私たちが日常的に利用する大手のコンビニエンスストアは、それぞれのオーナーがフランチャイズに加盟して独立採算で運営しています。コンビニエンスストアの消費需要は安定していますが、出店しても生き残れない場合もある厳しい世界です。この記事では、オーナーの仕事内容や多店舗展開で年収を上げるコツ、フランチャイズ本部を選ぶために知っておくべきロイヤリティの計算方法などをまとめています。※2023年10月時点での情報です。最新情報については各社HPにてご確認ください。
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コンビニエンスストアオーナーの平均年収は、600万〜700万円といわれます。これは1店舗あたりの年収を表す金額であり、夫婦で営むコンビニエンスストアの場合には2人の合算の年収が600万〜700万円という意味です。
なお、ロイヤリティ(毎月本部へ支払うお金で、売上に対する割合で金額が決まる)の割合が下記の様に決まっている契約もあります。
(A)コンビニエンスストア用地や建物の建築費用をオーナーが自己負担した場合
ロイヤリティ支払い額は売上の20〜40%(オーナー取り分は売上の60〜80%)
(B)コンビニエンスストア用地や建物の建築費用をフランチャイズ本部が用意した場合
ロイヤリティ支払い額は売上の40〜60%(オーナー取り分は売上の40〜60%)
開業直後
開業直後のコンビニエンスストアは周辺の住民以外の認知度が低いため、来客数が不安定になりがちです。また、来店状況が読めないことや業務に慣れないスタッフが多いために、多めの仕入れをしたり多めの人数でシフトを組んだりして、必要以上にコストがかかる傾向にあります。その分、オーナーの取り分は「300万円前後」と一般的なコンビニエンスストアオーナーの平均年収よりも少額になる場合があります。
多店舗経営
スーパーバイザー(SV)の力も借りながら、開業直後の不慣れで不安定な時期を乗り越えると、季節や時間帯などの来店数が読めるようになるため、無駄のない仕入れや最少人数での店舗運営ができるようになります。
そして、スタッフが育って責任者のポストに就くようになれば、その店舗の運営を任せてオーナーは新店舗の立ち上げに注力するなど、多店舗展開が視野に入るでしょう。店舗が増えればオーナーの取り分も増える可能性があるため、年収を増やしたい場合には自ずと多店舗化を目指すことになります。
【補足】地方で開業する場合
コンビニエンスストアが都会にある場合と地方にある場合とでは、来客数や売上金額、人件費などの固定費に差があります。
都会にある来客数や売り上げが多いコンビニエンスストアは忙しく、スタッフを多めに配置するため人件費がかかり、地代などの固定経費も高額です。一方で、地方にあるコンビニエンスストアは、売り上げは少ないものの人件費や固定経費が安く抑えられます。オーナーの取り分は売り上げと経費の差であるため「来客や売り上げが多い都会の方がたくさん儲かる」とは必ずしも言い切れないのです。
また、ターゲットを客単価が高い長距離トラックの運転手などに絞って、ロードサイドの立地でイートインスペースや大型駐車場を設け、車中泊しやすくするという経営方法もあります。その際には、弁当やカップ麺、宿泊グッズや雑誌などの品揃えを充実させることと、駐車の向きの協力要請やアイドリングストップを呼び掛ける看板を設置するなどといった「近隣住宅への配慮、エンジン音などの騒音対策」が必要です。
フランチャイズのコンビニエンスストア経営の仕組み
オーナーの仕事はフランチャイズ本部とのやり取り以外にも、店舗運営全般にかかる下記の3つがあります。
在庫管理と仕入れ
賞味期限商品の値引き販売や廃棄による歩留まりを最少にするために、時期や状況によって仕入量を調整して無駄をなくします。また、定番商品で販売数が高いものは切らさないように常に一定量を確保するように注意します。
全国的な売れ行きの傾向や地域性による特徴についての本部の見解を聞いて、仕入れの調整の指針にするとよいでしょう。
スタッフの育成
社会常識や身だしなみにはじまる接客応対、商品の美しい陳列や補充のタイミング、店内・店外美化意識と清掃、商品販売以外の特殊な手続きなど、商品知識以外にもスタッフが習得すべきことはたくさんあります。ただし、厳しい指導が逆効果になってモチベーション低下や退職につながることもあるため、その加減や指導方法には注意が必要です。
