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”面白い”が全ての原動力。海外からも注目される高品質イヤホンの秘密【final細尾満・後編】

唯一無二の存在として多くのコアファンを持つ、高級イヤホン・ヘッドホンのブランド「final」。

その企画・制作から販売までの全ての工程を担うS’NEXTの代表取締役社長・細尾満氏は、もともと工務店の現場監督、フリーランス、コンサルティングなど、今の業界とはまったく異なる畑で仕事をされていました。

アントレnet Magazine編集部では、細尾氏を2回にわたってインタビュー。

前編では、過去を振り返りながら今の細尾さんが形作られたルーツを探索。

後編となる今回は、同社の設立当初から世界に注目されるブランドに至るまでのストーリーとともに、finalの技術が結集された45万円もするイヤホンはどのようにして完成し、なぜ多くの人が求めるのか、その秘密に迫ります。

プロフィール:細尾満
S'NEXT株式会社 代表取締役社長
大学卒業後、建築系上場企業に入社し、現場監督の責任者として勤務。

退職後、フリーランスとしてデザイン設計やコンサルティングなどを行う。紆余曲折しながら、S'NEXT設立のメンバーとして参加。前社長の故高井金盛氏の後任として同社代表取締役に就任。

やりがいを求めて、優秀な人材がfinalに集まるワケ

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--- final前社長の高井さんから、S'NEXT設立のお話がきたときは、どのような心境でしたか?

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細尾さん
正直ビックリしましたね。S'NEXTは、もともとiPhoneのコネクターなどを製造するアメリカのメーカーで、その分野では世界で2番目に大きい会社でした。その子会社として設立されたのです。

しかし、一方で自社の新事業がうまくいかず、社内では苦労をされていたようです。

高井は親会社とは関わりなかったのですが、その新事業の立て直しに専門家として経営陣に加わりました。「デザイン経験」があって、「プロダクツの製造」を熟知し、なおかつ「コスト管理」に理解がある、その条件に当てはまるということで私が高井に呼ばれました(笑)。

---高井さんにとって、まさに細尾さんが理想の人物だったというわけですね。S'NEXTを日本で設立してから、最初はどのような事業をされていたのですか?

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細尾さん
最初はテレビのスピーカーを製造するビジネスを行っていました。

もともとその技術があったので、大手の家電メーカーに納品していたのですが、テレビ業界の不振や納品から支払いまでの期間が長いということから、別のビジネスを模索していたんです。

---そこでイヤホン・ヘッドホンビジネスに行き着くんですね。

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細尾さん
はい。最初は大手メーカーのイヤホンやヘッドホンの製作を受託する事業として始めました。しかし、この業界はスピーカー(テレビ)業界と比べてビジネス規模が小さく、単価も安いので苦労の連続だったんです。

そのとき「じゃあ自社で高品質・高価格のブランドをつくって、地位を築いたほうがいいんじゃないか」という話になり、その案が通って内製するようになりました。

---自社製造となると、設備や人材で苦労をされるイメージがありますが、中でも人材はどのように獲得していったのですか?

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細尾さん
独立独歩のやり方で進めていったら、自然と人材が集まるようになりました。

というのも、イヤホンやヘッドホンを制作する会社の多くは、中国などの海外へ製造を丸投げしてしまうことが多いのですが、我々はコアな部分を自分たちでつくります。このコアの部分というのは、技術的な面で一番やりがいのあるところです。

その独自の方向性が「S'NEXTという会社は、なにやらおもしろいことをやってるみたいだぞ」という噂が業界内で徐々に知れ渡って、大手企業の技術者がやりがいを求めて次々に弊社へ来るようになりました。

さらにイヤホン、ヘッドホン業界とは違う畑で仕事をされていた能力が高くかつ個性的な人が集まるようになりました。もっともつくりがいのあるコアな部分を自社で製造しようと舵をきったことで、優秀な人材に恵まれていったのだと思っています。

自分なりの論理的思考が、クリエイティビティを開花させる

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---能力が高くて個性的な人を束ねて製品づくりを進めるにあたって、会社ではどのような風土をつくりあげたのでしょうか?

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細尾さん
基本的には社員の主体性に任せています。

社長である私もそうですが、自分自身で試行錯誤して、能動的に仕事をするようにしています。

成功した前例をそのまま再利用するのではなく、「これは前のものと同じでよいのか?」と常に自問自答を繰り返しています。

なので弊社では「前の担当の人がやっていたからその慣習に従ってやる」といったことはありません。

「行動の一つひとつに対して、自分なりの論理を持って動く」という風土づくりをしています。

---finalの製品はほかの製品とは一線を画す、圧倒的なライブ感のある音が特徴だと思うのですが、それらを生み出すクリエイティビティは自分なりの論理に沿った思考からきているのでしょうか。

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細尾さん
その通りです。さらにいえば、弊社でクリエイティビティが求められるのは、製作サイドだけではありません。

クリエイティビティというのは、膨大な量の情報を管理し、それを基に分析をして論理立てていけば、どんな製品や仕事でも生み出すことができると私は思っています。

たとえば、スーパーのレジ打ちでも、効率的にさばく方法を考えたり、ミスをしないように仕組みをつくったりなど、作業的な仕事にもクリエイティビティを取り入れることができる。全てのクリエイティビティは、そうした情報の分析によって生まれるのです。

だから我々は制作におけるクリエイティビティの向上はもちろんのこと、製造過程や営業など直接製作に関係ないと思われる現場にも、クリエイティビティの思考を求めています。

「そろばんをはじく前に、”おもしろい”かどうかが重要」。斬新なアイテム発想の真髄はここにあり!

