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3割負担だけじゃない! やさしいお金の専門家・横川楓さんに聞く、国民健康保険の仕組み

3割負担だけじゃない! やさしいお金の専門家・横川楓さんに聞く、国民健康保険の仕組み

医療費。

自分だけではなくとも親やこどもなど、毎年家族の分の医療費を払っているという人も少なくないのではないでしょうか?

今回、やさしいお金の専門家・横川楓先生に伺ったテーマは、国民健康保険について。

健康保険といえば医療費が「3割負担」で済む、というイメージがありますが、実はそれだけでなく、多くのメリットがあります。

今回はそんな健康保険について知っておくべきポイントを、横川先生と一緒に整理してみました。独立・起業に限らず会社員の方も含め、必見の内容です!

<プロフィール>
横川楓さん
やさしいお金の専門家・金融教育活動家
一般社団法人日本金融教育推進協会 代表理事

明治大学法学部卒、その後同大学院へ進学。
24歳で経営学修士(MBA)を取得。

実家は会計事務所を経営。
同年代の友人たちのお金に対する意識と、将来の資産形成、所得格差、年金問題、増税など、これからの日本を担う世代に振りかかるさまざまなお金の問題との乖離に疑問を持ち、お金の知識の啓蒙活動を開始。

ファイナンシャルプランナー(AFP)や、SDGs検定、マネーマネジメント検定等の資格を取得し、2022年1月に一般社団法人日本金融教育推進協会を設立。
同法人の代表理事を務める。

横川さんのインタビュー記事はこちらから!
「収入=給与」に縛られない。経済評論家・横川楓さんに聞く、独立・起業に必要な2つの条件

<聞き手プロフィール>
庵(いおり)
イラストレーター

都内に住む27歳のフリーランスイラストレーター。
学生時代から絵を描くことが好きで、数年前から副業としてイラストレーターの仕事を受けるようになった。
近年は副業での収入が本業の稼ぎより多くなったことから、満を辞して独立を決意する。

医療費3割負担だけじゃない! フリーランスは医療費控除を活用しよう

庵ちゃん
今回は国民健康保険について、ぜひお話を伺っていきたいと思います! やっぱり医療費の「3割負担」をまず最初に思い出すんですが……他に知っておかなければならないことはありますか?
横川さん
健康保険に関して、真っ先に知っておかなければならないのは、医療費控除かな。

これは庵ちゃんのようなフリーランスだけでなく、会社勤めの人も対象になるから、社会人は全員が知っておいた方がいい制度なんだよね。

庵ちゃん
確定申告の時に名前は聞いたことあったんですけど……どんな制度なんですか?
横川さん
端的に言えば「医療費が10万円を超えた場合、超えた分の金額が控除になる」というもの。

例えば庵ちゃんが去年、15万円医療費を払ったとしたら、5万円が控除の対象になるってことなんだ。

庵ちゃん
なるほど……! でも私1人で年間10万円以上の医療費を使うことはないですね……。
横川さん
たしかに、庵ちゃんはまだ若いし健康だもんね。

でももし配偶者や両親、子どもといった家族と一緒に住んでいて、同じお財布で生活しているのであれば、同居している家族全員分の医療費を合わせても大丈夫なんだよ。

家族全員で年間の医療費が10万円を超えていたら、その分を控除にすることができるんだ。

また、総所得金額が200万円以下であれば、その総所得金額の5%を超えた金額が医療費控除になるんだよ。

庵ちゃん
一緒に住んでるお父さんもお母さんもよく病院に行ってるので、帰ったら聞いてみます!
横川さん
ちなみにここでいう「医療費」というのは、病気やケガで病院に行った際にかかったお金(診察費や薬代など)はもちろん、その病院までかかった交通費なんかも含めることができるんだ。

他にも歯列矯正も医療費控除の対象になる場合があるから、覚えておいてね(噛み合わせが悪い等、治療が必要と歯科医師が判断した場合)。

医療費控除とどう違う? セルフメディケーション税制

横川さん
そして医療費控除とよく一緒に紹介されるのが、セルフメディケーション税制。
庵ちゃん
セルフメディケーション税制、ですか?
横川さん
これはある特定の条件(健康診断をしている、インフルエンザの予防注射を打っているなど)を満たした人が、国税庁が指定している薬を購入した場合、その支払い額が12000円を超えた分の金額を控除にできる(※)という仕組みなんだ。

頭痛薬や湿布薬、花粉症の薬など、日常生活で私たちが頻繁に購入する薬も、セルフメディケーション税制の対象医療品だったりするから、ぜひチェックしてみてね。

ちなみにセルフメディケーション税制も医療費控除同様、一緒に生活する家族と合算できるよ。

※対象となるのは、12000円から最大88000円まで。つまり最大76000円分の控除がされる。

↓セルフメディケーション税制対象品目は厚生労働省のHP確認できる。
追加される品目は随時更新されていくので、よく使う薬はチェックしておくと良い。
また対象品目は店頭でも確認できる上、レシートにも記載されているので覚えておこう。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000124853.html

