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収入よりもやりがいの”安定”を。「英雄になる」ために、ある男が選んだパラレルワークの道

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あなたが人生をかけて達成したい目標はなんですか?

この問いに即答できる人は、大人でもそう多くないと思います。

「僕、小さい頃から”英雄”になりたかったんですよ。」

インタビューの冒頭、株式会社ワールドスケープ代表取締役CEO・海保けんたろーさんは、その問いに子どものような笑顔で答えていました。

海保さんが経営する株式会社ワールドスケープは、アーティスト支援サービス「Frekul(フリクル)」の運営、人の好みをAIが理解して、未知の音楽を聴かせてくれる「Lumit(ルミット)」など、音楽に関する様々なサービスを展開しています。

実は海保さんは元々プロのミュージシャンで、現在もドラマーとして活躍しています。経営者でありながら現役ドラマー。まさに二足のわらじを履いて活躍する海保さんに今回、自身のパラレルキャリアについて、そして今の世の中に対して感じることをお聞きしました。

全ては英雄になるため。その目的のためにドラマーと経営者を選択している海保さんは、一体何を見つめているのでしょうか。

プロフィール:海保けんたろー

ドラマー / 株式会社ワールドスケープ代表取締役

1981年生まれ東京出身。
高校入学とともにドラムを始め、22歳からプロとしての活動を開始。
「キマグレン」「ハシグチカナデリヤ」「SONALIO」など数々のアーティストのサポートドラマーやバンドメンバーとして活躍する。

2011年には、音楽業界を変革するためのIT企業・株式会社ワールドスケープを設立。
音楽活動支援サービス「Frekul」や、音楽発見アプリ「Lumit」の開発運営を行っている。

現在は音楽活動と会社経営を並行しつつ活動中。
将来の夢は英雄になること。

ビジネス経験ゼロのバンドマンが起業!?プロの世界でぶつかった、音楽業界の壁

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―プロとして活躍するバンドマンだった海保さんですが、現在は経営者としても活躍していらっしゃいます。どのような経緯で現在の立ち位置になったのか、まずは海保さんの経歴について簡単に教えてください。

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海保けんたろーさん(以下、海保さん)
はい、たしかにキャリアが飛びすぎていて何がどうなって今のキャリアになったのか謎ですよね(笑)。簡単に説明します。

僕は小さい頃から有名人になりたい、ビッグになりたいという夢がありました。この夢は今現在も「英雄になりたい」という形であるんですが。

さて、そんなことを漠然と考えていた学生時代、好きだった女の子がドラムを叩いていたんです。その影響でドラムを叩き始めたんですが、だんだん上手になってくると「このドラムというスキルを使って、有名になれるんじゃないか?」と思ったわけです。

それで高校卒業後、ずっとドラマーとして活動していました。自分のバンドもやりつつ他のバンドのサポートやアルバイトもして生計を立てていました。そして2009年、念願叶ってデビューを果したんです。

―有名になりたい、という思いを実現するためにデビューするという選択をしたんですね。

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海保さん
はい、まさにその通りです。僕の場合「プロのドラマーになる」「バンドで飯を食ってく」という考えよりも「英雄になりたい」という思いが先にあったんです。

だからデビューは、そのための足がかりになると思いました。

しかし事務所に入ったものの、CDが売れなかったんですよ。テレビのタイアップを取ってCDが売れたとしても、契約上アーティスト側に入ってくる取り分があまりにも少なすぎる。

自分の周りのミュージシャン仲間に話を聞いてみたら、やっぱりみんな給与をまともにもらえていない人たちが多かった。その時に思ったんです。「ああ、この音楽業界のビジネスモデルそのものに無理があるんだな」って。

お金をきちんと稼げない状況をどうにかしようと、メンバーと話し合ったんです。ちょうど、事務所に入ってから2年程経った頃でした。

そこで「ミュージシャンがもっとお金を稼げる、こんな機能があるサービスがあったらいいのに」ってアイデアが出て、そんなサービスを探してみたんですがどこにもなかった。

「ならいっそのこと、自分たちで作ってしまおう!」と自分たちで作り上げたのが”Frekul”であり、弊社”ワールドスケープ”なんです。

ドラマーでいることも経営者でいることも、全ては「英雄になる」という目標のため。

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―バンドからいきなり起業とは、また大胆な方向転換ですね…!それまでにビジネス経験があって、そこから起業した、というわけではないんですよね?

