さまざまな変革が進んでいく現代社会。なかでも教育業界はこれまで以上に多様性が求められ、学校や家庭だけではない、子どもたちにとっての第3の環境がより一層重要になってきています。
今回お話を伺ったのは、塾・家庭教師の先生と生徒をマッチングするサービス「みらいの学校」(https://www.mirainogakkou.com/)を運営する北本貴子さん。
このサービスを立ち上げるまで教育業界とはまったく縁がなかったという北本さんですが、現在の仕事に対して大きな使命感とやりがいを感じていると言います。
なぜ独立をして「みらいの学校」を立ち上げたのか。その理由と熱い想いをお聞きしました。
ラナンキュラス株式会社 代表取締役。2011年にデザイン事務所を開業し、2012年ラナンキュラス株式会社を設立。
企業の家庭向けセールスプロモーションのサポート事業のほか、子育て中のママ向けにさまざまなクラウドサービスも展開。2014年、2015年と1000人規模の次世代教育イベント「みらいの学校」を主催する。3人の子どもを育児中。
子どもに学校・家庭以外のサードプレイスを!教育業界未経験の北本さんが「みらいの学校」を立ち上げたワケ
―北本さんが立ち上げたサービス「みらいの学校」について、教えてください。
「みらいの学校」は、学び場を子どもやその保護者に選んでもらうマッチングサービスです。
核家族化の影響もあり、今の子どもたちは昔以上に「他人の大人」と触れ合うきっかけが減少しています。
そこで、子どもが学校の先生でも家族でもない大人と関わる機会を増やすこと、子どもたちにとっての第3の居場所を作ることを目的として「みらいの学校」というサービスを作りました。
WEBでは先生と子どもたちを個人間でマッチングするサービスを展開していますが、体験型の教育イベントなどの運営もやっています。
教育コンテンツを提供する企業とそれを使う学校や家庭、教育関係者が一堂に会し、それぞれのブースで子どもたちにコンテンツを体験してもらうというサービスです。
―「みらいの学校」という構想を、WEB・リアルと手段を問わず多角的に展開されているのですね。ここに先程の理念を強く感じるのですが、北本さんは元々、教育というお仕事をされていて独立された、ということでしょうか?
いえ、これまでの人生で教育に携わってきたことはないんです(笑)。
もともとはSEOの会社で働いていたのですが、子育てをしながらだとどうしても生活スタイルが合わなかったのでその会社をやめてしまったんです。
その後、子育てをしながら働けるという選択肢はフリーランス以外厳しいかなと思い、半ば仕方なく独立したのですが、最初は教育業ではありませんでした。
―「みらいの学校」の構想と事業内容が並々ならぬ熱量だったので、てっきり根っからの教育者だと思っておりました(笑)。ではどうやって「みらいの学校」に行き着いたのでしょう?
独立してデザインの事務所を始めた傍ら、SNSでママさんコミュニティの運営を趣味でやっていました。私も3人の子どもを育てるママでしたし、ほかのママたちと情報交換できる環境を作りたくて。
そんなママたちを集めてオフ会やイベントをやっているうちに、だんだんそのコミュニティが大きくなっていきました。すると企業から宣伝させて欲しいと依頼が来たり、コンテンツを提供したいという声がかかるようになったんです。
その中に教育系のコンテンツを持つ企業があって、そこから企業とユーザーとの体験型のイベントを定期的に開催するようになりました。それが「みらいの学校」の前身です。
「私自身が1番の顧客だったんです。」教育事業を始めるに至った、圧倒的な当事者感覚
―コミュニティが大きくなっていくにつれて、「みらいの学校」として事業化されたんですね。
そうですね。会社としては引き続きデザイン事業もやっていますが、「みらいの学校」として、体験型イベントと、塾や家庭教師の先生と生徒のマッチング業を両立しています。
―塾や家庭教師の先生と生徒のマッチングは、生徒さんが自分の好きな先生を選べるんですよね。
はい。自分が学びたいと思う先生を自分で選んでもらうのがこのサービスの特徴です。勉強に限らず、その先生が持つ経験や考え方を子どもたちに知ってもらってから学べるという環境を作りたかったんです。
―子どもが先生を選ぶ、というアイデアはとてもめずらしいなと思ったのですが、なぜこのような仕組みにしたのでしょうか?
