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かさばる領収書、破棄できる? 電子帳簿保存法のスキャン保存について、税理士が解説!

申告・納税

日々の取り引きを記録していく上で、領収書やレシートの保管に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

領収書やレシートは紛失してしまいやすいですし、書類の保管場所や方法って何かと面倒ですよね。

そんな方々におすすめしたいのが、領収書をスキャナーで保存する「電子帳簿保存法」。

独立・起業の「お金」に関する悩みを、税理士の齋藤雄史先生に解説していただく「税理士が教えるお金と起業」シリーズ。

今回は「電子帳簿保存法のスキャン保存」をテーマに、齋藤先生に詳しく伺いました。

年々緩和されている電子帳簿保存法

電子帳簿保存法は、1998年に制定されましたが要件などが複雑で、あまり世間には浸透しませんでした。

契機となったのは2015年の規制緩和で、その後2019年まで数々の改正が行われ、以前と比較しても格段に導入をしやすくなってきています。

電子帳簿保存法の対象となっているのは、大きく分けて3種類です。

データ or スキャン? 電子帳簿保存法で認められた保存方法を確認!

今回取り上げるのは、『③取引関係書類』。主に領収書や請求書といったものです。

電子帳簿保存法に対応した場合、請求書などの取り引き関係書類の保存方法として認められているのは「電磁的記録保存」と「スキャン保存」があります。

電磁的記録保存とは、データとして保存するという意味で、パソコンで作成されたPDF形式の請求書などをそのまま電子データとして保存することです。

請求書を紙で送付している場合でも、そのデータ自体がパソコンで作られた電子データを印刷したものであれば、その元である電子データは電子帳簿保存法の対象となります。

一方で、スキャン保存はその名の通り、一定の要件を満たすスキャナーを使って取り込んだ電子データを保存することを指します。

例えば、紙で受け取った書類とパソコンを使わずに作られた書類について、これまでは紙で保存しなければならない部分を電子データとして保存することができます。

近年の改正では、スキャナーのみならずデジタルカメラやスマートフォンで撮影したものを電子データとして認められるようになりました。

スキャンした書類は捨ててもいい? 電子帳簿の活用メリット

法人税法や所得税法に基づき、税金計算に係る帳簿や関係書類については資料の保存が義務となっています。その期間はなんと原則7年間。

これを紙で保存するとなると、費用もかかりますし、保管場所の確保も大変ですよね。

電子帳簿保存法に対応することで、以下のようなメリットを得ることができます。

①書類の保管コストを減らすことが出来る。
②書類を探す手間が減る。
③紛失のリスクを減らすことが出来る。

個人事業主や開業間もない事業者にとって、重要性を認識していないという方も多いそうです。

日々の取り引き記録を積み上げる仕訳計上において、領収書は何よりの証拠となります。そしてそれを紛失してしまえば、経費性を裏付ける根拠がないといわれても仕方有りません。

このような領収書も電子帳簿保存法では対象となり、2017年度の改正によってスキャン保存要件を満たすことができれば、原本の破棄が認められるようになりました。
(ただし、スキャン保存ができるのは、契約書や請求書などの取り引き関係書類のみ)

データとして保存することができれば、紛失のリスクを軽減でき、書類を探す手間を省くことができます。そして何よりデータのため保管場所が不要になり、時間も労力も減らすことができます。

また、今までは要件を満たすスキャナーで保存しなければなりませんでしたが、スマートフォンやデジタルカメラで撮影したデータもOKになりました。

どうしたら電子帳簿に切り替えられる?

便利なスキャン保存ですが、実は勝手にスキャン保存に移行することはできません。

必ず所定の手続きを行いましょう。

今回は、個人事業主が来年2020年1月1日からスキャン保存を開始すると想定して、申請スケジュールを確認してみます。

①スキャン用の機器選定

まずはスキャンするための機器を揃える必要がありますが、要件が決められています。

・書類部分の解像度が200dpi以上
・赤、青、緑の階調が256階調以上
・フルカラーで撮影可能

といった要件を満たすスキャナーや複合機、デジタルカメラを用意する必要があります。

もっとも重要なのは「フルカラー」であるということです。一部の書類ではモノクロでの保存も認められていますが、取り引きに関連する請求書や領収書はカラーで保存しなければならないためです。

②タイムスタンプなどの要件を満たすシステム導入

導入の障壁でもあったタイムスタンプですが、最近では一部の会計ソフトと連動したシステムも登場しており、以前に比べて取り入れやすくなっています。

また、市販の会計ソフトを導入することで、添付書類である「電子計算機処理システムの概要を記載した書類」の添付が不要になります。

一般財団法人日本データ通信協会が認定するシステムについては、概要欄などに認定されたシステムである旨を記載していることが多いため、合わせて検討してみると良いかもしれません。

