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コミュニティから始まる、よい街づくり。福田和則が仕掛ける「共創」の取り組み。

コミュニティから始まる、よい街づくり。福田和則が仕掛ける「共創」の取り組み。

「いい街に住みたい」
移り住む場所を探している人は、皆そう考えます。

自分の趣味が活かせる、山や海に近いところに住みたい。
盆踊りや餅つきなど、街の行事が盛んなところがいい。
「いい街」にこめる思いは、人それぞれです。

今回お話を伺ったのは、福田和則さん。

現在福田さんは、鎌倉を起点に
いい街づくりのためのさまざまな「仕掛け」を提供し、
そこに賛同する人たちの「コミュニティ」をつくり、
みんなで一緒に「いい街づくり」ができるよう、支援しています。

街づくり、コミュニティづくりをしていこうと考えた原点は何なのか、
お話をお聞きしました。

<プロフィール>

福田 和則さん
株式会社エンジョイワークス 代表取締役
株式会社グッドネイバーズ 代表取締役

1974年兵庫県生まれ。
関西学院大学法学部を卒業後、大手証券会社に入社するも、
会社の経営破綻のため1年で外資系金融機関に転職。
葉山に移り住んだ際に、街づくり、コミュニティづくりを仕事にしようと決心し、
2007年、株式会社エンジョイワークスを設立。
不動産仲介から建築、空き家再生などを手掛ける。
2016年には株式会社グッドネイバーズを設立し、
飲食店やゲストハウス等の企画運営や開業支援も行っている。

いい街、いいコミュニティをつくる仕事がしたい

-現在に至るまでの経緯を教えてください。

福田さん

大学卒業後、大手証券会社に就職しました。当時は将来のビジョンも何もなかったですし、起業なんて考えてもいませんでした。金融機関からいくつか内定をいただき、「銀行よりも証券会社の方が将来面白そうかも」という理由で選んだのですが、1年もたたないうちに会社が経営破綻してしまいました。

-入社早々にたいへんでしたね。その後はどうされたのですか?

福田さん

すぐに転職活動し外資系の金融機関に移りましたが、このとき「会社は何も守ってくれない。自分でいろいろ考えていかなければいけない」と身に染みて感じました。「将来自分自身で起業して何か事業をやりたい」と考えるようになったのは、この頃からです。

転職先で仕事をする中で「自分で起業し成功した人たちを相手にする仕事がある」と聞き、プライベートバンキングの仕事に移りました。当時のIT事業やスポーツ、音楽の世界で成功された人たちに「なぜ起業したんですか?」と聞きまわり、そこで相当刺激を受けました。その一方で、社会的に成功している人たちでも家庭が崩壊していたりするのを見て、「お金がすべてではない」とも感じていました。

-プライベートバンキングの仕事を通して、貴重な体験ができたんですね。その後、東京から葉山に移住されていますが、これはなぜですか?

福田さん

結婚して子供が生まれるのを機に、自然環境があるところで子育てしたい、と考えたからです。もともと海が好きでサーフィンもしていましたので、海の近くで暮らしたいという思いもありましたが、実際に葉山に引っ越してみて、「いい街だな」と感じました。

まず、いろいろな形の「人のつながり」があります。たとえばサーフィンや畑など、趣味などで横に緩やかにつながるコミュニティがある。その一方で神輿会や自治会など、垂直型の昔ながらのコミュニティもある。その両者が交わっている状況がいいな、と思いました。

また、いろんなタイプの大人がいます。船漕いで飯食ってる人もいれば、絵を描いている人もいる。大人の種類がたくさんあるんです。東京にいたときはまわりの大人は会社員が多かったので、「いろんな生き方があるんだな」と感心させられましたし、そういう人たちが一緒に生活している街は、いい街だな、と思いました。

ちょうどこの頃「何で起業しようかな」と考えていたころでしたので、このとき「いい街、いいコミュニティをつくることを仕事にしたい」と、自分がやりたいことが明確に見つかりました。

コミュニティで「ジブンゴト」にし、「共創」を生む

-その後はどうされたのですか?

