近所で見かけるコインランドリー。スタッフも見かけないし、手離れの良いビジネスのように見えがちです。しかし、コインランドリーは手放しのきく不労所得ではなく、むしろ手をかけなくてはいけない事業なのです。さらに初期投資が大きい分、失敗したときのリスクも大きいため、安易に手を出すべき事業ではありません。そんなコインランドリー経営に失敗してしまうのには、どのような理由があるのか、回避のためのポイントはあるのか。これらを理解し、コインランドリー経営を成功に導きましょう。
こちらの記事では、コインランドリーをフランチャイズで開業する方法やメリットなどを解説しています。
https://entrenet.jp/magazine/36539/
コインランドリー経営って結局儲かるの?
せっかくコインランドリー経営を始めても、儲からなければ意味がないですよね。そもそも、どのような状態になったらコインランドリー経営の失敗といえるのでしょうか。
コインランドリー経営の失敗=膨大な初期投資費用を回収できずに廃業すること
こちらの記事では、コインランドリー経営の失敗を「膨大な初期投資費用を回収できないまま廃業してしまうこと」と定義します。
コインランドリー経営は初期投資として何台もの業務用洗濯機や乾燥機の用意が必要になります。そのため、膨大な初期投資が必要です。
集客が思うようにいかず、初期投資を回収できないまま資金不足に陥って廃業してしまうと、大きな損失を出してしまうことになります。失敗したときのリスクが大きいコインランドリー経営は、初期投資が回収できる資金計画を練って、運営するようにしましょう。
フランチャイズと自力独立で比較:コインランドリー経営にかかる費用
コインランドリー経営をフランチャイズで開業するのと自力で開業する場合では、かかる費用にどのような違いがあるのでしょうか。実際の金額はフランチャイズ本部、エリア、事業規模によって異なりますが、どのような項目の費用がかかるのか、ご紹介していきます。
初期費用
【フランチャイズ】
フランチャイズ契約をすると、およそ1500万円~3000万円ほどで開業できるといわれています。内訳としては、以下になります。
- 加盟金
- 機器購入費(洗濯機・乾燥機など)
- 内外装工事費
- 物件取得費
【自己独立】
自己独立をすると、加盟金などがないため安くなると思いきや、開業するには2000万円~4000万円ほどの費用がかかります。
- 機器購入費(洗濯機・乾燥機など)
- 内外装工事費
- 物件取得費
それぞれの費用は、どのようなものなのでしょうか。
機器購入費(洗濯機・乾燥機など):店舗運営のために必要な機器をそろえるための費用
内外装工事費:フランチャイズの場合は本部の方針に合った雰囲気に工事が必要
物件取得費:店舗運営をするためのテナントを取得するための費用。所有している物件を活用する場合には不要になります。
フランチャイズは加盟金がかかるものの、フランチャイズ本部が提携している企業から不動産が取得できたり、内外装工事ができたりするため相場より低価格に抑えられることがあります。また、研修も複数の店舗合同で受けられたり、フランチャイズ本部にあるノウハウを提供してもらえたりするため、自費でセミナーなどを受講するのと比較しても、安く開業できるのです。
ランニングコスト
【フランチャイズ】
フランチャイズの場合、ランニングコストは30万円〜70万円ほどで、内訳は以下のようになっています。
- 人件費
- 賃貸料
- 水道光熱費
- 雑費
- ロイヤリティ
【自力独立】
フランチャイズに対して自力で独立した場合、50万円ほどのランニングコストがかかります。
- 人件費
- 賃貸料
- 水道光熱費
- 雑費
それぞれの費用は、どのようなものなのでしょうか。
賃貸料:テナントを借りる費用
水道光熱費・雑費:洗濯や乾燥にかかる費用
ロイヤリティ:ブランド名を使う対価としてフランチャイズ本部に支払う費用
ランニングコストも、フランチャイズに加盟している方が自力で独立するよりも安く済む可能性があります。水道光熱費などは変わらないものの、フランチャイズ本部と提携している不動産会社よりテナントを借りている場合には、その分安く済ませられる可能性があります。
