産業界でもフランチャイズの開業が可能です。
なお、不動産業のフランチャイズに加盟するには加盟者自身が「宅地建物取引業免許」を持っていることが条件になります。これは、不動産取引を商売として反復継続して営む場合には、営業所の数や所在地によって異なる2つ(都道府県知事免許もしくは国土交通省大臣免許)のいずれかの宅建免許が必要だからです。
加えて、1つの事務所において業務に従事するスタッフ(事務員も含む)5人につき1人以上の割合で、専任の宅地建物取引主任士を配置しなければなりません。
不動産フランチャイズの業務は2分類
不動産業務はおもに賃貸と売買の2つに分けられますが、不動産業のフランチャイズも「賃貸業がメインのフランチャイズ「と「物件の売買がメインのフランチャイズ」という2つに分けられます。
賃貸業をメインとするフランチャイズに加盟していても売買取引を行うことはできますが、一般の方からすると「賃貸をメインにしている不動産会社は、売買案件は取り扱っていないのでは」と認識されることが多いため、顧客の獲得が困難になる可能性があります。フランチャイズ選びでは、自身が「賃貸と売買のどちらをメインに行うのか」を判断基準のひとつにするとよいでしょう。
不動産フランチャイズに加盟する方法は2つ
不動産フランチャイズに加盟する考え方には下記の2つがあります。
- 複数店舗のすべてが同一のフランチャイズに加盟しなければならない
- 全店舗ではなく一部の店舗だけをフランチャイズに加盟させる
これはフランチャイズ本部によって規定が分かれますので、将来的にフランチャイズに加盟しない店舗を残そうと考えている場合には注意しておきましょう。
まずはフランチャイズの仕組みを知りたい方は、下記記事を参考にしてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
フランチャイズに加盟して不動産業を開業するメリット
フランチャイズに加盟した場合の6つのメリットをご紹介します。
ブランドの知名度を利用できる
「〇〇不動産」という社名だけよりも、見慣れたカラーリングとマスコットキャラクターがあるフランチャイズのほうが、何となく馴染みがあります。そして「テレビ・ネット・雑誌CMなどで見かけるほどの不動産業界大手だからしっかりしてくれそう」という印象を受けます。
不動産選びは、賃貸でも売買でも大きなお金を支払って長期間住み続ける重要な場所を決めることです。もしも問題が起こったとしても、フランチャイズなら本部が介入して解決してくれそうだという安心感も、一般消費者にとっては重要な要素となるでしょう。
ノウハウを共有・蓄積できる
不動産取引を迅速で安全に行うには多くの知識や経験が必要です。しかし、知識や経験を独学で蓄積すると時間がかかるうえに間違った情報を採り入れてしまうリスクもあります。そこで、フランチャイズ本部は独自の研修システムを用意して、スタッフの正しい知識や最新の時事法令の習得をサポートしてくれます。これから不動産業界へデビューする新人でも、基礎知識さえついていれば漠然とした不安を抱かずに済むでしょう。
また、フランチャイズ本部が収集した成功パターンや貴重なノウハウはすぐさま全加盟店へと水平展開されるため、グループ全体の知識量や結束力が高まる効果もあるのです。
業務の効率化が図れる
フランチャイズが独自に構築している「業務支援システム」は、物件広告管理・顧客管理・入出金管理など不動産業務のほとんどをワンストップで行える、簡単操作で効率的な運営サポートツールです。またクラウド型サービスのため、加盟店側でバージョンアップ作業をする必要はありません。
研修システムを使えば、時間を問わず疑問が湧いたその場でチェックして確実に知識として身につけられ、時短ツールとしても優秀です。スマホとの連携もスムーズで、出先から多くの業務をこなせるというのも大きな強みでしょう。
初期投資を抑えられる
フランチャイズ本部は開業に必要なものをパッケージにしているため、効率的な開業準備ができます。例えば、不動産会社に必要なコピー複合機・輪転機・ビジネスフォン・LAN構築など、OA機器ごとに数社に問い合わせて比較検討するのは大変ですが、フランチャイズ本部なら、店舗の規模に応じた適切な機器類のパッケージをスケールメリットを活かした格安のリース料で用意してくれるため、面倒な作業が大幅に減らせます。
開業地域の選定からサポートを受けられる
不動産業を開業する際に最も大切なのは「商圏と出店地の選定」でしょう。不動産業は取引した物件価格に応じて収入が決まる「成約報酬ビジネス」であるため、住宅需要が安定的に高くて賃貸・売買の価格が高いエリアで活動するのがとても大切です。
