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お金が理由で才能が埋もれるなんて、悲しすぎる! ピアニスト・佐野主聞さんの目指す世界

お金が理由で才能が埋もれるなんて、悲しすぎる! ピアニスト・佐野主聞さんの目指す世界

ピアノは、世界的にも非常にポピュラーな楽器です。

皆さんも自分で弾くことはなくても、例えば音楽の授業や合唱祭で、耳にしたことはあるでしょう。

そんなピアノを弾くことを「仕事」にしている人、それがピアニストです。

今回お話を伺ったのは、佐野主聞さん。

佐野さんは日本最高峰の芸術大学、東京藝術大学でピアノを学び、卒業後はフリーランスのピアニストとして独立。現在はブロガー、YouTuberとしても活躍をされています。

なぜピアニストでもありながら、ブログやYouTubeなどでも活動をされているのでしょうか。

今回は佐野さんとキャリアを振り返るとともに、ピアニストとして食べていくことの難しさと、挑戦について伺いました。

<プロフィール>
佐野主聞さん
ピアニスト/ブロガー/YouTuber

北海道札幌市出身。
2011年に東京藝術大学を卒業。
その後フリーランスのピアニストとして活動を始める。

2009年に始めた自身のブログ「SHIMON’s BLOG」は、約12年間更新中。ピアノにまつわるノウハウから佐野さんの日常までが綴られている。

2013年にはYouTubeチャンネル「佐野主聞 Official Channel」を開設。ピアノの練習風景やレッスン風景を配信している。

「ピアノが大好きで、実力がある」だけでは、上手くいかない――。佐野さんの前に立ちはだかった“ある壁”

――現在ピアニストとしてはもちろん、ブロガー・YouTuberとしても活躍されている佐野さん。そもそもピアニストという仕事は、具体的にどんなことをされているのでしょう?

佐野さん
ピアニストの仕事とは、主に「演奏」と「レッスン」の2つの活動によって成り立っています。

「演奏」とは、ソロリサイタルを開いたり他の音楽家の方たちと共演したりして、お客さんに演奏を聴いてもらう活動。

一方「レッスン」はいわゆる“音楽教室”のような形で、生徒さんにピアノの指導を行っています。

そう聞くと、どちらも何となくイメージしやすいかと思いますが、「ピアニスト」という言葉だけを聞くと、やはり「演奏」の活動の方を想像される方が多いかもしれません。

しかし演奏だけで食べていけるピアニストは、本当にごく一部なんです。大半のピアニストは演奏とレッスンを両立しながら活動しているんですよ。

――ピアノという楽器は比較的ポピュラーなように感じますが、その道のプロが具体的にどのように活動しているのか、意外と知らないものですね……。佐野さんはなぜピアニストになろうと思ったのでしょうか?

佐野さん
こどもの頃からピアノが好きだったんです。

それからピアニストになろう、と心に決めたのは、14歳の時のことでした。

あるコンクールで演奏している最中に、自分の演奏を通してお客さんと感情の共有ができた経験をしたんです。

その時に「自分はピアニストになる存在なんだな」と、自分の中で腑に落ちたんですよね。

そして高校を卒業後は、東京藝術大学に進学。大学を出てからは晴れてフリーランスのピアニストとして、演奏活動やレッスンのお仕事を始めようと思ったのですが……。

そこからがとても大変でしたね。

――と、言いますと?

佐野さん
「ピアニストとしての仕事を取ってくる」ことって、めちゃくちゃ難しいんです。

僕が大学を出た頃は、今のようにSNSや動画配信なども発達していたわけではありません。

当時は大学時代の知り合いから演奏する場所に呼んでいただいたり、人伝てに仕事をいただいたりすることがほとんどでした。

そしてゼロから仕事を探すとなると、見られるのは実績です。

海外の国際コンクールにエントリーして賞を獲得し、いわゆるピアニストとしての「箔をつける」ことができれば、その後の仕事につなげやすくなる。

しかしそもそも海外の国際コンクールにエントリーするためには、海外へ行くための潤沢な資金と時間が必要となります。

僕や僕の家は、特別お金持ちだったわけではないので、その点ではかなり苦労しましたね。

――ピアニストとして活躍するよりも前、下積みや実績を積む段階ですでに、ある程度のお金が必要だったと。

佐野さん
念の為に補足しておくと、お金がたくさんあって、たくさん海外に行くことができれば、プロのピアニストになれるというわけではありません。

お金だけがあればどうにかなるというわけでもなく、当然実力の壁もあるので。

ただ逆に、実力だけがあればいいかというとそうでもない。実力だけでいわゆる「食べていけるピアニスト」になれるかどうかは、また別の話なんです。

そこにはどうしても運であったり、本人や家の財力などが少なからず関わってくるので。

当時の僕はというと、そこまで潤沢にお金があったというわけでもなく……。

ピアニストとしてだけでは十分に食べていけませんでしたから、アルバイトも掛け持ちながら生活をしていました。

――アルバイトとピアニスト、二足のわらじ生活をされていたんですね。

佐野さん
はい。

それにピアニストである以上、ピアノを置いて音を出して練習できる環境に住まないといけませんから……。

広さと防音性が担保された部屋を、都内周辺で探すとなると、家賃もかなりかかってしまいます。

固定費でお金がなくなってしまうので、アルバイトをしていても、食費は月6000円で切り詰めなければならないような、なかなかハードな生活をしていました(笑)。

加えて、当時の僕は「お金に対する理解」が、今よりもずっと甘かったんですよね。

“ピアニスト・佐野主聞”としてだけではなく、1人の人間として活動を応援して欲しい。ブログやSNS、YouTubeに力を入れる理由

――どういうことでしょう?