しかし、すべてについて毎回オーナーが指導する必要はなく、経験を積んだスタッフが後輩を教えるという仕組み作りが重要です。
また、最近ではスタッフがSNSへ不謹慎な動画を投稿して炎上したために損害賠償や廃業を余儀なくされる事例も散見されるため、正しい倫理観について指導する必要もあるでしょう。
売り上げの管理
来店客数・売上金額・時間帯による偏り・客単価などから、売り上げを向上させられる余地を分析して、改善策を実際の運営に反映させて利益の最大化を目指します。集客活動・客単価アップ・安心の提供・信頼の獲得・固定客の増加など、マーケティング目線で自店舗をプロデュースする視点が必要です。
フランチャイズのコンビニエンスストア経営でオーナーが稼働する時間は
公正取引委員会のアンケート調査によると、従業員・アルバイトの人数に対するオーナーの認識は下記のとおりです(令和2年1月1日時点)。
つまり、93.5%のオーナーが現在および将来の人数不足を心配しているということになります。
参考:コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査報告書(令和2年9月)|公正取引委員会:(P.168より)
※リンクの遷移先はPDFファイルです。ダウンロードに大量の通信費がかかる可能性があります
開業当初
開業当初は連日来店者が多く、スタッフの多くが業務に不慣れなため、忙しい日々が続きます。スタッフにとってはさまざまな判断を委ねられるオーナーの存在が店舗に必要であり、スタッフが確保できない時間帯はオーナー自らレジを打つ場面も多いでしょう。
オーナーは、スタッフが確保できない時間帯はもちろんのこと、緊急呼び出し時にはいつでも対応できるように準備しておく必要があります。また、忙しい時間帯は黙々と商品補充や店内調理などをして、その合間に仕入れや売上計算および本部とのやり取りなどをすることも珍しくないのです。
経営に専念するケース
オーナーの希望としては、日々の業務は売上管理や本部とのやり取りだけに集中して、ときどきは店舗を巡回して現場の状況を確認するというルーティーンが理想でしょうか。信頼できるスタッフが数人育っていれば、現場業務や新人教育は任せられるようになります。経営に専念したいなら、開業後の忙しいなかでも将来を見越してスタッフ育成に励んでおくことが必要です。
また多店舗展開を検討する場合も、十分な人員確保や責任者ポジションの育成が順調であれば、少しずつ店舗責任者の権限を移譲していくことで、順調に多店舗展開が進められるでしょう。
フランチャイズのコンビニエンスストア経営でかかるコストは
大手コンビニエンスストアチェーン3社のコストを比較してみましょう。なお、2023年10月現在の情報のため、各社の条件についてはご自身でもご確認ください。
開業資金を大手3社で比較
開業に際して必要な資金は、大手3社では下記のとおりです。(※2023年10月時点の情報です。最新情報は各サービスのホームページでご確認ください。)
セブンイレブン
加盟金(成約預託金)
Aタイプ(土地・建物は自分持ち):315万円(研修費:55万円(税込)開業準備手数料110万円(税込)開業時出資金150万円)+工事費・賃料等
Cタイプ(土地・建物は本部持ち):260万円(研修費:55万円(税込)開業準備手数料55万円(税込)開業時出資金150万円)+引っ越し代、生活費の予備150万円程度の資金※本部への支払いは制約預託金のみ
ローソン
開業必要資金
FC-Cn 契約、FC-5Cn 契約(土地・建物は本部持ち):310万円(加盟金:110万円(税込)※研修費55万円+開店準備手数料55万円、出資金:100万円、店舗運営必要資金:100万円)
FC−Bn 契約(土地・建物は自分持ち):210万円(加盟金:110万円(税込)※研修費55万円+開店準備手数料55万円、店舗運営必要資金:100万円)
※リンク内、契約タイプ部分にある「土地・建物をお持ちの方」タブをクリックすると詳細の確認ができます。