フランチャイズ本部は「いつ/どのエリアで/いくらの成約が何件あったのか」という情報をたくさん持っていて、価格やエリアの中長期的な動向も詳細に把握しています。最終的には、自分が信じたエリアに店を構えればよいのですが、選定段階では本部の膨大で正確なデータと選定サポートを活用しない手はないでしょう。
個人では難しい多額の費用を投じた集客施策を代行してもらえる
フランチャイズ大手の広告をテレビ・ラジオ・ネット・雑誌などで見聞きしない日はないでしょう。フランチャイズ本部は膨大な資金力でブランドイメージとネームバリューを拡散し続けています。そして、消費者の最大の情報チャネルであるネットでは、SEO/MEO/SNS対策を講じ、より高い順位で人の目に触れるような対策をしてくれています。
莫大な資金で広告枠を買い、高度なネット対策で人目に触れさせるなど、フランチャイズ本部が行っている広告戦略を個人で真似るのはほぼ不可能でしょう。ロイヤリティは広告活動の代行費用でもあるため、広告はプロに任せて本業に専念するほうが、効率的で賢明な選択になる場合もあるのです。
フランチャイズに加盟して不動産業を開業するデメリット
フランチャイズに加盟した場合の3つのデメリットをご紹介します。
自力開業ではかからない費用がかかる
下記は、自力開業ではかからないフランチャイズ独自の費用です。
売り上げが低迷していると、商標利用の権利としての対価とはいえ、毎月のロイヤリティの出費がつらく感じるかもしれません。
開業場所を自由に選べない場合がある
出店するなら人口密度が高く人気の駅がある人通りの多い場所にしたいものです。しかし、フランチャイズは加盟店の利益を確保しながら顧客の混乱を防ぐために、加盟店の参入エリアに制限を設けています。加盟店間の距離や地域に1店舗など、フランチャイズ独自の基準で規制をかけているため、出店を許可されない場合もあるのです。
ブランドイメージがマイナスになることがある
フランチャイズは、小さな不動産会社が集まって大きなグループを形成し、大手のような知名度や影響力を持っています。そのため、加盟店のなかで起きた不祥事やSNS炎上が自分の店舗に無関係でも、一般の方が受ける印象は異なるのです。
つまり、良い印象も悪い印象も加盟店全体で受け止めるしかなく、最悪の場合には廃業の危機にさらされるリスクもあるということを覚えておきましょう。もちろん、自店から不祥事を出さないよう配慮する重みも個人店よりは大きくなると心得る必要があります。
不動産フランチャイズへの加盟に向いている人の特徴
不動産フランチャイズの加盟に向いている人は、フランチャイズの信用や信頼をさらに育てられる人です。以下の具体例を見ていきましょう。
不動産業の経験がなくても意欲的に勉強できたり、自分の強みを活かせる人
「業界未経験でも開業はできる」とするフランチャイズ本部もあるものの、宅地建物取引士資格や不動産知識に基づいた重要事項説明スキルが必要なことは確かです。そのため、研修やサポートを活用しながら、自分でも経験の差を埋める努力が続けられるかどうかが大切です。
人に好かれて信頼されてこそ成立する仕事でもあるため 「コミュニケーション力」や「営業経験」とフランチャイズの安心イメージとが噛み合えば、思わぬ相乗効果が生まれるかもしれません。
フランチャイズ本部を信頼しつつ、経営主体として工夫や研鑽を怠らない人
フランチャイズで開業すると安心しきって開業後に努力を怠り、売上低迷をフランチャイズ本部のせいにする方がいます。確かにネームバリューによる集客効果はありますが、フランチャイズのサポートはあくまで補助的なものです。不動産会社は優良な不動産情報が提供できなければ顧客から信頼されません。自身で毎日の情報収集をコツコツと続けて、ネット反響が減れば掲載する物件を入れ替えるなど、経営目線での検証と改善ができなければフランチャイズに加盟しても結果は出にくいでしょう。
資金計画を含めた中長期的な展望を描けている人
不動産業は、入学や入社など季節や人の動きによって売り上げが大きく変動します。また、近隣地域の再開発や人気店の出店などでもエリアの人気や人口の流入量が変わるのです。そのため、低迷する時期を乗り越えるのに充分な体力や資金力を普段から想定して、中長期的な視点で地域に根ざしていくような展望が描けているかどうかが重要です。
