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「運動が苦手だった」日本人女性初のパルクールコーチ・山本華歩さん、その強みとは

「運動が苦手だった」日本人女性初のパルクールコーチ・山本華歩さん、その強みとは

「走る・跳ぶ・登る」といった、人間の移動能力にスポットを当て、その技の完成度を競うパルクール。

今回お話を伺った山本華歩さんは、日本人女性初のパルクールコーチとして、都内を中心に全国各地で活躍しています。

パルクールがSNSやメディアなどで話題となり、コーチとして忙しい日々を送っている山本さんですが、実はそもそも運動は苦手だったそうです。

しかし、運動が苦手で苦労した経験があるからこそ、コーチとして活躍できていると語ります。今回はそんな山本さんのキャリアと、コーチとしての強みについて伺いました。

<プロフィール>
山本華歩さん
パルクールコーチ/パフォーマー
A.D.A.P.T Lv1 assistant coach

大学時代にパルクールを知る。当初はダイエット目的の軽い気持ちで始めたが、その後オフ会などを通じて仲間と出会い、パルクールの魅力に気づいていき上達していく。

大学を卒業後は一般企業に就職。仕事以外の余暇の時間として活動を続けていくが、日本でパルクールがブームになりつつあり、テレビやメディア、SNSで拡散されるようになる。

2017年3月に会社を退職。A.D.A.P.T(パルクールの国際指導資格)を取得するため韓国に渡る。A.D.A.P.T Lv1 assistant coachの試験をパスし、日本人女性で初のパルクールコーチとなった。

帰国後、コーチとしてのキャリアを本格的にスタートさせる。

当初はダイエット目的だった? 山本さんがパルクールコーチとして独立するまで

――パルクールコーチとしてご活躍されている山本さん。まずはパルクールという競技について、簡単に教えていただけますか?

山本さん
端的に言うとパルクールとは、人間の移動能力(走る・跳ぶ・登るといった動作)にフィーチャーした技や動きを行うスポーツです。

……といってもピンとこないと思うので、まずはこちらの動画を見てみてください。

――すごいです……。これがパルクールなんですね。

山本さん
この動画はあくまで、パルクールの例の1つです。

スポーツというと何かを競うようなイメージがありますし、実際に技の完成度を競うものもありますが、みなさんが普段何気なく行っている歩行や階段の上り下りも、広い意味ではパルクールと言えます。

だから「パルクールとは何か」を、一言で説明するのって難しいんですよね(笑)。

――山本さんはなぜパルクールを始めたのですか?

山本さん
大学時代に運動不足の解消とダイエットをしようと思って、ネットサーフィンをしていたら偶然、パルクールの動画を見つけたんです。

当時、トランポリンを使ってダイエットするのがちょっとしたブームだったので、私もトランポリンに挑戦しようと思っていました。

でもパルクールならトランポリンと違って、公園などでもできますし「場所代もレッスン代もかからないじゃん!」と(笑)。

そこでネットを通じ、パルクールのオフ会に参加して、活動を始めることになりました。

そんなかなりラフな動機で始めたので、まさかパルクールが仕事になるだなんて、当時は思いもしませんでしたね。

――どういった経緯でパルクールが仕事になったのでしょう?

山本さん
パルクールが仕事になったのは、2017年にA.D.A.P.T(パルクールの国際指導資格)を取得してからですね。

順を追って説明すると、大学を卒業してから5年間、会社員として働いていました。平日の昼間は会社で仕事をして、就業後や休日にパルクールの練習を続けていたんです。

その5年の間に、パルクールが世間で認知されていきました。SNSで拡散されるようになったり、テレビで特集が組まれたりと、年々脚光を浴びるようになっていって。

社会人になってから、私はパルクール仲間と一緒に、定期的に初心者へ向けた講習会を行っていました。

始めた当初は10人も集まらなかったのですが、メディアの影響からか、だんだんと参加者が増えていき、30人以上集まることもありました。

――パルクールの認知の広がりに比例するように、講習会の参加者も増えていったと。

山本さん
そんな中、パルクールのコーチングライセンスが海外で取得できることを知りました。ただライセンスを取得するためには、最低でも1週間海外に行かなければならなかったので、受けるかどうか迷っていたんです。

ちょうどその時、現在もお世話になっている合同会社SENDAI X TRAIN(パルクール専門のプロフェッショナルコーチ)のCEOから「資格を取得して、パルクールの教室レッスンで指導してほしい」とオファーをいただいて。

