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隠れ倒産の原因は事業承継にあり? 一級葬祭ディレクターに聞く“継活”のススメ

2018年11月13日

事業承継という言葉を知っていますか? 事業承継とは、会社の経営を後継者が引き継ぐこと。

実はこの事業承継がうまくいかずに会社を畳まざるを得ない、いわゆる「隠れ倒産」をする会社が年々増えているのです。

今回お話を伺ったのは、葬儀・仏事アドバイザーで、一般社団法人継活推進協会の代表理事である冨安達也さん。

冨安さんが代表を務める継活推進協会では、個人や会社の資産や事業、なにより「想い」を次世代に繋げる(継活)ために、様々な活動をされています。

今回はそんな冨安さんのキャリアを振り返ると共に、個人や会社が“継活”を進めることの重要性について伺いました。

<プロフィール>
冨安達也さん
葬儀・仏事アドバイザー・一般社団法人継活推進協会 代表理事

愛知県出身。
高校卒業後、東証一部の葬儀会社「燦ホールディングスグループ」(株)公益社に入社。以降3大都市圏の複数の葬儀社に勤務し、命の尊さや死生観を学ぶ。

22歳のときに、厚生労働省認定一級葬祭ディレクターを最年少で取得。
葬儀担当以外にも葬儀会館の店舗開発、他葬儀社の調査を行い、葬儀ビジネスの提案を行う。

10年間で1000件以上の葬儀を担当し、葬儀前後のサポートの必要性を実感。

2018年、一般社団法人継活推進協会(けいかつすいしんきょうかい)を発足。全国初の実務経験を経た葬儀アドバイザーとしても活躍中。

葬儀業界は完全分業制? 「人の死」における構造的な課題に、感じた違和感

―冨安さんの経歴から教えてください。

冨安さん
この業界で働いていると、幼い頃に「死」というものに直面する出来事があったのですかと聞かれることがよくあるのですが、私の場合はそんなこともなく、いわゆる普通の学生時代を送っていました。

もちろん子どもの頃から、葬儀の仕事に興味があったわけでもありませんでした。

―そんな冨安さんが葬儀業界に入るきっかけはなんだったのでしょうか?

冨安さん
1つだけ、人と違ったことがあるとすれば、父の存在ですね。

葬儀会社の一管理職だった父が、私が小学生の頃に独立し、株式会社ティアという葬儀会社を立ち上げました。

創業から1代にして、葬儀社として2社目の東証一部上場を果たした父だったのですが、家では全くと言っていいほど自分の仕事について話をしませんでした。

仕事の楽しさはもちろん、仕事の不平不満や愚痴までも、とにかく仕事に関する話を家ですることはありませんでした。

高校を卒業する前、進路を決めるタイミングでそんな事に気づき、ふと父の仕事って一体どんな仕事なのだろう、と思うようになりました。

そこで地元愛知から離れ、大阪に本社がある(株)公益社に入社しました。

―きっかけは、お父さまの仕事への興味からだったのですね。実際に働かれてみて、いかがでしたか?

冨安さん
人の「死」と向き合う仕事です。悲しみに暮れているご家族と接することは並大抵のことではありません。

しかし、ご遺族より心から感謝の言葉を頂ける仕事であり、本当にやりがいのある仕事です。

公益社に入社後は、数度別の葬儀会社に転職をして、大阪、東京、そして地元名古屋とさまざまな場所・会社で「人の死」を見届けてきたのですが、次第に業界に関する、ある課題感が自分の中で芽生えてきました。

―どのような課題感だったのでしょう?

冨安さん
葬儀会社は、「人生最後の時」に関して「包括してサポートはできない」ということです。

当たり前のことなのですが、葬儀会社は基本的に、お通夜とお葬式・法事などにしか関わることがありません。しかし「人生最後の時」において、お通夜とお葬式だけが必要なわけではありません。

お通夜・お葬式はもちろん、生前なら介護、認知症の問題、相続問題、亡くなった後もお墓の設置や管理の問題など、課題は実に多様に存在します。

介護なら医者や介護士、相続なら税理士や司法書士などの士業の方、お葬式なら葬儀会社、お墓なら墓石会社やお寺など、現状ではそれぞれの専門家に依頼することになります。

そしていずれも決して安い金額で依頼できるものばかりではありません。

―「人生最後の時」において発生する問題が多すぎるが故に、事前準備をしておく必要がある、ということですね。

冨安さん
はい。そこで「人生最後の時」を包括して支えることができないかと考え、立ち上げたのが「一般社団法人継活推進協会(けいかつすいしんきょうかい)」だったのです。

「隠れ倒産」の原因は、事業承継ができていないから。会社の事業も“継活”すべき理由

―「人の死」を包括してサポートする目的で立ち上げた、一般社団法人継活推進協会ですが、具体的にどのようなことをされているのでしょう?