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海保さん
はい。アルバイトはやっていましたけど、それまでは本当にバンドしかやってこなかったですし当然、ビジネス経験ゼロからのスタートでしたね。

―ビジネス経験がある方でも起業はいろいろ試行錯誤をして、満を持して起業する、という方が多いと思います。なぜそんなすぐに起業をしようと思ったのでしょうか?

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海保さん
逆にビジネス経験がなかったからすぐに起業できたということもあるかもしれませんが、むしろ僕にとってこの起業は、めちゃくちゃチャンスだと思っていたんですよ。

デビューしても”有名になる”という目標を達成するどころか、日々の暮らしでさえ怪しくなってきている現状で、この起業のアイデアを形にして成功させれば、お金や集客に困っているミュージシャンを助けることができるじゃないですか。

その時僕は「これはめちゃくちゃ英雄感出てるぞ…!イケるぞ!」とワクワクしていましたね。

―やはり「英雄になる」という目標が第1にあったんですね。

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海保さん
そうですね。だから僕の行動の全ては、英雄になるために起こしていると言っても過言ではありません。先程も言いましたが、英雄になるためにドラマーになりましたし。

それが今度は「サービスを立ち上げて会社を経営すること」に変わっただけなんです。いずれにせよ「英雄になるために」という目的からはズレていないですし、一貫しています。

―経営者になった今でも、ドラマーとしての活動は続けているんですよね。それはなぜなんでしょうか?

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海保さん
単純にドラムが好きで音楽が好きという理由もありますが、今の会社ではミュージシャンをターゲットにしたサービスを展開しています。

なので、まずは僕自身がミュージシャンであり続けて「このサービスってほんとに使えるのかな? 役に立つのかな?」と自問自答するようにしています。

ミュージシャンでありながら経営者をやることは、一見してかけ離れているように見えるかもしれませんが、実はとても密接に関わり合っているんですよね。

起業のリスクは想像以上に低い!「収入の安定」と「やりがいの安定」、どちらを選ぶ?

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―さて昨今、パラレルキャリアについてメディアなどで大きく取り上げられていますが、これからパラレルキャリアを選択していこうという人たちに対して、何かアドバイスをいただけますか?

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海保さん
パラレルキャリアを選択することは手段に過ぎません。結局のところ、自分がどういう人生を送っていきたいのか、どういう人になりたいのか。この問いにどのように答えるのかは人それぞれだと思うんですよね。

僕の場合、その問いの答えは「英雄になること」だった。英雄になるために、ドラマーになって経営者にもなった。目的を達成させるためには、2本のプロジェクトを同時に走らせていた方がいいと考えたんです。

だから結果として、パラレルキャリアという道を選びました。

もし、パラレルキャリアを選択すること自体を目的としている人がいるなら、一旦立ち止まってよく考えた方がいいと思います。

―たしかに、ただ漠然とパラレルキャリアを選択するというのは危険かもしれませんね。

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海保さん
そうですね。逆に自分の目的がしっかりと定まっていてブレない人は、どんどん挑戦するべきだと思っています。

実際はパラレルキャリアだったり起業だったりを選んだ方が幸せになる人って多いんじゃないかなと。

僕が普段からとても感じているのは、起業することって実はめちゃくちゃリスクが低いということです。

僕はビジネス経験ゼロで起業して、かれこれ7年経ちます。この7年で感じたのは、経営がうまくいかなくなっても、変な終わらせ方さえしなければ実際なんとかなります。

それにたとえ起業に失敗したとしても、今の日本においてそう簡単に餓死ってしないと思うんです。体さえ元気であればいつだって働くことができる。

そうした金銭的に自分のことを守ってくれる安全な鎖がたくさんあるのに、みんな「収入の安定」をとても重視するなあと感じています。

―起業に失敗しても、命が取られるわけじゃないですからね。

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海保さん
その通りです。人間はそう簡単に死なないと思うんです。

なら、もっと自分の本当にやりたいことをやる人が増えていってもいいんじゃないかなと思うんです。自分のやりたいことを仕事にするということは、たしかに最初は金銭的には我慢をすることになるかもしません。