功を焦った強引な取り引きによって悪評が立てば、フランチャイズの全加盟店に迷惑がかかります。フランチャイズ本部から借りている信用を自分で育てていける方が加盟に向いているといえるでしょう。
将来的に事業を拡大したい会社
フランチャイズのネームバリューは大きく、業務支援システムで業務が効率的に行えることは、フランチャイズ本部サポートを活用する魅力のひとつです。しかし「フランチャイズに加盟すれば自動的に売り上げが上がる」なんてことはありません。どのような状況でも自分を鼓舞してコツコツとトライ&エラーしながらも改善を繰り返す人でなければ、長く不動産業を続けるのは難しいでしょう。
フランチャイズの効率的な開業パックがあれば、堅実な事業ができる方なら短い期間での多店舗展開も夢ではないでしょう。
フランチャイズの不動産業経営は、こんな人が成功するー成功者の実例を紹介ー
成功者の共通点とは「社会貢献の意思」「フランチャイズ本部の理念への共感」「自己研鑽」の気持ちを持ち合わせていることです。実際に独立した先輩から不動産経営の成功ポイントを見ていきましょう。
成功者の実例1:教育会社の役員から、不動産業に打ち込んでみたいと一念発起
教育ビジネス業界に長年身を置いて大きな事業にも取り組んできた武正 芳和さんですが、会社員として組織のなかで思い通りにいかないことも数多く経験しました。これからの人生は、小規模でも自分の思い通りに動ける仕事をしたいと考え、退職を決意します。
長く携わってきた教育業界を主軸に考えながら、副業としてのビジネスを検討していたところ、最終的に不動産ビジネスにたどり着きます。売れない物件をどうにかして売ってあげたい、自分の中の使命感と共鳴する瞬間でした。今では、地域に密着して空き家問題にも取り組んでいます。「本部の手厚いサポートのおかげで心強くいられました」と語る武正さんは、教育と不動産で地域に貢献する事業をライフワークにしていくそうです。
成功者の実例2:パンデミックで飲食店をたたみ、以前から気になっていた不動産業界に未経験で挑戦
「新しい事業に挑もう」2020年の春に飲食店をたたんで譲渡していく中で、次に手がけるなら不動産業だと以前から考えていた田中 大輔さんは、その思いを実行に移します。しかし不動産業界はまったくの未経験、それでも再現性が高いビジネスだという本部の説明会へ半信半疑で聞きに行きました。
顧客第一の理念に共感し、すぐに加盟を決意。オーナーは無資格でもOKでしたが不動産ビジネスを理解したい思いから、3ヵ月で宅建の資格取得を目指します。氷水に足を浸けて眠気と戦いながら、猛勉強の末に見事合格。本部が用意している勉強会・ノウハウ動画・担当SVの丁寧なご指導にずっと助けられているとのこと。今では、健康ではつらつとした営業マンでいるために休日はウィンドサーフィンを楽しみ、健康維持に努めているそうです。
成功者の実例3:子どもと一緒の時間を増やしたい!夜勤の介護士から不動産営業パーソンへ転身
託児所付きの病院で介護士を長年続けていましたが、子どもが成長するにつれて一緒の時間が少ないという悩みが大きくなりました。不動産会社は受付のアルバイト経験はあるものの営業経験は皆無。それでも時間の融通が利く業務委託勤務に魅力を感じて独立しました。
同行してくれる先輩方や主婦でもあった支社長のサポートのおかげで充実した毎日を過ごし、当初の不安もいつしか忘れて仕事に没頭していました。成約したお客様からの紹介でネットワークが広がり、依頼が増えて世界も広がりました。子どものイベントには休日を調整し、気分転換においしいものの食べ歩きを満喫しているそうです。
ACRE株式会社 (旧:株式会社テンポアップ)のオーナーレポート
不動産フランチャイズへの加盟を考えたときにチェックしたい「比較ポイント」
不動産フランチャイズ本部は以下の比較ポイントをチェックしましょう。
売買仲介か賃貸仲介か
不動産会社は賃貸も売買も取り扱えますが、顧客からすると専門で行っている不動産会社のほうが、スキルが高くてケアが行き届いてそうな気がします。売買をメインにするつもりなら、売買のイメージが強いフランチャイズを選んだほうが良い影響を受けられるでしょう。
加盟店数
フランチャイズの加盟店数は、顧客が不動産会社に抱く知名度や信頼度に直接影響するため、多いに越したことはありません。しかし、加盟店が多ければ自分が希望するエリアにすでに出店されている可能性は高くなるため、出店地の制限は大きくなるでしょう。
加盟条件
各フランチャイズの加盟条件を把握しておきましょう。例えば、契約年数と更新料の有無や金額、あるいは途中解約のペナルティの有無や金額などです。
