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“選手ファースト”の徹底。DetonatioN Gaming・CEO流マネジメント

“選手ファースト”の徹底。DetonatioN Gaming・CEO流マネジメント

組織が常に成果を上げ、成長し続けるために欠かせない要素が「チームマネジメント」。

経営者には、多種多様の考えを持った人材が集まる組織をまとめる能力が必要不可欠です。

今回お話を伺ったのは、対戦ゲームで実力を競う新しいスポーツ競技「eスポーツ」業界で活動する梅崎伸幸さん。

梅崎さんは、プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming (デトネーション ゲーミング)」のCEOを務めながら、日本eスポーツ連合に統合された日本eスポーツ連盟にて共同代表理事も務め、日本ゲーム産業の普及と発展のために尽力されています。

「DetonatioN Gaming」には、各ゲームの凄腕プレイヤーが集まっており、国内ではトップレベル。そんな個性派ぞろいのプロゲーマー集団をまとめ上げるのは、至難の業といっても過言ではないでしょう。

そこで今回は梅崎さんが重要視する、チームのパフォーマンスを最大限に向上させるためのマネジメント手法について、伺いました。

<プロフィール>
梅崎伸幸(うめざき のぶゆき)さん
1983年7月1日生まれ。福岡市出身。

株式会社Sun-Gence(サンゲームス)代表取締役/プロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming 」CEO/日本eスポーツ連合所属

東海大学政治経済学部卒業。
大学卒業後、重電メーカーに就職し、7年間は法人営業として勤務。

2012年7月にゲーミングチーム「DetonatioN」を設立し、現職の傍ら選手として活動。同年12月にはゲームのオリンピックである「World Cyber Games(ワールドサイバーゲームズ)」に出場。翌年の2013年に引退。

2014年12月に重電メーカーを退社し、翌年の2015年2月にゲーミングハウス「DetonatioN FocusMe」を設立。同年6月にはスポーツ専門の会社である株式会社Sun-Genceを設立。同年11月にチーム名を「DetonatioN Gaming」へ改名する。

2016年3月にチーム所属の韓国人選手に対して、日本初となるプロゲーマーの「アスリートビザ」を取得。同月には一般社団法人日本プロeスポーツ連盟を複数の有志企業と共に設立し、共同代表理事に就任する。

2016年4月には日本初となるeスポーツ教育機関、東京アニメ・声優専門学校e-sportsプロフェッショナルゲーマーワールドコースの講師に就任した。

【著書】『月給プロゲーマー、1億円稼いでみた。

世界で勝てるチームを作りたい。梅崎さんが競技者から、経営者の道を選んだ理由

ー国内トップレベルのプロeスポーツチーム「DetonatioN Gaming」のCEOを務められている梅崎さん。これまでの経歴を教えてください。

梅崎さん
大学卒業後、重電メーカーに就職して7年ほど営業職として働いていました。

主に自動車メーカーや飲料メーカーといった民間企業を中心に回り、必要な機器を販売していたんです。

会社員生活を送る一方で、趣味でゲームをやっていました。

かなり力を入れてゲームをしていたので、入社5年目の2012年7月には個人事業として「DetonatioN」というゲーマーチームを設立し、僕自身も選手として活動していました。

ー最初は、会社を辞めずにチームを立ち上げられたんですね。

梅崎さん
そうですね。

当時は経営者としてではなく、1人のゲーマーとして活動していたので、副業して稼ぐことが目的ではなく、趣味(ゲーマーとして活動)の一環でチームを設立したんです。

ーなるほど。チームとしてはどのような活動をされたのですか?

梅崎さん
2012年12月開催の「World Cyber Games」というゲームのオリンピックに日本代表として出場しました。

設立した当時は、この大会に出場することを目標に掲げていたので嬉しかったですね。

しかし大会での結果は、惨敗でした。

当時はまだ、今ほど日本にeスポーツの文化が根付いていないということもあり、大会に出場していた海外のチームからバカにされてしまったんです。

ー日本と海外で、eスポーツという文化の根強さ、裾野の広さのレベルが違ったということでしょうか?