おそらく私自身が子どもの親として、当事者だからです。
私には3人の子どもがいるのですが、それぞれ3者3様にいろいろと悩みがあります。長女は絵が好きなのですが、彼女にどのような教育をさせればいいのか悩みました。
小学生の長男は勉強が好き過ぎるが故に、学校の授業に退屈して不登校になってしまいましたし、末っ子は場面緘黙症(普段は普通に会話できるが特定の場面で喋れなくなってしまう現象)で保育園では字も書けず朗読もできません。
複雑な事情を持つ子どもが増えているにも関わらず、これまでのように画一的な教育で対応するには限界を迎えています。とはいえ集団教育である学校に個別の対応を求めるのは人材のリソース的にもコスト的にも厳しいものがあります。
どうしたら子どもたちの長所と短所に合った教育を受けられるか。そう考えて生まれたのが、「みらいの学校」です。いわば、自分自身が「みらいの学校」の1番の顧客だったんですよね。
―「みらいの学校」の構想のターゲットは、北本さん自身だったんですね。
はい。うちの子に限らず、このサービスに救われる子どもや家庭は必ずあると思いました。
「みらいの学校」は子どもたちの悩みや問題を解決できる、そして長所を伸ばせる「場所」にしたいんです。そのためには学校や家庭以外の大人たちに接する機会をたくさん作らないといけない。だからこそ、会社で事業化する意味があるなと思いました。
子どもの将来を作る、すなわち「20年後の社会を作る」ことがこの教育事業の大きな目標になりました。
現在、幸いにも「みらいの学校」に賛同いただいている先生方は、経験が豊富なのはもちろん、子どもたちへの多様性にも理解のある素晴らしい先生ばかりです。そんな先生たちから学べる子どもたちが正直、羨ましいくらいです。
「20年後の社会を作る」こと。それが、自分の仕事を決める基準
―起業して独立するにあたって、自分のやりたいことに対してブレがあると成功しないといいますが、北本さんを見ているとまさに自分の信念と事業にブレが全然ないなと感じます。
そうですか(笑)。独立したての頃は起業している先輩や周りの声にいろいろゆれてましたけどね(笑)。
「もっと利益を生むためにはこっちのやり方のほうがいいんじゃないか」とか、「最初はあまり仕事を選ばないほうがいいんじゃないか」とか。
でもたしかに教育事業に携わるようになってからは、そういう意味では本当にブレなくなりましたね。利益を出すことも大切にしていますが、何のために自分が仕事をするのか、そしてそれは子どもたちのためになるのかをまず考えています。
そして「20年後の社会を作る」という軸が教育事業を始めてからしっかりと根を張った気がします。この軸に沿っているか沿っていないかで、ものごとを判別できるようになったのは大きいと思います。
―最後に独立や起業を考える人に、何かメッセージをいただければと思います。
先程申し上げたように自分が何を1番大切にしているのか、軸がきちんとできていることで何とか乗り越えられることが多かったりします。でもそれがきちんと定まっていない方もいると思います。
もしこれから独立してみたいなと考えている方がいたら、まずはどんどん動いてみてください。「やりたいことはやる」「やりたくないことはやらない」というくらいのフットワークの軽さでいいと思います。
理屈で難しく考えるよりも、まずは動いてみてみると意外なところにチャンスや自分の大切なものを見つけるカギがあるかもしれません。
「みらいの学校」では、6月に大型イベントを企画していますので、こちらもぜひチェックしてみてください!
https://www.facebook.com/mirainogakkou/?fref=ts
https://entrenet.jp/dokuritsu/C01/