100万人に1人の人材になる方法を、皆さんは知っていますか?
2013年に発売され、ロングセラーとなっている『藤原和博の必ず食える1%の人になる方法』という本で紹介されている、この「100万人に1人の人材になる方法」。
100万人に1人とは、スポーツで言うとオリンピックのメダリスト級。この著書で勧められているのはまず「100人に1人の人材」になること。
そしてその「100人に1人の人材」レベルを3つ掛け合わせて、100万人に1人の人材になるというものです。
今回お話を伺ったのは、アクション女優の佃井皆美さん。
仮面ライダーシリーズなどの出演で知られる佃井さんは、まさに芝居×アクションという、自らの特技の掛け合わせで活躍されています。
今回は佃井さんのキャリアを伺うと共に、過去の出演作について、そして芝居で大切にしていることについて伺いました。
佃井皆美(つくい・みなみ)さん
女優・アクション女優
ジャパンアクションエンタープライズ所属
18歳でジャパンアクションエンタープライズに所属し、芝居やアクションの技術を磨く。2013〜2014年放送の『仮面ライダー鎧武/ガイム』では持ち前の身体能力を活かし、変身前と変身後のスーツアクターを両方担当した。
現在、舞台・ドラマ・映画などを中心に多方面で活躍中。
「ビートライダーズ」な中学時代を経て、アクロバットな舞台女優へ
―佃井さんのキャリアについて伺っていきたいと思います。アクション女優として活躍されていますが、小さい頃から体を動かすのが好きだったのでしょうか?
そうですね。小学校2年生から、安室奈美恵さんの影響を受けてダンスをしていました。そのおかげで柔軟性が鍛えられて、今の活動にも役立っています。
ちなみに成績も、体育が1番良かった気がします(笑)。
中学時代は吹奏楽部でパーカッションを担当していたのですが、ダンスが好き過ぎて部活の仲の良い子たちと一緒にダンスユニットを作ったりしていました。
まるで『仮面ライダー鎧武』の「ビートライダーズ」(劇中に登場するストリートダンスに興じる若者たちの集団)のような中学時代でしたね。
―劇中で佃井さんのダンス見たかったです…! どのような経緯で女優を目指そうと思ったのでしょう?
中学くらいの時から、芸能界に興味がありました。
そこで中学2年生の時に大手芸能事務所のタレントオーディションを受けてみたのですが、自分はダンス以外(人前で話したり、歌ったり)は本当にダメだということに気がついたんです。
そんな時に母から「舞台で踊っている姿が、1番輝いていると思う」と、アドバイスを受け、そこで「舞台に上がること」を初めて意識しました。
そして高校は、演劇科のある学校へと進学。主にミュージカルを中心に学んでいました。役者としての経験はこの高校時代からですね。
―高校卒業後、18歳でジャパンアクションエンタープライズ(以下、JAE)に所属されています。なぜJAEに所属することになったのでしょう?
高校3年の時に高校を卒業して芸能界に入るか、ダンスを勉強するために海外留学をするか、迷っていました。
結果的に芸能界へ進むことを決めるのですが、当時は大手芸能事務所の養成所に通いながらオーディションを受けていました。
オーディション会場には綺麗な人も、芝居がとても上手な人もたくさんいて。その中で戦って役を勝ち取っていくためには、何か「自分の武器」を作らないと、と思ったんです。
―その武器が、アクションだったということですね。
はい。
数ある女優さんの中で、もし「舞台の上でアクロバットな動きをする女優さん」がいたとしたら、私めっちゃ嫉妬するなって思ったんです(笑)。
ならば自分がそんな女優になればいいんじゃないかと。そんな時に出合ったのが、アクションに力を入れているJAE(当時はジャパンアクションクラブ)でした。
アクションは表現方法の1つ。役者として自分を「セルフプロデュースする」という視点
―JAEに入所してからはアクションの技術を磨いていったのでしょうか?
最初はJAEの養成所に1年通い、お芝居の基礎からマット運動、時代殺陣、現代殺陣、スタント、ダンスなどアクションに必要な基本的なスキルを取得していきました。
アクションは表現手段の1つ。仮面ライダーを48年支えた巨匠、金田治がこだわるもの
―その後は舞台を中心に、映画やドラマなど多方面で活躍されていますね。これまで演じてきた中で印象的な役はなんでしょう?