梅崎さん
もう全てが違いましたね。それがまた、めちゃくちゃ悔しかった。

そして翌年には選手を引退し、チームのマネジメント側に回ることを決意したんです。

自身が選手としてプレーすることはなくなりますが、それ以上に僕という個人だけではなく「世界で勝てるチームを作りたい」と思いました。

ーその悔しい思いや経験が、次の目標への糧になったのですね。その後、チームはどうなっていくのでしょう?

梅崎さん
2014年頃から少しずつ、スポンサー契約を結んでくれる企業が増えてきました。

ですが、それでも年間のチームの収入が100万円程度だったので、選手やスタッフが経済的に安定するには程遠い金額でした。

また、基本的にスポンサーとの打ち合わせは平日ですし、今後さらにスポンサーを増やしていくとなると、これまでのように会社員生活とチーム経営を両立させるのは厳しいなと思いはじめ…。

それで2014年12月に勤めていた会社を退職し、2015年2月に「DetonatioN FocusMe(現・DetonatioN Gaming)」というゲーミングハウスを設立。さらに同年6月には、eスポーツ専門の会社である株式会社Sun-Genceを設立したんです。

ー2足のわらじ生活を終え、プロゲーマーチームの経営に専念されたんですね。

梅崎さん
時間ができたことによって、スポンサー企業との交渉もスムーズに進めることができるようになりましたし、何より選手が競技に専念できる環境と活動費用を提供できるようになりました。

おかげさまで年間100万円ほどだった売上も、スポンサーを増やすことに成功したので、数千万円単位の規模に伸びています。

必要なのは、選手に対する日々の気遣い。「選手ファースト」を現場の社員にも徹底させる

ー多くの収入を得られるほどスポンサーを獲得できた背景には、日本にそれだけeスポーツが浸透し、認知されたということがあるのでしょうか?

梅崎さん
たしかにここ数年でeスポーツ市場は拡大し、ビジネスチャンスが増えると予測する企業が増えてきましたね。

特に2017〜2018年にかけて、注目度は格段に上がりました。

というのも、2017年4月にeスポーツがオリンピックのアジア版「アジアオリンピック」のメダル種目として認定され、2022年の大会から正式競技に採用されることになりました。

さらに2026年の大会は日本の愛知・名古屋で開催されるのでは? と予想されています。今後ますますeスポーツ界は盛り上がっていくでしょう。

また、今年の2月には日本eスポーツ連盟の3団体(日本eスポーツ協会、s-sports促進機構、日本eスポーツ連盟)が統合し、日本eスポーツ連合が設立されました。

JOC(日本オリンピック委員会)加盟を目指している中、ジャカルタで開催されるアジア競技大会において日本選手の海外派遣が可能になったことも、近年の市場拡大に大きく関係していると思います。

ー日本でeスポーツが“プロスポーツ”として認知されてきているということですね。

梅崎さん
はい。

そういった流れから日本におけるeスポーツの立ち位置が変わりつつあり、1大ビジネスとして多くのスポンサー企業が協賛しようと手を挙げるようになりました。

一方で認知度が急激に上がりすぎてしまい、「eスポーツ」という言葉が1人歩きしてしまっているところが随所に見受けられるようにもなりました。

ーすると、どうなるのでしょう?

梅崎さん
eスポーツのことをよく知らないにも関わらず、とりあえず利益優先で参入してくる企業も少なからず出てきています。

これはごく稀な例ではありますが、目先の利益優先を理由に参入してくる企業は、事業に興味がなくなった途端、無責任な契約解除を選手に申し出てくることもあります。

そしてその身勝手な判断によって、1番被害を受けるのは選手です。

実際に企業側の一方的な都合でスポンサーを降りて、選手の生活に影響が及んだこともありました。

そこで我々「DetonatioN Gaming」は、eスポーツについてはもちろん「DetonatioN Gaming」というチームや理念について、深く理解していただける企業にのみスポンサー契約を結ばせていただいております。

ースポンサー企業を相手に対外的な交渉をされている一方で、現場の社員や選手のマネジメントといった対内的な業務も梅崎さんにとって重要なお仕事だと思います。現場の社員や選手に対するマネジメントで、心がけていることはありますか?