佐野さん
あくまで一例ですけど、交通費の有無とか、そういうところですね。

例えば東京で演奏の仕事があったとします。僕はいま札幌に住んでいるので、交通費・宿泊費を出していただけるかというのは、非常に大きな問題です。

以前までの僕は、そういった部分の取り決めが非常に甘くてですね……。

演奏の仕事に行ったら、ギャランティが全て交通費・宿泊費に消えてしまった、なんてこともありました(笑)。

レッスンの仕事でも、料金設定に対する認識が甘かったんです。

自分がどんな価値を提供していて、どれくらいの金額をいただくのが妥当なのか。きちんと考えきれていませんでしたね。

――ピアニストに限らず「フリーランスの値付け問題」は、難しい課題だと思います。佐野さんはどのようにその状況を変えていったのでしょう?

佐野さん
ある時『お金2.0』(※)という本を読んだことで、自分の中でお金への価値観が変わったんです。

以降は演奏とレッスン、いずれも料金体系を本格的に見直しました。

ピアニストとして、演奏とレッスンという仕事の軸は変わっていないですが、そのアプローチの仕方はそれ以降かなり変わっていきましたね。

具体的にはSNSやYouTubeに力を入れ始め、オンラインでの活動が増えていったんです。

昨今、音楽業界では新型コロナウイルスの影響で、さまざまなアーティストさんがオンラインライブを実施していますが、僕は4年も前から生放送という形でオンラインライブのようなものをしていました。

他には練習している様子をそのまま配信したり。

動画やブログなど、さまざまな手段で自分ができることを見つけて、発信してきました。

※「お金2.0 新しい経済のルールと生き方」佐藤航陽氏著(幻冬舎)。2017年に発売。

――佐野さんといえば、ブログにも注力していらっしゃいますよね。ピアニストでありながら、ブロガーであるというのは非常に珍しいと思います。

佐野さん
ブログは12年くらい前から始めてはいたのですが、結局今の形に落ち着いたのは2015年ごろでした。

TwitterをはじめとするSNSよりもより踏み込んだ内容について書けるのが、ブログのいいところだなと思っていて。

https://sanoshimon.com

――なぜTwitterやブログ、動画などに注力されるようになったのでしょう?

佐野さん
自分という存在を世の中に残したいからです。

もちろんCDを出したり、コンサートをしたりと「ピアニストとしての佐野主聞」としての軌跡も残したいのですが、Twitterやブログでは「一個人としての佐野主聞」を発信することができます。

ピアニストとして、実力でファンを獲得することももちろん大切です。

ですがその上で、僕という人間の“人間性”をより深く知っていただけたら、より深く応援していただけるんじゃないかと思うんです。

応援してくださる方がいてこその僕なので、ピアノを軸とした自分のいいところは、なるべくたくさん発信していきたいですね。

“才能や実力があれば、食べるのに困らない世界”を作っていきたい。

――ピアニストに限らず、フリーランスは応援してくださる方がいてこそ成り立ちますからね。それでは佐野さんの今後の展望について教えてください。

佐野さん
ここまで「ピアニストとお金」を中心に、純粋なピアノの実力だけではなく、発信力や営業力もピアニストにとって大切なスキルだ、という話をしてきてなんなんですが……。

本来であれば「実力がちゃんとあれば、ピアニストとして食べていける世界」であって欲しいんです。

先程もお話しした通り、僕自身、若い頃にはかなりお金で苦労をしてきました。

だからこそ僕は“ピアニストとしての実力だけではない力”を身につけなければならなかったのですが、本当は実力を認められて、演奏、もしくはレッスンの仕事をしてしっかりと食べていける環境があった方がいいに決まっています。

お金のせいで素晴らしい才能が埋もれてしまうなんて、こんなに悲しいことはありません。

だからいつかは音楽家のための給付金の支援をしていきたいなと思っています。

才能や実力があれば、食べていくのに困らない世界を実現すること。

もちろんこれからもピアニストとしての活動は続けていきますが、そのための仕組み作りにも力を入れていきたいと思います。

――最後に、読者へのメッセージをいただけますか?

佐野さん
独立・起業を目指すなら、2つのことを実践するといいかもしれません。

1つ目は、時間を作ること。

時間がいっぱいある人って最強だと思うんです。興味のあるものを試したり、新しいスキルを身につけることができたり。

あなたがもし独立・起業を考えるなら、まずはどうにかして時間を作ってみてください。どうしても仕事が忙しくて時間を作る余裕がない人は、先に今勤めている会社をやめてしまうのも、1つの選択肢かもしれません。

そして、もう1つ。

これは具体的にどんな仕事で独立・起業をするか決めかねている人にお話したいのですが「自分にとって嫌じゃないこと、もしくはやっていて楽しいなと思えるもの」を洗い出してみてください。

その中にきっと、独立・起業のヒントが隠れていると思います。

僕でいうと、ブログやYouTubeの更新って、決して嫌なことではないんです。毎日コツコツ継続して何かをすることって、苦手ではなくて。ピアノの練習も同じです。毎日弾かないと腕がなまってしまいますから。

もちろん人によっては「何かを継続するのって、ちょっと苦手……」という方もいらっしゃるかとは思います。

だからこそ自分にとって嫌ではない/楽しいものを見つけて続けてみると、そんなに苦痛にはならないんじゃないかと。

コツコツ積み重ねたものは、必ず自分の力やスキルとなって自分に返ってきます。もし独立・起業を検討するなら、ぜひこの2つを試してみてください!

取材・文・編集=内藤 祐介
文=ミキマキ

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