しかし「やりがいの安定」は必ずあります。仕事自体が大変でも、自分を押し殺したりする必要がないから精神的には安定してくると思うんです。

―「収入の安定」と「やりがいの安定」のどちらを選ぶか、ということですね。

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海保さん
はい。今の世の中、どうしても収入だけの観点で「安定か」「不安定か」という2択を選ぶような風潮になってしまっているんじゃないかと感じています。

だからもっと「やりがいの安定」を選ぶ人たちが増えていってほしいなと、思っています。

そして「やりがいの安定」を選びつつも「収入の安定」も最低限は欲しい。そういう方にとって、どちらも実現できる可能性が高い選択肢の1つとして、パラレルキャリアがあると思うんです。

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「独立・開業」を目標に実際に起業活動を進めている方の年間密着取材、第2シーズン。開業までのプロセスや想いを中心に、苦労話や失敗談まで、リアルな姿を追いかけるドキュメンタリー。

橋爪さんご夫妻プロフィール
ご主人さまは、山梨県出身の33歳。東京の大学を卒業後、都内の新聞社に就職。その後、保育園の管理事務職に就く。体調を崩した祖父を想い山梨県へUターンするも、勤めていた保育園から、新規園の立ち上げスタッフにと声がかかり再度、東京へ。新規園が軌道に乗ったのを見届けたのち退職。2016年に山梨県へ移住し地元企業に勤めるが2017年3月末に退職し、現在は開業準備に専念。奥さまは神奈川県出身の44歳。大学卒業後は、大手学習塾、塾経営など教育業界や企業に勤務し、保育園管理事務職に。現在は山梨県内の企業で働く。ご夫婦で山梨県産のフルーツを用いたゼリーを主力商品とした6次産業での開業を予定している。

――開業時に主力商品にしたいとおっしゃっていたフルーツゼリーの開発は、その後いかがでしょうか?

ゼリーの甘さについては、99%は決まったという感じです。使用するフルーツによっては、色がゼリーに移ったり、固まり方が違ったりしてくるので、素材ごとに品質の調整をすれば完成です。

旬のフルーツを使ったゼリーの販売を考えているので、これまで開発してきた枯露柿(ころがき)・キウイ・イチゴのゼリーなどは、シーズンが過ぎてしまい、販売には間に合わなかったのが残念です。

ただ、ゼリーのベースはできているので、今後は、さくらんぼや桃などのハウス栽培によって通常より早く育ったフルーツを使用し、より完成品に近づけていこうと思っています。フルーツがハウス栽培ではなく普通に外で育てる露地栽培に移行する時期、いわゆる旬の時期までには販売できる状態にしていきたいと思っています。

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露地栽培が始まる時期は、その年の気候により若干違ってくるので、どのエリアでいつ始まるのかを地元紙で常にチェックしています。

あとは、旬のフルーツを使用したゼリーと並行して、通年販売できる商品も開発をしていきたいですね。フルーツゼリーだけにこだわらず、でも同じように地元、山梨県産のものを使うなど、地域活性化につなげられたら良いなと思っています。

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――前回、商品を入れる容器のサンプルを取り寄せたところだと伺いましたが、実物はいかがでした?

サンプルを使用してみたのですが、自分たちらしさが欠けていると感じたので、足つきタイプにこだわらず、ほかのタイプも検討してみようと思いました。

製菓材料を販売しているお店で偶然見つけた容器がイメージにピッタリだったので、これと同じだと思われる容器のサンプルと見積もりを業者にお願いしているところです。

容器が決まれば、これに合う蓋も探したいと思っています。

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――納得のいくものに出合えたようで良かったですね。難航していた物件探しはどのような状況ですか。

それが実は、最近は売り物件を見ているのです。

賃貸は、希望より広すぎたり、高かったり、そうかと思えば安いけれど古くてあれこれ工事が必要だったりしたので、借りた後に工事費などがかかるのであれば、購入してもよいのではないかと思い始めたからです。

金額は3年~5年分の賃料と同じくらいの価格帯で考えています。場所は、以前と変わらず、地元の北杜市内で探しています。

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購入物件を探し始めて知ったのですが、一定の坪数以上でないと土地の売買が禁止されているエリアがあったり、別荘地だと商売禁止のところもあるようなんです。そういう規定をクリアしていても、物件によっては購入後に木を切る必要がありそうだったり、下水を引き込むなどの工事が発生するような土地もあるので、賃貸物件探しにはなかったポイントを確認しながら探しています。

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――そうなんですね!購入物件探しは不動産屋さんに相談されたのですか?