ただし、家族で独立する「家族加盟支援制度」、経験を積んでから独立する「FCオーナー・インターン制度」、1人で独立する「ローソンキャリア独立制度※現在は募集なし」といった独立支援制度を利用すれば加盟金が全額免除(0円)になります。
ファミリーマート
契約時必要資金(元入金):150万円+店長研修受講時の交通費・宿泊費、2~3ヶ月程度の生活費、ストアスタッフ募集、許認可申請などで50万円ほど
ランニングコストを大手3社で比較
開業後のランニングコスト(ロイヤリティ支払い)は、大手3社では下記のとおりです。(※2023年10月時点の情報です。最新情報は各サービスのホームページでご確認ください。)
セブンイレブン
Aタイプ(土地・建物は自分持ち)
売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いた利益額)の45%(24時間営業の場合は43%)から下記を減額した金額
売上総利益 | 550万円超/月の店舗 | 550万円以下/月の店舗 |
---|---|---|
24時間営業店 | ①24時間営業 ▲2% | ▲月額200,000円 |
②特別減額 ▲1% | ||
③▲月額35,000円 | ||
非24時間営業店 | ①特別減額 ▲1% | ▲月額70,000円 |
②▲月額15,000円 |
さらに、満5年を経過した開店月の翌月からは最大で3%のチャージ負担が軽減されます。
Cタイプ(土地・建物は本部持ち)
売上総利益(売上高から売上商品原価を差し引いた利益額)にスライドチャージ率を乗じた金額
売上総利益 | 550万円超/月の店舗 | 550万円以下/月の店舗 |
---|---|---|
24時間営業店 | ①24時間営業 ▲2% | ▲月額200,000円 |
②特別減額 ▲1% | ||
③▲月額35,000円 | ||
非24時間営業店 | ①特別減額 ▲1% | ▲月額70,000円 |
②▲月額15,000円 |
さらに、満5年を経過した開店月の翌月からは最大で3%のチャージが免除されます。
ローソン
FC-Cn 契約、FC-5Cn 契約(土地・建物は本部持ち)
総荒利益高に対して、スライドチャージを乗じた金額
10年契約(FC-Cn) | 5年契約(FC-5Cn) | |
---|---|---|
総荒利益高300万円以下の部分 | チャージ率45% | チャージ率46% |
売上総利益300万円超〜450万円以下の部分 | チャージ率70% | チャージ率71% |
売上総利益450万円超の部分 | チャージ率60% | チャージ率61% |
※ただし、非24時間営業店舗は、上記各チャージ率にさらに3%加算します。
FC−Bn 契約(土地・建物は自分持ち)
※リンク内、契約タイプ部分にある「土地・建物をお持ちの方」タブをクリックすると詳細の確認ができます。
総荒利益高に対して、次の率を乗じた金額
総荒利益高300万円以下の部分 | 41% |
売上総利益300万円超〜450万円以下の部分 | 36% |
売上総利益450万円超~600万円以下の部分 | 31% |
600万円を超えた部分 | 21% |
※ただし、非24時間営業店舗は、上記各チャージ率にさらに3%加算します。
内装設備工事はオーナーが負担(1FC-Cタイプ) | 内装設備工事は本部が負担(2FC-Nタイプ) | |
---|---|---|
月額営業総利益300万円以下の部分 | 本部フィー率59% | 本部フィー率59% |
月額営業総利益300万1円以上、450万円以下の部分 | 本部フィー率52% | 対象外 |
月額営業総利益300万1円以上、550万円以下の部分 | 対象外 | 本部フィー率63% |
月額営業総利益450万1円以上の部分 | 本部フィー率49% | 対象外 |
月額営業総利益550万1円以上の部分 | 対象外 | 本部フィー率69% |
内装設備工事はオーナーが負担(1FC-Aタイプ) | 内装設備工事の一部は本部が負担(1FC-Bタイプ) | |
---|---|---|
月額営業総利益250万円以下の部分 | 本部フィー率49% | 本部フィー率52% |
月額営業総利益250万1円以上 350万円以下の部分 | 本部フィー率39% | 本部フィー率42% |
