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必要なのは“やり抜く力”。ある男が45万円のイヤホンをつくる会社の社長になるまで【final細尾満・前編】

45万円のイヤホン。いったいどんな音が出るか想像できますか?

これを製造販売する「final」は、高級イヤホン・ヘッドホンブランドとして不動の地位を築き、国内外で注目を浴びている日本のオーディオメーカーです。

今回取材したのは、同社の代表取締役社長 細尾満氏。イヤホン・ヘッドホンといった音響業界ひと筋で働かれていると思いきや、このfinalの社長になるまでは、まったく別の畑でお仕事をされていました。

なぜ、細尾氏はfinalの経営者に就任したのか。経営者になるまでの経緯から、その源流を探ります。

プロフィール:細尾満
S'NEXT株式会社 代表取締役社長
大学卒業後、建築系上場企業に入社し、現場監督の責任者として勤務。

退職後、フリーランスとしてデザイン設計やコンサルティングなどを行う。紆余曲折しながら、S'NEXT設立のメンバーとして参加。前社長の故高井金盛氏の後任として同社代表取締役に就任。

仕事における信頼とは「最後までやり抜くこと」

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---学生時代や社会人なりたての時期はどんなことをされていたのですか?

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細尾さん
学生時代はバックパッカーでいろんなところを巡って過ごしていました。大学を卒業してからは某工務店にアルバイトとして就職。現場監督の仕事をしていました。

入社して短い期間で責任者に就任したので、正社員の登用も早く、自分でも驚いていました(笑)。仕事の量はアルバイトも正社員も変わらず多く、毎日長時間働いていたんですが、仕事をこなしても次々に仕事が降ってくるんです。

あまりにも仕事量が多すぎて、あるとき『なんでこんなに仕事が途切れずに受注できるのか』と疑問に思ったんです。

そしてじっと先輩社員たちの仕事を見ていたらだんだん分かってきました。

先輩社員たちは『いただいた仕事は最後までやりきる』という姿勢で仕事をしていました。

この積み重ねが信頼を築いて、営業をしなくても次々に仕事の依頼が来るのだとわかったんです。ここで学ばせてくれた先輩たちはみんな、今でも私の師匠です。

徹底的に分析して、納期は必ず守る。フリーランスで信頼を勝ち取るために必要な2つのポイント

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---工務店のアルバイトから社員、責任者へとステップアップされた細尾さんですが、その後フリーランスとして活動されたんですよね?その経緯はなんだったのでしょう。

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細尾さん
工務店で働いているときに、社外の人から独立の声がかかったんです。

それを機に退職して、フリーランスとして広告代理店へ企画を提案する会社のゴーストライターをやったり、キッチン関係の仕事の責任者を任されたりと、さまざまなジャンルの仕事をするようになりました。

---工務店の責任者からフリーランスを経て、どんどん異なる業種のお仕事をされていたんですね。

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細尾さん
そうですね。他にも雑貨屋の家電製品の企画とか、アニメーションの製作などもやりましたし、本当にいろいろな仕事をしてきましたね(笑)。

---なぜ、そうした経験したことのないような仕事を受けようと思ったのですか?

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細尾さん
仕事を受ける、というよりも目の前の仕事をやっていたら発注元の方に「あれもできる? これもお願いしていい?」といろいろ頼まれるようになりまして…。

それをどんどん受けていったら、結果的にいろいろな仕事をするようになっていったんです。

---同じ発注元の方にさまざまなお仕事をお願いされるのは、簡単なことではないと思います。

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細尾さん
たしかに、クライアントとの信頼関係は築けていましたね。

その信頼関係を勝ち取るために、気をつけたポイントが2つあります。

まず1つめは、とにかく締め切りまでに必ず仕事を間に合わせるということ。会社の肩書きがないフリーランスでは、とにかく仕事の納期とクオリティの高さが必須です。

これは後から聞いた話ですが、お世話になっていたクライアントや先輩たちから、「細尾は必ず納期を守るからすごいよな」と言っていただいたことがあります。

そうした信頼が次の仕事、その次の仕事を生むんだと思います。

---なるほど。納期をとにかく守ることは信頼を勝ち取る上でとても重要なんですね。続いて2つめのポイントはなんでしょう。

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細尾さん
2つめのポイントは、分析の重要性です。

さまざまなお仕事をすることが増えていったときに、あることに気づきました。それはどんな仕事でも、細かく分析する工程ややり方は一緒だと気づいたんです。

それから、受けた仕事はまず分析をすることから始めます。

「この仕事で達成すべきことはなんなのか?」
「クライアントは私に何を求めているのか?」
「どうしたら期待以上の成果を上げることができるのか?」

こうした分析を徹底的に行い、自分なりの法則を見つけ、あとは必ず締め切りに間に合わせるように仕事を進めていきました。

正直、私は自分のことをそこまで賢い人間だとは思っていません。

それでもこの2点を押さえて仕事をしていったら、次から次へと仕事をお願いされるようになった。自分なりのやり方でも、一生懸命にやればできるようになるし、人から評価されるようになるんだなと感じました。

そして仕事をやればやるほど、徐々に周辺の人たちに認知され、口コミでさらにその周囲の人へ伝わっていきました。このフリーランスのときに、オーディオ関連の仕事もさせていただいたので、この時の経験が今に生かされているのかもしれませんね。

赤字会社の立て直しを依頼され、過去の経験と分析力でV字回復を果たす

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---信頼を勝ち取るための2つポイントをおさえつつ、フリーランス時代で特に成果をあげた大きな仕事はありますか?