それで思い切って会社を退職し、ライセンスを取得。帰国後に、パルクールコーチとして独立したんです。

私自身、運動が苦手だったからこそ。山本さんのコーチとしての強み

――現在の仕事について聞かせてください。

山本さん
主に都内のジムなどで、大人からこどもまでさまざまな年齢層の人へ向けて、パルクールの教室を開いています。

その他、イベントや体験会などは全国各地で開催しています。

――独立して5年が経とうとしていますが、山本さんがパルクールのコーチとして心がけていることがあれば教えてください。

山本さん
運動が得意な人にも苦手な人にも理解してもらえるよう、パルクールにまつわる全ての工程を言語化して説明することを心がけています。

ジャンプや着地のタイミング、手の置き場所や角度、目線の動き、姿勢、身体の持っていき方など、要素に細かく分けて1人ひとりの課題に応じて解説しています。

というのも私自身、昔から運動がとても苦手でして(笑)。

パルクールも、そんな器用に技ができるようになったわけではありませんでした。泥臭く練習を続けて、ようやく上達していったんです。

でも不器用だったからこそ「技の仕組みをちゃんと頭で理解をしてから、自分の身体をイメージ通りに動かす」よう、意識して練習を続けてきました。

そんな経験が、コーチ業をする上で逆に活きたのかもしれません。

――学校の勉強とは異なり、運動や動きを教えるとなると、どうしても感覚的な教え方になってしまうのではないかと邪推してしまいますが……?

山本さん
もちろん上手な人は、お手本を見ただけである程度その通りにできますから、そこまでガチガチに論理的に説明する必要はないかもしれません。

ですが教室にやってくる生徒さんの全員が、初めからセンスがあって、上手なわけではありません。

「運動はちょっと苦手だけど、パルクールを楽しんでみたい」という人も非常に多いです。

そういう生徒さんに「こんな感じでやってみて」と、ただ手本だけ見せるだけでは、教えることにはなりません。

その人が何につまづいているのか、問題点を細かく洗い出して一緒に解決していくことが大切だと思うんですよね。

――運動が苦手だったとおっしゃいますが、苦手なものを続けることは簡単ではありませんよね。なぜ山本さんは、ここまでパルクールを続けることができたのでしょう?

山本さん
やっぱりパルクールが好きだったからじゃないですかね。

最初はダイエット目的でしたし「かっこいいな」くらいの軽いノリで始めたんですが、やっていくうちにパルクールの楽しさに気づいて、のめり込んでしまったんですよ。

自分の課題を客観的に分析して、できないことを1つずつ潰していく。

そうした研鑽を経てやっと技が完成した時の、喜びと楽しさ。それが好きで、なんとかここまで続けてこれたんじゃないかなと。

逆に言えば、私はたくさん回り道をしたことで、今こうしてコーチの仕事ができているわけですから、そういう意味ではたくさんつまづいてきて良かったなとすら思います(笑)。

もし私にセンスがあって、最初から難しい技もできてしまっていたとしたら、コーチの仕事は続かなかったかもしれませんからね。

独立してから「大変」の捉え方が変わった。大変だけど、楽しい仕事をするために

――運動が苦手だったからこそ、それが逆にコーチとしての強みになったと。山本さんのこれからの展望を教えてください。

山本さん
後続の育成に力を入れていきたいです。

ありがたいことに、SNSやメディアなどさまざまな媒体でパルクールを取り上げていただき「パルクールを学びたい」という方がたくさん増えてきているのですが……。

残念ながら、パルクールをきちんと教えられるコーチの数が、非常に少ないのが現状です。

「走る、跳ぶ、登る」は人間の動きの基本。だからこそ普段からスポーツをする人もしない人も、1人でも多くパルクールに触れてほしいんです。

そのためにはまず、教えられる人を育てていかないといけません。まずは自分の手の届く範囲からできることをやっていこうと思います。

――最後に、読者の人へメッセージをお願いします。

山本さん
独立して一番変わったのは、仕事における「大変」の捉え方が変わったことでした。

会社員の時は「大変」なことをネガティブに捉えていたんですよね。やはり人からやらされる仕事と、自分の意志で取り組む仕事では、正直熱量が全然違います。

独立してからは仕事に楽しく取り組めるようになり、「大変、だけど楽しい」と思えるようになりました。

自分で仕事を作っていけばいくほど業務量は増えていき、その分「大変」になっていきますが、自分がやりたいことなら、仕事と楽しく向き合うことができます。

もちろん仕事のしすぎの無理は禁物ですが、より張り合いのある仕事をしたいということなら、独立・起業はピッタリなんじゃないかなと思います!

取材・文・撮影=内藤 祐介

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