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現役を引退しても応援してくれるファンを獲得できるか【元J リーガー・千代反田充】

現役を引退しても応援してくれるファンを獲得できるか【元J リーガー・千代反田充】

今の仕事から離れ、新しい職場に行く時ほど不安なものはありません。

転職にしろ、独立・起業にしろ、その選択が必ずしも「成功する」という保証はないからです。

ですが、若いうちからの地道な努力は今後の仕事の成功も呼び込むと、今回お話を伺った元プロサッカー選手の千代反田充さんは言います。

千代反田さんは、プロ選手として12年間ものサッカー人生を歩んだ後、セカンドキャリアとして国内大手企業であるアサヒビール株式会社の営業として活躍されています。

今回はそんな千代反田さんのプロサッカー選手としてのキャリアを伺っていくと同時に、自身の経験から考える、新たな仕事で成功するための秘訣を伺いました。

<プロフィール>
千代反田充(ちよたんだ・みつる)さん

1980年、福岡県生まれの元プロサッカー選手。

東福岡高校時代には、インターハイ、全日本ユース選手権、高校選手権の制覇に貢献。高校サッカー史上初の3冠を経験する。

筑波大学進学後は、2001年から2年間、全日本大学選抜に選出。2002年に出場した全日本大学サッカー選手権大会では、大会ベストDF賞を受賞。

大学卒業後は2003年にJ2リーグのアビスパ福岡に入団し、翌年には攻撃的センターバックとしてレギュラーに定着。2005年にはディフェンダーながら7得点を記録し、チームのJ1リーグ昇格に貢献した。

2007年にアルビレックス新潟に移籍し、ディフェンスリーダーとして守備陣を統率。2010年には名古屋グランパスに移籍し、同年のJ1リーグ制覇に貢献した。

2012年にはジュビロ磐田に移籍し、2013年に入団したJ2リーグの徳島ヴォルティスでも同年のJ1リーグ昇格を経験。そして、2014年シーズン後に12年間のプロ生活から引退した。

2016年4月にはアサヒビール株式会社に入社。現在は、東京統括支社東京支店課長補佐として営業職を務めている。

元Jリーガー・千代反田充が、現役よりもキャリアチェンジを選んだ理由

ー2003年から12年間Jリーガーとして活躍し、現在は営業として働いている千代反田さん。現在に至るまでの経緯を教えてください。

千代反田さん
サッカーを始めたのは小学生の頃ですね。高校はサッカーの名門である東福岡高校でプレーしていました。

チームの中にはプロになるようなレベルの高い選手がたくさん揃っていて、そういった環境の中でプレーしていたこともあり、自然と「僕もプロのピッチに立ちたい」と思うようになっていったんです。

実際に卒業時にはJリーグからオファーをいただきましたし、同級生も数人プロチームに入団しました。

ただ、僕は各チームからのオファーをお断りして、大学で実力を磨いてからプロを目指す道を選択したんです。

当時の僕の実力では、プロの世界で生き抜くことは難しいと思っていましたから。

ーでは、大学を卒業してからプロの道に進まれたんですか?

千代反田さん
はい、おかげさまで地元のアビスパ福岡から声をかけていただき、プロサッカー選手としてのキャリアをスタートさせることができました。

入団してからは、チームがJ2リーグだったこともあり、早い段階で試合に起用していただけるようになりました。

そうやって若いうちに試合経験を積むことができたので、12年間もの長い間、プロの世界で生き抜くことができたんだと思います。

自分の実力でこんなにも長くプロサッカー人生を歩むことができたのは誇りですし、この12年間のキャリアには非常に満足していますね。

ーサッカー選手で、現役として10年以上も第一線でプレーできるというのは相当すごいことだと思います。引退はどのあたりから意識されていたのでしょうか?

千代反田さん
2014年シーズンが終了し、翌年の契約更新がなくトライアウトを受けた後くらいですかね。

当時は現役を続けたい意志は強かったです。個人の能力としてはまだまだ日本のトップでやれる感覚もありました。ただ、望むような高いレベルでのオファーはありませんでした。また、「就職するなら35歳がギリギリのラインだろうな」という漠然としたイメージも持っていたので、引退を決めたんです。

正直、現役を続けようと思えばもっとプレーできたと思いますが、年齢を重ねれば重ねるほど、その後のキャリアチェンジが難しくなりますからね。

ー確かに34歳から、社会人経験なく就職活動となると、普通に考えたらかなり厳しいですよね…。では、引退してからはすぐに就活を?

千代反田さん
いえ、引退してから1年間は、名古屋グランパススクールで中学生のコーチをしていました。

2010年から2年間、名古屋グランパスでプレーしていたこともあり、当時GM(ジェネラル・マネジャー)で後に社長になった方から、コーチをやらないかとお誘いがあったので、挑戦してみることにしたんです。

ですが、現役の頃からサッカーとは違う世界で活躍したいという思いがありました。コーチを経験したことで、それを改めて強く思うようになったんです。

こどもたちの成長を見ることもやりがいのある仕事ではありましたが、自分の新しいチャレンジを選びました。

なので、就活を始めたのは2015年の12月からですね。

ーすでにサッカーの仕事に就くという選択肢はなかったのですね。それからはどのような就活をされたのですか?