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細尾さん
ある日、以前に勤めていた会社の社長から『とある会社の経営を手伝ってくれないか』と相談を受けました。その会社は100年以上もの歴史があり、システムキッチンをオーダーメイドするハイエンドのインテリアメーカーです。

当時は業績が不振で、赤字経営の状態でなんとか立て直してほしいとのことでした。最初は断りましたが、納得のいく報酬がもらえるということでOKしてしまったんです(笑)。

この会社では、主にコンサルタントとして仕事をしました。

---さまざまな仕事で培ってきた経験を活かして、コンサルタントとして参画したんですね。具体的にはどういった内容の業務をしていたんですか?

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細尾さん
営業マンがお客さんと対等な立ち位置で話せるように、マニュアルとなる「営業トーク」を作成したり、外で営業する優秀な社員をショールームに待機させ、集めたお客さんを彼らが接客するようにしたりなど、コンサルティングを務めた内容はかなり多岐に亘ります。

そのほか、プラン作成のプロフェッショナルが若い社員に付いて助言をしてもらうなど、新人のフォロ―などもしました。

そうした努力の甲斐あって、業績の底上げを図り、黒字に転換して成果をあげることができました。正直、このときはうれしかったですね。

その会社のコンサルタントを務めている時に、finalの元社長である高井氏から今の会社の「S'NEXT」の新事業立ち上げのお声がけをいただきました。finalへ入社するきっかけはこの高井元社長の鶴の一声だったんです。

---ありがとうございます。後編は、細尾氏がS'NEXTに参画して、国内外から注目を浴びるように成長するまでの現在のお話を伺います。45万円のイヤホンの秘話もお楽しみに!

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2017年11月20日

PLOFILE

岡安大輔さん(35歳)
吉井広宣さん(38歳)
吉井竜一さん(41歳)

(株)TMO/千葉県船橋市
左から竜一さん(長男)、大輔さん(三男)、広宣さん(次男)。
父は厩務員(厩舎で働く従業員)、竜一さんは現役騎手、広宣さんは元厩務員という競馬一家。
大輔さんが創業した(株)TMOを広宣さんも手伝う。
事業内容はSIMフリー携帯電話、飲食事業、競馬事業など。

VOL.184
競馬一家に育った3兄弟。ダービー優勝の夢を追う

バラバラになった家族の絆。
会社と馬で取り戻す

が高校の頃、上の兄が騎手としてデビューしました。強かった。
重賞レースに勝ち続けて、地方競馬の夢舞台、東京ダービーも確実視されてたんですよ。でも直前で馬が故障して欠場。それが悔しくて。僕は憧れの騎手にはなれず、見習で入った厩務員も合わず、すぐに脱走。でもずっと思ってました。
今度は馬主になって競馬の世界に戻ってくるんだ、自分の馬で東京ダービーに挑戦するんだって。

 20歳の時、厩務員だった父親が失踪しました。もともと自由人、ふっといなくなるのは日常茶飯事でしたが、この時は本気の失踪。後に残ったのは金利を含めて6000万円の借金。兄が建ててくれた家は借金のかたに取られ、吉井家の暗黒時代です。皆バラバラ。花形騎手の兄の迷惑になってはいけないと、借金は僕が背負い込むしかなかった。全額返済まで7年かかりました。
 
どうやって返したか?
1日20時間働きました。

その頃「日銭の仕事には限界がある」と気づいたことが起業のきっかけです。

 2番目の兄と久しぶりに温泉に行った時のこと。「やっぱり競馬はいいね」という話になって、馬主になるという20年越しの夢に向かってスイッチが入りました。それから2年、本業で稼いだお金で、先月ついに馬を買ったんです。
当然、上の兄に乗ってもらいたい。2番目の兄も誰より競馬に詳しいですから、会社の一員として競馬関連の事業を任せています。会社を作る時から「いつか家族で」という青写真がありました。競馬は僕が育った場所であり、家族が人生を共にする場所。それを取り戻すために、です。

 照準はもちろん、東京ダービー。たとえ兄が取れなくても、騎手の養成学校に通っている兄の息子に目指してもらうつもり(笑)。

しつこいんですよ、僕の夢は。



構成・文/東 雄介 撮影/刑部友康、阪巻正志
アントレ2017.夏号 「1人では決断できなかった 私と家族の独立物語」より

2017年11月20日

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