冨安さん
私たちは個人・法人問わず、次世代への継承活動“継活”のお手伝いをさせていただいております。

ここ数年で“終活”という言葉が市民権を得るようになりましたが「終わる」のではなく、「継ぐ(つぐ・つなげる)」ことが大切だという思いを込め、「次の世代に想いや事業をつなげる」ために、継活推進協会(けいかつすいしんきょうかい)という名前で立ち上げました。

具体的には「まだ元気だけど、自分に何かあった時の準備をしたい」という方や、両親・高齢の家族のことを考えたいという子ども世代の方から相続や葬儀、お墓などについての相談を受け、目的や要望、予算に応じて最適なものをご紹介しています。

また、事業の後継ぎがいない中小企業の経営者を対象に、事業承継のサポートや相談・コンサルティングも実施しています。

そのほか老人ホーム・行政・お寺さまなどからのご依頼で、入居者さまやご家族の方へ、葬儀や相続についての講演をしたり、行政や寺院と提携してお墓に関するお悩みに答えるセミナーを開くといった活動もしております。

―“終活”もしくは“継活”とは、個人を対象にするものというイメージがあったのですが、「法人」も対象なのは意外です。

冨安さん
法人は「隠れ倒産」(資産が負債を上回る資産超過の状態で、経営の余力を残しているにも関わらず、自主的に会社を休業・廃業したり、解散したりすること)の多くは、人材不足と後継者不足が原因だと言われています。

経営状態は決して悪いわけではないにも関わらず、自主的に会社を畳んでしまうのはとてももったいないですよね。

とはいえ後継者がいなければ事業を存続することもできない、といった悩みを抱えている経営者の方は実はたくさんいらっしゃいます。

自分の財産や事業、そして想いを、次の世代にスムーズにバトンタッチするために

―個人の財産はもちろん、会社の事業も“継活”する必要があるのですね。

冨安さん
これは法人にも個人にも言えることですが、次の世代にスムーズにバトンタッチするには、それなりの時間と準備が必要です。

個人の話で言えば、日本は特に相続税が高い国として知られています。

相続税がかかる財産とは、本人が持っている現金(貯金)だけではありません。不動産(建物や土地)、株、動産(車や宝石など)も全て財産として含まれます。

そして注意しなければならないのは、相続税は原則「現金」で支払わなければなりません。

つまり不動産を始めとする現金以外の財産も現金換算し、その分の税金を国に支払わなければならないのです。

―とはいえ、建物や土地はすぐに売るわけにもいかないケースもありますよね?

冨安さん
はい。相続によって財産を受け取るはずが、相続税を現金で支払えず返済に困ってしまう、という事例は数多く存在します。

さらに言うと、不動産は相続放棄(相続を放棄してしまうこと)することもできますが、相続を放棄したとしても、建物と土地の管理義務は発生するので、何かとお金がかかってしまいます。

いずれにせよ、不動産を簡単に手放すことはできないのです。

そうした状況になるのを防ぐために、まずは自分が引き継ぐ、ないしは引き継がせる予定の財産について、被相続人と相続人との間で綿密に話し合っておくことが重要です。

―葬儀やお墓と同様に、相続に関しても「亡くなってから」では遅いということですね。

冨安さん
はい、私はそう考えて活動を行っております。家族の方が慌ただしく準備をする様子や、伝えたいことを伝えられずに後悔してしまう方、相続時に資産を無くした方にも出会って参りました。

起こってから動くでは遅いのが「相続問題やお葬式」であると考えています。

相続や亡くなる前に自分の葬式のことやお墓のこと、「自分の想い」をエンディングノートなどに記しておかないと、遺族に自分の意志を伝えることができなくなってしまいます。

また相続や葬儀、お墓などに何か懸念点がある場合でも、事前に現状を確認し、準備ができれば必ず何らかの対策を打つことができます。

―冨安さんの今後の目標を教えてください。

冨安さん
高齢者の方はもちろん、若い人に対しても“継活”の重要性を広めていきたいです。

「死」は人生において、最後にして最大の出来事と言っても過言ではありません。その日を迎えた時に、心残りがあると本人も家族の方も苦しいでしょう。

若ければ若いほど、普段「死」について考える機会はまずございません。

しかし、自分や自分の身近な人にもいつか必ず訪れる「最後の時」を意識することができれば、きっと色々な人たちとの「時間を大切にしよう」と思えます。

死を常に意識してほしいというのではなく、大切な人との「時間」を大事にしてほしいというのが私の伝えたいことです。そのための「予防策」を私たち継活推進協会は提案しています。

自分の財産や事業、そして想いを次の世代にスムーズに繋げる。“継活”の考え方がもっと世の中に広まるように、今後も啓蒙していきたいと思います。

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2019年1月21日

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