基本的にはインターネットで検索して、良さそうな物件を見つけたら不動産屋に問い合わせたり、その近くを通るときに2人で寄ってみたりしています。出店に向いていそうな土地に「売地」という看板が立っているのを見かけたときには、その看板にある電話番号にかけてみたりしています。

購入を検討し始めたので、保健所に設備面での開業条件を聞きにも行ってきたんですよ。
菓子製造業で開業された方の開業準備ブログなんかを読んでいたのですが、実際に聞いてみようと思って。購入してから開業条件に満たない物件だったということでは困りますしね。

保健所では「ログハウス調の店舗の場合、どのような条件がありますか」と聞いてみたのですが、屋内の壁に木の凸凹があるのはNGということや、天井やお手洗などについても聞けました。

最近では、テレビのお店紹介などを見ては「こういう物件や設備で開業しているのか」と思ったりするようになりましたね。

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――そうだったのですね。賃貸物件探しのときは知人の方や開業相談をしている銀行・商工会の方々とも探していらっしゃいましたが、購入物件もみなさんとご一緒に探されているのですか?

はい。賃貸物件の時と同様に、みなさん良い物件がありそうなときは連絡をくださるので有難いですね。

銀行の方には、物件が決まったら助成金の申請などすぐ動けるように事業計画を見ていただいたりもしています。

商工会については、北杜市の商工会の開催している創業塾というものを受講する予定です。早ければ5月下旬からスタートとのことなので、どんなことが学べるのか楽しみにしています。

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「-Season2-長期密着取材! 独立開業への道365日」シリーズ
次回の更新は、2017年5月12日(金)予定。お楽しみに!

更新日:2017/4/28
文:樋口代史子 撮影:中村公泰




独立開業への道 365日 アンケート2

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以下の項目に当てはまるものにチェックを入れ、「送信する」ボタンをクリックしてください。







2017年4月28日

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起業家、経営者にとって大事なのは、世の中を見抜く力です。1つの事象をどう捉えるかで、ものの見え方も、そこから得られる情報も大きく変わります。そうした「着眼点」、実はトレーニングによって鍛えることができるのです。累計20万部を超えるベストセラーとなった『戦略思考トレーニング』シリーズでおなじみの経営コンサルタント・鈴木貴博氏に解説してもらいましょう。

いきなりですが、クイズです

Q.備長炭は木炭の中でも最高級といわれ、多くの“味にこだわる飲食店”でも使用されています。その木炭ですが、炭として火を起こす以外に、臭いを吸い取る働きがあることも知られています。では、備長炭が「炭」として売られる時と、「消臭剤」として売られる時では、どちらの方が高く売れるでしょうか?

さて、答えとその理由はわかりましたか?

クイズの答えの中に、着眼点を鍛えるポイントがある

火を起こす時によく使われる木炭というものがありますが、その最高峰として知られているのが「備長炭」です。特に、ナナカマドの木から作られた備長炭は高級品だと言われています。

備長炭はほかの木炭に比べて火力があって長持ちし、いやな臭いや煙が出にくいことから、食材がおいしく焼けると言われています。「○○産備長炭使用」などとアピールする飲食店があるのも納得です。

その木炭ですが、火を起こすのに使うだけでなく、「臭いを取る効果」があることも知られています。吸着効果があるため、炭を置いておくだけで周辺の嫌な臭いを吸い取ってくれるというわけです。

そして、その効果に着目し、炭を使った消臭剤・脱臭剤がたくさん商品化されています。薬局やスーパーでも多種多様なラインナップがあり、売られていますよね。使っている人も多いのではないでしょうか。

このように、1つのものに新たな別の用途を見出して商品化することを「用途開発」といいます。

今回のクイズは、この用途開発がポイントです。

それでは解説します!