演じてきた役は全部印象に残っていますが『仮面ライダーW』で演じた、イナゴの女/ホッパードーパントはなかなか強烈でしたね(笑)。
ゴスロリの格好をしてイナゴを食べる怪人、という変わった役だったんですが、私、虫が本当に世界一苦手なんですよ。
役が決まって、衣装合わせのタイミングでいきなり「イナゴの佃煮って食べられます?」って聞かれて。これで「食べられません」って言ったら役を降ろされちゃうんじゃないかと思って、反射的に「食べられます!」って言って(笑)。
その役ではカラコンをして芝居をしていたんですが、そのカラコンが度なしだったんです。
私は近眼なので、コンタクトに度が入っていないと何も見えません。度なしカラコンのおかげで幸いにも(?)周りがなんにも見えない状態で芝居をしていたんです。
もしイナゴがハッキリと見えていたら、絶対食べられていなかったですし芝居どころじゃなかったかもしれません(笑)。
―イナゴの佃煮って「ザ・虫」な形していますからね(笑)。他にはありますか?
仮面ライダー関連で言えば、やはり『仮面ライダー鎧武/ガイム』で演じた湊耀子(みなと・ようこ)/仮面ライダーマリカですね。
やはり1年近く同じ役を演じるという経験がなかったので、TVシリーズが終わって5年ほど経ちましたが、自分の中にずっと残っている感じはします。
きっとこの先も自分の中に居続ける、大切な役ですね。
後は、ついこの間まで舞台をやっていた『デルフィニア戦記』のリィという役はとても印象的です。
小説原作の舞台なのですが、私自身もともと小説を読んでいた、いちファンだったんです。特にリィが好きだったこともあり、オファーがあった時は運命的なものを感じました。
舞台化も今回で3回目を数え、これからもさらに一緒に歩んでいけたらいいなと思うキャラクターです。
―ここまで伺ってきた役は全てアクションが映える、ある意味で「佃井さんらしい」役だなと思ったのですが、役を演じるにあたり心がけていることはありますか?
役者として大切にしていることは、自分を「セルフプロデュースする」という視点です。
「アクションが得意な女優」としてこれまで活動してきましたが、先程お話した通り、アクションは表現方法の1つに過ぎません。
単純な体力・筋力だけなら私よりももっとすごい役者さんがたくさんいる中で、自分をどう差別化していくか。その視点を持って芝居に臨むようにしています。
『W』の時も『鎧武』の時も、『デルフィニア戦記』にしても、自分の演じる役の人間性や思考をトレースした上で「その役ならこう動くよね」というアクションができるよう心がけています。
―佃井さんならではオリジナリティですね。
そもそも私は昔から「みんなと一緒」が嫌なタイプだったんです(笑)。
だからこそ、自分が持ちうるさまざまな個性や能力をかけ合わせ、時に新しいスキルを取得して役に成りきる。
そうして「自分にしかできない役・芝居」が生まれ、作品を見てくださった方に何かを届けられたら嬉しいですね。
私にしかできないことを極めたい。佃井皆美が掲げる、もう1つの夢
―佃井さんの今後の展望について教えてください。
女優としてもっと活動の幅を広げていきたいですね。舞台もアクションも大好きなんで、求めていただけることは本当に何でもやっていきたいです。
一方で、高校卒業の時からのもう1つの夢である、海外への挑戦も実現していきたいですね。
以前ニューヨークに3週間ほど滞在していたことがあるのですが、ブロードウェイミュージカルなど、本場のパフォーマンスにとても衝撃を受けました。
それと同時に「私はこの場所で、どの程度できるんだろう? アクションを武器にどこまで戦えるんだろう?」と思っている自分もいて。
だからこそ近々本格的に、海外へ行きたいんです。
きっと上手くいかないこともあるかと思うんですが「海外に挑戦した」という経験は残ります。その経験が、芝居もアクションもさらに極めていくために必要な糧になるんじゃないかと思っています。
―自分のパフォーマンスへの飽くなきハングリー精神がまさに佃井さんらしいですね。最後に、これから自分のキャリアを選択していこうと思っている読者へ、何かメッセージをいただけますか?
私はこれまで、自分のやりたいことと自分の心がときめいたことを信じてやってきました。
もちろんそれで大変な思いをすることもありましたが、全ては自分の選択した道ですから後悔はしていません。
皆さんもきっと独立・起業だったり転職だったり、それぞれの人生の岐路に立つ場面って必ずあると思うんです。
その時に人のアドバイスを聞いて動くのもいいですが、最終的には「自分がどうしたいか」で判断できるといいのではないでしょうか。
人からのアドバイスを真に受けすぎると、成功しても失敗しても人のせいにできてしまう。
だからちょっと怖いかもしれないけれど、人のせいにしない選択をしてみる。人のせいにしない選択が、本当の意味で自分の人生を生きる第1歩になるのではないかと、私は思います。
私もがんばります、一緒にがんばりましょう!
取材・文=内藤 祐介
写真=鈴木 雅矩