庵ちゃん
家族と合わせて年間12000円なら、申請できるかもしれません!
横川さん
ただ注意しなければならないのが、セルフメディケーション税制と医療費控除は、どちらか片方だけしか申請することができないということ。

「一定の目的に応じて支払った金額」によって控除が受けられるという点で、似ている制度だけど、この2つの制度は目的そのものが全然違うから、そこも注意が必要。

医療費控除は基本的に病院での治療にかかったお金、セルフメディケーション税制は対象の市販薬を購入したお金にかかる。

つまり、医療費が10万円に届かなかったからといって、セルフメディケーション税制が活用できるとは限らないから、その辺はよく覚えておこう!

不妊治療の保険適用が、2022年4月より拡大!

横川さん
あとこれはタイムリーな話なんだけど、2022年4月から不妊治療の公的医療保険の適用範囲が拡大されるから、ぜひ知っておいてね。
庵ちゃん
不妊治療って保険適用すごく高いと聞きました……!
横川さん
今まで公的医療保険の対象外だった治療も対象になるから、金銭的な負担は減るはず。

また、法律上の婚姻(結婚)をしているカップルだけではなく、事実婚のカップルも対象になるよ。

庵ちゃん
不妊で悩んでいる人にとっては、とてもありがたい制度の変更ですね。
横川さん
会社員の人とかだと、不妊治療にかかった費用を助成する制度も、会社によってはあったりするんだけど……。

会社に属していない、庵ちゃんのようなフリーランスの人にとって、今までは全額負担しなければならなかった費用が公的医療保険の対象になったのは非常に大きいと思うんだ。

ちなみに女性だけでなく、もちろん男性の不妊治療も対象だから、それも覚えておこうね。

マイナンバーカードの健康保険証利用について

庵ちゃん
普段何気なく国民健康保険を活用していますけど、意外と知らないことがたくさんあるんですね。
横川さん
あとは前回話をした、マイナンバーカードの健康保険証の活用について。これも国民健康保険の話では忘れてはいけない重要な変更点だから、もう一度復習しておこう。
2万円分もらえる! マイナポイント事業をやさしいお金の専門家・横川楓さんが解説
https://entrenet.jp/magazine/33391/
庵ちゃん
マイナンバーカードを健康保険証として利用できるんですよね。マイナポイントももらえると聞いて、早速登録していました!
横川さん
加えて、マイナンバーカードに健康保険証を連携しておくと、高額療養費制度の適用を事前の申請なしで受けられるようになったんだ。
庵ちゃん
高額療養費制度?
横川さん
端的に言えば、手術などで医療費の自己負担額が高額になった時に、一定の金額(※)を超えた分を、後で払い戻してもらえる制度のこと。

例えば庵ちゃんが、費用が100万円かかる大きな手術をしたとするでしょ。

庵ちゃんの所得にもよるんだけど、仮に自己負担額が10万円までと決まっていた場合、残りの90万円は後で返ってくる、というのがこの制度。

でも、実際に還付されるのはおよそ3カ月くらい後なんだよね。

つまり手術を受ける時は100万円満額、一時的に病院の窓口で負担しなければならないんだ。

後でお金が返ってくるとはいえ、高額な医療費を一気に支払うのは家計の負担になってしまうよね。

マイナンバーカードと健康保険証を紐づけておくと、初めから窓口では還ってくる90万円を差し引いた10万円(自己負担限度額)のみの支払いで済むんだよ。

今までも事前に申請して認定証をもらえば窓口で自己負担額だけで済んでいたんだけど、マイナンバーカードを健康保険証に利用できる登録をしておけばその事前申請もいらなくなったよ。

※自己負担限度額は所得によって異なる。詳しくはこちらから。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3030/r150/

庵ちゃん
マイナポイント以外にも、そんな大きなメリットがあったんですね。
横川さん
今回は国民健康保険をテーマにいろいろ例を挙げてみたけど、不妊治療や難病など、地域によっても助成金が出ることもあるから、気になったら自分の住んでいる地域のHPもチェックしてみてね。

そしてプラスアルファで保障を受けたいという人は、民間の保険会社が運営している医療保険に入るのもおすすめ。

これは以前解説したから、また読み返してみてね。

やさしいお金の専門家・横川楓さんに聞く、若手フリーランサーが入るべき医療保険とは?
https://entrenet.jp/magazine/29341/
庵ちゃん
横川先生、本日もありがとうございました!

構成・文・撮影=内藤 祐介
イラスト=ram

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