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---45万円のイヤホンという今までにない高価格帯の製品は、何がきっかけで誕生したのですか?

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細尾さん
弊社の商品は、原理的に正しいことを徹底的に追求することをコンセプトにしています。

それを前提に、さらに”おもしろい”ということが社員や協力者をひきつけるのに重要であると思っています。

---なぜおもしろさを求めるのでしょうか?

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細尾さん
せっかく仕事をしているのですから、おもしろいことをやりたいじゃないですか(笑)。

おもしろいことは、何もないところからつくっていくもの。苦労もともないますが、だからこそやりがいがあるんです。

例えば45万円のイヤホン『LAB Ⅱ』は、じつは3Dレーザーでカットしたり、表面の凹凸を削るのに少々危険な薬剤を使用したりと、かなり手間がかかる製造工程を経てつくられます。

そうやってできあがった製品のクオリティの高さに「これは素晴らしい! おもしろい!」と思ったわけですが、その製造を快く受け入れてくれる工場がありませんでした。

そりゃ危険なことはやりたくないですからね(笑)。逆にいえば、だからこそ他社では真似がしづらく、『LAB Ⅱ』は唯一無二の商品になり得たのです。

---なるほど。45万円となると、やはり富裕層がメインターゲットなんですか?

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細尾さん
よくいわれますが、日本では富裕層というよりイヤホン・ヘッドホンのマニアに好評です。ニッチな分野には必ずその分野にとても詳しいマニアが存在すると思うので、そこにうまく刺さったのだと感じています。

また感度の高い外国人からもご購入いただいています。特にフランスで受け入れられたことには驚きました。

---最後になりますが、今後はどのようなビジネスを展開したいですか?

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細尾さん
直営店を持ちたいですね。やはりブランド作りの一貫として店を運営することは大切だと思うので。

また、おもしろいコンテンツはあるけれど、きちんとしたバックヤードが整っていない会社が多いので、彼らを支える仕組みをパッケージとして提供することにも興味があります。

会社としては、私がいなくてもうまく機能して維持できるような組織にしたいですね。社員全員が自ら考えて自分たちで行動する、いわゆる今のドーナッツ型組織をより強固なものにしていきたい。

そのうえでfinalを確固たる世界基準のオーディオブランドに昇華させたいと思っています。

---壮大なビジョンがあるんですね。今回はありがとうございました!

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2017年11月20日

PLOFILE

岡安大輔さん(35歳)
吉井広宣さん(38歳)
吉井竜一さん(41歳)

(株)TMO/千葉県船橋市
左から竜一さん(長男)、大輔さん(三男)、広宣さん(次男)。
父は厩務員(厩舎で働く従業員)、竜一さんは現役騎手、広宣さんは元厩務員という競馬一家。
大輔さんが創業した(株)TMOを広宣さんも手伝う。
事業内容はSIMフリー携帯電話、飲食事業、競馬事業など。

VOL.184
競馬一家に育った3兄弟。ダービー優勝の夢を追う

バラバラになった家族の絆。
会社と馬で取り戻す

が高校の頃、上の兄が騎手としてデビューしました。強かった。
重賞レースに勝ち続けて、地方競馬の夢舞台、東京ダービーも確実視されてたんですよ。でも直前で馬が故障して欠場。それが悔しくて。僕は憧れの騎手にはなれず、見習で入った厩務員も合わず、すぐに脱走。でもずっと思ってました。
今度は馬主になって競馬の世界に戻ってくるんだ、自分の馬で東京ダービーに挑戦するんだって。

 20歳の時、厩務員だった父親が失踪しました。もともと自由人、ふっといなくなるのは日常茶飯事でしたが、この時は本気の失踪。後に残ったのは金利を含めて6000万円の借金。兄が建ててくれた家は借金のかたに取られ、吉井家の暗黒時代です。皆バラバラ。花形騎手の兄の迷惑になってはいけないと、借金は僕が背負い込むしかなかった。全額返済まで7年かかりました。
 
どうやって返したか?
1日20時間働きました。

その頃「日銭の仕事には限界がある」と気づいたことが起業のきっかけです。

 2番目の兄と久しぶりに温泉に行った時のこと。「やっぱり競馬はいいね」という話になって、馬主になるという20年越しの夢に向かってスイッチが入りました。それから2年、本業で稼いだお金で、先月ついに馬を買ったんです。
当然、上の兄に乗ってもらいたい。2番目の兄も誰より競馬に詳しいですから、会社の一員として競馬関連の事業を任せています。会社を作る時から「いつか家族で」という青写真がありました。競馬は僕が育った場所であり、家族が人生を共にする場所。それを取り戻すために、です。

 照準はもちろん、東京ダービー。たとえ兄が取れなくても、騎手の養成学校に通っている兄の息子に目指してもらうつもり(笑)。

しつこいんですよ、僕の夢は。



構成・文/東 雄介 撮影/刑部友康、阪巻正志
アントレ2017.夏号 「1人では決断できなかった 私と家族の独立物語」より

2017年11月20日

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