自分で仕事をすると、どうしても避けられない税金問題。副業で得た収入があれば所得税や住民税などの税金を納めなくてはいけない、確定申告をしなくてはいけないということは知っていても具体的にはよく分からないという方も少なくないでしょう。副業で収入があった際、住民税をどのような条件の下、納税することになるのか、まとめて解説します。
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https://entrenet.jp/magazine/45334/
副業をした際の「20万円ルール」と住民税
副業をするうえで、会社員の場合には副業で得た所得が20万円を超えなければ、確定申告を行い、所得税を納める必要はありません。これを、通称「20万円ルール」と呼びます。ここでいう20万円とは、副業の収益ではありません。収益より必要経費を引いて残った利益の金額です。
必要経費を計上するため、所得が20万円以下となったり、20万円以内になるようセーブしたりして副業をしている人も少なくありません。その場合、確定申告は不要です。
なお、「20万円ルール」が適用されるのは所得税に対してだけです。住民税については、副業の利益とは関係なく納税しなくてはいけないので、注意しましょう。
所得税と住民税は納税先が違う
所得税と住民税では、税金を管轄している行政機関がそれぞれ異なります。確定申告が必要かどうかの違いは、申告をする先や税金額の計算方法の違いによって生じるものです。
所得税
所得税は国に納める国税で、税務署の管轄です。所得税の申告や納税をするためには、所轄の税務署で確定申告を行い、1年間の所得税の金額を決めなくてはいけません。
所得税の金額は【所得金額 × 税率 = 所得税】のように課税対象となる所得額に応じた税率をかけて算出します。日本の所得税は累進課税制度を取っています。所得が多くなるにつれて税率も高く設定されているのです。
住民税
住民税とは、住所のある都道府県や市区町村に対して納める地方税の一種で、各市区町村がその管轄を行っています。
住民税は所得税とは異なり、前年の1月1日から12月31日までの1年間の収入を元に算出され、翌年の6月からの1年間に納付します。そのため、当年の所得有無に関わらず納税しなくてはいけません。
住民税の計算方法は、「所得割」「均等割」「利子割」「配当割」「株式等譲渡所得割」の5つの要素からなっており、以下のように求められます。
所得割とは、給与所得から所得控除を差し引いた課税所得に、10%の税率をかけて算出します。配当控除、住宅ローン控除、ふるさと納税が含まれる寄附金税額控除などの税額控除がある場合には、算出された所得割より差し引かれます。
均等割とは一律に固定の金額で、所得金額は関係ありません。都道府県・市区町村によって異なりますが、通常5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)です。なお、東日本大震災を踏まえ、地方団体が実施する防災費用を確保するため、2023(令和5)年度までの10年間、市町村民税・道府県民税ともに500円ずつ引き上げられています。
利子割・配当割・株式等譲渡所得割など、特定所得があった際にはその金額を加算し算出されるのが住民税です。
参照:個人住民税|総務省
副業の所得を役所に申告する必要がある
副業の所得を役所に申告する必要があるかどうかは、各市区町村の役所に確認しましょう。
副業の所得が20万円を超えている場合
副業の所得が20万円を超えていると、住民税とは関係なく確定申告が必要になります。確定申告をすると、税務署から役所に住民税額の連絡が行われます。そのため、自分で申告をする必要はありません。
副業の所得が20万円を超えていない場合
副業の所得が20万円を超えていない場合、副業分の所得についての所得税はかかりません。そのため、確定申告は必要ありません。ただし、住んでいる市区町村の役所に対して所得を申告する必要があります。申告は確定申告と同様3月頃に手続きが必要となり、金額に応じた住民税の納税が必要になります。
副業をした際の住民税納税までの流れ
副業をした際、どのような流れで住民税を納税するのでしょうか。副業の収益が20万円を超えている場合とそうでない場合の全体の流れを説明していきます。
副業の収益が20万円以下の場合
1年間の副業の収益が20万円を超えていない場合、所得税の確定申告は不要です。ここでいう「所得」とは、「収益ー必要経費」なので注意しましょう。
例えば、副業での収益が100万円であっても、経費に90万円かかっていたとしたら「100万円ー90万円=10万円」という計算になり、所得は10万円になります。そのため、確定申告は不要となります。
ただし、確定申告が不要になり、税金を納めなくても良いのは所得税のみです。住民税は納税しなくてはいけないため、気を付けてください。
住民税の申告書類は市区町村の役所のWebサイトからダウンロードできます。対象となる所得は前年度の1月1日から12月31日の間の報酬額です。申告期限は確定申告と同じスケジュールなので、期日に間に合うように手続きを進めましょう。
参照:令和5年度住民税の申告について|東京都新宿区 ※東京都新宿区の場合
副業の収益が20万円以上の場合
1年間の副業の収益が20万円を超える場合、確定申告をして所得税を納めなくてはいけません。確定申告は「白色申告」もしくは「青色申告」のどちらかを行いましょう。
税務署に確定申告をすると、所得に関する情報は税務署より市区町村に共有され、住民税が確定されます。そのため、自分で住民税の申告を行う必要はありません。
市区町村により確定された住民税は、勤務している会社に伝えられます。伝えられた住民税は、給与から自動的に天引きされる特別徴収の仕組みで納税します。住民税の金額の変化により副業をしていることが会社でも分かるため、副業をする際は会社に隠れて行わず、必ず事前に副業をしても良いか就業規則を確認するようにしましょう。
副業をした際の住民税納税まとめ
副業で得た所得が20万円を超えるか否かで所得税・住民税の納税有無が変わることをご紹介しました。まとめると以下の表のようになります。
住民税の納税方法
住民税の納税方法には、毎月の給与から天引きされる「特別徴収」と納付書で納める「普通徴収」の2つの納税方法があります。
それぞれの納税方法について、詳しく解説します。
特別徴収
一般的な住民税は、「特別徴収」で納税します。
特別徴収とは、会社が社員の毎月の給与より天引きして住民税を納める方法です。納税額は市区町村から会社に直接伝えられるため、納税者本人が申告や納税の手続きをする必要はありません。
会社員であれば、給与明細で住民税の納付額を確認できます。
特別徴収は、正社員・アルバイト・パートなどの雇用形態に関わらず行われています。給与が納税者の手元に届く前に住民税を徴収できるため、確実な納税が可能となります。そのため、国からも、積極的に特別徴収を行うよう通達されているようです。
普通徴収
「普通徴収」とは、毎月の給与から天引きされるのではなく、納付書を使って納税者本人が住民税を納める方法です。納税書は一般的に、6月に6月・8月・10月・1月の年4回分がまとめて送付されます。
普通徴収では、毎月、天引きされる特別徴収と違い、3ヶ月分の住民税をまとめて納税します。そのため一回あたりの納税額も増えることから、納税額が多く見えるので注意が必要です。
コンビニエンスストア・銀行・郵便局などの窓口で納税できるほか、口座自動引き落としの利用なども可能です。
住民税は副業の所得に関わらず納税が必要
「副業をしていても所得が20万円を超えていなければ税金はかからない」と、誤った情報が出回っています。しかし、それは所得税に限った話で、住民税は所得に関わらず納税しなくてはいけません。確定申告をしない場合には自身で市区町村に対して申告が必要になります。期間は確定申告の時期と変わらないため、遅れることのないようきちんと対応して納税をしましょう。
こちらの記事では、副業をする会社員向けに確定申告の書き方や経費にできるものなどをご紹介しています。
https://entrenet.jp/magazine/27086/
<文/ちはる>