木炭の用途として、火を起こすだけでなく消臭剤としても使えることが一般的になりました。

この事例からわかるのは、「同じものであっても、用途によって全く違う商品として売ることができる」ということです。まずはこの視点を、頭に入れておいてください。

では、備長炭を「木炭」で売るのと「消臭剤」で売るのとでは、どちらが高く売れるか。それは、たとえ最高級の備長炭であったとしても、やはり木炭として売る方が安いに決まっています。

つまり、備長炭のままで売るのが一番安く、消臭剤として売ることでさらに高く売れるようになる…というわけです。

さらに言うと、たとえば同じ備長炭のカタチを整えてきれいなパッケージに入れ、「炊飯器に入れられるご飯がおいしく炊ける炭」というふうにすれば、消臭剤よりも高く売れます。実際にそういった商品もあります。

面白いことに、同じ炭なのに用途が違うだけで売られる時の値段は全然違ってくるというわけですね。

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ほかにもある!身近な用途開発の例

保湿のために塗る「ワセリン」というものがあります。赤ちゃんから大人まで使える万能の医薬品として、薬局などで少し大きなパッケージに入れられたものがよく売られています。このワセリンが最近、「花粉症予防のために塗る薬」として売られるようになったのをご存じでしょうか。

分子構造が多少は違うらしいですが、実際はワセリンとほぼ変わらないはずです。それを綿棒で鼻の穴の粘膜に塗ることで、花粉をブロックできるということなのですが、通常のワセリンと同じような大きな入れ物に入れて売っていては、何度も買ってもらえませんよね。そこで、小さなパッケージに詰めて、1シーズンに数回は買ってもらえるくらいの使い切りサイズにし、「花粉症予防の薬」として販売しているというわけです。

これも、新しく用途を開発した1つのエピソードと言えそうです。

ほかにも、軽くて強い素材であるために戦時中にはパラシュートに使われた合成繊維が、その後はナイロンとしてストッキングなどに使われるようになった話は有名です。

また、トウモロコシ農家がトウモロコシを家畜の餌として売るよりも、ガソリンの代替になるバイオマスエタノールの原料として売った方が高く売れるようになった、という話も同じですね。

繰り返しになりますが、同じものを売るにしても用途や効用が違えば新たな市場が開拓できます。そして、同じものであってもより高く売ることができるようになるわけです。

用途開発とは、れっきとした新規事業・新商品開発のための手法です。ですが、難しいことは抜きにして、1つのものを違った角度から捉えたり、別の強みを強調したりすることで、新しい市場が開拓できたり、人とは違った商売の仕方が可能になる、ということがお分かりいただけたのではないでしょうか。

目の前のものを様々な角度から眺めてみよう

何か商売を始めようと思った時に、「世の中にない商品(サービス)で勝負したい」と考える人は多いと思います。しかし、ゼロから何かを生み出すのは簡単なことではありません。

だからこそ、既にあるものを人とは違った着眼点で見ることが大事になってきます。そうすることで、思わぬビジネスチャンスが掴めるものです。そして、今回の「違った用途に着目する話」は、その着眼点を鍛えるための1つのヒントになるのではないでしょうか。

最後に、もうお分かりだと思いますが、冒頭のクイズの答えは「消臭剤の方が高く売れる」でした。ちなみに私が知っている最も高く売られていた備長炭は、ナナカマドの素晴らしい枝振りをそのまま炭にし、無造作に花瓶に投げ込んだ「オブジェ」です。驚くことに45万円の値段がついていました。もし同じくらいの分量の備長炭を木炭として購入したら、おそらく1000円ちょっとでしょう。そう考えると、用途開発の可能性は無限ですね。


PLOFILE
プロフィール写真

経営戦略コンサルタント
百年コンサルティング株式会社代表取締役
鈴木貴博

東京大学工学部卒業後、ボストン・コンサルティング・グループに入社し、数々の大企業の戦略立案プロジェクトに従事。1999年にはネットイヤーグループの創業に取締役として参加。2003年に独立し、百年コンサルティングを創業する。大手企業の経営コンサルティング経験を元に2013年に出版した『戦略思考トレーニングシリーズ』(日本経済新聞出版社)が累計20万部を超えるベストセラーに。現在はビジネスをエンタメクイズ化する経済エンタテナーとしても活動中。『パネルクイズアタック25』(優勝)、『カルトQ』などのクイズ番組出演経験も豊富。

2017年4月27日

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多様な働き方が普及しつつある今。さまざまな仕事を同時進行する“パラレルキャリア”を選択する人が増えてきています。