この他にも、資格の有無、すべての店舗をフランチャイズに加盟させなければならないのか、店舗独自のキャンペーン実施の可否、ユニフォームの着用の有無、使用する文房具や小物などのルールも確認しておくべきでしょう。
また、フランチャイズごとに下記のような特徴があるため、これらの特徴も判断の基準にするとよいでしょう。
初期費用・ランニングコスト・収益モデル
各フランチャイズの費用負担は重要なチェック項目です。
毎月のランニングコストには、地代家賃・水道光熱費・人件費・福利厚生費・広告宣伝費・ロイヤリティ・レインズ(不動産流標準情報システム)利用料・ネット利用料・消耗品費などがあります。これらに生活費を加えた金額の約6ヵ月分を手元にストックしておけば、売り上げが低迷する時期も当面は大丈夫でしょう。季節やエリアの開発予定などによる変動を加味した「より具体的な売り上げ」を仮定してシミュレーションをしておくと安心です。
サポート体制
本部のサポート体制には下記のようなものがあります。
自分の判断だけでは自信が持てない場合や、別の角度から店舗の改善点を指摘して欲しい場合には、フランチャイズ本部から派遣される担当SVが心強い味方になってくれます。
信頼できるフランチャイズ本部かどうか【最重要】
不動産業を開業するなら、フランチャイズ本部とは開業から末永く持ちつ持たれつの良い関係を続けていくことになります。それだけに、フランチャイズ本部や担当者が加盟店としっかり向き合って話を聞いてくれるか、ビジネスパートナーとして信頼できるかが重要です。
もしも良い信頼関係が築けなければフランチャイズ本部の指示に素直に従えなかったり、こちらの意見を受け止めてもらえなかったりして、サポートが噛み合わず成果が出ないかもしれません。また、そのサポートを当たり前だと思わずに、フランチャイズ本部とは末永く良い関係を築いていきましょう。
不動産業界のフランチャイズ本部を比較ー特徴・サポート体制・コストー
3つのフランチャイズ本部の条件などを比較してみましょう。なお、以下は2023年10月時点の情報ですのでご自身でもご確認ください。
よくばり売却/株式会社TSUKUBITO
よくばり売却 代理店プランは案件リストへの提案から始まる売却コンサルティング事業です。未経験でも参入ができ、処分に困る空き家問題を解決する中古物件再生のプロです。
- 売れ筋物件ではなく「売れない」物件を扱うビジネスモデル
- 全国1000万戸・今後15年で倍増する「空き家」活用事業
- 無店舗/1人でも開業可能
- サポート内容、ロイヤリティ、報酬割合によって3つの契約プランから選択
ハウスドゥ
不動産売買仲介専門フランチャイズで店舗数第1位(ビジネスチャンス 2022年10月24日発行-2022年12月号)という実績が、サポートの質の高さを物語っています。
- TVCM等のメディア戦略や人工知能を活用したシステム
- 充実の初期研修(13日間)は何度でも何名でも受講可能
- 市場が急拡大する空き家の相続や処分にも注力
- 住みながら売却し高齢者の老後資金を「リースバック」でサポート
ACRE株式会社
店舗を閉めたい方や貸したい方と開業したい方を引き合わせるというマッチングビジネス。不動産業界が未経験でも、過去の業界経験や知識を活かしたジャンルで活躍してください。
- 加盟金や研修金が不要で誰でもリスクなくスタート
- 取り扱う物件はコンビニエンスストア、スーパー、飲食店、美容室、ネイルサロン、クリーニング、学習塾、クリニックなどさまざま
- 研修や勉強会などが随時あり、参入したい分野の知識の習得やスキルアップが可能!
- 他のスタッフとの情報共有が可能で、類似事例の共有やアドバイス・同行など連携もあり
ACRE株式会社 (旧:株式会社テンポアップ)の独立開業プラン
まとめ
「不動産業で開業」と聞くと、マンションの賃貸や戸建ての売買を想像しますが、実は幅広い物件を扱えるうえに、ニーズを結びつけたりコンサルティングをしたりすることもあります。ただし、不動産業界は全般的に覚えることが多く、損害リスクも高いジャンルといえます。
そのため、不動産業界未経験の方が独立開業するなら、これまでの経験職種を活かした分野や新しい空き家ビジネスなども選択肢に入れるべきです。
自分でも参入できるフィールドを見つけて開拓していくことが、これからの不動産ビジネスの本流になるかもしれません。そのような場合には、フランチャイズの開業パッケージを使って、小さな資金でリスクを最小限にして、効果的に知識をつけてはじめるのがよいでしょう。
<文/柴田敏雄>