さらに、場合によってはフランチャイズ本部からインストラクターとしてスタッフを派遣してもらえることもあります。本来であれば、1から店舗でスタッフ教育しなければならないところを、本部から派遣されたスタッフであれば教育不要であるため、結果的に人件費カットにつながります。
まずはフランチャイズの仕組みを知りたい方は、下記記事を参考にしてください。
https://entrenet.jp/magazine/25755/
コインランドリー経営の失敗例には2パターンある
コインランドリー経営が失敗に終わる原因は、主に2つのパターンがあると考えられます。自身でコインランドリー経営をする際の参考にしてみてください。
ニーズを読み違えていませんか
コインランドリー経営の失敗例、1つめのパターンは、「ニーズを読み違えている」かもしれないということです。
1.自己所有地にこだわり、コインランドリーに合わない立地で開業してしまう
自己所有地があると、その土地や建物を活用してコインランドリー経営がしたいと思ってしまいますよね。自己所有地を活用すれば物件の取得費用が必要なくなるため、開業資金を抑えてコインランドリー経営が始められます。
しかし、自己所有地の活用にこだわりすぎてしまうと、ニーズの合わない場所で開業することになってしまいます。ニーズの合わないところではどれだけ良いサービスを提供しても、なかなかお客さんが入ってこないでしょう。
2.ニーズを考えず、設備投資に多額の費用をかけて回収できない
ニーズを考えずに設備投資をしてしまうと、「実際には必要なかった」「もっと規模が小さくても良かった」と余分な費用をかけてしまうリスクがあります。
必要以上に投資をしても、ニーズがなければ投資額の回収ができません。どのようなニーズがあり、それに応えるためにはどれほどの投資が必要か十分に検討したうえで初期投資額を決定しましょう。
3.収支見込みが甘く、借入金を返済できない
コインランドリー経営に限らず、事業を運営するためには収入だけではなく支出も発生します。どれほどの支出がありそうなのか見込み額を算出しておかないと、借入金の返済と合わせて支払いきれなくなってしまうリスクがあります。
資金計画はどれほどの費用が最初にかかりそうなのかはもちろん、運営していく中でどれほどの支出がかかるのかも考えておきましょう。フランチャイズ加盟の場合は、似たようなエリアでの収益シミュレーションを算出してもらうなど活用すると安心です。
4.差別化ポイントがなく、リピーターを確保できない
ほかの店舗やブランドではなく、自社を選んでもらうためには「ここでコインランドリーを利用したい!」と思ってもらえるような差別化ポイントが必要です。
他店と差別化できるポイントがないと、せっかく来てもらったお客さんもリピーターにはなかなかなってはくれません。また来たいと思えるようなサービスや配慮のある運営を目指しましょう。
放置していませんか
コインランドリー経営の失敗例、2つめのパターンは、「放置している」かもしれないということです。
1.コインランドリー=不労所得だと勘違いして、自己流の経営(放置しっぱなし)にしてしまう
コインランドリー経営は不労所得ではありません。「洗濯機や乾燥機を置いておけば、勝手に利用してもらって収益が得られる」と思ったら大間違いです。
店舗や機械の清掃、店舗の監視、集客など、コインランドリー経営でやるべきことはたくさんあります。開業してそのまま放置してしまわないようにしましょう。
2.集客に力を入れていない
コインランドリー経営は、開業したからといって自動的にお客さんが来てくれるものではありません。しっかりと集客に力を入れ、新規顧客やリピーター獲得に励みましょう。
3.完全無人/24時間体制になっている
コインランドリーの中には完全無人の24時間の店舗があります。「スタッフがいない方が良い」「24時間営業はありがたい」などの声があるのも事実です。
しかし、まったく人けがないと犯罪が起きやすくなるなどのリスクもあります。定期的に点検に行くなどして、完全放置にならないように注意しましょう。フランチャイズ加盟の場合では、本部が24時間サポートを行っている場合もあります。
4.清掃が行き届かない