今回インタビューをさせていただいた、カルロス矢吹さんは、ライター・ラジオディレクター・日本ボクシングコミッション役員・タレント・渋谷ロフトナインのブッキング担当・フォトグラファー・美術展の仕切りなど、パラレルキャリアという言葉では括りきれないほど広い領域でさまざまな仕事をしています。

1つの本業に絞らず、さまざまな仕事を同時に行う「複業」。まさに矢吹さんの働き方を表現するのにふさわしい言葉ですが、彼は今、ライターという職業をあえて自分の「本業」に決めたそうです。

なぜ、複業で活躍されていた矢吹さんが、自分の「本業」を決めたのか。そこには、あらゆる仕事をしてきた矢吹さんならではの考えがありました。

プロフィール:カルロス矢吹
1985年宮崎県生まれ。ライター、(株)フードコマ代表。

大学在学中より、グラストンベリーなど海外音楽フェスティバルでスタッフとして働き始める。以降、日本と海外を往復しながら、音楽・映画・スポーツ・ファッションなど世界各地のポップカルチャーを中心に執筆業を開始。

コンサート運営、コンピレーション編集、美術展プロデュースなど、アーティストのサポートも行う。2012年より、日本ボクシングコミッション試合役員に就任。山中慎介や内山高志ら、日本人世界チャンピオンのタイトルマッチを数多く担当。

トークライブハウスShibuya LOFT9のブッキングも担当している。著書に「のんびりイビサ」(スペースシャワーブックス)、「北朝鮮ポップスの世界」(花伝社、髙英起との共著)、「アムステルダム〜芸術の街を歩く〜」(大和書房)「NEW LONDON-イースト・ロンドン ガイドブック-」(DU BOOKS)がある。

何をやるにも“一石三鳥”を常に考える。パラレルキャリアで稼ぎ口をつかみとる方法

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―矢吹さんはさまざまな仕事を幅広くこなされていますが、現在は主にライターとして活躍されていますよね。ライターという職種に出会うまでの経緯を教えてください。

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カルロス矢吹さん(以下、矢吹さん)
大学生のとき治験(新薬の開発)のバイトをさせてもらっていたのですが、わりと暇な時間が多かったんです。その間はマンガを読んだり、ベッドでゴロゴロして時間を潰していました。そうやって過ごしているうちに、「この空き時間もったいないなぁ」と思うようになったんです。

そこでその空いた時間を使って副業で収入を増やそうと、テープ起こしのバイトを始めました。

軽い気持ちで始めたのですが、仕事をいただいた会社から、テープ起こしの文章が「読みやすい!」と評価してもらって。

そこで「何か記事の企画考えてみない?」と、声をかけていただきました。

―それからライターとして活動するようになったわけですね。

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矢吹さん
はい。ほかにも大学時代に、「イギリスの音楽フェスで、売り子が足りないから手伝ってくれないか」と、知り合いに頼まれたことがありました。

それで大学を休学してイギリスへ渡り、売り子の仕事をしていました。しかし、ただ売り子としてロンドンにいるのはさすがにもったいないなと。

そこで、当時契約していたWebメディアにイギリスの音楽フェスに関する企画を提出してみたんです。それがおもしろいということで、連載を2本やらせていただけるようになりました。

また、仕事の合間にフェスのライブも見るようにしていたので、売り子とライターと合わせて、同時に3つのことをやっていました。

―1つのことから2つ、そして3つとできることを膨らませていったんですね。

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矢吹さん
はい。こうした体験が根っこにあるので、何かやるときはほかにその仕事に関連することを3つは紐付けてやるようにしていました。まさに“一石三鳥”をモットーにしていたんです。

―さまざまな仕事をする、矢吹さんならではの考え方ですね。そんな大学時代を経て、卒業後もライターとして活動されていたんですか?

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矢吹さん
そうですね。ただ、最初はさすがに就職活動はしました。最初からフリーのライターになるなんて思っていなかったので。

それまでライターの仕事をずっとやっていたので、就職活動では出版社しか受けなかったのですが、やはり大手の出版社は厳しく合格できなかった。

そして就職活動に失敗した時に「これしかやれることがないからライターをやってみようかな」と思ったんです。

―なるほど。そこからフリーランスの道に進んでいったんですね?