千代反田さん
いろんな転職サイトに登録して、紹介していただいた企業に面接を受けに行くという状態が3カ月くらい続きましたね。

その中で、就活をサポートしてくれていた日本プロサッカー選手会やJリーグから、アサヒビール株式会社が社員を採用をする可能性があるという話を聞いたんです。

しかし、35歳という年齢は対象外でした。とても残念だったのを覚えています。ただ、そのままでは終わらず、Jリーグの方からアサヒビールに面接の練習をさせて頂けないかとお願いしてくれました。

それで同社に問い合わせたところ「面接をお受けします」と、直接お会いする場を設けていただけることになりました。

そして面接を終え、数日が経った頃に人事部の方から連絡がきたんです。「もう1度、ぜひ面接しましょう」と。

それで再び面接をした後に、2016年4月から正社員として採用していただけることになったんです。

本当に、まさかの内定で信じられませんでした。日本代表やJリーグにもたくさんのスポンサー企業がありますが、そんな中でアサヒビールが元Jリーガーの僕を採用するなんて感謝しかありません。

個人的なファンを作る。新しい職場で成功するための事前準備

ー現在のお仕事内容について教えていただけますか?

千代反田さん
今は営業として、担当している酒屋さんや飲食店さんに足を運んで、弊社の商品を使ってもらえるように活動して回っています。

例えば、その店舗が他のビールメーカーを使っているのであれば、アサヒビールに替えてもらえるように営業する。

もともと弊社のビールを扱ってくれている場合は、その後も継続して使ってもらえるように良好な関係づくりをしていきます。

ービジネス業界はもちろんですが、営業に慣れるまでにはだいぶ苦労されたのではないですか?

千代反田さん
いやぁ、この仕事を始めて3年目になりますが、今でもだいぶ苦労していますよ(笑)。

もともとガツガツ営業するような性格でもないですし、人とうまくコミュニケーションを取るのは難しいなって思います。

営業で必要となるコミュニケーションスキルと、サッカー選手同士のコミュニケーションスキルは違いますしね。

現役時代は、常に競技だけに集中できるような衣食住の環境を追求していたので、その妨げになるような予定や行動、人との接触はできるだけしないような生活をしていました。

なので、チームメイトや監督・コーチを含め現場の30人程度の人としかコミュニケーションは取らなかったですし、ましてやサッカー界以外の人と交流することは、ごく一部でした。

当時はそれが当たり前の生活だと思っていたんです。

ですが、一般の企業ではたくさんのお客さまとコミュニケーションを取らないと成果は上げられない。

加えて、新たな仕事を生むには、さらに多くのお客さまや友人とのつながりが重要なんだと学びました。

そういう意味では、少し大袈裟ではありますが、サッカー選手はビジネス業界の常識とはかけ離れた生活を送っているんだなと感じたんです。

その常識の違いに、僕のように現役を引退してから気づく人が圧倒的に多い。

なので自分の経験をもとに、現役選手の気づきになれるような講演活動を始めたんです。

今年の6月に、知人を通して初めて講演する機会をいただきましたが、今後もそういう意識づけというか、ビジネス業界について「知る」機会を増やしていきたいですね。

ー現役中はサッカー以外の仕事でお金を稼ぐイメージはしにくいと思うので、引退後の働き方を知る機会が増えるのは現役選手にとっては大きいですよね。では、現役中からセカンドキャリアに向けてやるべきことは何だと思いますか?

千代反田さん
自分のファンを作っていくことが非常に大事だと思います。

チームではなく選手個人のファンは、たとえ自分が他チームに移籍しても応援し続けてくれますし、引退してからの活動もファンとして支えてくれるかもしれない。

そういった存在を、いかに若い時から作っていけるかが重要だと思いますね。

それに、これはサッカーだけじゃなくビジネスにも言えることだと思います。

会社に勤めているにしろ、独立・起業しているにしろ、「あなたなら信用できる」「これからも応援したい」というあなたのファンを増やすことで、そのビジネスの収益につなげることができます。

例えば、選手の頃から自分のオリジナル名刺を作って、1人1人に配りながらあいさつをするといった地道な活動を積み重ねることが、今後の仕事で成功するための近道だと思いますね。

チャレンジ精神を保ち続ける。新たなステージで輝くために

ーそれでは、千代反田さんの今後の展望をお聞かせください。

千代反田さん
もう入社して3年目なので、高いモチベーションで結果を出せるように取り組んでいきたいですね。

今後どうなりたいとか、そういった具体的な目標は立てられてはいませんが、今は目の前の仕事に全力を尽くすことだけを考えています。

その先に、何か見えてくるものがあると思うので。

ーサッカー関連の仕事を増やしていく、という考えはあまりないですか?

千代反田さん
今のところはないですね。

その可能性をゼロにすることはありませんが、まずは本業の方で一人前になりたい。その思いの方が今は強いです。

もちろん、僕がサッカー関連の活動をすることによって、弊社とそのサッカー関連の活動に携わる企業の両社ともがwin-winの関係を実現できるようであれば、積極的にやっていきたいですね。

今年始めた講演活動も、その一環だと思っていますので。

ーありがとうございます。最後に、新たな道に進もうとしている人にメッセージをいただけますか?

千代反田さん
はい。とにかく、いろんなことにチャレンジしてほしいと思います。

僕の場合は企業に就職する、ということが大きなチャレンジではありましたが、人によってチャレンジする場面というのは異なり、各シーンでたくさん訪れると思うんですね。

ですから、そういった場面で臆することなく挑戦していく気持ちを持ち続けてほしいです。

もし失敗してしまっても、その経験は必ず次の挑戦に活きてきます。

なので1度の失敗で気持ちがくじけないように、常にモチベーションを保ちながら人生を歩んでいってほしいと思います。

(取材・文=佐藤主祥 https://twitter.com/kazu_vks

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