福田さん

やりたいことは見つかったのですが、その当時は家も買っているし子どもも生まれたばかりだったので、起業するのに失敗は許されない状況でした。そこで何で起業するのかを現実的に考え、不動産の仲介から始めるのが成立しやすい、と判断しました。

外資系金融機関で不動産担保融資や投資用物件の購入のお手伝いをしており、仲介実務はやっていませんでしたが、不動産仲介の事情がだいたいわかっていたことが決め手のひとつです。

また、不動産仲介は、購入者と物件紹介だけに留まらない関係性を築くことができる、と考えていました。

-それはどういうことですか?

福田さん

購入者にとって、家は一生に一度の大きい買い物。その後の暮らしを作っていく場になるわけですから、「どんな雰囲気の人が住んでいるのか」「どんなコミュニティがあるのか」といった、住んでみなければわからないことがいろいろ知りたいと思っています。しかし不動産会社からはそのような情報提供はあまりなく、ただ物件を紹介するだけで終わっている、という状況でした。

そこで私は「不動産仲介という機会を通して、いい街、いいコミュニティをつくろう」と考えました。まずは家を探している人たちの「友だち」になって、住んでみなければわからない「コト」を体験してもらうコミュニティをはじめよう。そのうえで最終的に物件などの「モノ」の紹介をしよう、と考えたのです。

こうして、2007年に金融機関を退職して株式会社エンジョイワークスを設立し、地域のコミュニティづくりを始めました。

-実際に起業して、コミュニティは作れましたか?

福田さん

「いい街、いいコミュニティ」は、実際には私だけで作れるわけではなく、地域に住んでいる人たちがみんなで作っていくものです。そのため、ひとり一人のお客さまが物件探しや家を建てる行為を「ジブンゴト」として捉え、主体的に関われる状況を作りたいと考えています。

たとえば、お客さまには「家づくりノート」をお渡しして、家のコンセプトから間取り、模型作りなどを、お客さま自身に取り組んでいただくようにしています。設計者には「なるべく自分たちで設計するな」と伝え、最後はプロとして設計図面を描いて建築申請等はしますが、どこまで素人であるお客さまが主体的に関われる状況を作るか、を工夫しています。

-現在の状況を教えてください。

福田さん

「株式会社エンジョイワークス」では、鎌倉を拠点に不動産、まちづくり、空き家再生などを行っています。その中には「エンジョイワークス一級建築士事務所」を持ち、不動産仲介だけでなく建築も手がけています。

また、飲食店やゲストハウス、シェアオフィスなどの開業・運営に関する企画、コンサルティング、サポートを行う「株式会社グッドネイバーズ」を2016年4月に設立しています。

-なぜ飲食店やゲストハウスの開業支援をされているんですか?

福田さん

お客さまから「カフェをやりたい」とお声がけいただくことが多いんです。またシェアハウスやシェアオフィス、ゲストハウスをやりたい人もけっこういらっしゃいます。

そう思う人たちは、「街づくり」を一緒にする同志。彼らにカフェづくりなどのノウハウを提供できるといいと考え、まず実際に自分たちでカフェやシェアハウスの運営をやり、そこで得た情報やノウハウをみなさんに共有しています。そして本当にカフェやシェアハウスを立ち上げてくれれば、一緒に街づくりに取り組む仲間が増えることになります。

このように、多様な人々と一緒に、みんなにとって価値あるものをつくり出す「共創(Co-Creation)」を仕掛け、支援しています。

家づくり店づくりも「街づくり」のひとつ。そこにお客さまが主体的に関われる機会をいかに増やすか。そう考え進めてきた結果、エンジョイワークスの取り組みは不動産仲介から家づくり、宿や飲食(カフェ)、シェアオフィスの運営支援へと広がっています。

-その他、クラウドファンディングもされているそうですね?