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矢吹さん
はい。ただ、当時はまだライターの仕事だけでは生活を賄えなかったので、イギリスで貯めたお金を元手に執筆業務と並行してラジオ番組の制作もお手伝いしていました。

ほかにもコンサート運営や美術の展示会の仕切り、日本ボクシングコミッションの役員などなど、数えればキリがないのですが、とにかくいろいろな仕事をこなしていました。

当時はライターというより「何でも屋」という感じでしたね。

いくつもの仕事の中から、ライターを本業として選んだ理由

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―もう二足のわらじどころではありませんね(笑)。矢吹さんは本も出版されていますが、どういった経緯で出版されたのでしょう?

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矢吹さん
ライター業を中心にさまざまな仕事をやっていた頃、偶然本を出版するチャンスにめぐりあいました。

この機会に本を出してきちんと売れたら、継続して本を出すことにつながるかもしれない。そんな期待を胸に仕事に挑みました。

こうして2014年に僕の処女作である『のんびりIBIZA(イビサ)』というイビサ島のガイドブックが出版されたんです。

ちなみに、2013年の9月に3週間現地(イビサ島)で取材をしたのですが、その間、ほかの仕事はすべて断っていました。それくらい『のんびりIBIZA』に懸けていたので。

―そこから本の執筆も増えていったんですね。

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矢吹さん
はい。それからおかげさまで何冊か出版させていただいて。今でも変わらず、ライターの仕事のほかにさまざまな仕事をしていますが、徐々に本を書く、出版の仕事が増えてきました。

―その頃くらいから自分の本業を「ライター」にしていったのでしょうか?

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矢吹さん
いえ、2015年くらいまでは、自分の本業はそれこそ「何でも屋」くらいのイメージでいました。

しかし2016年からテレビ番組「やりすぎ都市伝説」やTBSラジオ「たまむすび」といった番組に出演させていただいたんですが、その時に自分はライターとして、出版の世界の人として呼ばれていることに気づいたんです。

なら今後、テレビやラジオといったメディアでしゃべる仕事を増やしていくためには、逆に「書く仕事(すなわち本業)」をしっかりやることが必要だと思いました。

それならちゃんとライターを本業にして、ライターとしての仕事に1番力を入れていく。そうすることで、結果として他の仕事を増やすことにもつながっていくと思ったんです。

自分の“本業”をはっきりさせる。パラレルキャリアで成功するために欠かせない事前準備

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―今、パラレルキャリアという働き方を選ぶ人が増えています。とても早い時期からパラレルキャリアを選択していた矢吹さんから見て、これからそうした働き方を実践しようとしている人に対して何かアドバイスはありますか?

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矢吹さん
パラレルキャリアを実践するうえで大切なのは、「自分の本業は◯◯だ!」とはっきり言えるくらい本業を確立させることが大事です。

僕の周りでもパラレルキャリアを選択しようとしている方を数多く見てきました。

ただし中にはさまざまな仕事に手を出すことで、ひとつひとつの業務が中途半端になってしまっている人も少なくありません。結果的に仕事を継続できず、収入を増やすどころか逆に収入が不安定な生活を送ることになってしまった人もいます。

そうした人たちに共通しているのがあきらかな“準備不足”です。

パラレルキャリアを実践する前に、まずは自分の本業において絶対的な武器を見つけておくこと。それがパラレルキャリアで成功する1番の事前準備だと、僕は思います。

―確かに収入の安定した柱となる職がないと、さまざまな仕事をしたとしても単なる副業の寄せ集めで終わってしまいそうですからね。

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矢吹さん
まさにその通りです。今振り返ると、僕の場合はライターであったり、ブレない柱があった。だからこそ、何でも屋というパラレルワークが実践できていたんだと思いますね。

ただ、覚えておいてほしいのは、自分の価値、本業は他人が決めるということ。先程もお話しましたが、テレビやラジオは僕のことをライターとして、出版の人間として番組に呼んでいました。

僕自身そんな経験をしてきたので、やはり本業をきちんと明確にすることは大切だと思います。

―最後に今後の目標をお聞かせください。

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矢吹さん
今後はとにかくライターとしてもっと売れたいですね。加えて、まだ本の重版をかけたことがないので、重版できるくらいのヒット作を出したい。

また、ライターという軸がありつつもこれまで通り自分が興味のある仕事は積極的にやっていきたいですね。そのためにもまず、ライターという仕事に力を入れていかなければ、と思っています。

2017年4月26日

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