月額営業総利益350万1円以上の部分 | 本部フィー率36% | 本部フィー率39% |
フランチャイズのコンビニエンスストア経営で年収を上げるには
オーナーの年収を上げるには、店舗の財務体質を改善することとスタッフの育成、多店舗展開が重要です。
食品の在庫管理に注意する
食品は、缶詰やレトルト・酒類・調味料・スナック菓子・生鮮食品などの種類に応じて賞味期限が異なります。期限を過ぎると商品として売れず商品価値がなくなるため、在庫管理や期限管理を徹底して確実に売り切らなければなりません。フランチャイズ契約によっては期限間近の商品は値下げして売ることができるので、廃棄処分する食材が出ないよう充分に注意すべきでしょう。
地域や客層、季節に応じて取扱商品を決める
その店舗の利用客が高齢者、トラックやタクシー運転手、中学生や高校生など、店舗によって利用客には偏りがあるものです。そのため、客層に合った商品のボリュームを増やし、季節ごとでも取扱商品に変化を付けるなど、メインの利用者に焦点を当てた運営が固定客を獲得し収益を安定させるのです。
本部と良好な関係を築く
フランチャイズ加盟の大きなメリットの1つに、詳細なデータから導かれる正確な経営分析があります。その店舗の日々の細かい数字や変化の様子は本部が克明に記録しており、全国の店舗の情報から傾向や改善策を導くことができます。そのため、フランチャイズ本部と良好な関係を築いて、困りごとの相談や経営改善のアドバイスを授かることはとても重要になるのです。
スタッフの育成に力を入れる
コンビニエンスストアで取り扱う商品や価格は、各社のプライベートブランド商品や惣菜以外にはほとんど差がありません。そのため、利用するコンビニエンスストアを選ぶ際には、コンビニエンスストアのブランド名よりも、スタッフの接客態度や処理能力の高さで店舗を選ぶことは少なくありません。現場の状況を汲み取ってテキパキと動き他のスタッフへ適切な指示が出せるなど、現場マネジメントができる人材を育成する必要があります。
多店舗展開してみる
オーナーの年収は総売上から総経費を差し引いた残りです。1店舗だけの年収は少なくても2店舗、3店舗と運営店舗が増えるにつれてオーナーの年収は積み上がり増えていきます。ただし、3店舗のうち1店舗が赤字なら、実質1店舗の利益しか残らないため、1店舗ずつ堅実に増やしていくことが重要です。
フランチャイズでコンビニエンスストア経営するメリットは?
フランチャイズに加盟して小売業を行うと、ネームバリューによって開業と同時に来店が見込めます。またコンビニエンスストア経営のプロが、財務や営業戦略を俯瞰視点でアドバイスしてくれる安心感もあります。
さらにフランチャイズに加盟することで、開業支援パッケージが使えて仕入れルートが確保され、広告宣伝活動も本部が行ってくれるなどのメリットがあり、他店舗展開は自力よりもスムーズに行えるでしょう。
フランチャイズでコンビニエンスストア経営するデメリットは?
地域に根ざして固定客がつき、スタッフが育って運営を任せられ、経営が軌道に乗るまでは数年かかるかもしれず、それまではオーナー自身が店に立たなければなりません。
なお、基本的には店の近くに住んでパートナーと共に業務に就くことが条件になっており、成功するために生活のすべてを注ぐという決断が必要な場面もあるかもしれません。また、フランチャイズを中途解約しても同業種をその地で行うことができず(競業避止義務)、運営全般は原則としてフランチャイズの規約に従わなければならないため、自由度はかなり低いといえるでしょう。
コンビニフランチャイズでの独立とは?メリット・デメリットと大手3社を紹介
まとめ
実は、コンビニエンスストアを開業するのに必ずしもフランチャイズに加盟する必要はありません。個人でコンビニエンスストア(小売店)を営む方法もあります。しかしフランチャイズに加盟することで、ネームバリューを活用しながら効率的で安心のサポートを受けることができるため、失敗のリスクを回避しやすくなるでしょう。
オーナーの仕事やロイヤリティの仕組み、多店舗展開のコツを知って、ぜひフランチャイズ選びの参考資料としてご活用ください。
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柴田敏雄