梅崎さん
特に心がけていることは「選手に対する気遣い」です。

選手たちは大会で優勝するために日々練習していますし、プロである以上、選手の勝利がそのままチームの利益に直結するわけですよね。

だからこそ、選手が安心して競技に打ち込める環境の整備、メンタル面でのサポートなど、いろんな角度から選手をケアする必要があると考えています。

例えば、選手の大会期間中であればメディアの取材等はお断りしたり、成績が伸び悩んでいる選手には、状況にもよりますが何が問題なのかを一緒に考えることもあります。

「選手にかかる負担を軽減するにはどうしたらいいか」「次の大会にどうすればベストな状態に持っていけるか」という、選手に対する気配りや心配りは常に意識していますし、現場の社員にも選手のモチベーションを第1に考えるよう伝えています。

ー多種多様の考えを持ったメンバーをまとめ上げるのは大変ではないですか?

梅崎さん
たしかに大変ですね。プロゲーマーは尖った性格をしている人間も多いですし。

でも僕自身が、選手たち以上に負けず嫌いですし、尖った性格をしているのでなんとかやれています(笑)。

先程も申し上げたように、我々は選手の活躍があってこその「DetonatioN Gaming」です。

言うならば「選手ファースト」で動いています。いかに選手に気持ちよく大会に出場してもらえるか、そして結果を出してもらえるかが最重要項目です。

その目的にそぐわないものは極力減らしていきたいですし、極端な話、スポンサー契約を結んでいる企業の意向が選手のモチベーションを下げることに繋がるようであれば、きちんとお断りするようにしています。

全ては「DetonatioN Gaming」というチームに所属している選手のため、そしてeスポーツ界の発展のため、情熱を持って仕事をさせてもらってます。

選手や社員がついてきてくれるかどうかは、僕の掲げるこのビジョンと、ビジョンを達成するための実際の行動が伴っているかにかかっていると思います。

はやりに乗って起業、は失敗する。“意思”のあるビジネスを作る

ー今後の展望をお聞かせください。

梅崎さん
世界の舞台で結果を残すことが、チームの1番大きな目標です。

私は日本のeスポーツ界の最前線を走り続けてきた、という自負はあるのですが、それでも世界とのレベルの差は広がっているなと感じています。

チームの資金にはなんとか余裕が出てきたので、これからは世界との差を縮めるための投資をしていきたいと考えています。

また高額賞金を受け取る際の法的な整備や、競技大会の普及や選手の育成など、日本のeスポーツ界の課題は、まだまだ山積みです。

その課題を1つずつクリアしていかなければなりません。

ー日本が世界で勝つためにはどのような施策が必要だと思いますか?

梅崎さん
まずeスポーツのプレー人口を増やしていくことが必要不可欠ですね。

具体的には、中学や高校、大学でeスポーツを部活動の1つにしていきたいと考えています。

日本において、これまでプロスポーツ選手の育成を担ってきたのは、学校の部活動だと思うんです。

eスポーツは競技としてまだできて間もないですし、早く世界と渡り合うためには、部活動の段階から人材を育成する必要があると思います。

そして将来的に「こどものなりたい職業ランキング」で上位に食い込めるような世界を作っていきたいですね。

ーありがとうございます。最後に、独立・起業を目指す方に向けてメッセージをお願いします。

梅崎さん
まずは、人生を捧げられるくらい好きな仕事を見つけることから始めてみてください。

今の僕にとっての仕事とは、eスポーツ業界の発展です。

一方で何となくやってみたり、はやりに乗っかって始めたビジネスというのは、大概失敗します。

なぜならそこに「こういう世界を作りたい」という“意思”がないからです。

自分がその仕事で何を成し遂げたいのか、その目的をしっかりと見定めることから全ては始まると思います。

(取材・文=佐藤主祥 https://twitter.com/kazu_vks

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