福田さん

「ハロー!RENOVATION」という、エンジョイワークスの中ではいちばん新しい事業です。

不動産に関わる事業をする中で、お客さまとどういうコミュニケーションをすると、結果として一緒に街づくりをする仲間になってくれるのかが、だんだんとわかってきました。

そこで、お客さまに資金も出してもらい、みんなと一緒に運営、経営をやっていけたら、と考えました。そのためにはクラウドファンディングというやり方があるのですが、すでにある購入型のクラウドファンディングではなく、最終的にそこで得た金銭をみんなにリターンできる投資型でやりたいと考えていました。しかしそれには国の許認可が必要です。

そう考えていたところ、2017年の暮れに不動産特定共同事業法の改正で「小規模不動産特定共同事業」が創設され、従来の許認可ではなく登録更新制でファンド事業ができるようになりました。

私はこの法改正を「空き家・遊休不動産の利活用による地域活性を、地域レベルでやってほしい、というメッセージなのでは」と解釈し、すぐに登録申請し、2018年6月に投資型のクラウドファンディングを開始。そしてその取り組みを、システム開発を含めた新しい空き家・遊休不動産の利活用の先行事例としてプラットフォーム化し、全国各地で講演し広めようと活動しています。

「空き家・遊休地の再生」を、全国に

-不動産仲介から飲食店などの開業支援、空き家再生など幅広く手掛けられていますが、これまでに最も苦労したことは何ですか?

福田さん

独立したばかりの頃に、取引先とのコミュニケーションに最も苦労しました。

独立すると、今まで関わったことのない取引先やお客さまとコミュニケーションをとらなければいけなくなります。

たとえば、家の建築をお願いする大工さん。独立前には会ったことがなく、どういう志向性、話し方をする人か全くわかりませんでした。はじめのうちは会社員時代と同じように話しかけていましたが、話が全く噛み合わないし、受け入れてもらえません。

今思えば、大工さんから見たら「今まで会社員やっていた若いにーちゃんが、何なの?」という感じだったと思います。独立した当初は、そういうシーンが至るところでありました。

この時に、「会社員の時には接点がなかった、いろんな人がいる」と認識することがまず大事で、ひとり一人がどういう考え方、どういう思いでその仕事をしているのかを丁寧に会話することが重要だと気づきました。

-今後はどのような活動をしていく予定ですか?

福田さん

まずは「空き家・遊休地の再生利活用」の活動をさらに推進していこうと考えています。

昨年はベーシック編として、空き家・遊休地の利活用の方法やシステムをパッケージにし、全国10か所で講演し、プログラム提供しました。すると各地の行政、自治体、業者のみなさんからは「空き家の再生・利活用をやりたいが、どうやったらいいかわからない」「お金の問題はどうクリアすればいいのかすごい課題」との声をいただきました。

そこで今年はアドバンス編として、利活用のやり方自体を各地域で考えるプログラムを開発し、全国6か所で講演を始めています。

空き家・遊休地を再生利活用して地域活性するときには「共感投資」がキーワードになると考えています。「街づくりの仲間をつくる」際に、投資のリターンが一番ではなく、地域活性、コミュニティづくりが第一で、結果的に投資のリターンもある、と捉えてくれる「共感投資家」を増やしていきたいと考えています。

また、これからは空き家・遊休地の再生利活用に取り組んでくれる不動産会社を増やしていきたいですね。事業として儲けは小さいですが、「そこで人と繋がり、普段得られない体験ができ、リターンもある」というコミュニティを作り、地域の人たちと一緒に何か新しい事業をやることを支援する事業を一緒にやろうと、不動産業界、街づくりのプロのみなさんに呼びかけているところです。

-最後に、読者へのメッセージをいただけますか?

福田さん

独立すると、まわりの人間関係が変化します。中には私のように、会社員時代には接点がなかった人たちが突然たくさん現れ、その人たちと関係性を築いていかなければならない場面もあるでしょう。先ほどの大工さんのように、最初は会話が噛み合わない人たちも出てくると思います。

その時、何か劇的に解決できる特効薬はなく、ひとつひとつ考え丁寧に話して伝えることで「お前ってそういうやつなんだ」と認めてもらうことが重要だと私は思います。地味ではありますが「人と人とのコミュニケーション」で、ひとつひとつクリアしていくことが求められます。

そういう意味では、粘り強さは必要ですね。焦らず、ひとつひとつ丁寧に関係性を作っていくことで、あなたならではの新たな「コミュニティ」が作れると思いますよ。

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