③社内規定の整備

電子帳簿保存法においては、正しく運用され、書類に不備・不正が起きないよう社内でルールを作成して、税務署からお墨付きをもらう必要があります。

社内で作成するルールは、以下の要件を満たさなければ、税務署は認めてくれません。
・相互けんせい
→1人で申請・承認を行わないようお互いにチェックできる人員を決めましょう
・定期的なチェック
→管理者によって正しく運用されているかチェックする体制を作りましょう
・再発防止策
→不備が起きたときに、原因究明や改善を検討できる体制を整えましょう

上記のような要件を盛り込んだ「事務処理規定」を作成しますが、インターネット上には参考例も掲載されていますので、税務署や顧問税理士に相談しながら進めていくと漏れを防ぐことができます。

国税庁が掲載している「適正事務処理規程」のサンプルがありますので、作成の際に参考にしてみてはいかがでしょうか。
国税庁|適正事務処理規程

※社内規定の整備の特例:小規模企業者の特例

社内規定の整備については、「小規模企業者の特例」が設けられています。

小規模企業者とは、常時使用する従業員が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の事業者を指します。

この小規模企業者の特例を使うことができれば、「定期的なチェック」に税務代理人を選定することで、先程の要件のうち、「相互けんせい」について不問となります。

つまり、顧問税理士に定期的なチェックをお願いすれば、社長が1人のような会社やフリーランスの方でも導入ができます。

税務代理は、税理士のみが行うことが出来る独占業務です。普段から税理士に依頼している場合には、当該税理士が税務代理人に該当します。

④業務フローの構築

社内のルールが作成できたら、従業員・職員にルールを徹底させるための教育・マニュアルつくりです。

一度作成してしまえば、新しく雇用をしても同じように運用できるので、規定も遵守された体制を維持することができます。

申請期限は、スキャン保存を始める3カ月前! 逆算して事前に税務署や担当税理士に相談を

電子帳簿保存法に基づくスキャン保存を始める場合には、スキャン保存を始めようとする日の3カ月前までに所轄税務署の税務署長宛に申請を行わなければなりません。

今回の例にあてると、9月30日までに以下の2点を準備します。
国税関係書類の電磁的記録によるスキャナー保存の承認申請
(リンク:国税庁HP「国税関係書類の電磁的記録によるスキャナー保存の承認申請」)
・添付書類

添付書類とは、使用するシステムの概要や操作説明書、事務処理の手続き方法(適正事務処理規定)などの申請書類の内容を補填する資料が必要になります。

国も積極的に電子帳簿保存法の普及を進めており、税務署および国税庁で専門の事前相談窓口を設置しています。各国税局の電話相談センターでも相談に乗ってもらえるので、申請に万全を期すためにも、相談窓口を積極的に利用していきましょう!

承認後の運用にも注意!? 受領後の「制限」に引っかからないようにこまめにスキャン保存をする習慣をつけよう

税務署から承認を得たからと言って、そこで終わりではありません。

正しく承認を受けた社内ルールのもとで運用されるよう、率先して管理・チェックを行っていきましょう。

承認されるルールにもよりますが、契約書や請求書など受領後すみやかにスキャン保存を行い、タイムスタンプを付与して、必要な入力事項を入力することを要求しています。

特に、個人事業主など自分で書類を受け取り、自分でスキャンを行う場合には、書類受領後から約3営業日以内にタイムスタンプを押すことと定めています。

不備が多いと、せっかくスキャン保存をした書類も、確定申告上で経費性を証明する書類として認めてもらえない可能性もあります。

「ある程度溜め込んで一気に処理しよう」と考えている方は、注意してくださいね。

規制緩和後、スキャン保存申請数は増加傾向! 今のうちに導入を検討した方が良いかも!?

今回は、電子帳簿保存法のスキャン保存のメリットと手続きについて解説をしていきました。

近年では、積極的な規制緩和が進んでおり、導入する企業が増えているのが実情です。

事業において「経営管理」は重要ですが、本業を疎かにするわけにはいきません。いかに効率的かつ効果的に進め、事業を進めていくことに時間を費やすことができるかという判断は非常に大事と考えています。

一方で、社内ルールの整備や変更を行う際には、事業規模がまだ比較的小規模なうちは検討もしやすく、導入への障壁も少ないかと思います。

今回取り上げた電子帳簿保存法のように、様々な国の制度や民間サービスにもアンテナを張ることで、抱えている課題解決につなげていきましょう。

文=菊地 啓哉
編集=内藤 祐介

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PROFILE
齋藤雄史

税理士/公認会計士
宮城県仙台市出身。高校卒業後、進学資金を貯めるため、新聞販売店に勤務。その後、地元の簿記専門学校に進学、東日本大震災同年の2011年公認会計士試験合格。合格後、新日本有限責任監査法人福島事務所勤務。
法律の世界に魅せられロースクールに進学し、同時期に板橋区にて会計事務所を開業。
ITやクラウド対応を武器に顧客開拓に成功し、20代〜30代をはじめとする多くの起業家から厚い信頼を得ている。

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