コインランドリーは清潔感が命です。せっかく洗濯物をきれいにしに行くのに、清掃が行き届いていないと利用する気が失せてしまいます。きれいさっぱりとお客さまに利用してもらえるよう、清掃を徹底して行い、常に清潔感のあるきれいな店舗作りをしましょう。
5.洗濯物が放置される
洗濯物が放置されてしまっているのは、防犯上よくありません。盗難被害が出てしまうリスクもあるため、定期的な点検をして、忘れ物はすみやかに回収して管理するようにしましょう。フランチャイズ加盟の場合は、本部によって異なるものの、スマホで完了時間をお知らせできるような仕組みを持つ最新の洗濯機もあります。運営後を見越して本部を検討するのも良いでしょう。
コインランドリー経営で失敗しやすい人
コインランドリー経営をしても失敗しやすい人にはどのような特徴があるのでしょうか。その特徴を4つお伝えします。
自己資金比率が低い人
自己資金比率が低い人は、その分融資を受けるなどするため、開業後は多額の借入金の返済をしなくてはいけません。利子などもついて返済額が必要以上に増えてしまうため、より一層お客さんを獲得できないと失敗しやすいでしょう。
自己所有物件の活用にこだわりすぎる人
自己所有物件の活用にこだわりすぎてしまうと、コインランドリーのニーズがない場所で開業することになってしまいます。集客のためには立地選びは重要です。自己所有物件があったとしても立地にはこだわりましょう。
片手間でできると思っている人
コインランドリー経営は不労所得ではありません。そのため、片手間でできるだろうと甘くみていると店舗運営が疎かになり、失敗につながってしまいます。
情報収集や収支計画を疎かにする人
コインランドリー経営に限らず、何か自分で事業をする際に、情報収集や収支計画は最も重要といっても過言ではありません。特にフランチャイズの場合は本部選びが成功の鍵を握ります。どこのフランチャイズと契約するべきか、十分に情報収集をして判断するようにしましょう。
コインランドリー経営に失敗しないためのポイント
コインランドリー経営で失敗しないために以下のようなポイントを押さえておきましょう。
リサーチやシミュレーションを徹底する
事前のリサーチやシミュレーションを徹底しましょう。特に収入と支出の想定は、十分に資金計画を練って確認しておくことをおすすめします。
小さく始める
「ニーズがありそうだから」といっていきなり大規模な事業を始めてしまうと、失敗したときの損害が大きくなってしまいます。まずは小さな敷地で始めるなどスモールスタートを心掛け、経営状況を見て徐々に規模を拡大させましょう。
差別化を図る
集客しやすくするためにも、差別化ポイントを作ることが重要です。ほかの店舗やブランドとどれだけ差別化できるか、お客さまに寄り添えるかでリピーター獲得率にも大きく変化が表れるでしょう。
防犯対策にも力を入れる
盗難の心配もなく安心して利用してもらうためには、防犯対策の強化は効果的です。スタッフの巡回や防犯カメラの設置などの対策をして、無人状態を作らないことから始めてみましょう。フランチャイズ加盟の場合は、防犯対策が整備されているか必ず本部に確認することをおすすめします。
開業しても放置は厳禁
開業しても放置していると、ただ洗濯機や乾燥機が置いてあるだけのスペースになってしまいます。店舗のメンテナンスや集客を徹底して行い、客足を誘いましょう。
集客に一工夫
差別化が難しいのであれば、集客に一工夫してみましょう。SNSを活用したり、次回の割引券などのサービスをつけてみるのも1つの手でしょう。また、カフェを併設するなど付加価値を提供するのも競合との差別化につながります。
フランチャイズの活用も視野に入れる
フランチャイズであれば、失敗しないためのポイントを押さえたノウハウやサポートが受けられます。自分ですべてをカバーするのに自信がない人は、フランチャイズへの加盟も検討してみても良いかもしれません。
まとめ
コインランドリー経営は手離れが良い事業と思われがちです。しかし、安心して利用してもらえる店舗は、スタッフが巡回していたり、店舗が常に清潔感があったり、防犯が徹底されていたりなど、さまざまな手が加わっています。失敗したときのリスクが大きい事業の1つでもあるので、参入するのであれば十分な資金計画などを練ったうえで開業しましょう。
<文/ちはる>